早稲田ワインアカデミー

ワインに興味はあるけれど、ワインって何だかムズカシそう・・・
ワインを楽しむのに必ずしも知識は要りません。
でもワインの基本を知ると、ワインがもっと楽しくなります。
ブログ「早稲田ワインアカデミー」は、ワイン初心者の方にもワインをよく飲む方にも
気軽にお読みいただける、オンライン・ワイン教室です。

​バイザグラスの初拠点となる【神楽坂ワインハウス by the glass】
2018年11月にオープンしました!
神楽坂ワインハウス バイザグラス
https://www.bytheglass.jp/

「バイザグラスのセレクトワインと美味しい料理を楽しむ夕べ」を開催しました!~ お気楽ワインセミナー

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

11月29日の水曜日の夜、お気楽ワインセミナー「バイザグラスのセレクトワインと美味しい料理を楽しむ夕べ」を開催しました。

東京・日本橋にあるVASHON日本橋兜町で、ぼくたちバイザグラスが毎月開催しているお食事付きのワインセミナーです。

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今回は「マイナー品種が面白い!」をテーマに、ちょっぴり変わった品種のワインを中心にセレクトしました。

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まずはポルトガルの白ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデで乾杯!
ロウレイロというブドウ品種を主体に造られる、微発泡を伴うとても爽やかなワインです。

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ヴィーニョ・ヴェルデは直訳すると「緑のワイン」。
その名のように若々しく緑がかった色調のフレッシュなワインですが、
実はヴィーニョ・ヴェルデという名前自体はポルトガル北西部のワイン産地の名称で、そこでは赤ワインも造られています。

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前菜が出てきました。
ズワイガニを使ったクラブケーキのサラダ添え、オーロラとタルタルの2種類のソースです。

アツアツで美味しいです。
ズワイガニの身がしっかりとしていて、かなり贅沢で歯ごたえがあります。

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自己紹介を兼ねた出身地(都道府県)あてクイズなどで、ゲストの皆さん同士も徐々に打ち解け合っていきます。

東京、神奈川、京都、大阪、茨城、千葉・・・なるほど、今回は関東と関西の方々だけだったようですね ^^

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さらに南アフリカのシュナン・ブランを合わせてみました。
果実と酸味がしっかりしており、アルコール度数も14度。
厚みとコクのある、骨格のしっかりした白ワインです。

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ワインの説明の時間もあります。
今回の南アのシュナン・ブランはシュール・リー製法で造られているので、そのメカニズムやそこから生まれる複雑な香りの特徴などをお話しました。

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11月といえば、新酒(ヌーボー)の季節でもありますね!
ゲストの方が提供してくださったボージョレー・ヌーボー(左)と、
イタリアの新酒ノヴェッロ(右)を余興で楽しみました ^^

どちらも果実味主体のフレッシュな味わい。
ちなみに今年のボージョレー・ヌーボー、とてもイイですね。

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2皿めは鴨胸肉とアンデスポテトのロースト、エピスを効かせた赤ワインソースです。
この胸肉とてもジューシーで、赤ワインソースがまた絶妙な味わいです。

フランス・ロワール地方のシノンを合わせてみました。
少し熟成したカベルネ・フランの赤ワインで、やや田舎の風味がする柔らかな
口当たりのワインです。

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美味しい料理とワインとのマリアージュで、会話も弾んでいますね。
主催者のぼくたちにとって、とても嬉しい情景です。

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ワインという共通の趣味・テーマで、年齢や性別を超えて一緒に楽しむことができる・・・本当に素晴らしいことだと思います。

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​ギリシャのマケドニア地方ナウサの赤ワインに合わせて、
3皿めは牛肉のギリシャ風ケフテデスの煮込み、焼きハルミチーズ添えです。

クシノマヴロはギリシャを代表する高貴なブドウ品種で、力強いタンニンとともに、ドライフルーツを思わせる果実味と、引き締まった酸味を持ちます。
どことなくバローロ(ネッビオーロ)を想起させる味わいです。

ケフテデスは、わかりやすく言えばギリシャ風の肉団子。
ハルミチーズはギリシャ、キプロスなど地中海東部で食べられている、ヤギ・羊の少々塩味のあるチーズです。

とてもエキゾチックな美味しさの料理です!
この非常に個性的な味わいのギリシャ風料理に、クシノマヴロのスパイシーさを伴う複雑な風味がよく合いました。

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ゲストの皆さん同士、もうすっかり打ち解けていますね ^^
楽しい夜はまだまだ続きます。

VASHONでのお料理つきのワインセミナー、ほぼ毎月開催しています。
次回は来年1月中旬を予定しています。

ご興味のある方、ぜひご参加くださいね!

ぼくたちバイザグラスのワインセミナー情報は、こちらのページで随時アップデートしています。
https://www.bytheglass.jp/seminars

お会いできることを楽しみにしています。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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シャンパーニュなどの伝統方式でとくに重要な工程がアッサンブラージュ ~ 百種以上のワインを調合して最良のベースワインを編み出す非常に難易度の高い作業です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

シャンパーニュ造りで行われている伝統方式は、実際には瓶内二次発酵の前にいくつかの工程があります。

たとえば、果汁を得るためにブドウの実を圧搾する工程は、非常にていねいに注意深く行う必要があります。
果皮由来の苦味が出たり、黒ブドウの場合は果皮の色が混じったりするのを防ぐためです。

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 ▲アッサンブラージュ

もうひとつ、品質面で決定的に重要な役割を果たす工程は、二次発酵させるベースワインをつくるために様々なワインをブレンドすることです。
これはアッサンブラージュ assemblage という工程で、造ろうとするシャンパーニュのベースワインとして最も良い調合を編み出す、とても難易度の高い作業です。

シャンパーニュハウス(シャンパーニュ製造業者)は、異なるブドウ品種、異なるブドウ畑から造った何百種類ものワインを準備しています。 
最良のベースワインを創り出すために これらのワインを様々な比率で調合して検証します。

このとき、リザーヴワイン(わざと残しておいた過去のヴィンテージのワイン)を加えたりもします。
ひとつのベースワインをつくるために100種類以上の異なるワインが用いられることも珍しくありません。
それぞれのワインが持つ特徴が複雑に重なり合って、ベースワインに独特の性格をもたらすのです。

このアッサンブラージュの工程がとりわけ難しいのは、未来に焦点をあてて作業を行わなければならないことです。
「いま味わう」ためのブレンドではなく 「数年後それがスパークリングワインとしてどのような味わいになるか」を想定しながら調合する必要があるのです。
アッサンブラージュを巧みに行う技術者は、まさにワイン界の芸術家だといえるのではないでしょうか。

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 ▲アッサンブラージュの作業

さて、シャルマ方式と伝統方式の味わいの違いについて触れておきましょう。

シャルマ方式で造られたスパークリングワインは伝統方式のものよりも果実味が前面に出やすいです。
シャルマ方式のように大型タンクで二次発酵を行う製法のほうが、ブドウがワインになるまでの道のりが、瓶内二次発酵の場合よりも短いからです。

そうした違いを熟知した上で、フレッシュ&フルーティなスパークリングワインを造るために、あえてシャルマ方式を使っている場合もあります。
イタリアのアスティやプロセッコなどのスパークリングワインはその好例です。

シャルマ方式で造られるスパークリングワインは熟成させるよりも、果実味がよく出ている若いうちに飲んだほうが美味しいでしょう。

いっぽう伝統方式すなわち瓶内二次発酵方式は、シャルマ方式ほどには果実味を強調しないスパークリングワインとなります。
ワインがオリと接触しながら発酵することから生じる化学的変化によって果実味は相対的に減少し、そのかわりにトースト、ナッツ、イーストのような香りや複雑な風味が醸成されます。

口当たりもシャルマ方式のものと比べると、なめらかでクリーミーなニュアンスとなります。
泡はより微小となり、口中でもシャルマ方式のスパークリングワインほどには炭酸っぽさを感じなくなります。
伝統方式で造られたスパークリングワイン、とくにシャンパーニュの中には長期熟成も可能なものが多くあります。

シャルマ方式と伝統方式のこうした特徴を意識しながらいろいろなスパークリングワインを飲んでみると、違いが体感できて面白いと思います。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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スパークリングワイン製法の伝統方式は瓶内二次発酵、つまり二次発酵を1本1本の瓶の中で行います ~ シャンパーニュなどに用いられる手間と時間のかかる製法です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回述べたシャルマ方式は、スパークリングワインの造り方としては比較的新しい方法で100年ほどの歴史しかありません。

