早稲田ワインアカデミー

ワインに興味はあるけれど、ワインって何だかムズカシそう・・・
ワインを楽しむのに必ずしも知識は要りません。
でもワインの基本を知ると、ワインがもっと楽しくなります。
ブログ「早稲田ワインアカデミー」は、ワイン初心者の方にもワインをよく飲む方にも
気軽にお読みいただける、オンライン・ワイン教室です。

​バイザグラスの初拠点となる【神楽坂ワインハウス by the glass】
2018年11月にオープンしました!
神楽坂ワインハウス バイザグラス
https://www.bytheglass.jp/

カベルネ・ソーヴィニヨンは世界で一番有名なワイン用ブドウのスーパースター!~ タンニン豊富でドッシリ重めのワインになります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

今回から赤ワインのブドウ品種について書いていきます。
赤ワインを造るブドウのことを黒ブドウといいます。

世界にはたくさんの種類の黒ブドウがあり、国際的に名高い高品質の赤ワインからローカル色あふれる面白い赤ワインまで、実にバラエティに富んだ赤ワインができます。

世界中どこでも栽培されている黒ブドウもあれば、限られた国や産地に独特の黒ブドウもあります。

ラベルにブドウ品種の名前が書かれているワインもありますし、産地の名前だけが書かれているワインもありますし、なかには複数のブドウ品種がブレンドされているワインもあります。

まずは、世界的なスーパースターたちから見ていきましょう。

世界中の生産者がこぞって栽培し、ワインを造っている国際的な黒ブドウは4つあります。
カベルネ・ソーヴィニヨンメルローピノ・ノワールシラーです。


◆カベルネ・ソーヴィニヨン◆

カベルネ・ソーヴィニヨンは、冷涼な地域を除いて世界中の様々な気候でよく育ち、素晴らしいワインを造る黒ブドウ品種のひとつです。

カベルネ・ソーヴィニヨンといえば、フランス・ボルドーのメドック地区が本拠地です。
ここで造られる長期熟成向きの高級赤ワインが世界的に有名です。
カベルネ・ソーヴィニヨンを主体として、たいていメルローやカベルネ・フランなどとブレンドされます。

しかし今日ではカリフォルニアも、ボルドーと同じくらい重要なカベルネ・ソーヴィニヨンの一大産地です。
ほかにもオーストラリア、南アフリカ、チリ、アルゼンチン、イタリア等々・・・世界中でカベルネ・ソーヴィニヨンは栽培されています。

lynch-moussas1994
 ▲ボルドー・メドック地区ポイヤック村のシャトー・ランシュ・ムーサ1994年


カベルネ・ソーヴィニヨンはたいていフルボディ、最低でもミディアムボディのワインとなります。
とくにタンニンが豊富であることがカベルネ・ソーヴィニヨンの最大の特徴です。

ワインの色が濃く、カシスブラックベリーブラックチェリーといった黒系果実の香りと風味があります。
高級ワインは木樽熟成されますので、フレンチオークから来るトーストのようなスモーキーさやバニラのような香り、風味も伴います。

カベルネ・ソーヴィニヨンのワインは世界各地でたくさん造られており、あらゆるレベルの価格帯、品質のものがあります。

安価なものはそれほどボディは強くなく、フルーティーで親しみやすいガブ飲み系のワイン。
上質なものはフルボディで、凝縮された力強い香り、味わいのコクや厚み、深みを持ちます。

高級ワインは長期熟成向きで、15年や20年は余裕でもちます。
このような高級ワインをまだ若い段階で飲んでも、渋味がギシギシしてあまり美味しくありません。
しかし熟成させると、紅茶、タバコ、枯葉、腐葉土のような複雑な香りと風味が現れてきて、口当たりもシルキーでまろやかになります。

カベルネ・ソーヴィニヨンはタンニンがとても強く、単体で造ると飲みづらいので、生産者はたいてい他のブドウ品種とブレンドします。
メルローがもっとも典型的なブレンド相手です。
ボルドーでは、それが伝統となっています。

メルローがカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド相手に適している理由は、メルローはタンニンがそれほど強くないので、ワインに柔らかさを与えることができるからです。
なお、オーストラリアではカベルネ・ソーヴィニヨンにシラーを混ぜたりもします。

カベルネ・ソーヴィニヨンは世界中で最も知られているメジャー品種で、ドッシリした重めのワインが好きな人たちのスーパースターだといえるでしょう。

okiraku-koza_banner

アルバリーニョ、シュナン・ブラン、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカデ、ヴィオニエ・・・白ブドウもいろいろ ~ たくさんのブドウに出合えたら面白いですね!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ここまで
シャルドネリースリングソーヴィニヨン・ブランピノ・グリと、とくに重要な白ブドウについて見てきました。
これらのブドウにはそれぞれ本拠地がありますが、いまや世界で広く栽培されている国際的なブドウ品種です。

今回は、それ以外の白ブドウ品種をまとめて紹介します。
ワインライフを続けていると、こうしたブドウ品種のワインに出合うこともあると思います。


◆アルバリーニョ◆

スペイン北西部ガリシア地方の沿岸地域のリアス・バイシャス Rías Baixas や、
ポルトガル北部のヴィーニョ・ベルデ Vinho Verde 地方で栽培されています。

アロマティックなブドウ品種です。
爽やかで芳香が豊か、リンゴを思わせる味わい、海水のようなミネラル感を伴います。
ライト~ミディアムボディ、フレッシュ&フルーティでシーフードにとてもよく合います

rias_baixas
 ▲リアス・バイシャスのアルバリーニョは魚貝のパエリアにもよく合う


◆シュナンブラン◆

フランスのロワール地方を本拠とする高貴な品種です。
サヴニエールSavennièresやヴヴレ Vouvray などのワインで使われます。
甘口ワインにもなります。

