早稲田ワインアカデミー

ワインに興味はあるけれど、ワインって何だかムズカシそう・・・
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でもワインの基本を知ると、ワインがもっと楽しくなります。
ブログ「早稲田ワインアカデミー」は、ワイン初心者の方にもワインをよく飲む方にも
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​バイザグラスの初拠点となる【神楽坂ワインハウス by the glass】
2018年11月にオープンしました!
神楽坂ワインハウス バイザグラス
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ナパ・ヴァレーのブドウの代表選手はカベルネ・ソーヴィニヨンです ~ 複数のブドウ品種をブレンドしたボルドースタイルのメリテージ・ワインもナパの重要選手です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネは、ナパ・ヴァレーでワインを造っている生産者のほぼ全員が造っています。
それから、多くの生産者はメルローも手がけています。

ナパにおける最重要品種をあげるとすれば、白ワイン用2種類、赤ワイン用4種類の計6種類となるでしょう。

白はシャルドネとソーヴィニヨン・ブランです。
ソーヴィニヨン・ブランはナパではフュメ・ブラン Fumé Blanc とも呼ばれます。

赤はカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、それからジンファンデルです。
ピノ・ノワールは主に冷涼なカーネロスで造られています。

生産量の観点で言えば、カベルネ・ソーヴィニヨンがナパ・ヴァレーで最も重要なワインとなります。
カベルネ・ソーヴィニヨンはナパ・ヴァレーの全生産量の40%を占めています。
多くのワイン評論家の間でも、ナパで最も優れたワインを産み出すのはカベルネ・ソーヴィニヨンだと広く認識されています。

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 ▲オーパス・ワンはメリテージ・ワインの代表格ともいえる

ナパ・ヴァレーでは、単一ブドウ品種ワインだけでなく、複数のブドウをブレンドしたワインも重要な商品です。

たとえば赤ワインであれば、いわゆるボルドー品種でブレンドすることが多いです。
具体的にはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、それからたまにプティ・ベルドなどをブレンドします。
白ワインの場合もボルドーの白ワインブレンド品種、すなわちソーヴィニヨン・ブランとセミヨンをブレンドすることが多いです。

こうしたブレンドワインはメリテージ・ワイン Meritage Wine と呼ばれることがあります。
Merit(メリット)とHeritage(遺産)を併せた造語で、ナパ・ヴァレーだけではなくアメリカ全体で使われている用語です。

ラベル上にわざわざ Meritage と書かれていることはほとんどないですが、基本的にはボルドー地方の伝統的ブドウ品種をブレンドしたボルドータイプの高品質ワインに対して使われる用語です。
代表例としてはオーパス・ワン Opus One があげられます。

メリテージ・ワインは品種名がラベルに書かれていません。

アメリカではふつう単一品種75%以上を使用していないとヴァラエタル・ワイン(品種名表示のある良質ワイン)になれませんが、
たとえば「うちのワインは○○と△△をブレンドするとすごく美味いワインができるんだ!」といったケースにおいては、
メリテージ・ワインというカテゴリーはマーケティング上、大いに存在意義のあるものとなるでしょう。

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カリフォルニア最上級のワイナリーの多くがナパ・ヴァレーにあります ~ 最南部カーネロスはソノマ郡にまたがる最も冷涼な産地で、最北部カリストガはとても温暖な気候です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ナパ・ヴァレーはサンフランシスコ市街から北東へ車で90分ほど走ったところにあります。
ナパ・ヴァレーはカリフォルニアの中でも最も地価の高いブドウ畑地域で、カリフォルニアで最上級のワイナリーの多くが、ナパ・ヴァレーにあります。

1960年頃のナパ・ヴァレーにはワイナリーが25軒ほどしかありませんでした。
現在では約400軒のワイナリーが、この限定されたエリアの中になんとか場所を見つけてひしめき合っています。
ナパ・ヴァレーのワイン生産量は、その名声の大きさに比べると非常に小さく、カリフォルニアワイン全体の4%程度に過ぎません。

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 ▲ナパ・ヴァレーのAVA

サンパブロ湾からの海風と霧のおかげで、ナパ・ヴァレーの南部、とくに最南部のカーネロス地区は最も冷涼なエリアです。

カーネロスは西側の一部がソノマ・カウンティ内に含まれ、冷涼な気候ならではのブドウ品種を選択できるエリアとなっています。
シャルドネ、ピノ・ノワール、メルローなどが栽培され、カリフォルニアの高品質スパークリングワインの生産拠点としても知られています。

北にいけばいくほど海の影響が少なくなり、気候はかなり温暖になっていきます(とはいえ夜は冷涼です)。
ナパで最北部に位置するカリストガは温暖な地区で夏の最高気温は南部より10℃高く、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適しています。

ナパ・ヴァレーの農業地帯のほとんど全部をワイナリーとブドウ畑が占有しています。
ブドウ畑の多くは谷側にありますが、なかには丘や西側のマヤカマス山脈に位置するものもあります。
ハウエル・マウンテンのように東側のヴァカ山脈にある地区もあります。

エリアごとのAVAは次の通りです。

●マヤカマス山脈エリア
・ スプリング・マウンテン Spring Mountain
・ ダイヤモンド・マウンテン Diamond Mountain
・ マウント・ヴィーダー Mount Veeder

●ナパ・ヴァレー東側の丘陵または山地エリア
・ ハウエル・マウンテン Howell Mountain
・ スタッグス・リープ ディストリクト Stags Leap District
・ アトラス・ピーク Atlas Peak

●ナパ・カウンティの最東部
・ チルズ・ヴァレー Chiles Valley

●谷側の地区(南から北へ)
・ オーク・ノール・ディストリクト Oak Knoll District
・ ヨーントヴィル Yountville
・ オークヴィル Oakville
・ ラザフォード Rutherford
・ セント・へレナ Saint Helena
・ カリストガ Calistoga

●ナパ・ヴァレー南東部(ナパ・カウンティとソラノ・カウンティにまたがる)
・ ワイルド・ホース・ヴァレー Wild Horse Valley

●ナパ市街地の東側
・ クームズヴィル Coomsville

●ナパ最南部(ナパとソノマにまたがる)
・ ロス・カーネロス Los Carneros

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カリフォルニアでは海に近いほど冷涼で、内陸に向かうほど温暖な気候となります ~ ナパやソノマを含むノース・コーストがワイン生産の最重要地域です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

太陽がさんさんと照り晴れの日の多いカリフォルニアは、ブドウの生育に適した温暖な気候には事欠きません。

そんなカリフォルニアにとって高品質なワインを造るための課題はむしろ、じゅうぶん冷涼で痩せた土壌の土地を見つけることのほうです。
そうでないと温かなカリフォルニ
アでは、果実の風味がしっかり出来上がる前にブドウが早く完熟してしまうからです。

カリフォルニアでは、緯度の高さよりも太平洋岸への近さのほうが冷涼な気候を決定づける重要な要素となります。
概して言えば、カリフォルニアでは海に近いほど冷涼で、内陸に向かうほど温暖な気候となるのです。

太平洋からサンパブロ湾に流れ込む寒流の影響で、サンパブロ湾に近い南部は冷涼となります。

最南端のカーネロスは最も冷涼です。
そして北上するにつれ海の影響が弱まり、とくに夏は暑くなります。

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カリフォルニアで最も重要なワイン地域は、広域で見ると次のようなところにあります。

●ノース・コースト North Coast
・ ナパ・ヴァレー Napa Valley
・ ソノマ・カウンティ Sonoma County
・ メンドシーノ・カウンティ Mendocino County など