もっと古くからある伝統的な製法は、二次発酵を1本1本の瓶の中で行うものです。
シャンパーニュは300年以上にわたり、ずっとこの方法で作られてきました。
フランスの規則で、現在もシャンパーニュはこの方法以外で造ることはできません。

シャンパーニュ地方以外で造られるフランスのスパークリングワインの多くも、これと同じ製法を用いてクレマン Crémant と言う呼称を使うことを許されています。
イタリア、スペイン、カリフォルニアなどその他の地方で造られる高品質なスパークリングワインも、たいていこのシャンパーニュと同じく瓶内で二次発酵を行う製法で造られています。

瓶内で二次発酵を行ってスパークリングワインを造る技術は「伝統方式」と呼ばれます。
この瓶内二次発酵は、個々のボトルがそれぞれ独立した発酵容器となるため非常に手間のかかる工程です。

この工程はシャンパーニュの場合、発売前のワイナリーでの熟成期間を含め最低でも15ヶ月、たいていは3年以上の期間を費やします。
シャンパーニュ以外でも、瓶内二次発酵方式で造られる高品質なスパークリングワインは相当な時間をかけているのが普通です。

そのため、一般に伝統方式で製造されたスパークリングワインはシャルマ方式のスパークリングワインよりも高価にならざるを得ません。

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 ▲瓶内二次発酵中のボトルを動かす「ルミュアージュ」の作業


瓶内二次発酵は次のように行われます。

①ボトル1本1本にベースワインを瓶詰めして、蔗糖と酵母の溶液を添加し、王冠を打栓してしっかりと閉じ
ティラージュ Tirage という)、冷暗なセラー室の中で横に寝かせて(瓶口をやや下向きにして)安置します。

②各ボトルの中で二次発酵がゆっくりと生じ、炭酸ガスとオリを発生させていきます。

③セラー室内でボトルが寝かせらている間、オリとワインの継続的な接触により、ワインの口当たりや風味がだんだんと変化していきます。

④二次発酵を開始してから12ヶ月~数年の間、定期的に各ボトルを揺らしたり回したりして傾け、瓶内の側面にたまるオリを瓶口に集めていく作業を行います(動瓶; ルミュアージュ Remage)。

⑤瓶口を超低温で瞬間冷凍し、たまったオリの部分を凍らせてカタマリにし、それを栓を外して飛び出させて除去します(瓶内にはオリのないスパークリングワインだけが残ります)。

⑥各ボトルにリキュール(ワイン+糖分)を添加して、上記⑤による目減り分を補うとともに甘味を調整します(ドサージュ Dosage)。そして各ボトルにコルクを打栓し、販売用にラベルを貼付します。

上記が瓶内二次発酵の流れですが、とても手間のかかる作業であることがわかりますね。
今度シャンパーニュや伝統方式のスパークリングワインを飲む際は、こうした工程を思い浮かべながら楽しむと、より一層おいしく感じられるかもしれませんね!

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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スパークリングワインは2回の発酵を経て造られます ~ 二次発酵を大型タンクの中で行うシャルマ方式と、一本一本瓶の中で行う伝統方式があります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

どんなワインを造る際にも、発酵によって酵母が糖分をアルコールに変化させるとき、自然に生じる副産物として炭酸ガス(二酸化炭素)が発生します。

もし発酵が密閉された容器の中で行われると、炭酸ガスは空気中に逃れることができません。
他に行くところがないので、その炭酸ガスが「泡」という形でワインの中に閉じ込められてしまうわけです。
これがスパークリングワインの泡の正体です。

ほとんどのスパークリングワインは実際には2回の発酵を経て造られています。
ひとつめは、ブドウ果汁を泡のない普通のワイン(「ベースワイン」と呼ばれます)に変化させる発酵です。
ふたつめは、ベースワインを泡のあるワインに変化させる発酵です(一般に「二次発酵」と呼ばれています)。

二次発酵を引き起こさせるために、スパークリングワインの生産者は、ベースワインに酵母と糖分を添加する必要があります。
その添加された酵母が添加された糖分を食べて、再度アルコールと炭酸ガスに分解するわけです。
この酵母と糖分を添加する工程を「ティラージュTirage といいます。

二次発酵から先は、ゆっくりと時間をかければかけるほど、そのスパークリングワインの複雑味は増し、値段も高くなっていきます。
造るのに10年をかけるスパークリングワインもあれば、2~3ヶ月で造られるスパークリングワインもあります。
ゆっくりと時間をかけて造ったスパークリングワインには1本1万円を超えるものもザラにありますが、後者のようなスパークリングワインでしたら、探せば1本500円くらいのものも見つかるでしょう。

スパークリングワインの造り方にはいくつかの方法がありますが、たいていのスパークリングワインは、
(1) 二次発酵を大型タンクの中で行う(シャルマ方式)か、
(2) 二次発酵を1本1本瓶の中で行う伝統方式)か、
どちらかの方法で造られています。

今回は(1)の「二次発酵を大型タンクの中で行う」方式について述べましょう。

最も早く、最も効率的にスパークリングワインを造る方法は、密閉された大きな加圧式タンクの中で
二次発酵を行うことです。
これは、(2)の伝統方式で最も手間のかかる瓶内での二次発酵とその後のオリ抜きの工程を簡素化したもので、低コストでのスパークリングワイン製造が可能な方法です。

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 ▲シャルマ方式の加圧タンク

この工程を推進したフランス人 Eugene Charmat氏の名から一般に「シャルマ方式」と呼ばれます。
英語では bulk method(大量方式)とか tank method(タンク方式)とも呼ばれますが、そのほうがイメージが伝わりやすいかもしれませんね。

シャルマ方式で造られたスパークリングワインは通常、いちばん安価な部類のものとなります。
その理由は、大量生産でき、ブドウ収穫後まもなく販売できるからです。
もうひとつ理由を挙げるとすれば、シャルマ方式のスパークリングワインによく使われるブドウ(シュナン・ブランなど)は通常、伝統方式のスパークリングワインによく使われるピノ・ノワールやシャルドネに比べて原価が安いことが多いからです。

シャルマ方式はおおむね次のような工程となります。

①ベースワインに糖分と酵母が添加し、2次発酵を起こさせます。
密閉され内部が加圧されたタンクと低温のおかげで、発酵により生じた炭酸ガスがワインの中に閉じ込められます。

②上記①の結果として、ベースワインよりも高アルコール度数の辛口スパークリングワインが生まれます。
それを圧力下でフィルターでろ過し、残留した酵母の死骸(オリ)を一気に取り除きます。

③瓶詰めする前に、風味調節のために、造ろうとするスパークリングワインのスタイルに応じて甘味成分が加えられます。

上記①~③までの工程は数週間で終えることができます。
二次発酵後、ろ過するまでの間、数ヶ月くらいかけてワインを休ませる場合もありますが、それはシャルマ方式の場合は例外的といえるでしょう。

次回は(2)伝統方式について説明します。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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良いスパークリングワインを見分けるコツ ~ 泡が微小できめ細かい、スムーズに心地よく口の中で溶けていく、甘味と酸味のバランス・・・などをチェックしてみましょう

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スパークリングワインを味わうとき、いちばん大切な要素は言うまでもなく、自分がそれを好きかどうかです。
その点は通常のワインを飲むときと同じですね。

でも、スパークリングワインをもう少しプロっぽく品定めしたいのでしたら、次に掲げるような基準に照らして判断してみるとよいでしょう。

通常のワインの場合はそれほど重視されないものも含まれていますが、スパークリングワインをテイスティングするときには有用な判断ポイントとなります。

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 ▲良いスパークリングワインはきめ細かな泡がグラスの底から上方へと連続的な流れで立ち上がる


●泡の現れ方

上質なスパークリングワインの泡は微小できめ細かく、グラスの底から上方に向かって連続的な流れで浮上していきます。

もしも泡がブクブク大きくて、断続的で不規則な出方をしているようであれば、そのスパークリングワインの品質がそれほど良くないということを示しているかもしれません。

泡の数があまりにも少ないようであれば、おそらく、①そのボトルはハズレ、②グラスがよくない or 汚れている、③ワインが古すぎる、のいずれかでしょう。

グラスの種類や状態も泡の出方に非常に大きな影響を与えます。

同じボトルから
2つのグラスにスパークリングワインを注いだとき、
片方のグラスにはあまり泡が見られず、もう片方は活き活きと泡を出していたとしたら、
ワインの品質ではなくグラスのほうを疑うべきでしょう。
(もっともこのような場合は、たとえ泡があまり見えなくても、口に入れれば確かに泡はあるはずですけどね。)