ブラインドテイスティングをするとリースリングと間違えることがあります。

アンズのような風味や、ときに口の中に粘りつくような感触があります。
酸味が豊富で、この酸味の高さがシュナン・ブランの高級ワインの寿命を長くしています。

南アフリカでも主要品種として用いられ、スティーン steen とも呼ばれます。

savennieres_coulee-de-serrant
 ▲サヴニエール・クレ・ド・セランは蜜のようなねっとりとした味わい


◆ゲヴュルツトラミネール◆

ものすごくエキゾティックで香りにパンチのある、アロマティックなブドウです。
果皮の色がピンクがかっており、濃い色の白ワインになります。

フランスのアルザス地方が伝統的な本拠地で、辛口にも甘口にも造れますが、辛口でもやや甘く感じます

アルコール感が高く、酸味は穏やかで、フルボディ。
バラの花
ライチのような芳香が強く、果実味も豊かなワインになります。

20110601l'agape

 ▲アルザスのゲヴュルツトラミネールは本当にバラやライチの香りがする


◆グリューナー・フェルトリーナー◆

オーストリアの土着品種で、白い花や草のような香りがします。
ぼくはアロエのような香りも感じます。

味わいは青リンゴ系の果実味があり、リースリングをよりキリッとしたような印象です。

この品種については、このブログで以前に記事にしていますので、こちらもご覧ください。
オーストリアを代表する白ワイン「グリューナー・フェルトリーナー」はとてもクールでファッショナブル!

gruner_veltliner_s
 ▲グリューナー・フェルトリーナーはオーストリアを代表する白ブドウ


◆ミュスカデ◆


フランス・ロワール地方、ロワール河口の大西洋沿岸部で広く栽培されているブドウ品種です。

ライトボディで爽やかな辛口の白ワインになります。
香りが穏やかで際立った特徴がないため、ワインはシュール・リー製法で造られるのが主流です。

シュール・リーとは白ワインの製法のひとつで、
アルコール発酵後ワインを滓引きせずにそのまま発酵槽の中に放置して、
滓(おり)の上にワインを接触させ続けることで滓由来の風味をワインに取り込む技術です。

シュール・リーを行う代表的なブドウ品種は、ロワール地方のミュスカデと日本の甲州です。

ワインは酸味が豊富で、ソーヴィニヨン・ブランのワインをさらに細くしたような味わいです。
ぼくはブラインドテイスティングすると甲州と間違えることがあります。

muscadet
 ▲ミュスカデ・セーヴル・エ・メーヌはキリッと辛口の白ワイン


◆セミヨン◆

辛口ワイン、甘口ワインの両方に用いられる白ブドウです。
フランス・ボルドー地方では伝統的にソーヴィニヨン・ブランのブレンド相手となる品種ですが、セミヨン自体も良い白ブドウです。

セミヨンは酸味が低く、香りはやや地味ですが、ソーヴィニヨン・ブランと組むことでワインにコクを与えます。

貴腐菌がつきやすく、ボルドーのソーテルヌ地方では甘口ワインの主役的なブドウとなります。

オーストラリアではセミヨン単体で辛口ワインが造られ、ハンター・ヴァレーという産地が有名です。

suduiraud
 ▲シャトー・スュデュイローはソーテルヌの甘口ワイン


◆ヴィオニエ◆

暖かい気候に向いており、フランス・ローヌ地方が本拠地です。
当地のコンドリュー Condlieu とシャトー・グリエ Chateau-Grillet というワインが有名です。

黄色い花の香りを思わせるアロマティックな品種で、桃やアンズのような風味を伴います。
ワインはアルコール度が高く、酸味は低くミディアム~フルボディになります。

chateau_grillet
 ▲シャトー・グリエはなかなかお目にかかることのない希少なワイン


どうでしたか。
白ブドウにも、いろいろな種類があるのですね。

それでも、これまで紹介したものは白ブドウ全体からしたら極々一部です。
このほかにも、イタリア、スペインなどには土着のブドウがたくさんありますからね。

ワインライフの中で、たくさんのブドウに出合えたら面白いですね!

okiraku-koza_banner


ピノ・グリは果実味しっかりコクがあって美味しいワイン ~ ピノ・グリのグリはグレーの意味で、果皮はややピンク色をしていますが白ブドウのひとつです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

シャルドネリースリングソーヴィニヨン・ブランに続いて4つめの白ブドウは何にするか迷いましたが・・・
白ブドウの4つめはピノ・グリにします!

◆ピノ・グリ◆

ピノ・グリは、「ピノなんとか」と呼ばれるブドウ品種のひとつです。
ほかの「ピノ」には、ピノ・ノワール(黒ブドウ)、ピノ・ムニエ(黒ブドウ)、ピノ・ブラン(白ブドウ)などがあります。

ピノ・グリのグリはグレーの意味で、果皮はややピンク色をしていますが、白ブドウのひとつです。

hugel_pinot_gris
 ▲アルザス地方のピノ・グリ


ピノ・グリの本拠地はフランスのアルザス地方です。
イタリアではピノ・グリージョと呼ばれます。

ピノ・グリは、桃やアンズやオレンジの皮のような風味が豊かなワインです。

果皮がピンク色なので
他の白ワインに比べるとワインの色も若干濃くなりやすく、味わいにコクが出やすいのもこのブドウの特徴です。
そのため赤ワインの少ないアルザス地方では、豚肉など肉料理に合わせることもよくあります。

ピノ・グリは酸味は際立って高くありませんが、熟しやすい品種で、アルコール度が高くなりやすく、すこし甘く感じることもあります。

ピノ・グリのワインは印象として少々肉厚に感じることが多く、たいていミディアムボディで、ものによってはフルボディと呼べるものもあります。
樽香はつけません。

ピノ・グリは、アルザス地方で重要なブドウ品種ですが、
イタリア北部全体で広く栽培されているほか(ピノ・グリージョ)、ドイツでも植えられています。
ドイツではルーレンダーと呼ばれます。

カリフォルニア州でもピノ・グリを造る生産者が増えてきています。
しかし大量生産的なワインが多く、なぜかイタリアに倣って「ピノ・グリージョ」とラベルに書かれており、香りも風味もニュートラルで特徴のないワイン、もしくは中辛口でやや粗野な甘味を感じるワインがよく見られます。。

そのほか近年の動きとしては、ピノ・グリはアメリカのオレゴン州で成功を収めています。
ニュージーランドのピノ・グリも果実味がしっかりして美味しくて、ぼくもたまに飲みます。

sileni_pg

写真は2年前にセブ島のビーチで飲んだニュージーランドのピノ・グリです。
至福のひとときでした~!


okiraku-koza_banner

キリッと冷やしたソーヴィニヨン・ブランを太陽の下で、アウトドアで飲むと最高ですね ~ バーベキューに白ワインを持参するなら迷わずソーヴィニヨン・ブランをオススメします!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

シャルドネ、リースリングに続いて今回は白ブドウの3つめ「ソーヴィニヨン・ブラン」です!