●セントラル・コース
ト Central Coast
・ サンタ・クルーズ・マウンテンズ Santa Cruz Mountains
・ モントレー Monterey
・ パソ・ロブレス Paso Robles  
・ サン・ルイス・オビスポ San Louis Obispo
・ サンタ・バーバラ Santa Barbara など

●シエラ・フット・ヒルズ Sierra Foothils

※カリフォルニアの地図はこちらの記事を参照

上記の中でも
カリフォルニアで最も重要なワイン地方は、全米のワイナリーの約半数が所在し、ナパやソノマなどの名産地を含むノース・コーストです。
(ナパ、ソノマなど個々の産地については今後の記事で書いていきます。)

ヨーロッパのワイン産地に比べて、カリフォルニアでは年ごとの気候の変化はそれほど大きくありません
大きな理由のひとつは、カリフォルニアではブドウの生育期間に雨がほとんど降らないからです。
(一般にヨーロッパではヘンな時期の雨が悪いヴィンテージを引き起こす大きな理由となります。)

カリフォルニアのワイン生産者は、灌漑を利用してブドウの樹にやる水をコントロールしています。
ヴィンテージによる差がカリフォルニアワインにもあるとすれば、そのいちばんの理由は干ばつによって灌漑用の水が不足することです。

そう考えると、近年の世界的な気候変化は今後、水不足の頻発等によってカリフォルニアワインにも影響をを与えていく可能性があります。
将来はカリフォルニアワインにも、以前よりもっとヴィンテージごとの変化が現れてくるかもしれませんね。

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アメリカのワイン生産量の9割を占めるカリフォルニア ~ モンダヴィらが良いワインを造りブドウ品種名を名づけたのは、安直なワインが溢れていた市場に対する挑戦でした

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワイン好きな人がアメリカのワインに思いを馳せるとき、まずカリフォルニアを思い浮かべるはずです。
これは驚くべきことではありません・・・カリフォルニアのワインはアメリカのワイン生産量の9割を占めているのですから。

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 ▲ナパにあるロバート・モンダヴィ・ワイナリー

アメリカには大量生産型の会社も含めて様々なワイナリーがありますが、”良いワイン” を造ろうという流れをアメリカで作った先駆け的な存在として、カリフォルニアのロバート・モンダヴィ Robert Mondavi をあげることができるでしょう。

1966年、ロバート・モンダヴィ氏は高品質なワインに特化した自分自身のワイナリーを始めようと、家族が経営するワイナリーを離れて独立しました。

モンダヴィ氏や、彼の歩みに追随した生産者たちは、自らが造る品質本位のワインに「カベルネ・ソーヴィニヨン」「シャルドネ」などの呼び名をつけました。

ワインをそのぶどう品種名で呼び分けるこのやり方は、いわば、当時のアメリカ市場に溢れていた安価で低俗なワインに対する彼らからの挑戦状でした。

当時のアメリカで一般的だった安ワインは、ヨーロッパの銘醸地の名を借りて「Burgundy(ブルゴーニュ)」だとか「Chablis(シャブリ)」などとラベルに名乗っていたのです。
これらの産地はそもそも有名であるため、安ワインの生産者たちは販売戦術上、こうした安直な方法を意図的に行なっていました。

これらの名前があまりにも浸透してしまったため、一般消費者が白ワインのことを何でも「シャブリ」と呼ぶような笑えない状況も生まれていたのです。

その後、ロバート・モンダヴィのような考え方のワイナリーが増え、自社のワインをブドウ品種で呼び分けることが普通となっていきました。

余談ですが、アメリカのワインのラベルによく見られる Reserve、Special Selection、Private Reserve、Barrel Select、Vintners Reserve、Classic 等々の用語には、法的な定義はなにもありません。

自社のワインが特別で優れたワインだということを示すために、プレミアムワインの生産者がこうした用語を使うことが多いですが、
もっぱら安価なワインを販売しているような大規模ワイナリーが、こうした言葉をマーケティングツールとしてラベルに記載することも多いです。

こうしてみると、アメリカってやはり何事も開拓者精神が旺盛というか(商魂たくましいというか)、マーケットを開拓、拡大していくためにはかなり自由奔放なところがあるようですね。。

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世界最大のワイン国内消費量を誇るアメリカ ~ その原産地呼称制度AVAは産地の境界線を定めるのみで品種・栽培・醸造方法に関する規定はありません

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

アメリカ合衆国にもワインの原産地呼称制度が存在します。
様々な生産地域を規定しているという点では、伝統的なフランスの仕組みと同じです。

しかし AVA(American Viticultural Areas)と呼ばれるアメリカの制度は、生産地域の地理的な境界線を設定するのみで、栽培可能なブドウ品種とか、単位面積当たりの収穫量(収量)とか、栽培・醸造方法など、その「土地」とそこで造られる「ワインのスタイル」を結びつけるような事柄は定められていません。

したがって、ワインのラベル表示において、AVA名(すなわち生産地域の名前)はおのずとブドウ品種名よりも二次的な扱いをされているのが実情です。

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アメリカの生産者はワインの名前をつける際、小さく限定されたAVA名よりも、むしろ広めのAVA名をつけることがあります。
それは、原料ブドウやブレンド用ワインを購入するための選択肢を広く持っておくためです。

たとえば、ソノマ・カウンティ(郡)内のアレキサンダー・ヴァレーにあるワイナリーの例を考えてみましょう。

もしそのワイナリーがソノマ・カウンティ内の他の地域でもブドウを栽培していたり、もしくはそうした他地域からブドウを買ったりして、あるワインを造るためにそうしたブドウも使いたい場合は、より広域なソノマ・カウンティAVAを使います。

アレキサンダー・ヴァレーAVAだと、アレキサンダー・ヴァレー産のブドウを85%以上使わなければならないからです。

ナパなど別のカウンティで育てられたブドウやワインをブレンドしたいときは、もっと広域のノース・コーストAVAを使用します。

低価格のワインを造ることが目標であれば、ノース・コーストよりも安くブドウが手に入るカリフォルニア内のどこかから(例えばセントラル・ヴァレーあたりで大量生産されているブドウなどを)仕入れるために、さらに広域のカリフォルニアAVAを使用することも可能です。

ワイン生産者は、カリフォルニアAVAを上級ワインに用いる場合もあります。
それも、やはりブドウ調達における自由度を最大限に高めておくためです。

個々の「場所」の特定性は尊重しつつも、地理的にまたがるブレンディングの工夫によって、良いワインを手頃な価格で国内の消費者に届けることもまた、ワイナリーにとっては大事なことなのです。

そもそもアメリカは国内のワイン消費量が生産量よりも多い国です。
ですから外国からワインを輸入もしています。

アメリカの国内ワイン消費量は世界最大です(人口が世界第3位という要因も手伝っています)。
そのため、アメリカにおけるワイン造りは当然、まず国内の消費者を意識して行われます。
アメリカワインの総売上高のうち約7割が国内販売によるものなのです。

ヨーロッパの伝統的生産国におけるワイン消費量が減少傾向の中、アメリカのワイン消費量はむしろ増加傾向にあります。
なんとなくですが、ぼくはこのことを肌感覚で理解できます。
以前いたワインショップ&バーは外国からのお客様も多かったのですが、なかでもアメリカ人はみな本当によくワインを飲みます(量も)。

はじめから輸出を意識しているオーストラリアやニュージーランドの生産者とは異なり、アメリカの生産者は、こうしたワイン好きの国内消費者を第一のターゲットにして生産やマーケティングを行っているのですね。