●口中での泡の感じられ方

泡がきめ細かいほど、口中で泡を強烈に感じません。
とてもスムーズに心地よく口の中で溶けていくはずです。

逆に、まるでスプライトみたいに "痛い" ほどの泡を感じたとすれば・・・あなたがそのスパークリングワインに500円以上支払わなかったことを祈ります。。

●甘味と酸味のバランス

甘口、辛口には個人ごとの好みもあります。
あるスパークリングワインが自分にとって甘口すぎたり辛口すぎたり感じたとしても、その品質を客観的に評価するには、その甘味と酸味の比率がどのくらいか落ち着いて吟味する必要があります。

自分の好みはいったん脇において、甘味と酸味のバランスが合理的であるかどうか(つまり極端でないか、おかしくないか)を評価しましょう。

●口当たり

シャンパーニュなどのように伝統方式で造られた本格的なスパークリングワインは、ワインがオリに接触した状態で一定の熟成期間をとっているので、いくらかクリーミーな口当たりとなるはずです。

●フィニッシュ(後味)

飲み込んだ後に口中に妙な苦味を感じたら、それは低品質の印かもしれません。

・・・いかがでしょうか。
今度スパークリングワインを飲むときには、ぜひ上記の基準に照らしてチェックしてみましょう。
そのスパークリングワインが良いものかどうか、きっとわかるようになりますよ。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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スパークリングワインは殆どが白かロゼですが赤もあります ~ フレッシュ系、複雑系、辛口から甘口まで多様で、甘味を感じる度合いは残糖量と酸味のバランスで決まります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スパークリングワインには必ず泡があります。
ほとんどが白かロゼです。
赤いスパークリングワインもありますが例外的で、ロゼも白に比べるとかなり少数派です。

スパークリングワインにはスッキリ辛口のものもあれば甘口のものもあります。
それ以外は中辛口であったり、中甘口であったり、ともかく辛口と甘口の間のどこかになります。

そのような甘辛とは別に、スパークリングワインの中にはトーストやナッツのような風味が感じられるタイプのものがあり、逆にとてもフルーティなタイプのものもあります。
後者のタイプの中にも、爽やかだけど風味にそれほど特徴のないものもあれば、レモン、リンゴ、チェリー、白桃などを思わせるデリケートな風味を伴うタイプのものもあります。

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スパークリングワインの造られ方と、その結果として現れる味わいの観点から大まかに分類すると、世界のスパークリングワインは次の2つのスタイルに分けることができるでしょう。

(1) 果実味やフレッシュさを表現したスパークリングワイン 

・・・こうしたスパークリングワインはそれほど重層的な複雑さはなく、フルーティでシンプルなものが多いです。

(2) 複雑さやデリケートな風味を表現したスパークリングワイン

・・・果実味をストレートに表現するのではなく、醸造や熟成の工程から得られる複雑な風味を伴います。こうした風味はイースト香、ビスケット、キャラメル、ナッツ、ハチミツなどのようなニュアンスのものです。シャンパーニュはこちらのスタイルです。

厳密に言えば、ほとんどのスパークリングワインは「完全に」辛口ではありません。
なぜなら、通常のスパークリングワインはどれもごく少量の糖分を含んでいるからです。
この糖分は、製造工程の最終段階で添加されるものです。

だからといって、通常のスパークリングワインはどれも甘い味がするというわけではありません。
甘味の知覚は主に次の2つの要素によって左右されます。
・ 実際にワイン中に含まれている糖分量(ワインのスタイルによって異なる)
・ ワインのもつ酸味と甘味のバランス

スパークリングワインは通常、高い酸味を持っています。
それはなぜかというと、スパークリングワインのブドウはたいてい冷涼な気候で育てられているので、収穫時点の成熟度がそれほど高くないからです。
さらにワイン中の炭酸ガスが口中の酸味の印象を強化します。

しかしワインの甘味がその酸味のシャープさを相対的に和らげる方向に作用し、両者にバランスが働いてきます。
実際の糖分量と、その甘味が酸味のシャープさをどのあたりまで丸めているかによって、そのスパークリングワインは辛口に感じたり、ほんの少し甘く感じたり、中程度に甘く感じたり、とても甘く感じたりするのです。
これぞ、「バランス」という要素がいかに味覚に作用するかという好例だといえます。

スパークリングワインの雄シャンパーニュにも、甘味の度合いにいくつかの種類があります。
いちばん一般的なのはブリュット brut で、いわゆる辛口に相当します。

一般論ですが、安めの価格帯のスパークリングワインには中甘口のものが多いです。
これは少し甘味のある味わいを好むマス・マーケット向けにアピールするためです。
イタリア語でスパークリングを指すスプマンテ spumante も本来は辛口も甘口もあるのですが、廉価なものだと甘口であることが多いですね。
イタリアンレストランで辛口スパークリングワインを飲みたい場合は、ちょっと気をつけたほうが良いでしょう。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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泡のあるワインはスパークリングワイン ~ 一番有名なのはシャンパーニュですが、フランスのシャンパーニュ地方で造られたものだけが名乗ることができます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインの世界地図でスパークリングワインはいわば太陽みたいなもの・・・どこに行っても目にすることができます。
ワインを造っている国はみなスパークリングワインも造っています。

スパークリングワインは味わい、品質レベル、価格帯もピンからキリまで幅広く存在します。
なかでもフランスのシャンパーニュ地方で造られるシャンパーニュは最も輝けるスターだといえるでしょう。

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 ▲KRUGはとても重厚なシャンパーニュ

スパークリングワインが他のワインと違う点は、ワイン中に泡(炭酸ガス)が存在することです。
ほとんどの国のワイン法において、「スパークリングワイン」と公式にみなされるためには、こうした泡はアルコール発酵から生じる自然の副産物でなければなりません。

多くのワイン産地では「スパークリングワインも造っている」というのが普通で、スパークリングワインは通常のワインの付随的な位置づけに過ぎません。
しかし スパークリングワインが主体である産地もあります。

その頂点にあるのが、フランスのシャンパーニュ地方ですね。
そのほかにもイタリアのアスティ、プロセッコ、フランチャコルタなどの生産地域、スペイン北東部のカバの生産地域がそうです。
カリフォルニアにも一部、スパークリングワインが主体である地域が存在します。

一般にスパークリングワインの産地はとても冷涼な気候で、通常のワインを造るにはブドウの成熟度が不十分となりやすい地域が多いです。
こうした地域のブドウで普通にワインを醸造しようとすると、酸がきわめて高く、すっぱくて線の細いものとなりがちで、赤ワインの場合には色も十分に出てきません。

しかしスパークリングワイン造りの特別な工程(シャンパーニュ地方などで実践されている「伝統方式」という製法)が、不利な気候条件をむしろ長所に転換します。
いわば "みにくいアヒルの子" を "美しい白鳥" に変えてしまうのです。

フランスのシャンパーニュがスパークリングワインの雄だといえるのには、いくつかの理由があります。

1) シャンパーニュは世界で最も有名なスパークリングワインである
・・・ワインを飲む人でなくても、「シャンパン」と聞けば泡のお酒を思い浮かべるでしょう

2) 上質なスパークリングワインを造るための特別な技術がシャンパーニュ地方で完成された
・・・伝統方式とか瓶内二次発酵方式と呼ばれる技術です

3) シャンパーニュは世界のスパークリングワインの中で秀逸であるだけでなく、世界のワインの中でも卓越していること
・・・シャンパーニュには高級なイメージがあり、実質的にも上等なワインです

EUの法律では、フランスのシャンパーニュ地方で造られたものだけが「シャンパーニュ」という名称を使用することができます。
しかしアメリカに行くと、シャンパーニュ地方のものではないスパークリングワインのラベルにも「シャンパーニュ」という言葉を見かけることがあります(この用語の使用に関する規制は厳しいにもかかわらず)。

このような商品は味もシャンパーニュとは程遠いもので、シャンパーニュと同じ製法すら採用していません。
シャンパーニュを造るには2~3年を要するのに対して、こうしたニセモノはたったの2~3ヶ月で造れるので、コストもかからず商売としては美味しいのでしょう。

「シャンパーニュ」という言葉を使えばシャンパーニュが持つ名声にタダ乗りできて売りやすいのでしょうし、
そのせいで消費者の側も、泡のあるワインのことをなんでも「シャンパーニュ」とか「シャンパン」と呼んでしまう傾向があります。。

ワインを学んでいるぼくたちは、「シャンパーニュ」という名前はフランスのシャンパーニュ地方で造られたものに対してのみ、使うようにしたいものですね。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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ニューヨークに初めてブドウを植えたのはオランダ人でした ~ ニューヨーク州はアメリカで3番目に大きなワイン産地で、フィンガー・レイクスが最重要産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ニューヨークはいろんな意味で「世界の首都」といえるかもしれません。
しかし "ニューヨークワイン" といっても、それほど世界で認知されているとは言いがたいでしょう。