◆ソーヴィニヨン・ブラン◆


ソーヴィニヨン・ブランも、ぼくの大好きなブドウ品種のひとつです。

ソーヴィニヨン・ブランはとても独特のキャラクターを持った白ブドウです。

nz_sb
 ▲ニュージーランド南島マールボローのソーヴィニヨン・ブラン


ソーヴィニヨン・ブランは酸味が豊富で、とても際立った香りと風味を持っています。
ハーブ青草、刈り取ったばかりの芝生のような香りに加え、ときにネギのような香りを伴います。

果実にたとえると、グレープフルーツのような香りと風味ですね。
より温暖な地域で作られると、「完熟した」グレープフルーツやパッションフルーツのようなニュアンスも感じられます。

ワインはほとんどライトボディですが、中にはミディアムボディと言ってよいタイプのものもあります。

典型的なソーヴィニヨン・ブランのワインを一言で表現すると
「フレッシュで若々しく、酸味が豊かで、さわやかな辛口の白ワイン」
といったところでしょうか。

白身魚のカルパッチョ(刺身も)、スモークサーモン、ホワイトアスパラガスなどとよく合います。

また酸味とともに、グレープフルーツの皮をかんだ後のような心地よい苦味が
後味に残るのもソーヴィニヨン・ブランの特徴です。
そのため、グリエ(焼いた)料理にもよく合います。
川魚たとえば鮎の塩焼きとか、塩の焼き鳥にもピッタリですよ。

フランスには、ソーヴィニヨン・ブランの伝統的な本拠地が2ヶ所あります。

ひとつはロワール地方
ここではサンセール Sancerre とプイィ・フュメ Pouilly-Fumé という2つの有名なワインがあります。
ロワール地方のソーヴィニヨン・ブランは、極々一部の例外を除いて樽香をつけることはありません。

もうひとつはボルドー地方
ボルドーではソーヴィニヨン・ブランはしばしばセミヨンという白ブドウとブレンドされます。
この場合は樽香をつけることがよくあります。

ソーヴィニヨン・ブランはイタリア北部、南アフリカ、チリ、カリフォルニア(フュメ・ブラン Fumé Blanc と呼ばれることが多い)などでも造られていますが、
フランス以外で最も有名なソーヴィニヨン・ブランの産地はニュージーランドです。

ニュージーランド南島北部のマールボローという産地のソーヴィニヨン・ブランは、
国際的にも品種特性の基準とまで言われるほど有名で、
完熟グレープフルーツやパッションフルーツなどの凝縮感ある風味豊かなスタイルです。

夏など暑い時期にキリッと冷やしたソーヴィニヨン・ブランを太陽の下で、アウトドアで飲むと最高ですね。
バーベキューに白ワインを持参するなら、迷わずソーヴィニヨン・ブランをオススメします!

okiraku-koza_banner

リースリングは高貴なブドウでフレッシュ&フルーティ&フローラル!~ 甘いとも辛いともいえる微妙な味わいに「白ワインって、なんて美味しくなれるんだろう!」と感じます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

気楽にワインを学ぼう!がコンセプトのこのブログ。
前々回からタイトルを「早稲田ワインアカデミー」としました。

ワインに興味はあるけれど、ワインって何だかムズカシそう・・・
ワインを楽しむのに必ずしも知識は要りません。
でもワインの基本を知ると、ワインがもっと楽しくなります。

ブログ「早稲田ワインアカデミー」は、ワイン初心者の方にもワインをよく飲む方にも気軽にお読みいただける、オンライン・ワイン教室です。

・・・てなわけで、前回のシャルドネに続き今回は白ブドウの2つめ「リースリング」です!


◆リースリング◆

リースリングは、ぼくが個人的に大好きなブドウ品種のひとつです。

リースリングの本拠地は、ドイツとフランス・アルザス地方です。

ドイツとアルザスの素晴らしいワインが、このリースリングというブドウを文句なしの高貴な品種として世に知らしめました。

robert-weil-riesling-trocken2011
 ▲ドイツ・ラインガウ地方のリースリング ~ TROCKEN は「辛口」の意味


ドイツとアルザス以外で、リースリングがたくさん植えられている産地は数えるほどしかありません。

ドイツの隣国オーストリア、オーストラリアのクレア・ヴァレー Clare Valley、ニューヨークのフィンガーレイクス Fingerl Lakes あたりが有名でしょうか。

いくつかの点で、リースリングはシャルドネとは正反対で対照的なブドウ品種です。

シャルドネは木樽で飾り立てられるのに対し、リースリングには決してそんなことはしません。

シャルドネはフルボディでときにマッチョなワインになるのに対し、
リースリングはたいていライトボディでフレッシュ、爽やかなワインになります。

リースリングのこのフレッシュで華麗な性格と比較したら、シャルドネワインの多くは不格好に見えてしまうかもしれません。。

リースリングならではの特徴は、酸味が豊富で、低~中程度のアルコール度数、そしてあふれんばかりの青リンゴや白い花の香り・風味でしょう。

リンゴをかじったときのような果実感の厚みと酸のバランスが良いのです。
リースリングの特徴を一言でいうならば、フレッシュ&フルーティ&フローラルです。

ドイツのワインは甘いものが多かったので、リースリングは甘いワインだという認識がいまでも一般的です。
しかし、フランスのアルザス地方はもちろん、現在ではドイツでもリースリングワインの多くは辛口に造られています。