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カリフォルニアのワイン生産者たちは真っ先にテロワールよりもブドウ品種に焦点を当て、「新世界ワイン」というカテゴリーのフロンティアを切り拓いてきました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

アメリカのワイン、とくにカリフォルニアのワインは、新世界における「ワインに対する考え方」のエッセンスとなっています。
カリフォルニアの生産者たちは、育てたいブドウ品種を好きな場所に植えて、自由にワインを造ります。
異なる地域のワイン同士でも、自分たちの思うままにブレンドします(ブレンドに関しては一定の法的規制がありますが)。

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 ▲カリフォルニア大学デーヴィス校

カリフォルニアワインは、「ブドウ品種」というものを一躍スターダムにのし上げました。

カリフォルニアがワインをブドウ品種名で呼ぶようになるまでは、カベルネ・ソーヴィニヨンもシャルドネもメルローもピノ・ノワールも、いわばワインの材料として裏方的な存在でした。
しかし、アメリカをはじめ新世界のワイン生産国では、いまではブドウ品種こそがワインそのものを示す要素になっています。

あるブドウ品種から造られたワインはどれも同じというわけではありません。
消費者からどれも同じだと思われないように、少なくともマーケティング的には、カリフォルニアの生産者は自分の造るワインに独自の "ひねり" といいますか、創造的な解釈を加えて表現するアーティストか映画監督のように振る舞うようになりました。

彼らがつくるカリフォルニアワインの "シナリオ" においては、土地(いわゆるテロワール)はしばしば二次的な役柄にとどめられます。

もちろん時がたつにつれて、カリフォルニアの生産者たちも「ブドウ畑の場所がワインのキャラクターの重要部分である」というヨーロッパのテロワール的な考え方を採り入れるようになりましたが、それもほぼ上級ワインに限ってのことです。

多くの生産者の視点はやはりブドウそのものに向けられており、いかにそのブドウ品種の持つ果実的な味わいを引き出したワインを造るか、という部分への工夫や努力が重ねられてきました。

アメリカのワイン生産者は、より果実味のしっかりしたワインを造るために、研究機関が持つテクノロジーも進んで利用してきました。

カリフォルニア大学デーヴィス校とカリフォルニア州立大学フレズノ校は、ワイン造りの分野で重要な教育研究機関です。
とくにカリフォルニア大学デーヴィス校はワインの科学的研究において世界的にも高名な存在であり、ヨーロッパのワイン生産者さえも、ここで学ぶためにカリフォルニアに留学に来るほどです。

カリフォルニアワインこそ、商業面でも研究面でも「新世界ワイン」という新たなカテゴリーを切り拓いてきた、フロンティアスピリットあふれる先駆者だと言えるのではないでしょうか。

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アメリカのワイン生産量は世界4位で、カリフォルニア州が全米第1位 ~ 昔むかしスペインからやって来た修道士たちが南カリフォルニアに最初のブドウを植えました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

昔むかし、征服者たちが金(ゴールド)を求めて "新世界" たるアメリカにやってきたとき、スペインの
カトリック修道士ミッション)たちはブドウを持ち込み、現在の南カリフォルニアに最初のブドウ樹を植えました。

このミッションたちのブドウはミッション種と呼ばれ現在も存在していますが、品質面であまり商業的なワイン造りには向かず、現在ではカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなど良質なワインのできるブドウ品種に取って代わられています。

当時から変わっていないことがひとつあるとすれば、カリフォルニアがいまでもアメリカワインの中心地であるということです(その中心部は南カリフォルニアからナパ・ソノマなど北のほうに移動しましたが)。

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アメリカ合衆国では19世紀からワインの商業生産が行われていますが、現代的なワイン産業として大きな変化が始まったのは1970年頃のことです。
禁酒法(1920~1933年)、大恐慌、第二次世界大戦がワインビジネスに深刻なダメージを与え、その後の回復の歩みも決して早くはありませんでした。

1970年以前のカリフォルニア州では数十軒程度のワイナリーしか稼動していませんでした。
2010年には
、カリフォルニア州のワイナリー数は3千軒以上となりました(1995年からの15年間で約4倍に増えています)。
そのうち少数の大手ワイナリーを除けば大部分は小規模や家族経営のワイナリーです。

カリフォルニアでのワイン産業の成長は、ワインに対する関心をアメリカ中に波及させていきました。
今日では全米50州すべてにワイナリーがあります。

とはいえワイン生産地としてとくに重要なのは、カリフォルニア州(生産量は全米第1位)、ワシントン州オレゴン州ニューヨーク州の4州といってよいでしょう。

現在、アメリカ合衆国のワイン生産量は世界第4位です。
(1位・2位常連組のイタリアとフランスには遠く及ばず、3位のスペインともかなり離れています。)

これからしばらく、アメリカのワインについて書いてみたいと思います。
カリフォルニア州内の主産地や、オレゴン州、ワシントン州、ニューヨーク州について触れていきます。
どうぞお付き合いください!

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南アフリカで栽培面積最大の品種はシュナン・ブランでスティーンと呼ばれます ~ ピノ・ノワールとサンソーの交配によるピノタージュという南ア独特のブドウもあります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

南アフリカで最も栽培面積が大きいブドウ品種シュナン・ブランです。
シュナンブランは南アではスティーン Steen とも呼ばれます。

シュナンブランは多才なブドウで、甘口にも中辛口にも辛口にもスパークリングにも遅摘みの貴腐ワインにもなります。

赤ワイン用では、黒ブドウで栽培面積が国内1位カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、
メルロー、ピノ・ノワールが近年ますます重要な品種になっています。
シュナンブラン以外の白ワインではソーヴィニヨン・ブランとシャルドネが人気があります。

カベルネ・ソーヴィニヨンとソーヴィニヨン・ブランは、南アフリカの気候のもとでは大変良いものができます。

南アフリカの黒ブドウ品種で忘れてはならないのは、ピノタージュ Pinotage です。
ピノタージュは1925年にピノ・ノワール種とサンソー種の交配で生まれた南アフリカ独特のブドウ品種です。

ピノタージュの最初のワインは1941年に造られていますが、市場で認知されるようになったのは1959年のことで、1961年に初めてラベルにこの品種名が書かれたワインが出たそうです。

ピノタージュのワインは赤みの濃い色調で、 ピノ・ノワールのようなチェリーやキイチゴの風味とローヌワインの持つ土のニュアンスを併せ持つワインです。
ライトからミディアムボディの飲みやすいタイプにも、タンニン豊かなパワフルなワインにもなります。
また、シラーズなど他の品種とブレンドされることも多いです。

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 ▲ピノタージュとシラーズのブレンドのワイン

ピノタージュは試してみる価値のあるワインですが、これから国際マーケットで南アフリカのワインを背負っていくであろう品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ(ブレンドも含めて)、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネだと思います。

シュナンブランとピノタージュは、もちろん現在でも多く造られていますが、どちらかといえば南アフリカワインの「これまで」を代表する品種という感じがします。

カベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが、まさに現在の南アフリカワインの代表品種であり、実際に高品質なワインが世界で売られています。

しかし
南アフリカワインの「これから」を期待されている品種はソーヴィニヨン・ブランとシラーズだと思います。

ソーヴィニヨン・ブランに関して言えば、すでに世界でも最高レベルのワインが造れるようになっています。

南アの生産者は一般に、とても香りの強いソーヴィニヨン・ブランのワインを造ります。
とくにコンスタンシアをはじめとした冷涼な気候の地域で造られるソーヴィニヨン・ブランは、香りや風味が非常に力強いワインになります。

ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランに似ている部分がありますが、ニュージーランドのもののほうが、まだ風味が穏やかで飲みやすく感じられるかもしれません。

シラーズは南アフリカに限らず南半球全体の生産者が好んで造る人気品種となっています。
南アの生産者がシラーを好むのは、その多能性です。
暖かい地域でも冷涼な地域でも育てることができるからです。

シラーズは近年、南アフリカで最も急速に生産量を増やしている品種です。
10年後くらいには、シラーズが南アで最も生産量の多い赤ワインになるかもしれません。

南アフリカのワイン事情も、変化が
とても激しくなっているのですね。
これからもっと注目していきたいと思います。

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喜望峰周辺のコースタル・リージョンが南アフリカでは最も良質なワインを産み出す地方です ~ コンスタンシア、ステレンボッシュ、パールなどがとくに有名です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

南アフリカのブドウ栽培地域は、本来は気温の高い地域ながらも、大西洋からの冷たい風により比較的冷涼な気候となっている喜望峰の周辺(おおむね海岸から20Km圏内)に集中しています。

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 ▲シュテレンボッシュ地方の畑

南アフリカでは、1973年に制定の原産地ワイン制度 W.O.Wine of Origin) により、ラベルに記載される産地、ブドウ品種、ヴィンテージを規制しています。
W.O.制度はフランスのAOC制度と似た考え方を持っており、たんに産地の境界線を定めるだけでなく、ブドウ畑の場所や栽培可能なブドウ品種なども指定しています。

W.O.制度のもと、ワイン産地として様々な地域や地区などが定められましたが、南アフリカの主要ワイン産地の多くは南西側の沿岸地方(コースタル・リージョン)にあります。
このコースタル・リージョンが南アフリカでは最も良質なワインを産み出す地方です。

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コースタル・リージョンでとくに有名な産地は以下の通りです。

●コンスタンシア Constantia

ケープタウンの南にある、この国では最も古いワイン産地(小地区)です。
海風の影響を受ける冷涼な産地で、シュナン・ブラン(南アではスティーン Steen と呼ぶ)やソーヴィニヨン・ブランなどが育てられています。

●ステレンボッシュ Stellenbosch

ケープタウンの東に位置する、品質と生産量の両面で最も重要な産地です。
生産者や教育研究機関が集積する、南アフリカのワイン産業の中心地でもあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンなど赤ワイン用品種が中心です。

●パール Paarl

ステレンボッシュの北に位置する産地で、KWVの本拠地でもあります。
17世紀にオランダ人に続いて入植したユグノー派(プロテスタント)のフランス人が中心になって拓いたワイン産地で、現在もステレンボッシュに次ぐ重要な産地です。

上記のほか、近年脚光を浴びているのがウォーカー・ベイ Walker Bay エルギン Elgin です。

ウォーカー・ベイは大西洋とインド洋のほぼ境に位置する冷涼な地域で、ピノ・ノワールとシャルドネで実力を発揮してきています。
エルギンはステレンボッシュとウォーカー・ベイの間にある比較的新しい産地で、冷涼な気候で造られるソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールが注目されています。

以前いたワインショップ&バーでは、たまに南アフリカのワインもランチ用のグラスワインで出していました。
とくに白ワインは冷涼産地のニュアンスが感じられる味わいなので、サンドウィッチなどによく合いました。

南アフリカのワイン、個人的には日頃それほど飲むことはないのですが、今度ショップで面白そうなものを見かけたら、ぜひ買ってみようと思います。

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南アフリカのブドウは17世紀にオランダ人が持ち込みました ~ 一般に南アは新世界に括られますが、ワインはヨーロッパ的な特徴もあり、新世界との中間的な味わいがします

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

南アフリカ共和国はアフリカ大陸の最南端にある国で、世界有数のワイン生産国です。

この国のブドウ樹は1650年代にオランダ人によって持ち込まれました。
オランダ東インド会社のヤン・ファン・リーベックという人物が喜望峰に貿易中継基地を築いてケープタウン総領事となり、そのときに持ち込んだブドウからワイン造りが始まったとされています。

その後1680年代にフランスの新教徒ユグノーたちが本国での宗教的迫害を逃れてこの地にやってきて、ワイン造りの技術を持ち込みました。

ブドウ畑はケープタウン周辺のステレンボッシュコンスタンシアといった地域に広がっていきました。

ちなみに18世紀末から19世紀にかけて、コンスタンシアでミュスカ種から造られた甘口ワインがヨーロッパの王侯貴族の間でもてはやされ、マデイラやソーテルヌとともに人気だったそうです。

南アフリカが品質を意識したワイン造りに取り組み始めたのは1980年代になってからで、
そのワインが国際市場に登場するのは、アパルトヘイト(人種隔離)政策全廃後の1990年代以降のことです。

今日では南アフリカのワイン生産量は世界のトップ10に入ります。
南アフリカのワインのほとんどは、喜望峰周辺のコースタル・リージョン(沿岸地域)と呼ばれるエリアからやってきます。

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南アフリカでは伝統的に大規模な生産者がワイン産業を支配していました(今でもその名残は残っています)。

20世紀の南アフリカのワイン産業において決定的に重要な役割を果たしたのが、1918年設立のKWVという巨大な組合組織です。

KWVは現地のアフリカーンス語で Koöperatieve Wijnbouwers Vereniging van Suid-Afrika (南アフリカワイン醸造者協同組合連合)の略です。
(オランダ語に似たスペルですが、これはアフリカーンス語がオランダ語から派生した言語だからです。)

KWVは1990年代前半まで国のワイン産業を実質的に支配しており、生産者別の生産量の割り当て、最低取引価格などを一元的に決めていました。

KWVの管理によって、もっぱら量的供給の面では国のワイン産業は安定しましたが、
独自に高品質なワインを造りたい生産者にとっては、KWVは目の上のたんこぶ的な存在でした。

その後、上述のようにアパルトヘイト政策が撤廃されて輸出への扉が開かれると、海外市場をターゲットとした高品質ワインに注力する生産者が増えていきました。

そのような流れの中でKWVも歴史的役割を終え、1997年に協同組合から会社へと組織変更され、2004年までに完全に私企業化されました。

ぼくは1990年代半ばに仕事の関係でオランダに2年ほど住んでいたことがあります。
アムステルダムのワインショップでは当時から南アのワインを見かけましたが、ほとんどがKWVでした。。

南アフリカは一般に新世界(ニューワールド)の産地として括られていますが、そのワインを実際に飲んでみると、ヨーロッパのワインを想起させるところがあります。

たとえば南アフリカのカベルネ・ソーヴィニヨンは、完全にではありませんがフランスのワインと少々似たところがあります。
逆に言うと、カリフォルニアやオーストラリアのワインにそれほどは似ていません。

南アフリカのワインは、フランスワインのような繊細さも持ちつつ、アメリカやオーストラリアのワインのような肉感のようなものも兼ね備えています。
大まかに言えば、ヨーロッパと新世界の中間的な性格を持ったワインといえると思います。

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アルゼンチンの最重要ブドウ品種はマルベック ~ 昔はボルドーでも広く栽培されていましたがフィロキセラの被害を受け、いまはメンドーサで才能を開花させています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

アルゼンチンで最も栽培面積の大きいブドウはマルベックです。

このマルベック、19世紀の前半まではフランスのボルドー地方でも広く栽培されていました。
しかし自然の禍(わざわい)により、ボルドーのマルベックの大半が消え去る運命となってしまいました。