それは世界におけるカリフォルニアワインの圧倒的な存在感のせいでもありますが、
2015年の米国財務省データによれば、ワイン生産量においてカリフォルニア州、ワシントン州に次いで
ニューヨーク州はアメリカで3番目に大きなワイン産地なのです。

アメリカ最古のワイナリーであるブラザーフッド社 Brotherhood はニューヨーク州のハドソン・ヴァレーで1839年に創業して以来、いまなお継続して操業しています。
また世界最大のワイン会社であるコンステレーション・ブランズ社 Constellation Brands もニューヨーク州西部フィンガー・レイクス地方に本社を置いています。

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 ▲ブラザーフッド社のピノ・ノワール

ニューヨーク州で最も重要な産地はオンタリオ湖の近くにあるフィンガー・レイクス Finger Lakes です。
名前が示すように細長い11の湖があるエリアで、これら大小の湖が気候の冷涼さを和らげています。
このAVAはニューヨーク州のワインの約3分の2を産出しており、100を超えるワイナリーが存在します。
域内にサブAVAとして
セネカ・レイク Seneca Lake とカユガ・レイク Cayuga Lake があります。

フィンガー・レイクスで最もよく知られるワインはリースリングで、約200種類のブランドがあり、ほとんどすべて小規模なワイナリーのものです。

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 ▲ニューヨーク州の主なワイン産地

ニューヨーク州にはほかにも重要なワイン産地が2つあります。
ひとつはニューヨーク市の北を流れるハドソン川沿いの産地、ハドソン・リヴァー地域 Hudson River Region
もうひとつはロング・アイランド Long Island です。

ロング・アイランドAVAの中には、ノース・フォーク North Fork of Long Island とハンプトンズ The Hamptons という2つのサブAVAが含まれています。

17世紀中頃にニューヨークのマンハッタン島に初めてブドウを植えたのはオランダ人でした。
現在のニューヨークは17世紀前半はオランダの植民地で、もとはニュー・アムステルダムと呼ばれていました。

そもそも当時のオランダ東インド会社に雇われた探検隊のヘンリー・ハドソンという人物がこの地を発見し、
そこに流れている川をさかのぼって流域一帯をニュー・ネーデルラント、河口の島(= マンハッタン島)をニュー・アムステルダムと名づけたのです。その川は、ハドソンにちなんでハドソン川と呼ばれます。

さて、1960年より前は、ニューヨーク州のワインのほとんどは北米の土着品種(ヴィティス・ラブルスカ)であるコンコードとかデラウエアとかナイアガラや、フランス品種とアメリカ品種の交配品種であるセイベルなどから造られていました。

もともとこの一帯ではブドウジュースや製菓用のブドウ生産が広く行なわれており、その用途であればコンコードなどの北米品種でもよいのですが、こうしたブドウでワインを造ると独特の風味が出てくるため、あまり一般には好まれない傾向があります。

やはり美味しいワインを造るにはヨーロッパ原産のヴィティス・ヴィニフェラのブドウがよいのですが、
当時の一般的な認識では、ニューヨーク一帯の寒い気候はヴィティス・ヴィニフェラの栽培に向いていないと言われていたのです。

【参考記事】ワイン用のブドウはヴィティス・ヴィニフェラ!その中に1万種類以上のブドウ品種があるから一生かけても飲みきれません

しかし1953年、ロシア移民で後に偉大な博士となるコンスタンティン・フランク氏がフィンガーレイクスでリースリングの栽培育成に成功し、それまで一般的だった否定論が間違いであったことを証明しました。
彼はその後も様々な
ヴィニフェラのワイン用ブドウをこの地で育てました。

1961年には、この地で最初のヴィニフェラのワインが、彼のワイナリー Dr.Frank's Vinifera Wine Cellars で造られました。
彼の息子のウィリー・フランク氏は、ヴィニフェラによるワインと高品質スパークリングワインの品揃えでワイナリーを経営し、成功させました。
そのワイナリー(現名称 Dr. Konstantin Frank Wine Cellars)は現在も続いており、フランク博士の孫であるフレッデリック・フランク氏が率いています。

1973年になると、ニューヨーク市街地から車で2時間ほど離れたロング・アイランドのノース・フォーク地区もヴィニフェラ・ブドウの栽培に適した気候や土壌を持っていることが注目されるようになりました。
穏やかな海洋性気候でフランス・ボルドー地方の気候にも似ているといわれるこの地では、現在約40軒のワイナリーが稼動しており、その数は増え続けています。

ワシントン州と同様にロング・アイランドは特にメルローに向いているようですが、シャルドネ、リースリング、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・ノワールなども造られています。

日本の店頭では目にすることの少ないニューヨークのワインですが、もしも見かけたら、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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コロンビア・ヴァレーはワシントン州のワイン産地のほとんどをカバーする巨大なAVAで、その内部にヤキマ・ヴァレー、ワラワラ・ヴァレーなど有力産地が含まれています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オレゴン州と同じく、ワシントン州もワインビジネスへの参入は遅いスタートでした。
シャトー・サン・ミッシェルなど1960年代に創業したごく少数のワイナリーを例外とすれば、現在操業しているワイナリーのうち1980年より前に存在していたところは実質的に皆無だったといってよいでしょう。

1981年の時点でワシントン州のワイナリー数は19でしたが、2010年には600軒以上、2015年には850軒以上のワイナリーが操業しており、高品質ワインの生産量ではアメリカで2番目に大きい州となりました。

ここ10~15年ほどの間にワシントン州で造られるワインのタイプも劇的に変化しました。
1993年時点ではワシントン州のワインの約3分の2が白ワイン、3分の1が赤ワインでしたが、アメリカ人のワインの好みの変化に対応して、現在では5割以上が赤ワインとなっています。

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 ▲ワシントン州の主なワイン産地

ワシントン州の主なワイン産地は下記の通りです。

◆ コロンビア・ヴァレー Columbia Valley

コロンビア・ヴァレーはワシントン州のワイン産地のほとんどを包含する非常に大きなAVAで、その内部に次のようなAVAが含まれています。

・ ヤキマ・ヴァレー Yakima Valley

ヤキマ・ヴァレーはワシントン州で最初に認可されたAVAです。
コロンビア・ヴァレーそのものに次いで2番目に大きな栽培面積を持つ産地です。
実際、多くのワイナリーはこのヤキマ・ヴァレー内にあります。
ヤキマ・ヴァレー内のサブ・リージョンAVAとして次の3つがあります。
 ・ レッド・マウンテン Red Mountain
 ・ スナイプス・マウンテン Snipes Mountain
 ・ ラトルスネーク・ヒルズ Rattlesnake Hills

・ ワラワラ・ヴァレー Walla Walla Valley

コロンビア・ヴァレー内にある、オレゴン州とまたがるAVAです。
ブドウ栽培量は州全体の5%ほどしかありませんが成長の著しい産地で、ワシントン州の有力ワイナリーがいくつかあり、州内でもトップレベルの赤ワインが造られています。

・ ホース・ヘヴン・ヒルズ Horse Heaven Hills
・ ワルーク・スロープ Wahluke Slope
・ ナチェス・ハイツ Naches Heights
・ レイク・シェラン Lake Chelan
・ エインシェント・レイクス Acient Lakes

◆ コロンビア・ヴァレー内以外の主なAVA

・ コロンビア・ゴージュ Columbia Gorge

ワシントン州の南西部でオレゴン州とまたがるAVAで、両州側にほぼ同数のワイナリーがあります。
シャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、リースリング、ピノ・グリなどが栽培されています。

・ ピュージェット・サウンド Puget Sound

大都市シアトル近郊に広がる大きなAVAで、ワシントン州で唯一カスケード山脈の西側にあるAVAです。
この冷涼で多湿な気候で リースリングやゲヴュルツトラミネールのほかにピノ・グリとピノ・ノワールが主要品種となっています。

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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ワシントン州の産地のほとんどはカスケード山脈の東側にあり、緯度の高さから長い日照時間に恵まれています ~ 良質のメルローで知られますが近年シラーも好評です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワシントン州はオレゴン州の北に隣接する州ですが、それぞれのワイン産地の気候はお互いに大きく異なっています。
両州を南北に縦断するカスケード山脈を中心にしてみると、オレゴン州の産地は山脈の西側(太平洋側)にあるのに対し、ワシントン州の産地のほとんどは山脈の東側(内陸側)にあるからです。