リースリングというブドウは、生産者が造りたいワインのスタイルによって、甘口ワインにも辛口ワインに造ることができるのです。

また技術的には辛口ではないリースリングワインでも、実際に口に含むとそれほど甘く感じない場合もあります。
それは、高い酸味が甘味の印象をカットしてしまうからです。

ぼく自身もリースリングのワインを飲むと、最初に豊富な果実味を感じた後、すぐに強靭な酸味が追いかけてきて覆い隠すような印象を持つことが多いです。

ぼくは辛口のリースリングが大好きです。
アルザスのも好きですが、最近はドイツの辛口リースリングが美味しくてたまりません。

ぼくと同じで辛口のリースリングがお好きでしたら、
ドイツのリースリングワインで、ラベルに TROCKEN (トロッケン = 「辛口」の意味)というコトバが書かれているものを探してみてください。

甘口だの辛口だのという議論を超えた、甘いとも辛いともいえる微妙な味わいに、
白ワインって、なんて美味しくなれるんだろう!と感じるはずです。

お店で売られている白ワインはシャルドネが多いので、リースリングを好むようになると「ワイン通」の領域に一歩踏み入れた感じになります。

ワインショップに行ったらリースリングワインの棚に直行するか、お店の人に「リースリングを探してるんですけど」と言ってみましょう。
ワイン初心者だと思われないはずです。

昼時にレストランで軽くワインランチする機会があったら、リースリングがリストにないか探してみましょう。
リースリングは軽い味付けの食事によく合います。
蒸した野菜、蒸した豚肉、ゆでたソーセージ、キノコ料理などにピッタリです。

実はリースリングには、日本人ならではの楽しみ方があります。

それは鍋物です。リースリングは鍋に合うのです!

おそらく日本の鍋物のほとんどに合うと思いますが、
ぼくは、白菜やシイタケや豆腐とタラなど白身魚を入れたあっさり鍋にリースリングを合わせるのが大好きなんですけどね。

どんな鍋に合うか、あなたも試してみてはいかがでしょうか?

okiraku-koza_banner

白ワインを飲んで樽の香りがしたら十中八九シャルドネ!~ シャルドネは果実由来の特徴が乏しいのが特徴なので、木樽で風味をつけて「化粧」することが多いのです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインには、

● 品種の名前を名乗るワイン(ラベルに品種名が書かれている)
● 土地の名前を名乗るワイン(ラベルに品種名が書かれていない)

の2つがあります。後者はヨーロッパのワインに多く見られます。

単一品種でワインが造られることもあれば、いくつかのブドウ品種がブレンドされることもあります。

今日から、白ブドウの中でもとくに重要な品種について書いていきます。
トップバッターは、世界中で最も広く栽培されている白ブドウ「シャルドネ」です。


◆シャルドネ◆

シャルドネは世界有数の偉大な辛口白ワインやスパークリングワインを生み出す、高貴なブドウです。
シャルドネの代表はフランス・ブルゴーニュ地方の白ワイン
もうひとつがシャンパーニュです。

ブルゴーニュ地方の白ワインはそのほとんどがシャルドネから造られますが

ムルソーピュリニー・モンラッシェシャサーニュ・モンラッシェといった村の白ワインがとくに有名です。

モンラッシェコルトン・シャルルマーニュなど特級畑の最高級ワインも多くみられます。

もちろんデイリーワイン(日常的なワイン)としても、シャルドネは世界中で大量に流通しています。

シャンパーニュの場合はシャルドネだけで造られることもありますが、多くは他のブドウ(ピノ・ノワールとピノ・ムニエ)とブレンドされます。


chassagne-montrachet2014_gagnard
 ▲上品に輝くシャサーニュ・モンラッシェ ~ ブルゴーニュのお手本のようなシャルドネの白ワイン


シャルドネは世界中すべてのワイン生産国で栽培されています
その理由は2つあります。

①世界中のいろいろな気候に幅広く適応できるブドウ品種だから
②シャルドネとラベルに書かれているとワインがよく売れるから

シャルドネというブドウは、産地の気候によってかなり特徴が異なります。

ソーヴィニヨン・ブランやリースリングなど他の白ブドウに比べると、シャルドネは一般に酸味はやや穏やかで比較的まろやかな口当たりの白ワインになります。
しかしフランス北部シャブリのような冷涼な産地では、酸味が豊富でキリッとしたワインにもなります。

逆にカリフォルニア、チリ、オーストラリアなどの温暖な産地では酸味は穏やかで、口当たりふくよかなフルボディの白ワインになります。

シャルドネのワインの多くは木樽で熟成されます
すると、ワインに木樽の香りや風味がつきます。

木樽の香りのことを樽香といい、
樽香の顕著なワインのことを、俗に「樽がきいている」と表現します。

樽のきいたシャルドネがあまりにも一般的なので、消費者の中には樽の風味をシャルドネの風味だと混同してしまう人も多く見られます。

グラスに注いだシャルドネワインに、トーストのような、いぶした木のような、ナッツのような、バニラのような香りがしたら、それは木樽の要素であってシャルドネというブドウ自体の特徴ではありません。

ワインの中にシャルドネ自体の香りを探すとしたら、平均的に言えば白桃とか洋梨などの食べて酸っぱくない果実でしょうか。
涼しい地方のシャルドネにはリンゴのような香り、カリフォルニアや南米、オーストラリアなどの温暖な産地では黄桃やパイナップルなどトロピカルフルーツの香りが感じられます。

でも、実はシャルドネ自体の果実の香りはそれほど強くありません。

他のブドウ品種に比べて、シャルドネは果実由来の特徴が乏しいのが特徴です。
だからこそ、シャルドネのワインは木樽で風味をつけて「化粧」することが多いのです。

白ワインを飲んで木樽の香りがしたら十中八九シャルドネ!
といっても過言ではありません。

シャルドネの中でも上級のものは、木樽の中でも高価なフレンチオーク樽が使われますが、
安い価格帯のものは、実際には木樽は使われずに樽の木片(オークチップ)をワインに一定期間漬けて樽香をつけたり、場合によっては樽の香りがする液体香料を添加して樽香をつけたりすることもあります。

なお、フランスの原産地統制呼称ワインにオークチップを使用することは現地の法律で禁止されています。

イタリア北部やフランスのシャブリなどの地域ではシャルドネでも樽熟成させないことが多いです。
またカリフォルニアやオーストラリアなど樽香をつける典型的な産地の中にも、最近ではあえて木樽を使わないスッキリした味わいのシャルドネを造る生産者も現れてきています。

このように産地や生産者によって性格が七変化するブドウ品種、それがシャルドネだといえるでしょう。

okiraku-koza_banner


ワインを味わうのに知識なんて必要ありませんが、ワインのことを知るとワインがもっと楽しくなります ~ ワインを学ぶと、安くて美味しいワインが選べるようになります!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

このブログは毎日1記事ずつ書いています。
昨日で50個目の記事となりました。

今回が51個目。
50回を超えたのを機に、今日からブログのタイトルを変えました。

「早稲田ワインアカデミー」っ!