最初の禍は1860年代にフランスを襲ったフィロキセラ
Phylloxera による被害で、これにより実質的にほぼすべてのブドウ樹がダメになってしまいました。

フィロキセラは体長1mmほどのアブラムシの一種で、ブドウ樹の根や葉に寄生する恐怖の害虫です。
アメリカ大陸から輸入したブドウの苗木に付着してフランスに入ってきたとされ、10年あまりの間にフランス全土に蔓延し、さらにはスペイン、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、イタリアにまで広がりヨーロッパ各地のブドウ樹に甚大な被害をもたらしました。

フィロキセラ禍をうけてブドウ樹を植え替えたとき、ボルドーの生産者の多くはマルベックの代わりにカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを植えました。
マルベックが完熟するには十分な日照量と温暖さを必要としますが、ボルドー地方はそのような気候条件が常に得られる土地ではないからです。

この土地では、気候のよくない年にはマルベックは病気になりがちで、とくに霜に対する弱さがありました。
実際1956年にボルドーが霜の被害を受けたとき、マルベックの収穫全体のうち4分の3がやられてしまったそうです。
それ以降はボルドーでマルベックを育てる生産者はますます少なくなりました。

(皮肉なことに、いま隣国チリで頑張っているカルメネー
もマルベックと似たような運命を辿ってきています。カルメネーレはボルドーの気候条件下で育てるにはやや晩熟すぎるのです。)

なおフランスでは、南西地方のカオール Cahors においてマルベックはいまでも重要なブドウ品種です。
とても色調が濃く、タンニンのしっかりとしたフルボディの赤ワインです。

【関連記事】フランス南西地方は郷土色あふれる個性的なワインの宝庫です ~ 力強い赤ワインのカオール、マディラン、甘口白ワインのモンバジャック、ジュランソンが有名です

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 ▲カイケン・ウルトラ・マルベックはチリの生産者モンテスがメンドーサで手がけるワイン

いっぽう、19世紀半ばにアルゼンチンに持ち込まれたマルベックは、メンドーサ地域においてその才能を開花させました。
メンドーサの温暖で乾燥した気候がマルベックにピッタリとはまったのでしょう。
アルゼンチンの生産者だけでなく、外国からもこの地でマルベックを手がける生産者がいます。

今日では、マルベックの栽培面積はメンドーサ地方が世界中の産地で最大で、アルゼンチンで最も重要なブドウ品種となっています。
ルハン・デ・クージョやアンデスのふもと(標高1500m級の産地もある)などの地域でも、おいしいマルベックが産み出されています。

アルゼンチンのマルベックは色調が濃厚で果実味の豊かな赤ワインになります。
フランスのカオールのワインほどはタンニンが強く感じられず、より若飲みのできるスタイルが一般的です。

機会があれば、アルゼンチンのマルベックとカオールのマルベック、同時に並べて飲んでみたいですね!

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ぼくはアルゼンチンの白ワインといえばアロマティックなトロンテスを真っ先に思い浮かべます ~ 南部の冷涼なパタゴニア地方も今後注目したい産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

サン・ファン州 San Juan はメンドーサ州の北にある温暖な地域で、アルゼンチン第2のワイン産地です。
またラ・リオハ州 La Rioja はアルゼンチンでは歴史の古いワイン産地のひとつで、サン・ファンの東から北にあります。

サン・ファンとラ・リオハではトロンテスという白ブドウがよく知られています。

トロンテスは、トロンテス・リオハーノやトロンテス・サンファニーノなどいくつかのブドウ品種の総称で、いずれもマスカット・オブ・アレキサンドリアというギリシャ原産の品種を遺伝的な親に持っています。

ぼくはアルゼンチンの白ワインといえば、まっ先にこのトロンテスを思い出します。
以前いたワインショップ&バーではトロンテスの白ワインをランチタイムのグラスワインとしてよく出していました。

1本千円台のリーズナブルなワインですが、さわやかで酸味が心地よく、リースリングを思わせる芳香のある比較的アロマティックな品種で、お客さまから人気がありました。
とくに前菜や魚介類などの料理にはピッタリです。

日本では
まだそれほどメジャーではありませんが、このアルゼンチンのトロンテス、これからもっと人気が出てくるのではないかと期待しています。

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 ▲パタゴニア地方で造られる、ボデガ・チャクラのアモール・セコ

アルゼンチンで新しいワイン産地は、南部にあるパタゴニア地方 Patagonia です。
リオ・ネグロ州 Rio Negro、ネウケン州 Neuquenなどが含まれます。

アルゼンチンの中でも南に離れたこの産地は冷涼で乾燥した気候を持ち、ピノ・ノワール、シャルドネ、スパークリングワインの好適地として徐々に知られるようになってきました。

パタゴニアに関しては、ぼくは個人的にとても気に入っているメルローのワインがあります。
イタリアのスーパートスカーナワインの雄サッシカイアのオーナーファミリーが、アルゼンチンで立ち上げたボデガ・チャクラ Bodega Chacra というワイナリーが、パタゴニアの地で造るアモール・セコ Amor Seco というワインです。

1本2800円ほどのワインですが、非常にエレガントで、何というかダシのような味わいのあるメルローです。
これまで2ダース以上は飲んでいるのではないでしょうか(笑)。

総じて言えば、アルゼンチンのワインは白よりは赤のほうが、いろいろと面白いワインがあるように思います。
マルベックはこの国の代表品種ですが、19世紀前半まではフランスのボルドー地方でも広く栽培されていた品種です(フランスでは南西地方のカオールなどで現在でも使用されています)。
ボナルダも同様にフランス原産とされる品種で、この国ではカベルネ・ソーヴィニヨンよりも広い栽培面積を誇ります。

マルベックはメンドーサのテロワールに、とくによく適合することのできた品種です。
アルゼンチンの赤ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンとマルベックのどちらが優れているかは議論のあるところですが、カベルネ・ソーヴィニヨンが他の新世界の国々でも広く造られていることを考えれば、少なくともマーケティング的にアルゼンチンの赤ワインを印象付けている品種はマルベックということになるのでしょうね。

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「ピノ・ノワール産地別飲み比べセミナー」を開催しました!~ お気楽ワインセミナー

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

10月8日(日)の午後、お気楽ワインセミナー「ピノ・ノワール産地別飲み比べ」を開催しました!

5種類のピノ・ノワールをテイスティングしながら、産地ごとの特徴を体感し、ピノ・ノワールの魅力について語り合うセミナーです。

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10月に入って肌寒い日が増え、すっかり秋めいてきましたが、
本日の東京・新宿の昼下がりは気温26℃。

少々汗ばむ陽気のなか、和風スペース「新宿ゆるり庵」に、ピノ・ノワール好きな人やピノ・ノワールに興味のある人が集まってくださいました。

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ざっとピノ・ノワールの基本を学習したあと、まずはニュージーランドのピノ・ノワールで乾杯しました。

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ニュージーランド、チリ、カリフォルニアとテイスティングを進めながら、色合いや香り、味わいの印象などを意見交換しています。

ライトボディでジューシーなニュージーランドのシレーニ、
果実味も樽香も力強いチリのモンテスに続くカリフォルニアは、
サンタバーバラのオー・ボン・クリマ・・・アメリカらしく果実味はハッキリしていますが樽香がそれほど主張しない、やや上品なスタイルのピノ・ノワールです。

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だんだん真剣になってきました(笑) 