ワシントン州では、山脈の西側つまり太平洋側は海洋性気候で、冷涼多雨で植物が良く育ちます。
山脈の東側は夏は暑くとても乾燥し、冬は寒い大陸性気候です。

上述したようにワシントン州のワイン産地の多くはカスケード山脈の東側、広大で無秩序に広がるコロンビア・ヴァレーとヤキマ・ヴァレーのエリアにあります。
かなり緯度が高い産地なので、日照時間がとても長いことが利点となっています。
ブドウの生育期には1日当り平均17.4時間という、ものすごい長さの日照に恵まれます。

ワシントン州の生産者は、灌漑を行なうことによって多くのブドウが砂漠の中でも繁々と育つことを発見しました。
メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨンといったボルドー品種がワシントン州では主要品種となっています。

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 ▲ワシントン州のシラー(シャトー・サン・ミッシェル)

ワシントン州がはじめに世に知られるようになったのは、メルローの品質の良さがきっかけでした。
しかし現在はワシントン州のシラーが好評を得るようになってきています。
今後ワシントン州は、シラーで面白いワインを造ることのできるアメリカ随一の産地になれるかもしれません。

白ブドウではシュナンブランとシャルドネがすでに成果をあげています。
リースリングも、もはや実験ではなくすでに離陸した感じです。

カスケード山脈の西側にも例外的にピュージェット・サウンド周辺にワイン産地があり、リースリングとゲヴュルツトラミネールがよく育ちます。
実際、大都市シアトルの近郊にあるピュージェット・サウンドには大規模なワイナリーが数軒あります。
しかし、彼らはブドウのほとんどをコロンビア・ヴァレーかヤキマ・ヴァレーから調達しています。
ビジネスをするには砂漠の真ん中よりもシアトルのほうがラクだということなのでしょう(笑)。

ワシントン州最古参のシャトー・サン・ミッシェル Chateau Ste. Michelle と、さらに大規模なコロンビア・クレスト Columbia Crest (両社とも同じ企業グループ)の2つがワシントン州の2大ワイナリーです。
現在のところ、この2社でワシントン州のワイン生産量全体の5割以上を占めています。

2社で半分以上とは・・・かなり寡占的な状態ですね。。
ワシントン州の他の中小ワイナリーたちにはワインのユニークさで頑張ってほしいです。

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オレゴン州の最重要産地はウィラメット・ヴァレーです ~ その中にあるヤムヒルにワイナリーが最も集中しており、すべての造り手がピノ・ノワールを手がけています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オレゴン州におけるピノ・ノワールとピノ・グリの最重要産地はウィラメット・ヴァレー Willamette Valley です。
ウィラメット・ヴァレーはオレゴン州北西部の中心都市ポートランドのすぐ南にあります。

ウィラメット・ヴァレーは オレゴンの中心的なワイン産地として40年ほど前から発展してきました。
実際、オレゴン州のワイナリーの約3分の2はウィラメット・ヴァレーにあります

ウィラメット・ヴァレーはアクセスもとても便利なワイン産地です。
同州の最大都市でレストランもホテルもお店も充実したポートランドから、車で30分ほどしか離れていません。

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 ▲オレゴン州の主な産地

ウィラメット・ヴァレー自体は大きなエリアで、その中にいくつかの産地を含んでいます。
ポートランドのすぐ南にヤムヒル郡 Yamhill にはワイナリーが最も集中しており、そのすべてがピノ・ノワールを造っています。

大きなウィラメット・ヴァレーAVAの中のサブリージョンとして、ヤムヒル・カールトン・ディストリクト Yamhill-Carlton District やダンディー・ヒルズ Dundee Hills など6つののサブAVAがあります。
こうしたサブAVAは、ウィラメット・ヴァレーの持つ多様な土壌が各エリアのワイナリーに刺激を与え、それぞれの土壌の特徴を生かしてワイン造りの差別化を図ってきた結果として生まれたものです。

オレゴン州の他の主なワイン産地としてアンプクア・ヴァレー Umpqua Valley とローグ・ヴァレー Rogue Valley の2つがあげられます。
どちらも州の南西部にあり、ローグ・ヴァレーはカリフォルニア州との州境に位置しています。

アンプクア・ヴァレーはウィラメット・ヴァレーに比べると温暖で、ピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングのほかカベルネ・ソーヴィニヨンも栽培されています。

ローグ・ヴァレーはさらに温暖になり、この地ではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのほうがピノ・ノワールよりも良いワインができたりします。
白ワインではシャルドネが中心ですがピノ・グリもだんだんポピュラーになってきています。

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オレゴン州の白ブドウでシャルドネに劣らず重要な品種はピノ・グリです ~ それほど高くない割には風味豊かで、食事にも合わせやすいお得な白ワインです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オレゴン州を代表するブドウはピノ・ノワールですが、本場フランスのブルゴーニュ地方でピノ・ノワールとともに主要品種となっている白ブドウといえばシャルドネです。
シャルドネはアメリカでも非常に人気があり、オレゴンでも重要な白ブドウ品種となっています。

オレゴンにもともと植えられていたシャルドネは、カリフォルニアの温暖な気候向けのものだったのですが、
近年は多くのブドウ畑でフランス産の遺伝子を持つシャルドネに植え替えが行われています。
そのおかげでオレゴンのシャルドネは品質の向上が顕著となっています。

しかし、オレゴンにはシャルドネに劣らず重要な白ブドウ品種があります。
それはピノ・グリです。

ピノ・グリは、ピノ・ノワールが自然に突然変異して生まれた品種です。
白ブドウとして括られるのが一般的ですが、成熟すると果皮が淡いピンクから黄桃色になります。

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 ▲ジ・アイリー・ヴィンヤーズのピノ・グリ

ジ・アイリー・ヴィンヤーズ The Eyrie Vineyards の創始者、かつオレゴンにおけるピノ・ノワールの先駆者であるデイヴィッド・レット氏は、1970年にオレゴンで最初にピノ・グリを造った人物でもあります。
オレゴンで最重要のワイン産地ウィラメット・ヴァレー Willamette Valley では、ほぼずべての生産者がピノ・ノワールとともにピノ・グリを造っています。

オレゴンのピノ・グリは、大きく分けて次の2つのスタイルがあります。

①ライトボディでフルーティーなワイン:
・・・ブドウは早めに収穫される。樽熟成は行なわれない。早飲みタイプで、収穫後6~8ヶ月後くらいからでも楽しめる。

②ミディアムボディで黄金色をしたコクのあるワイン:
・・・ブドウは遅摘みされる。樽熟成が行われることもある。5~6年以上の熟成が可能。

概して言えば、オレゴンのピノ・グリはライトからミディアムボディで、洋ナシ、リンゴ、時にはメロンを想起させる香りを伴い、それほど高くない割にはなかなか深みのあるワインです。

食事にとても合わせやすいのが特徴で、多少甘口のワインでも食べ物とよくマッチします。
とくにシーフードやサーモンは、オレゴンでもピノ・グリと合わせられることが多い食材です。

現在ではカリフォルニアのワイナリーもピノ・グリを造るようになりました。
しかしカリフォルニアでは多くの造り手が、とても軽いスタイルのワインをイタリア式に「ピノ・グリージョ」という呼び名で出しています。
マーケティング的にイタリアワイン人気にあやかろうとしているのは明らかです。

それに対してオレゴンのコクのあるピノ・グリは、どちらかというと風味豊かなアルザス地方のピノ・グリにスタイルが似ています。
オレゴンのピノ・グリは上記①のタイプですら、カリフォルニアの一般的な「ピノ・グリージョ」より風味が豊かだと思います。
アメリカのピノ・グリを楽しむなら、カリフォルニアの「ピノ・グリージョ」よりはオレゴンの「ピノ・グリ」のほうを個人的にはオススメします。

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「美味しい料理とワインを楽しみながら、ビジネスシーンで役立つワインマナーを学ぶ会」を開催しました!~ お気楽ワインセミナー

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

10月25日(水)の夜、東京・日本橋のVASHON日本橋兜町店にて
「美味しい料理とワインを楽しみながら、ビジネスシーンで役立つワインマナーを学ぶ会」
を開催しました。
ぼくたちバイザグラスが毎月このお店で開催している、お食事付きのワインセミナーです。

いつもはぼくが講師を務めさせて頂くのですが、今回は日系航空会社の国際線キャビンアテンダント出身のソムリエである松田佳世さんに講師をお願いしました。

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毎年ナパ・ヴァレーの産地を訪れている松田さんに
ワインも用意して頂きました。
日本では未発売の、彼女のとっておきワインも含まれています ^^