なんとなく、ワインをシッカリ学ぼう!というニュアンスが伝わってきませんか (笑)
あっ、でも「気楽にワインを学ぼう!」というコンセプトは変えていませんので。

なぜ早稲田かって?
それは、ぼくたちバイザグラスの会社が早稲田にあるからです!

hiroyuki_sommelier

ぼくがワインを飲み始めたのは、もう25年くらい前のこと。

社会人になってオトナの店に行きたくて、
少ない給料でバーやレストランなど洒落たお店をちょくちょく巡っていました。
そんな中、ある頃からシャブリなど辛口の白ワインを飲んで美味いっ!と感じるようになったのがきっかけです。

その後は赤白問わず家でも外でもワインを飲む機会は増えていきましたが、
「飲む」のが専門で、ワインの知識はほとんどありませんでした。

飲んだワインの名前やブドウなどを調べたりもするのですが、
理解が断片的であまり蓄積されず、すぐに忘れてしまっていました。。

ワインを飲む頻度が増えるうちに、値段がリーズナブルで美味いワインに当たることもあるのですが、
困ったことに、美味しくないワインに当たることも多くなっていきました。

美味しいワインを選ぶための知識がなかったのので、当たり外れも結局「運次第」のところがありました。

もちろん高いお金を払って「良いワイン」を飲めば美味いワインに当たる確率は跳ね上がるわけですが、
それでは家計が持ちません。。

本当にワインを楽しみ続けるためには、

値段が手頃かつ美味しいワインを選ぶ必要がある

ということに気づきました。

そして、

値段がリーズナブルで美味しいワインを選べるようになるためには、やはりワインを勉強する必要がある

という結論に至ったのです。

ワイン飲む暦が15年を過ぎた頃、
ワインについてまとまった知識を身につけたい、ちゃんと勉強してみたいという思いがいよいよ強くなり、
ついにワインスクールの門を叩きました。

のべ3年間スクールに通い、本業のかたわらワインバーで4年間アルバイトして、ソムリエ資格も取りました。

そのようなぼく自身の経験から、次のことが言えます。

「ワインのことを知ると、ワインがもっと楽しくなる」

”ワインを味わうのに知識なんて必要ない”
 ・・・ 確かにそのとおりです。

たとえばテニスのルールを知らなくても、テレビでテニスの試合を観たら、それなりに楽しめますよね。

でもテニスのルールや打ち方のテクニック、戦術、それぞれの選手の特徴などを知れば、テニスをより一層楽しめると思いませんか。

ワインについても同じことが言えるのです。

とはいえ、ワインって種類もものすごく多いし、何から手をつければよいか・・・
と悩むものです。ぼく自身もそうでした。

雑誌やネット等で、
あのワインは美味しいよとか、
このワインはこんな料理に合うよとか、

その時その時の個別的・断片的な情報はたくさん流れてくるのですが、
ほとんどは読み捨てられていく使い捨てのような情報(フロー)ばかりで、
なかなかまとまった知識が蓄積(ストック)されていきません。。

ワイン全体を「森」にたとえれば、ただ流れてくる個別的なワイン情報は「枝」とか「葉」、せいぜい「木」みたいなものです。

ですから、ぼくはワインバーにいたときも、
いまのバイザグラスのワインセミナーでも、

お客様に説明するときは、
枝葉のような情報の中で埋もれてしまわないように、
まず「ワインの全体像」から入っていただくことをコンセプトとしています。

そうすれば、個々の木々や枝葉に翻弄されることなく、
空を飛ぶ鳥の目のように、「ワインの森」全体の様子を眺めることができるからです。

「ワインの全体像」をつかんでいれば、

いま飲んでいるワインがワイン全体の中ではどのような位置づけになるのか
・ この次はどういったワインを試してみると面白いか

等が体系的に考えられるようになるのです。

そのために、そんなに込み入った知識は必要ありません。
まず必要なのは、浅くてもワイン全体を網羅した骨格つまり基礎的知識です。

この基礎的な部分についてはシッカリと身につけて土台を作ってしまったほうが、
その後のワインライフがより楽しく、充実したものになる
ことは間違いありません。

「ワインの基本を学んで、ワインライフをさらに充実させよう」
「一生使えるワイン知識を身につけてみませんか」

そんな気持ちをこめて、
ちょっぴりマジメなワインブログ「早稲田ワインアカデミー」を書き続けようと思います。

よろしくお願いします。

okiraku-koza_banner

ブドウ社会のロイヤルファミリー ~ 高貴なブドウ品種はどこにいっても優秀ですが、やはり自分の国で育つことでワインの王様になります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

蜂の群れには女王がいます。
ゴリラの社会にはシルバーバックなボスがいます。
人間の世界にも皇族や王族がいます。

ブドウ王国にも貴族がいます

高貴なブドウ品種から造られるワインは、単なる「良いワイン」ではなく「偉大なワイン
になる可能性を持っています。

prunotto_barolo_vigna_colonnello2008
 ▲バローロのブドウ品種ネッビオーロは外国でも植えられてはいるが、やはりイタリア・ピエモンテ州のものが最上


高貴なブドウ品種はみな、他のどの産地で育つよりも「その産地こそが文句なしに王様だ!」といえる本拠地を持っています。

高貴なブドウ品種が本拠地で育ってできたワインはあまりにも素晴らしいので、
遠く離れた産地のワイン生産者をも刺激して、世界各地で同じ品種のブドウが植えられるようになります。