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ソムリエール犬飼雅恵の「こっそりトーク」コーナー。

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今日のゲストは男性多数だったこともあり、
女性の視点からみたピノ・ノワールの魅力について話しました。

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ゲストの方からの面白いツッコミで、場が盛り上がっています ^^

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何だか だんだん脱線してきたような・・・(汗)

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マジメモードに戻ります ^^;
ワインはドイツ、ブルゴーニュへと進んでいます。

ドイツは同国最南端の産地バーデンのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)、
ブルゴーニュはモレ・サン・ドニ村の村名ワインです。

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モレ・サン・ドニは
心地よい酸味とエレガントな果実味で、ブルゴーニュ村名ワインのお手本のような味わいでした。

今日ゲストの皆さんから好評だったのは、ドイツのバーデン地方のシュペートブルグンダー。
想像していたより色調が濃く、果実味もボディもシッカリしていることに驚かれたようです。


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5種類のワインをひと通りテイスティングしたあとは、みんなでフリートーク。
どのタイプのピノ・ノワールが好きか、どういうところが好きかなど、思い思いに語り合いました。

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最後までトークが盛り上がり、あっという間の2時間でした。

ぼくたちバイザグラスのお気楽ワインセミナーは、
"気楽にワインを学ぼう!"
"気軽にワインを楽しもう!"
をコンセプトに、毎月2~3回のペースで実施しています。

次回は10月21日(土)に
南ヨーロッパの土着品種ワインを味わう」セミナー
を開催します。

お1人でも気軽にご参加頂ける、とてもアットホームなワインセミナーです。
ご興味のある方、ぜひご参加くださいね!

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アルゼンチンは南米最大のワイン生産量を誇り、世界でも第5位です ~ メンドーサがアルゼンチン最大のワイン産地で、 ブドウ畑の大部分はメンドーサ州にあります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

アルゼンチンは南アメリカで最大のワイン生産量を誇ります。
世界でも第5位です。

ワインの生産量の点では、アルゼンチンは昔からずっと主要なワイン生産国でした。
しかしアルゼンチンワインが国外で成功するようになったのは、21世紀に入ってからのことです。

世界でのアルゼンチンワインの成功はあまりに急速で、非常に華々しいものがあります。
いまやアルゼンチンは、世界のワイン市場における主要プレイヤーであり、とくに変化が激しく面白いワイン生産国のひとつとなっています。

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チリと同様、アルゼンチンでは16世紀の半ばからブドウが育てられてきました。

アルゼンチンに植えられているブドウ樹の原産地はいろいろですが、その多くは大量のイタリア移民とバスク移民が持ち込んだものです。
結果としてアルゼンチンは、ボナルダ(イタリア原産とされていたが、実はフランス原産のコルボーと同一品種であることが科学的に判明)やマルベック(フランス南西部原産)などのような、隣国チリでは見かけないブドウが自慢となっています。

アルゼンチンのワイン産地は主に国土の西側に位置しています。
そこは地理的にはアンデス山脈がアルゼンチンとチリを分かつ場所で、
太平洋からの湿った風がチリを超えアルゼンチンに入ると乾燥した風になります。

その風はゾンダ Zonda と呼ばれる暖かい風ですが、平均900mの高い標高が暑さを和らげ、ブドウ畑をとりまく気候は日中は暖かく、夜は涼しく、砂漠のように乾燥しています。
アルゼンチンは降雨量の少ない産地ですが、アンデス山脈から産地中を流れる川が灌漑用の水を供給してくれます。

アルゼンチンのブドウ畑の大部分はメンドーサ Mendoza にあります。
メンドーサ州はアルゼンチン最大のワイン産地で、おおむねチリの首都サンティアゴと同緯度にあります。

メンドーサ州の中にもいろいろなワイン生産地域があり、
マイプ Maipu、ルハン・デ・クージョ Luján de Cuyo、サン・ラファエル San Rafael などといった名前がしばしばラベルに表記されています。

ワイン生産者はこうした地区ごとの区別をアピールしようとしていますが、正直ぼくにとってはどれもメンドーサのワインであり、地区による差異はあまり感じられません。。

いずれにせよ、アルゼンチンの有力なワイナリーやブドウ畑の多くはメンドーサ市の周辺に散らばっています。
それだけ、アルゼンチンワインといえば「メンドーサ」が最重要キーワードだということなんですね。

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チリワインは価格がリーズナブルなわりに品質が良いのがうれしい特徴ですが、パワフルでけっこう値の張るスーパープレミアムチリワインもあるんです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

チリのワイン生産者たちが冷涼な地域でブドウを育てるようになる前は、チリワインのスタイルはどれも似かよったものだったそうです。

およそ一般に言えば、カリフォルニアやオーストラリアのワインほどは果実味が豊富ではなく、それでいてヨーロッパのワインのような繊細さや趣きもないワインでした。
たしかに今でも、チリの暖かい産地でできた低価格帯の赤ワインを飲むと、それは当てはまるように思います。。

しかし現在では、チリの冷涼な地域で造られたワインがたくさんあり、全般に品質が良くなっています。
カサブランカ・ヴァレーやサン・アントニオ・ヴァレーのような冷涼な産地で造られた、果実味豊かなソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールなども容易に見つけることができます。

チリのソーヴィニヨン・ブランは樽熟成をしないものがほとんどです。
シャルドネはたいてい樽熟成します。
赤ワインは日常飲みタイプのものから選りすぐりの熟成可能な高級ワインまで、幅広く存在します。

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 ▲モンテス・アルファ・エムの木箱

他の新世界のワインと同様に、チリワインの名前はブドウ品種の名前で呼ばれるのがふつうです。

チリワインは価格がリーズナブルなわりに品質が良いのが特徴です。
とくに日本では、チリワインは本当にコストパフォーマンスに優れています。

2007年に締結された日本とチリの2国間経済連携協定により、現在チリワインにかかる輸入関税は他国のワインにかかる関税より、ボトル1本につき約60円低いのです!

チリのワイナリーは値段(もちろん品質)に応じて何段階かのレベルのワインを造っています。
ベーシックな普段飲み用のワインから、高品質なもの、そしてスーパープレミアムクラスまで。
スーパープレミアムの赤ワインは大抵5,000円から10,000円くらいはします。

こうした最高級のチリワインは、いくつかの品種をブレンドし、国際的にウケるような力強いスタイルで造られることが多いです。
熟度の非常に高いブドウを使い、果実味が非常に豊富でコクがあり、高いアルコール(たいてい14%以上)でフレンチオークで熟成するスタイルです。

よく知られるプレミアムクラスのチリワインには、次のようなものがあります。

・ コンチャイトロ Concha y Toro のドン・メルチョー Don Melchor
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン(1本8千円くらい)

・ エラスリス Errázuriz のドン・マキシミアーノ・ファウンダーズ・レゼルヴ Don Maximiano Founder's Reserve
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン主体(1本9千円くらい)

・ モンテス Montes の モンテス・アルファ・エム Montes Alpha M
 ・・・ボルドーブレンド(1本1万円くらい)

・ アルマヴィーヴァ Almaviva
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン主体、カルメネーレ、カベルネ・フランなどをブレンド(1本1万5千円くらい)

上記とややタイプは異なりますが、

コノスル・オシオ Cono Sur OCIO もコノスル Cono Sur の最高級ブランドで、100%ピノ・ノワールで造られるブルゴーニュ・スタイルのワインです(1本6千円強)

プレミアムチリワイン、ぼくも
何度か飲んだことがあります。
どれも非常にボリューム感のある力強い赤ワインです。
個人的には、コノスル・オシオがブルゴーニュのヴォーヌ・ロマネのワインみたいなニュアンスを出そうしているのが伝わってきて、わりと好きです。

高価なチリワインもあるのですねー。
お財布に余裕があるときに、ちょっと試してみてはいかがでしょうか?