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今回は「ワインマナー」がメインテーマ。

はじめにゲストの皆さんに、ワインのマナーに関するクイズに取り組んで頂きました。

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難問?・・・皆さん真剣です。
全員ひととおり解き終わった後、松田さんの解説に入ります。

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実際に大切な取引先の人と会食をしているという状況設定で、実践的なアドバイスをお話しています。

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乾杯のときは、グラスをチン!と合わせません。
かといって、かしこまりすぎず、雰囲気を盛り上げるようにスマートに乾杯する動作を直伝。

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前菜はリンゴとロックフォールのサラダをマンゴーのドレッシングで。
甘口の白ワイン、モスカートを合わせます。

ナパ・ヴァレーのセント・ヘレナで造られる、この日本未発売のモスカート。
ほどよい酸味と甘みのバランスが絶品です。
こんなに美味しいモスカート、
ぼくは飲んだことなかったかも・・・。

青かびチーズのロックフォールと素晴らしいマリアージュ。
リンゴ果実やマンゴードレッシングの風味とも非常によく合いました。

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前菜の次はパスタを。
ローストシュリンプとフレッシュトマトのスパゲッティーニです。
隠し味に、スパイスのタイムの風味が効いています。
このパスタ、とても美味しいんですよ。

パスタと同時に、スパークリングワインをサーブ。
色調ときめ細かな泡の様子をみんなで確かめます。

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冷涼なメンドシーノ・カウンティで造られる、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式の本格的なスパークリングです。
かなり果実味とコクのあるタイプで、ふくよかな口当たりとシャルドネ主体の酸味が、シュリンプの風味やトマトパスタの味わいとよく絡み合います。

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メインディッシュはサーロインステーキのメダイヨンスタイル。
グリーンペッパーソースにドフィノワ(ジャガイモグラタン)添えです。

赤ワインを2種類、まずはソノマ・コーストのピノ・ノワールから合わせます。
このピノ・ノワール、アメリカのワインらしく果実味はかなりしっかりしていますが、
それでいてエレガントな酸味も伴っており、非常にバランスの優れたワインです。

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さらにナパのラザフォードで造られるカベルネ・ソーヴィニヨンをサーブします。
日本未入荷の、松田さんの秘蔵ワインのひとつ。

グラスに注ぐと、外観の輝きと香りから、ワインを知る者ならすぐに高級ワインとわかります ^^
味わいも素晴らしい。
ぼくは個人的にはカベルネ・ソーヴィニヨンがそれほど好きではなく、ましてや新世界のものはまず飲まないのですが、このワインは例外!
いわゆる「新世界カベソー」のステレオタイプではありません。
力強さとエレガントさを兼ね備えた、とても素晴らしいワインです。
こんなの滅多に飲めないかも。。

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上の写真のように並べてみると、違いがよくわかりますね。
左がピノ・ノワール、右がカベルネ・ソーヴィニヨンです。

料理のお肉が程よく柔らかいので、お肉自体のジューシーさにはピノ・ノワールが合い、
ソース全体を含めた重厚さに対しては、やはりこちらのカベルネ・ソーヴィニヨンがよく合うように感じました。

料理とワインを楽しみながら、松田さんからナパ・ヴァレーのワイナリーの情報や歴史について解説。

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今般発生したカリフォルニア火災でナパ・ヴァレーのワイン産地も一部被災しました。
地図を示しながら、被災したエリアや被害が確認されているワイナリーなど、最新事情のお話がありました。

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ひととおりお話を終えたあとは、ゲストの皆さんと歓談。
好きなワイン、マナーのポイント、ナパ事情と話題はつきません。

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会の終盤は、ぼくたちスタッフも着席してワイン談義を楽しみました。
楽しい夜はまだまだ続きます。

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今回もゲストの皆さん、どうもありがとうございました。
また素敵なレクチャーをしてくれた松田佳世さんにも心より感謝いたします。

バイザグラスのお気楽ワインセミナー、定期的に開催しています。
ご興味のある方、ぜひご参加くださいね!

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オレゴン州はカリフォルニア州の北にある冷涼なワイン産地 ~ ピノ・ノワールがオレゴンの代表的ブドウ品種で、全米でも最上級のピノ・ノワール産地のひとつです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

多くの人は、オレゴン州はカリフォルニア州の北にあるから気候はかなり冷涼だろうと想像することでしょう。
それは正しいのですが、オレゴンの気候が冷涼なのは太平洋とブドウ畑を隔てるような高い山がないから、というのも大きな理由です。

海の直接的な影響がオレゴンに低めの気温と雨をもたらしています。
実際、オレゴンとカリフォルニアではブドウの生育もワイン造りもおおいに異なります。
 
ワイン造りはオレゴンではとても新しい産業ですが、その成長はとても急速です。
1970年には5軒しかなかったワイナリーは、2010年代に入ると400軒を超えました。

オレゴン州のワイナリーのほとんどは小規模な家族経営です。
規模という点での例外は、オレゴン州最大のワイナリーであるキング・エステート・ワイナリー King Estate Winery です。
とはいえキング・エステートといえども、カリフォルニアにある巨大なワイナリーに比べたら小さいほうです。

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オレゴンを良質な産地としてワイン界に知らしめた最初のブドウは、冷涼な気候を必要とするピノ・ノワールでした。
ジ・アイリー・ヴィンヤーズ The Eyrie Vineyards がオレゴン初のピノ・ノワールを発売したのは1970年です。
しかし、オレゴン州のピノ・ノワールが全国的に知られるようになったのは、1983年や1985年にとてもよいヴィンテージがリリースされてからのことです。

いまもピノ・ノワールはオレゴン州を代表するブドウ品種で、同州のワイナリーの大半がピノ・ノワールを造っています。

オレゴンのピノ・ノワールは赤系果実というより少々黒系果実のようなアロマや風味を感じさせるのが特徴で、深みや複雑さがあり、アメリカ産ピノ・ノワールのなかでは最上級のひとつだという評価を得ています。

現在ではオレゴンの全ワイン生産量の6割を赤ワインが占めています
他の4割の白ワインは主にピノ・グリ、シャルドネ、リースリングです。

オレゴンのピノ・ノワールは、数年前に比べて街なかのワインショップでも見かけることが多くなっています。
まだ飲んだことのない方は、ぜひ試してみて頂きたいと思います。

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サンタ・バーバラも冷涼な気候でピノ・ノワールとシャルドネの栽培に向いており、アメリカの6大ピノ・ノワール産地のひとつに数えられています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

カリフォルニアで最もエキサイティングなブドウ栽培エリアはどこにあるか・・・ひとつに絞るのは難しいとしても、サンタ・バーバラ・カウンティ Santa Barbara County は間違いなくその筆頭格だといえるでしょう。

スペインからやってきた修道士たちが200年も前にこの地にブドウを植えたにもかかわらず、
主要なワイナリーが初めてこの地で操業を始めたのは、1970年代に入ってからのことでした
(ファイヤーストン・ヴィンヤード Firestone Vinyard)
サンタ・バーバラがどれほどブドウ栽培に適した土地か、今のぼくたちが知っていることに照らして言えば、1970年代とはあまりに遅いスタートだったのですね。

サンタ・バーバラはセントラル・コーストのいちばん南にあります。
西から南が太平洋に向かって開けており、海からの冷たい風と霧が大量に流れ込みます。

冷涼な谷(ヴァレー)が、カリフォルニアでは例外的に東西の向きに伸びています。
太平洋に向かって開けた谷地が海風の通路の役目を果たします。

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 ▲オー・ボン・クリマもストロベリーのフレーバーを強く感じる

サンタ・バーバラ郡の主なブドウ栽培エリアはサンタ・マリア・ヴァレー Santa Maria Valleyサンタ・イネズ・ヴァレー Santa Ynez Valley です。
どちらもサンタ・バーバラ市街地の北に位置しており、冷涼な気候でピノ・ノワールとシャルドネの栽培に向いています。
たとえばサンタ・マリア・ヴァレーでは、これらの品種の生育時期のにおける平均気温はわずか22℃です。

ブルゴーニュ地方で修行したジム・クレンデネン氏は1982年にオー・ボン・クリマ Au Bon Climat を設立し、ブルゴーニュスタイルを追及したピノ・ノワールのワイン造りで、サンタ・マリア・ヴァレーを有名な産地にしました。
このオー・ボン・クリマ、ぼくたちの最近のワインセミナーでも登場しました。

さらに南にあるサンタ・イネズ・ヴァレーは、西端のほうは冷涼な気候でピノ・ノワール、シャルドネなどが栽培されていますが、東端のほうは比較的温暖で、グルナッシュやシラーなどの栽培も行なわれています。