そうした高貴なブドウ品種はやはり、遠く離れた土地でも立派なブドウに育ちますが、本拠地ほどにはならないことも多いです。
どうやらブドウの世界では、環境適応能力は「高貴さ」の必要条件ではなさそうです。

高貴なブドウ品種の典型的な本拠地、つまり最も素晴らしいワインができる場所は以下のとおりです。
  • シャルドネピノ・ノワール・・・フランスのブルゴーニュ地方
  • カベルネ・ソーヴィニヨンメルロー・・・フランスのボルドー地方
  • シラー・・・フランスのローヌ地方北部
  • ソーヴィニヨン・ブランシュナンブラン・・・フランスのロワール地方
  • ネッビオーロ・・・イタリアのピエモンテ州
  • サンジョヴェーゼ・・・イタリアのトスカーナ州
  • リースリング・・・ドイツのモーゼル地方・ラインガウ地方
世界的に有名な国際ブドウ品種の本拠地は、やはりフランスが多いですね。

バイザグラスのワインセミナー「ワイン入門」編では、代表的な品種ごとの「典型的」な特徴を覚えていただくためにも、フランスワインを中心にテイスティングしています。

いろいろなワインを比較して理解するには、まず大元となる基準があったほうが効果的・効率的です。
そのため、まずフランスワインの外観・香り・味わいを「基準」として覚え、その上で色や品種ごとに地域比較をしていくようにしているのです。

okiraku-koza_banner


ブドウ品種にはそれぞれ性格や育ちに違いがあります ~ 世界には二つとして同じ境遇のブドウはなく、それこそがテロワールなのです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ブドウ品種ごとの違いを生み出す要因にはいろいろなものがありますが、
大きく2つに分けることができます。

1.ブドウそのものの性格的な傾向と、2.生育上の特徴です。

pinotnoir1
 ▲ピノ・ノワールは粒が比較的大きいのでタンニンの穏やかなワインになる


1.性格的な傾向

ブドウの性格的な傾向とは、ブドウの果実それ自体が持っている特徴です。
たとえば果皮の色や風味などです。

● 果皮の色

果皮の色は、ブドウ品種を区別する最も根本的な要素だといえます。
すべてのブドウ品種は、ブドウの果皮の色から白ブドウか黒ブドウのどちらかに分けることができます。

甲州やゲヴュルツトラミネールのように、白ブドウでも果皮に赤みがあるものは「グリ」(= グレー)ブドウと呼ばれることもありますが、大きく分ければ白ブドウの範囲に含まれます。

● 香りの性格

ミュスカ(マスカット)やゲヴュルツトラミネールのように、ワインになると花のような香りと風味をもつブドウ品種もあれば、ソーヴィニヨン・ブランのように青草やグレープフルーツのような香りの特徴をもつブドウ品種もあります。
シャルドネのように香りも風味も特徴がそれほどなく、ニュートラルなワインができるブドウ品種もあります。

● 酸味の性格

自然と高いレベルの酸味を持つ傾向のあるブドウ品種があります。
こうしたブドウは爽やかでスリムなワインになりやすいです。

● 果皮の厚さや果粒のサイズ

果皮に厚みのある黒ブドウは、果皮の薄いものに比べて自然とタンニン豊富なワインになりやすいです。

また、果粒の小さいブドウのほうがタンニンが豊富なワインになります
それは単位容積あたりの「果皮+果汁」に占める果皮の比率が大きくなるからです。

逆に、ピノ・ノワールのように比較的果粒の大きいブドウはタンニンが穏やかなワインになります。

ブドウ品種が持つ性格的な傾向は、ワインになっても明確に現れます。
たとえばカベルネ・ソービニヨンのワインは、メルローのワインに比べるとタンニンはより強く、アルコール分はやや低めになる傾向があります。
これは、カベルネ・ソービニヨンとメルローががそれぞれ持っている性格の違いによるものです。


2.生育上の特徴

生育上の特徴とは、たとえばブドウの木がどのように生育するか、どのように実がなるか、どのくらいの期間で成熟するかなどです。

ブドウ畑でブドウがどのように生育するかは、ブドウ農家にとって非常に重要な問題です。
なぜならブドウの木の生育傾向は、その土地で栽培するのがどれだけ容易か、あるいは困難かを決定付けるからです。

その場所でどんなブドウを栽培するかを決めるに当たっては、次のような要因が考慮されます。

● 果実が成熟するまでにどのくらいの期間がかかるブドウか

冷涼な気候でブドウが栽培できる温暖な期間が短い地域では、早熟型のブドウが適しています。

● ブドウの房に果粒がどれだけ密集するブドウか


高温多湿な気候の地域では、房に果粒の密度が高いブドウは白色カビによる病気の問題が発生しやすくなります。
フランスでは1870年代に「ベト病」というブドウの木の病気が流行し、白色カビによって落葉、落花、落果などの被害が相次ぎました。

● 葉や枝をどのくらい生やすブドウか

肥沃な土壌では、たくさんの葉っぱや枝を伸ばす習性のあるブドウは枝葉が果実を覆ってしまい、成熟に必要な日光を果実が十分に得られなくなってしまいます。


ある種のブドウが特定の場所で非常によく成育し、結果として素晴らしいワインになる理由は、ものすごく複雑です。

暖かい空気と涼しい空気のバランス、風や雨の量、日光の照射角度など諸々の要因が、良いワインをつくるブドウを育てる理由となっていますが、そうした諸要因の組み合わせをシンプルににモデル化して説明することは困難です。

世界には、これらの要因の組み合わせが完全に一致するブドウ畑は二つとしてありません。
これがまさにテロワールなのであり、単純にこうだと説明することは難しいのです。

【関連記事】
テロワールとは「地味」のこと ~ 「このワインにはテロワールがよく表現されている」というのは、土地の風土や土地の味がワインによく反映されているという意味です

okiraku-koza_banner


ワイン用のブドウはヴィティス・ヴィニフェラ!その中に1万種類以上のブドウ品種があるから一生かけても飲みきれません ~ ワインってまさにライフワークですね

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

これからしばらくブドウ品種のお話を書いていこうと思っています。

「ブドウ品種」という言葉は、ある特定の種類のブドウの木になる果実のことを指しています。

たとえばカベルネ・ソービニヨンというブドウ品種は、カベルネ・ソービニヨンという種類のブドウの木になる果実です。
シャルドネというブドウ品種は、シャルドネという種類のブドウの木になる果実です。