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チリの原産地呼称はD.O.~ 高品質ワインはD.O. アコンカグアとD.O. セントラル・ヴァレーのある中央部に集中、2011年からコスタ(海側)、アンデス(山側)の付記も可能です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

チリのワイン法や原産地呼称制度についても簡単に触れておきましょう。

まずラベル表示規制についてですが、

①単一品種ワインして「品種名」を表示するには、75%以上その品種を使用する必要があります。
「産地名」を表示するには、75%以上その産地のブドウを使用する必要があります。
「収穫年(ヴィンテージ)」を表示するには、75%以上その年のブドウを使用する必要があります。

つまり、①②③いずれの場合も「75%以上」使用することがポイントです。
ただし、輸出向けワインの場合は①②③とも「85%以上」となります。

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 ▲Aconcagua Coast は2012年に新設の
D.O.・・・Coast が「コスタ」に相当

チリのワイン法では原産地呼称を D.O. (Denominación de Origen)といいます。
産地名の前に D.O. をつけて呼びます。
(例)D.O. Maipo Valley

チリの原産地呼称制度の下では、ほとんどの産地が数少ない広域D.O.に括られ、
それぞれの広域D.O. の中にサブリージョンとして個々の産地名D.O. が含まれる形となっています。

広域 D.O. は北から順に、
①D.O. アタカマ Atacama、
D.O. コキンボ Coquimbo
D.O. アコンカグア Aconcagua
D.O. セントラル・ヴァレー Central Valley
⑤D.O. スール Sur で、
2011年に新たに ⑥D.O. アウストラル Austral ができました。

主なところを見ますと・・・

D.O. コキンボ Coquimbo のサブリージョンとして
・D.O. エルキ・ヴァレー Elqui Valley
・D.O. リマリ・ヴァレー Limarí Valley など

D.O. アコンカグア Aconcagua のサブリージョンとして
・D.O. アコンカグア・ヴァレー Aconcagua Valley
・D.O. カサブランカ・ヴァレー Casablanca Calley
・D.O. サン・アントニオ・ヴァレー San Antonio Valley など

D.O. セントラル・ヴァレー Central Valley のサブリージョンとして
・D.O. マイポ・ヴァレー Maipo Valley
・D.O. ラペル・ヴァレー Rapel Valley
 → ラペル・ヴァレーのサブゾーンとして、
  - D.O. カチャポアル・ヴァレー Cachappoal Valley
  - D.O. コルチャグア・ヴァレー Colchagua Valley
・D.O. クリコ・ヴァレー Curicó Valley
・D.O. マウレ・ヴァレー Maule Valley など

・・・といった具合になっています。

チリ全体で見ると、チリのブドウ栽培地域は大きく北部、中央部、南部の3つに分けられますが、
高品質なワインが造られる産地は D.O. アコンカグア と D.O. セントラル・ヴァレーのある中央部に集中しています。

なお、2011年より従来の原産地呼称表記に付記する形で、海側・平地・山脈側という二次的な産地表示ができるようになりました。

コスタ Costa(海側)
 ・・・海岸に面した畑。冷涼でソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワールに向きます。

エントレ・コルディリェラス Entre Cordilleras(平地)
・・・海岸山脈とアンデス山脈の間の平地部分にある畑です。

アンデス Andes(山脈側)
・・・アンデス山脈側の斜面にある畑。海沿いより温暖で、凝縮した高品質のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カルメネーレなどに向いています。

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チリ南部の主要産地 ~ コルチャグア・ヴァレーにはモンテスなど有力ワイナリーが多数あり、クリコ・ヴァレーはソーヴィニヨン・ブランの栽培面積が国内最大の産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

チリの主なワイン産地を北から南に向かって順に紹介しています。

前回まで、最重要産地であるマイポヴァレーと、それよりも北にある主なワイン産地を見てきました。
今回は、それより南にある産地を見ていきましょう。

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 ▲モンテス・アルファのカベルネ・ソーヴィニヨンはコルチャグア・ヴァレー産


●カチャポアル・ヴァレー Cachappoal Valley

マイポ・ヴァレーの南に位置する広域産地ラペル・ヴァレー Rapel Valley にはサブゾーンが2つあります。
カチャポアル・ヴァレーとコルチャグア・ヴァレー(次項)です。

アンデス山脈側にあるカチャポアル・ヴァレーは赤ワインの産地です。
この産地の土壌や気候は山脈との距離によって異なります。
山から離れた西側はカルメネーレ、山に近いほうはカベルネ・ソーヴィニヨンが主体で、いずれも比較的しっかりした赤ワインを産み出しています。

コルチャグア・ヴァレー Colchagua Valley

コルチャグア・ヴァレーもラペル・ヴァレーのサブゾーンです。
とても多様性に富んだ産地です。
この産地はアンデスの斜面から西の冷涼な海岸に至る様々な地点でブドウ畑が拓かれているからです。

カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カルメネーレ、シラーがとくによく育ちます。
コルチャグア・ヴァレーには有力なワイナリーが多数あり、モンテス Montes もそのひとつです。

クリコ・ヴァレー Curicó Valley

ラペル・ヴァレーの南に隣接する大きな産地で、チリでは最も古い部類に入るワイン産地です。
気候がとても多様なため、赤ワイン用品種と白ワイン用品種のどちらもよく育ちます。

赤ワインではカベルネ・ソーヴィニヨンの古木が多く、白ワインではソーヴィニヨン・ブランの栽培面積が国内最大となっています。
スペインのミゲル・トーレス Miguel Torres がクリコ・ヴァレーに拠点を持っています。

●マウレ・ヴァレー Maule Valley

マウレ・ヴァレーはチリ最大のワイン産地で、主要な産地としてはチリ最南端にあります。
面積が広大で気候が非常に多様なため、赤ワイン用品種と白ワイン用品種のどちらもよく育ちます。
とくにソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローが主体で、一部の地域ではカリニャンも栽培されています。

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チリ北部の主要産地 ~ しっかりした赤ワイン中心の温暖なアコンカグア・ヴァレー、高品質なシャルドネ、ピノ・ノワールのカサブランカ・ヴァレーをまずは覚えておきましょう

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回はチリで最も有名かつ歴史も古いワイン産地、首都サンティアゴ近郊にあるマイポ・ヴァレーについて述べました。
チリのその他の主なワイン産地について、これから北から南に向かって順に見ていくことにしましょう(とくに重要な産地名には下線を付しています)。

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 ▲コノスルの最高級ブランドOCIOはカサブランカ・ヴァレー産のピノ・ノワール


●エルキ・ヴァレー Elqui Valley

チリ北部の大部分をカバーするアタカマ砂漠に近いエルキ・ヴァレーは、東西に長い産地です。
小さく、まだやや発展途上の産地です。
気候は、海沿い側は冷涼多湿でソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールの栽培に適し、内陸側は温暖でカベルネ・ソーヴィニヨンやカルメネーレに向いています。

●リマリ・ヴァレー Limarí Valley

サンティアゴの北西400Kmほど、太平洋の近くにある降雨量の少ない小さな産地です。
太平洋からの涼しい朝霧、そして海風がこの産地全体をを日中ずっと吹きつけています。