サンタ・バーバラはアメリカの6大ピノ・ノワール産地のひとつです。
他の5つはカーネロス、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、ソノマ・コースト、アンダーソン・ヴァレー(メンドシーノ郡)、そしてオレゴン州のウィラメット・ヴァレーです。

サンタ・バーバラのピノ・ノワールのワインは概してイチゴのようなフレーバーがふくよかで、若干青いニュアンスも伴います。
より堅めで力強いロシアン・リヴァー・ヴァレーや「真のソノマコースト」のピノ・ノワールは中長期の熟成にも耐えそうなタイプのワインですが、サンタ・バーバラのピノ・ノワールはヴィンテージ後4~5年以内に飲むのが美味しいと思います。

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モントレーのサンタ・ルチア・ハイランズ、サン・ルイ・オビスポのパソ・ロブレスなど、セントラル・コースト地方にも面白いワイン産地がいろいろあります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

これまで述べてきたナパソノマメンドシーノはいずれもノース・コースト地方にありますが、
その南側にあるのがセントラル・コースト地方で、ここにもまた面白いワイン産地があります。

●サンタ・クルーズ・カウンティ Santa Cruz County

都市部から少々離れたサンタ・クルーズ山脈に入ると、ここがサンフランシスコ市街から車でたった1時間ほど南の場所だなんてことは、きっと忘れてしまうかもしれません。
しかし、でこぼこ起伏の激しい荒野のようなこの地に魅せられて、ブドウ畑を切り拓いた生産者もいるのです。

海側は涼しい気候でピノ・ノワールが中心となっています。
サンフランシスコ湾側はカベルネ・ソーヴィニヨンが主要な黒ブドウです。
シャルドネはどちらの側でも主要な白ブドウとなっています。

●モントレー・カウンティ Monterey County

モントレー郡にはすべてのものが揃っています・・・美しい海岸線、古い街並み。
気候がとても冷涼なブドウ畑地区もあれば、とても温暖なエリアもあります。
大規模なワイナリーもいくつかありますし、小規模ワイナリーもたくさんあります。

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 ▲サンタ・ルチア・ハイランズのシャルドネ

カリフォルニアの他のワイン産地と同様に、モントレーもここ20~30年ほどの間に急速な変化を経験しています。
モントレー・カウンティ内のサブ・リージョンとしていくつかのAVAが存在しますが、
それらのなかでも特にサンタ・ルチア・ハイランズ Santa Lucia Highlands AVA はいま、カリフォルニアを代表するピノ・ノワールおよびシャルドネの新たな産地として脚光を浴びています。

シャルドネはモントレー・カウンティ全体で見ても主要品種ですが、とくに冷涼なエリアではリースリングやゲヴュルツトラミネールも造られています。
山側に行くとカベルネ・ソーヴィニヨンとピノ・ノワールが中心となります。

●サン・ルイ・オビスポ ・カウンティ San Luis Obispo County

サン・ルイ・オビスポは非常に多様性あふれる、面白いブドウ栽培地域です。
例をあげれば、温暖な丘陵地域のパソ・ロブレス Paso Robles (サン・ルイ・オビスポの町の北にあります)ではジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーなどが主体ですし、
町の南側、海岸沿いの地域にはとても素晴らしいピノ・ノワールやシャルドネを造るエリアもあります。

パソ・ロブレスはカリフォルニアの中でもとくに成長著しいワイン産地です。
180以上のワイナリーがあり、ここ10年以内の間に倍増しています。

パソ・ロブレスはカリフォルニアのセントラル・コースト地方の中心地であり、サンフランシスコからもロサンジェルスからもほぼ等距離に位置しています。

パソ・ロブレスは昼夜の気温差が大きく、標高の高い場所にシラー、グルナッシュ、ヴィオニエ、ルーサンヌなど、フランスのローヌ系品種が多く栽培されています。

またパソ・ロブレスではイタリア品種によるワイン造りがされているのも特徴です。
ネッビオーロとサンジョベーゼだけでなく、アリアニコなども栽培されています。

カリフォルニア産のイタリアワインなんて、とても興味深いと思いませんか?
ぜひ飲んでみたいです ^^

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メンドシーノ郡アンダーソン・ヴァレーは海風の影響を受ける冷涼な気候でシャルドネやピノ・ノワールの栽培に理想的 ~ 良質のスパークリングワインで知られる産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

カリフォルニアワインの産地としてとくに有名なのはナパとソノマですが、周辺にも良質なワインを産み出す産地があります。
そのひとつ、メンドシーノ・カウンティ Mendocino County はソノマのすぐ北隣にある産地です。

風光明媚なカリフォルニアの海岸線をサンフランシスコから1号線を走って北上すると、古風で趣のあるメンドシーノの町につきます。
ナパやソノマより観光客も少なめです。

メンドシーノの中でもとりわけ冷涼なアンダーソン・ヴァレー Anderson Valley はシャルドネ、ピノ・ノワール、ゲヴュルツトラミネール、リースリングなどの育成に理想的な土地で、スパークリングワインの生産にも最適です。

海抜が高く、太平洋から吹く冷たい海風と霧の影響を受け、真夏でも平均気温は23℃程度というとても冷涼な気候です。
そのため、ゆっくりとブドウが成熟し、糖度と酸味を備えたスパークリングワインに適したブドウが育ちます。

アンダーソン・ヴァレーは以前から良質のスパークリングワイン産地として知られていました。

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フランスのシャンパーニュメゾンであるルイ・ロデレール社は1982年、アメリカでスパークリングワイン生産を始めるにあたって、ナパやソノマを素通りしてアンダーソン・ヴァレーにやって来ました。
カリフォルニアでは珍しい "自社畑100%" のブドウで造るカルテット Quartet ブランドは、短期間のうちに成功を収めています。

「アメリカにおける最高品質のスパークリングワインを造る」ことを目標に掲げて1981年にアンダーソン・ヴァレーに設立されたシャッフェンベルガー Scharffenberger も有名な造り手です。

ぼくはバイザグラスのワインセミナーで、カルテットやシャッフェンベルガーのスパークリングワインを
たまに使用することがあります。

ロデレール社のカルテットは、フレッシュな酸味とともに果実味が豊かで、ボディのあるスパークリングワインです。
シャルドネとピノ・ノワールから、シャンパーニュと同じく瓶内二次発酵方式で造られますが、シャンパーニュに比べるとかなりリッチで、辛口でもかすかに甘みすら感じられます。

シャッフェンベルガーは、口当たりがリッチでややクリーミーなスパークリングワインです。
シャルドネとピノ・ノワールから造りますが、100%マロラクティック発酵を行うことにより、シャープな酸よりもむしろ、まろやかでふくよかな風味を強調しています。
ちなみにシャッフェンベルガーは2004年にロデレール社の傘下に入っています。

どちらもスタンダードクラスは1本3千円台ですので、シャンパーニュと比べてお求めやすい価格です。
シャンパーニュを飲むほどではないけど本格的なスパークリングワインを気軽に味わいたい、というようなときに、とても重宝しますね。

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「真のソノマコースト」は広大なAVAソノマコーストの中でも特別なテロワールの産地 ~ 冷涼な気候からエレガントでデリケートなピノ・ノワールが生まれます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

太平洋沿いの巨大なAVAソノマコースト Sonoma Coast の中でも、
フォートロスの町を基点に北はアナポリスの町あたりまで、南はオクシデンタル、フリーストーン、セバストポルといった町のあたりまでのエリアのことを、
現地のワインファンは the True Sonoma Coast真のソノマコースト) と呼んでいます。

別名を the Extreme Sonoma Coast究極のソノマコースト)ともいうそうです。

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「真のソノマコースト」のブドウ栽培者やワイン生産者は、自分たちの
ワインは太平洋沿岸エリアならではのテロワールを反映した独特なものだと自負しており、他のAVAソノマコーストとは区別したいと考えています。
彼らの頑張りもあって、「真のソノマコースト」の名はだんだんと流布するようになりました。

広大で地理的な特定性のなかったソノマコーストAVAを、もうすこし細かく再定義しようという流れが生まれた最初の一歩は、おそらく2012年のことです。
この年、太平洋に至近なまさに "究極のソノマコースト" エリアのブドウ畑を包含したフォート・ロス-シーヴュー Fort Ross-Seaview というAVAが新たに作られました。

「真のソノマコースト」エリアの気候的特徴をひとつあげるとすれば、ボデガ湾から山々のすきまを吹き抜けていく海風でしょう。
この涼しい風と十分な日照とが組み合わさって、ピノ・ノワールとシャルドネの理想的な生育条件を生み出しています。