なんでこんなまどろっこしいことを言うのかというと、
「品種」という言葉は、科学的には少々厳密に使う必要があるからです。

genus_grapes

ブドウの木も生物のひとつですが、生物学では動植物の分類方法にルールがあり、

目(もく) → 科(か) → 属(ぞく) → 種(しゅ)

というように、より大きな分類からより細かな分類へと分け方に階層があります。

生物の授業ではないので(ぼくも専門家ではありませんから)、ワインに関係する部分だけを取りあげますが、

ブドウに関していえば、
  • 属(ぞく; genus)はブドウ属で、ラテン語で「ヴィティスVitis といいます。
  • 属をより細分化したもの、つまり属の中の分類単位を種(しゅ; species)といい、ワインに使われるブドウのほとんどは「ヴィニフェラVinifera 種です。
  • 種(しゅ)の中に含まれる個々の多様な種類のことを変種(variety)といい、これが、カベルネ・ソービニヨン、シャルドネなど、ぼくらが一般に「ブドウ品種」と呼んでいるものです。

だから、ワイン造りに使われるブドウのほとんどは

ヴィティス・ヴィニフェラ

と呼ばれる種(しゅ)のブドウです。

そして、ヴィティス・ヴィニフェラ種の中に、カベルネ・ソービニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、・・・といった諸々のブドウ品種があるのです。

ヴィティス・ヴィニフェラはワインを学んでいるとよく出てくる用語なので、ぜひ覚えましょう。

ヴィティス・ヴィニフェラの原産地はヨーロッパから西アジアにかけての地域です。

北アメリカを原産地とするブドウとしては「ヴィティス・ラブルスカ」という種のものがあります。
たとえばコンコードというアメリカ原産のブドウがあり、ジュースやゼリーなどに使われています。

ヴィティス・ラブルスカでもワインは造れますが少数派です。ワインを造ると独特の風味が出てくるため、あまり一般には好まれないからです。


ヴィティス・ヴィニフェラの中には1万種類以上のブドウ品種が存在します。

もしこれらのブドウのワインがすべて入手可能だとして、毎日1種類ずつ飲み続けたとしても、全種類を経験するには27年以上かかる計算です!

1万種類の中には、とてつもなく素晴らしいワインのできるブドウ品種もあれば、いわゆる並のワインしかできないブドウ品種もあります。

しかし、ほとんどのブドウ品種は外国に輸出されることなく、産地やその周辺の地域だけで消費されています。

もしローカルなワインに対する探究心をどうしても満たしたくて、時間もお金も存分に有り余っているのであれば、
スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャなどの国々に行って、田舎の村々をくまなく旅してみれば、おそらく1500品種くらいには出合えるのではないでしょうか。。

ぼく自身も含めて、ふつうにワインを楽しむ生活を送っている人が一生に出合うブドウ品種はせいぜい50品種、どんなに頑張っても100品種もいかないように思います。

そんな意味でも、ワインってまさに一生かけて楽しめるライフワークですね!

okiraku-koza_banner

ブドウがすべてのワインの出発点!~ ブドウ品種はワインの根本的な性格を決定付け、ワイン生産者のブドウの育て方やワイン造りの工程にも影響を与えます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワイン産地を訪れるのは楽しいものです。
ブドウの木々がたくさん並んでいるのを見ると、ワインというものが大地から、ブドウの木から、そして人間の労働から生み出される「農産物」なのだということを再認識します。

感覚的にも科学的にも、大地とワインとの間をつなぐものがブドウです。

ブドウ品種を知ることは、ワインを分類するうえで最も簡単な方法ですし、
なぜ世界にこんなに多くの種類のワインがあるのかを理解するにも、最もわかりやすいアプローチです。

mitolo_jester_shiraz
 ▲オーストラリアのシラーズ: 黒コショウのような香りがするのはシラーズというブドウ品種に由来する特徴

ブドウはすべてのワインの出発点です。

ブドウ品種はワインの根本的な性格を決定付けます
そしてワイン生産者が行なう作業にも影響を与えます

最近飲んだワインを思い返してみてください。
どんな色でしたか?

もしグリーンがかった黄色でしたら、きっとそれは白ブドウから造られたからでしょう。
もしピンク色や紫色でしたら、きっとそれは黒ブドウから造られたからでしょう。

青草のような香りがしましたか?
それとも青リンゴのような香りでしたか?

渋くて硬い感じのするワインでしたか?
それともソフトで豊満な印象でしたか?

どのようなワインであれ、その特徴の大部分がブドウ品種に由来しています。

外観、香り、風味、甘味、酸味、渋味、アルコール分・・・
ブドウ品種こそが、そのワインが示す特質を大きく支配しているのです。

ブドウがどのように育ったか、そのブドウが受けた日照量や水分量、収穫時点での成熟度なども、個々のワインの性格を大きく左右します。
しかし生産者がどのようにブドウを育てるかも、ブドウ品種次第のところがあります。

生産者の製法(木樽で熟成させるなど)もワインに特徴を与えますが、生産者がどの製法を選択するかも、結局はブドウ次第です。

世界にはいろいろなブドウ品種がありますが、それぞれが違った角度から、農法やワイン造りのテクニックに影響を与えるているのです。

バイザグラスのワインセミナーでは、異なるブドウ品種のワインを比較テイスティングしながら、ワインの特徴や違いを体感することができます。
ワイン入門はもちろん、白ワイン飲み比べセミナーや赤ワイン飲み比べセミナーも行なっています。
ぜひ参加してみてください!

okiraku-koza_banner


ワインについて良くない話をするのは今日だけにしておきましょう ~ 酸化、熱劣化、ブショネ・・・イヤなヤツに出遭ったらすぐに気持ちを切り替えて、ほかの良いヤツ探しましょう!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回まで2回にわたって「良いワイン」の特徴について述べてきました。