コンチャイ・トロなど大手ワイナリー数社が目をつけて近年、土地を購入しています。
石灰質の多く含まれる土壌で、これまでのところソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネなどが成功してきており、チリでは今後期待の注目されそうな産地となっています。

アコンカグア・ヴァレー Aconcagua Valley

サンティアゴの北にあるアコンカグア・ヴァレーは アメリカ大陸の最高峰アコンカグア山から名づけられました。
アンデス山脈のふもとから海に向かって流れるアコンカグア川沿いの平地で、全体としてはかなり気温の高いエリアですが、標高が高くやや冷涼なエリアも多く含んでいます。

日照量が多く、曇りの日が少なく年間240~300日は晴れで、ブドウの成熟には最適な気候です。
カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーなどのしっかりした赤ワインが中心の産地です。

1870年創立のヴィーニャ・エラスリス Viña Errázuriz がアコンカグアでもっとも主要なワイナリーです。

カサブランカ・ヴァレー Casablanca Calley

カサブランカ・ヴァレーは1990年代にチリで初めて海沿いに開拓されたワイン産地です。
チリで初めて開拓された冷涼なブドウ畑だともいえます。

海岸山脈の西側に位置し太平洋に近く、冷涼な海風の影響を受けて気温が下がります。
その冷涼な気候のため白ワインの生産が多くチリで最高クラスのシャルドネやソーヴィニヨン・ブランが育てられています。

少し標高の高い場所では高品質のピノ・ノワールやメルローもあります。
チリ中のワイン生産者が多かれ少なかれカサブランカ・ヴァレーにブドウ畑を持っています。
シャルドネやピノ・ノワールの高品質なワインが生まれる産地です。

サン・アントニオ・ヴァレー San Antonio Valley

ここもカサブランカ・ヴァレーと同じく海岸山脈の西側にあり、冷涼な海風が直接吹き付けるエリアです。
カサブランカ・ヴァレーの南に位置し、1990年代後半から本格的に開発された新しい産地で、
おそらくチリで今最も注目されている新しいワイン産地です。

冷涼な気候を生かし、さわやかでミネラル感の豊富なソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ、繊細なピノ・ノワールなどが造られています。
サブ・ゾーンとしてレイダ・ヴァレー Leyda Valley という産地も含んでおり、そこで造られたワインにはラベルに Leyda Valley とだけ書かれています。

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以上が首都サンティアゴまたはマイポ・ヴァレーよりも北にある主なワイン産地です。
次回は、それより南にある産地について述べたいと思います。

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チリのブドウ畑の多くはセントラル・ヴァレーにあります ~ マイポ・ヴァレーは古くから拓かれ今でも名高い産地で、半分以上がカベルネ・ソーヴィニヨンです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

細長いチリの中央部、太平洋沿岸側とアンデス山脈側の間に位置する
セントラル・ヴァレー Central Valley
は広大な産地です。
チリのブドウ栽培はこのセントラル・ヴァレーで始まりました。

他の国々と同様に、チリのワイン生産者も一番はじめは、ブドウがいかにも実り豊かに育ちそうな最もわかりやすい場所にブドウ畑を拓きました。

そして長い間に経験が蓄積されると、一見ブドウなど育たなそうだけど実は好立地、というような場所をだんだん発見するようになりました。

そういう土地はたいてい冷涼で、丘の上にあったりして、あまりアクセスは良くない場所です。
しかし、そういう土地がチリの生産者たちに、個性のあるワインを造るきっかけを与えてくれたのでした。

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ブドウ栽培に理想的な場所だと最初に認識されたのはセントラル・ヴァレーの北部にある
マイポ・ヴァレー Maipo Valley  です。
マイポ・ヴァレーは今でも卓越したワインの産地であり、チリで最も名声が確立したワイン産地です。

マイポ・ヴァレー は、チリの最大都市かつ首都であるサンティアゴを取り巻くように広がっており、
コンチャイトロ Concha y Toro やアルマヴィーヴァ Almaviva など、この国の有力生産者の多くがマイポ・ヴァレーに本拠を置いています。

温暖で穏やかな気候を持つマイポ・ヴァレーではカベルネ・ソーヴィニヨンが王様で、この地の栽培面積の半分以上を占めています。
また、メルローも力を発揮しています。

現在にいたるも、チリのブドウ畑のほとんどはセントラル・ヴァレーにあります。
しかし今では、たった10年前には誰も聞いたことのなかったような地域にもブドウ畑が存在するようになっています。

そうした様々な産地について、次回以降書いていきたいと思います。

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チリのワインはいまや日本で輸入量が最も多いワインです ~ チリの地理的隔離性は害虫フィロキセラの侵入を防ぐなど、ブドウ栽培において大きなアドバンテージとなりました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

チリ産のワインは、いまや日本で輸入量が最も多いワインです。
財務省の貿易統計(通関ベース)によると、2016年のワイン輸入量でチリ産が2年連続1位となっています。

1990年代には国内輸入ワイン市場でシェアが1%未満だったチリワイン。
それが現在では、日本のワイン輸入量で長年1位・2位を独占してきたイタリア産・フランス産を抑えて堂々1位となっているのです。

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チリのワインは一般的に「新世界」ワインに括られます。
しかしチリのワイン生産者たちは、「新世界」などと呼ばれることを、本心では不本意に思っているはずです。

スペインからの植民者たちがチリに最初にブドウ畑を拓いたのは、16世紀半ばに遡ります。
以来この国は、チリ国内向けに何世紀にもわたってワイン産業の繁栄を維持してきたのです。

だから、彼らにとっては「新」しいことなど何もないのです。 

とはいえ、外国のワイン愛好家にとってはチリワインはやはり「新」しいのです。

1980年半ば頃からの輸出市場におけるチリワインの成長はきわめて急速でした。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネといったフランス品種の採用と成功も、あっという間の出来事だったといえます。

また、ほとんど忘れ去られていたボルドー品種であるカルメネーレもチリでは明らかに成功しており、いまではチリの土着品種的な扱いさえされています。

一方、チリワインにはさらに新たな姿も生まれています。

チリでは伝統的なエリアから周縁エリアに産地が
どんどん拡大しており、
新しい産地ではフレッシュでさわやかなタイプの白ワインや、これまで以上にパワフルな赤ワインなど、従来チリにはなかったスタイルのワインも出現してきているのです。

西側に太平洋、東側にアンデス山脈を頂くチリは、地理的にはかなり隔離された土地です。
こうした地理的隔離性は、ブドウ栽培においては大きなアドバンテージとなりました。

根に寄生してブドウの樹をダメにしてしまう害虫フィロキセラはヨーロッパをはじめ多くのワイン生産国を苦しめましたが、チリはフィロキセラから守られた土地なのです。

そのため他の多くのワイン生産国とは異なり、チリのブドウの樹はいまでも自分の根で育つことができます(ヨーロッパでは自根は珍しく、ほとんどが接木しています)。

ブドウ栽培の点でチリがさらに恵まれている点は、国土が長距離にわたって太平洋に面しているおかげで比較的暑い気候が和らげられることと、海岸沿いの山々が海の湿気を遮断し多くのブドウ畑を守ってくれることです。

チリでは赤ワイン用の黒ブドウが約7割を占め、カベルネ・ソーヴィニヨンが黒ブドウの約半分を占めています。
次いでメルロー、カルメネーレが主力です。

白ブドウではシャルドネとソーヴィニヨン・ブランがほぼ同じくらいの重要品種となっています。

次回から何回かに分けて、チリのワインと産地について述べていきたいと思います。

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