この冷涼な気候のために、
「真のソノマコースト」のピノ・ノワールは晩熟となり、ワインは他のソノマ地方のピノ・ノワールに比べてアルコール度数が低めになります。

「真のソノマコースト」のピノ・ノワールは、他のカリフォルニア産のピノ・ノワールよりも色合いが淡く、口当たりも軽めになります。
その分、アメリカのピノ・ノワールにはなかなか見られないようなエレガンス、バランス、デリケートさを持ったすばらしいワインとなります。

「真のソノマコースト」でピノ・ノワールを造るワイナリーはほとんどが小規模で、年間2~3千ケース程度しか生産しないため、
残念ながら日本ではなかなか見かけません。
造り手によっては、アメリカ本国ですら店頭で見つけるのが困難で、ワイナリーに直接コンタクトしないと買えないものもあるようです。

そのような中で比較的規模が大きいのは、フラワーズ・ヴィンヤード&ワイナリー Flowers Vineyard & Winery です。
フラワーズのピノ・ノワールでしたら、インターネットで探せば日本でも購入できます。
ものによりますが、だいたい1本8千円から2万円くらいしますけどね。。

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ソノマの海側はナパに比べると気候がかなり冷涼です ~ とくにロシアン・リヴァー・ヴァレーは良質なピノ・ノワールの産地として知られています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ゴールデン・ゲート・ブリッジを渡り、サンフランシスコを離れて1時間もするとソノマに着きます。
ナパとソノマの違いは、かなり顕著です。

ナパのワイナリーの多くは外観が立派で、ときに露骨に感じるほど豪華ですが、
ソノマのワイナリーの多くは飾り気がなく、田舎風でのんびりとした印象です。

大金持ちや成功者はナパにブドウ畑を買いたがりますが、
それに比べるとソノマは庶民的です(もちろん例外もあります)。

とはいえソノマにも大規模な企業的ワイナリーはあります。
デイリーワインで知られるガロ Gallo のほか、近代的設備を誇るケンダル・ジャクソン Kendall-Jackson、映画ゴッド・ファーザー等の監督コッポラ氏のフランシス・フォード・コッポラ Francis Ford Coppola などもソノマにあります。

ナパよりも広大な土地と比較的冷涼な気候に注目してソノマに進出を図るワイナリーは、今後も増えると思われます。
もしかしたら、ソノマもそのうちいつかナパに性格の似た産地になっていくのではないか・・・という不安がよぎりますが、そうならないことをぼくは願っています。。

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 ▲ソノマの風景

ソノマはナパの2倍ほどの面積があります。
産地はナパより広範囲に散らばり、300以上のワイナリーが存在しています。

ソノマの気候は、内陸側はナパと似ていますが、ソノマの海側はナパよりもかなり冷涼です。

シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどはナパ同様に造られていますが、
ソノマの冷涼な気候とテロワールは、優良なピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランの栽培も可能にしています。

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 ▲ソノマ・カウンティのAVA

ソノマの主なAVAとそれぞれの主要な生産ワインは以下の通りです(おおむね南から北へ)。

・ ロス・カーネロス Los Carneros(ソノマとナパにまたがる)
 ・・・ピノ・ノワール、シャルドネ、スパークリングワイン、メルロー

・ ソノマ・ヴァレー Sonoma Valley
 ・・・シャルドネ、(少量だがピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンなども)

・ ソノマ・マウンテン Sonoma Mountain
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン

・ ベネット・ヴァレー
 ・・・シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、メルロー

・ フォート・ロス・シーヴュー Fort Ross-Seaview
 ・・・ピノ・ノワール、シャルドネ

・ ロシアン・リヴァー・ヴァレー Russian River Valley
 ・・・ピノ・ノワール、シャルドネ、スパークリングワイン

・ グリーン・ヴァレー Green Valley (ロシアン・リヴァー・ヴァレー内にある)
 ・・・スパークリングワイン、ピノ・ノワール、シャルドネ

・ チョーク・ヒル Chalk Hill (一部はロシアン・リヴァー・ヴァレー内にある)
 ・・・シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン

・ ドライ・クリーク・ヴァレー Dry Creek Valley
 ・・・ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブラン

・ アレキサンダー・ヴァレー Alexander Valley
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン

・ パイン・マウンテン-クローヴァーデール・ピーク Pine Mountain-Cloverdale Peak (アレキサンダー・ヴァレーと一部重なり、北側の一部はメンドシーノ郡内に伸びる)
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン

・ ナイツ・ヴァレー Knight's Valley
 ・・・カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブラン

・ ロック・パイル Rockpile
 ・・・ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー

上記のほか、ソノマ・コースト Sonoma Coast はソノマ西部の海沿いの土地をまとめた非常に広域なAVAです。

こうしてみると、ソノマはナパに比べるとピノ・ノワールやソーヴィニヨン・ブランの栽培が目立ちますね。
とくにロシアン・リヴァー・ヴァレーや、ソノマ・コースト内の一部エリアは、ピノ・ノワール栽培に最適な気候条件を持っています。
ピノ・ノワールが好きな人は、ワインショップで見かけたらぜひ試してみてはいかがでしょうか。

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「南ヨーロッパの土着品種ワインを味わう」セミナーを開催しました!~ お気楽ワインセミナー

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

本日、10月21日(土)は「南ヨーロッパの土着品種ワインを味わう」セミナーを開催しました。

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ぼくたちのお気楽ワインセミナー、いつもは新宿区内で行うことが多いのですが、
今回は少し西に行きまして、武蔵野市の吉祥寺で実施しました。

アンティーク家具に囲まれたレトロな会場の雰囲気が、はからずも、どこかスローな南欧風情を高めてくれます ^^
あいにくの雨模様のなか、南欧ワインの飲み比べに関心のあるゲストの方にお集まりいただきました。

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白ワインはポルトガルのヴィーニョ・ヴェルデです。
ヴィーニョ・ヴェルデというと、微発泡性でゴクゴク飲めるスッキリ系の白ワインを思い浮かべる人も多いと思いますが、今回はあえて、少々コクのあるタイプにしてみました。

ロゼワインは南フランス・ローヌ地方のタヴェル。
タヴェルはロゼワインだけが造られる珍しい原産地呼称です。
ロゼとしては色調が濃く、タンニンも豊か、アルコール分14.5%でボディも重め・・・食事にも十分合わせられるロゼワインです。


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赤ワインは特徴の異なる3種類をご用意。

スペインからは、リベラ・デル・デュエロのティント・フィノ(テンプラニーリョ)。
紫の色調が濃く、見るからに力強そうな外観。
アメリカンオークの小樽熟成で、バニラのような顕著な樽香と濃密な果実味を伴う、ややモダンなつくりの赤ワインです。

イタリアからはサルデーニャ島のワイン、カンノナウ・ディ・サルデーニャのリゼルヴァ。
外観はフチにかすかにオレンジ色のニュアンスがある、やや淡い色調。
こちらは大樽熟成による伝統的なつくりで、マデイラや紹興酒を思わせる
酸化熟成香と乾燥果実系の枯れた風味を伴う田舎っぽい赤ワインです。

この両者はとても面白い対比となりました。

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赤ワインの3つめは、ギリシャのマケドニア地方ナウサのワイン。
ブドウ品種はクシノマヴロ Xinomavro 100%です。

香りのボリュームが強く、バラの花、カシス、ブラックチェリー、干しプラム、干しイチジク、黒コショウ、ショウガ、キノコ、皮革、土・・・といった非常に複雑な香り。
力強いタンニンとともに、ドライフルーツを思わせる果実味と、引き締まった酸味。
どことなくバローロ(ネッビオーロ)を想起させる味わいです。

骨格の強さとエレガントさの両方を併せ持ち、ワンランク上のスケールやポテンシャルを感じさせる赤ワインです。

このギリシャのワイン、個人的にも最近ぼくのお気に入りとなっています。
先月、インポーターさんの試飲会でたまたま出会ってから忘れることができず、
その後1ヶ月の間に7本も買ってしまいました ^^

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ソムリエール犬飼雅恵による恒例の「こっそりコーナー」。
今回は、それぞれのワインにどのような料理を合わせたらよいか、ゲストの皆さんとディスカッションをしました。

今回もあっという間の2時間・・・個性的な南欧ワインを囲んで、ゲストの皆さんとテイスティング&ワイン談義を楽しみました。

ぼくたちバイザグラスの「お気楽ワインセミナー」は、様々なテーマで毎月2~3回開催しています。
気楽にワインを楽しみたい方、ワインの基本を気軽に学習してみたい方、ぜひご参加ください!

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