バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。
シャンパーニュ生産量のうち約7割は、グラン・メゾンと呼ばれる大手の製造業者が造っています。
シャンパーニュ地方のブドウ畑でグラン・メゾンが所有しているのは全体の1割程度にすぎず、
こうした大手メゾンはブドウ原料の大半を栽培農家から購入してシャンパーニュを造っています。
このように原料の一部(または全部)を栽培農家から購入してシャンパーニュを造る生産者のことを、ネゴシアン・マニピュラン Négociant-Manipulant (略称 NM) と言います。
大手メゾンはすべてこのカテゴリーに入ります(約260軒)。
シャンパーニュ地方には約2万軒の栽培農家がいますが、そのほとんどはブドウを大手メゾン等に販売していて、自身でワインを醸造することはありません。
もちろん、たとえばポール・バラ Paul Bara のように何十年も前から自家栽培のブドウでシャンパーニュを造って販売していた生産者もいました。しかし大半のブドウ栽培農家はブドウを売ることで満足していたのです。
ところが、ここ20年ほどの間に世界のシャンパーニュ市場に変化が起きました。
輸出市場、つまりフランス国外のマーケットで自家栽培ブドウで造ったシャンパーニュ(Grower Champagne)の人気が増してきたのです。
グラン・メゾンのように外部から買い入れたブドウを用いてシャンパーニュを造るのではなく、
自社畑産のブドウでシャンパーニュを造るドメーヌ的な生産者のことを、レコルタン・マニピュラン Récoltant-Manipulant (略称 RM) といいます。
現在シャンパーニュ地方には約5千軒のレコルタン・マニピュランがあり、シャンパーニュの全売上の2割強を占めるようになっています。
レコルタン・マニピュランは畑や村に密着したワイン造りで、テロワールを重視した個性的なシャンパーニュを生産しています。

▲ポール・デテュンヌのブラン・ド・ノワール
レコルタン・マニピュランは小規模なところばかりで、製品のほとんどはフランス国内で消費されます。本当にごく少数の生産者しか、世界中に自分の商品を輸出するだけの経営規模がないのです。
また大手メゾンのようには名前が知られていないところがほとんどです。
それは、小規模ゆえに宣伝広告など国際的なマーケティングを行うだけの予算がないからという事情もあります。
日本国内でシャンパーニュの売場を見ても、レコルタン・マニピュランはやはり少数派だといえます。
とはいえ、その数は年々着実に増えてきています。
レコルタン・マニピュランのなかでも名前がよく知られており、日本でも見つけやすいものとしては、
現代の大御所ジャック・セロス Jacques Selosse は当然として、
エグリ・ウーリエ Egly-Ouriet、ガストン・シケ Gaston Chiquet、アンリ・ジロー Henri Giraud、ポール・バラ Paul Bara、ポール・デテュンヌ Paul Déthune、ルネ・ジェフロワ René Geoffroy などが挙げられるでしょうか。
年間生産量7千ケース以下の規模のところがほとんどですが、ガストン・シケがこの中ではおそらく最大手で、ワインショップの店頭でもインターネットでも比較的容易に購入できます。
ところでレコルタン・マニピュランなら大手メゾンよりも品質が良いのかというと、必ずしもそうではなく、これは造り手によります。
大手メゾンには、年度にかかわらず安定的で高品質のシャンパーニュを造ることができるという強みがあります。
もちろん名の知れているレコルタン・マニピュランは高品質なシャンパーニュを造っています。
ただ品質云々というよりも、むしろ彼ら自身のブドウ畑が持つ個性を表現するところに重きが置かれているように思います。
価格的には一般のシャンパーニュとほぼ同レベルですが、プレステージ・キュヴェのクラスになると大手メゾンのブランドのほうが高価なものが多いですね。
最後にレコルタン・マニピュランものを楽しむ際のちょっとしたコツをひとつ。
一般にレコルタン・マニピュランのシャンパーニュは、大手メゾンのものに比べると販売前の熟成期間が短いことを念頭に置くとよいでしょう。
これは、小規模ゆえに大手ほどの貯蔵用施設(スペース)がないためです。
そのため買ってすぐに飲むと、まだ若くて青みがかった味わいに感じることもあります。
レコルタン・マニピュランのシャンパーニュは、可能ならば購入後1年くらいセラーに入れておいてから抜栓したほうが、本来の実力を発揮して美味しく楽しめると思います。
(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

シャンパーニュ生産量のうち約7割は、グラン・メゾンと呼ばれる大手の製造業者が造っています。
シャンパーニュ地方のブドウ畑でグラン・メゾンが所有しているのは全体の1割程度にすぎず、
こうした大手メゾンはブドウ原料の大半を栽培農家から購入してシャンパーニュを造っています。
このように原料の一部(または全部)を栽培農家から購入してシャンパーニュを造る生産者のことを、ネゴシアン・マニピュラン Négociant-Manipulant (略称 NM) と言います。
大手メゾンはすべてこのカテゴリーに入ります(約260軒)。
シャンパーニュ地方には約2万軒の栽培農家がいますが、そのほとんどはブドウを大手メゾン等に販売していて、自身でワインを醸造することはありません。
もちろん、たとえばポール・バラ Paul Bara のように何十年も前から自家栽培のブドウでシャンパーニュを造って販売していた生産者もいました。しかし大半のブドウ栽培農家はブドウを売ることで満足していたのです。
ところが、ここ20年ほどの間に世界のシャンパーニュ市場に変化が起きました。
輸出市場、つまりフランス国外のマーケットで自家栽培ブドウで造ったシャンパーニュ(Grower Champagne)の人気が増してきたのです。
グラン・メゾンのように外部から買い入れたブドウを用いてシャンパーニュを造るのではなく、
自社畑産のブドウでシャンパーニュを造るドメーヌ的な生産者のことを、レコルタン・マニピュラン Récoltant-Manipulant (略称 RM) といいます。
現在シャンパーニュ地方には約5千軒のレコルタン・マニピュランがあり、シャンパーニュの全売上の2割強を占めるようになっています。
レコルタン・マニピュランは畑や村に密着したワイン造りで、テロワールを重視した個性的なシャンパーニュを生産しています。

▲ポール・デテュンヌのブラン・ド・ノワール
レコルタン・マニピュランは小規模なところばかりで、製品のほとんどはフランス国内で消費されます。本当にごく少数の生産者しか、世界中に自分の商品を輸出するだけの経営規模がないのです。
また大手メゾンのようには名前が知られていないところがほとんどです。
それは、小規模ゆえに宣伝広告など国際的なマーケティングを行うだけの予算がないからという事情もあります。
日本国内でシャンパーニュの売場を見ても、レコルタン・マニピュランはやはり少数派だといえます。
とはいえ、その数は年々着実に増えてきています。
レコルタン・マニピュランのなかでも名前がよく知られており、日本でも見つけやすいものとしては、
現代の大御所ジャック・セロス Jacques Selosse は当然として、
エグリ・ウーリエ Egly-Ouriet、ガストン・シケ Gaston Chiquet、アンリ・ジロー Henri Giraud、ポール・バラ Paul Bara、ポール・デテュンヌ Paul Déthune、ルネ・ジェフロワ René Geoffroy などが挙げられるでしょうか。
年間生産量7千ケース以下の規模のところがほとんどですが、ガストン・シケがこの中ではおそらく最大手で、ワインショップの店頭でもインターネットでも比較的容易に購入できます。
ところでレコルタン・マニピュランなら大手メゾンよりも品質が良いのかというと、必ずしもそうではなく、これは造り手によります。
大手メゾンには、年度にかかわらず安定的で高品質のシャンパーニュを造ることができるという強みがあります。
もちろん名の知れているレコルタン・マニピュランは高品質なシャンパーニュを造っています。
ただ品質云々というよりも、むしろ彼ら自身のブドウ畑が持つ個性を表現するところに重きが置かれているように思います。
価格的には一般のシャンパーニュとほぼ同レベルですが、プレステージ・キュヴェのクラスになると大手メゾンのブランドのほうが高価なものが多いですね。
最後にレコルタン・マニピュランものを楽しむ際のちょっとしたコツをひとつ。
一般にレコルタン・マニピュランのシャンパーニュは、大手メゾンのものに比べると販売前の熟成期間が短いことを念頭に置くとよいでしょう。
これは、小規模ゆえに大手ほどの貯蔵用施設(スペース)がないためです。
そのため買ってすぐに飲むと、まだ若くて青みがかった味わいに感じることもあります。
レコルタン・マニピュランのシャンパーニュは、可能ならば購入後1年くらいセラーに入れておいてから抜栓したほうが、本来の実力を発揮して美味しく楽しめると思います。
(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)