フシギなもので、自分が好きなワインを「良いワイン」だという権利?はあっても、
自分が好きじゃないからという理由だけで「良くないワイン」よばわりするのは、あまり良しとされていません。

この場合は自分だけの基準を作るにとどめ、それを他人に押し付けたりしないように気をつけましょう。

corks
 ▲コルクはつねにブショネのリスクと背中合わせ


20年くらい前に比べれば、現在は「良くないワイン」は世の中にほとんど存在しません。
いまぼくらが「良くないワイン」と呼ぶもののほとんどは、
実際には「良くないワイン」というより「良くないボトル」のワインです。

もともとは良いワイン(すくなくとも普通のワイン)なのだが、
たまたまそのボトルの取扱いが悪くて瓶内のワインがダメになってしまったものです。
要するに状態の劣化したワインということです。

「良いワイン」に広く認められた特徴があるのと同じく、誰もが認める「良くないボトル」の特徴がいくつかあります。


●お酢のようになったワイン

自然の摂理として考えれば、ワインというものはブドウ果汁がブドウ酢になっていく過程の途中段階にある状態だといえます。

現代のワインは、テクノロジーと細心の注意を払った醸造のおかげで、ずっとワインの段階にとどまっていることができます。

でも、ごくまれに何かの間違いで、お酢へと進む一線を越えてしまったボトルがあります。
それは「良くないボトル」のワインです。


●化学的/細菌的な悪臭を伴うワイン

ごくまれに出合うイヤな臭いとして、マニュキュア除光液を想起させる臭いがあります。
醸造酒に含まれるアセトンという不純物が原因で生じる臭いです。

あと、硫黄のような臭いを強烈に持ったワインに出合うこともあります。
腐った卵、腐ったにんにく、燃やしたゴムのような臭いです。
温泉地に行くと感じる香りを強烈にしたような臭いといえば想像がつくでしょうか。

ワインにこうした臭いが強くあれば、それは「良くないボトル」です。


●酸化したワイン

ワインの香りも風味も、平板で弱々しくなってしまったものです。

もともとは良いワインだったのかもしれませんが、空気(つまり酸素)が何らかの理由で瓶内に入ってしまい、ワインが酸化してヘタってしまったものです。

これは「良くないボトル」です。


●熱劣化したワイン

ワインが暑い場所や温度の高いところで輸送されたり保管されたりすると、焼けたような風味になってしまいます。
たとえて言えば、シェリー酒や紹興酒のような香り・味わいになります。

熱劣化したワインは、たいていコルクの間から液漏れしていたり、瓶内から
コルクがすこし押し上げられて出っ張ったような形状になっているのでわかります。

こうしたものは「良くないボトル」です。

熱劣化の困るところは、あるボトルがそうだと、同じロットで輸送や保管されていた他のボトルも同様に熱劣化している可能性が高いということです。。


●コルク臭(ブショネ)

最も出合う確率の高い不良ボトルがブショネです。
ブショネは、カビ臭い湿ったダンボールのような臭いです。

ブショネは、コルクの傷み・劣化が原因で起こります。
そうして劣化したコルクに発生した悪臭が、瓶内でワイン自体に移ってしまい、ワイン本来の風味も劣化してしまいます。

【関連記事】
火打石、猫のオシッコ、馬小屋・・・ワインの香りは摩訶不思議! ~ 困ったブショネも一度はラッキー?


コルク栓を使ったワインボトルには常にブショネのリスクがあり
経験的に言うと100本に1~2本くらいの率で遭遇します。

ブショネは無論、「良くないボトル」です。

ワインについて「良くない」お話をするのは、このくらいにしておきましょう。
あなたがもしも「良くないワイン」や「良くないボトル」と出合ったら、「いい経験になった」くらいの気持ちにとどめて、ほかの「良いワイン」に移ればよいのです。

自分が本当に好きだと思えるワインに出合うこと、それがワインを一生の友とする楽しみなのですから!

okiraku-koza_banner

ヴォルネイで約200年ワイン造りを行うマルキ・ダンジェルヴィルのワインには「ティピシティ」が感じられた ~ ティピシティとは「産地らしさ」で、テロワール+ヒトから生まれます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

一般的な「良いワインの基準」は、ワインの持つバランス持続性深み複雑さ余韻産地らしさ(ティピシティ)などの要素から成り立っており、前回はこれらのうちバランスについてお話しました。

今回は、バランス以外の要素について書いてみます。

marquis_dangerville_volnay
  ▲ヴォルネイで200年にわたりワイン造りを行うマルキ・ダンジェルヴィルのワインには「ティピシティ」が感じられた


●持続性

持続性が長いワインとは、口の中にまんべんなく味わいが広がり、それがずっと続くような印象を与えるワインのことです。

テイスティングしたときに、舌全体に味わいが行きわたる前に途中で終わってしまうようなワインではなく、じっくりと舌全体にわたって味わいが感じられます。

昨今のワインは味わいの面で「短期集中型」のものが多いと思います。

口に含むとすぐに、果実味の凝縮感やバニラみたいな樽香などの「フルボディっぽさ」がドカンと襲ってきて一瞬「おぉーっ」という印象を持ちますが、
それが最初のインパクトだけで終わってしまい、口内全体にじっくりと味わいが広がってこないワインが多いですね。

そういうワインは持続性が短い(あるいは、ない)ワインだといえます。
そのようなワインは、たいてい強すぎるアルコール感やわざとらしい樽香を伴います。

そうではなくて、しっかりとした持続性の長さを持つワインは「良いワイン」の確かな印だといってよいでしょう。


●深み

ワインの深みも、「良いワイン」を語るうえで主観的かつ測定しにくい基準のひとつです。

イメージとして言うならば、
持続性が口内での広がりや時間軸など「ヨコ」方向の長さを指すのに対して、
深みというのは「タテ」方向の長さをいいます。

これを説明するには、逆から言ったほうがわかりやすいかもしれません。

深みのないワインのことを「平板なワイン」といいますが、それは味わいが薄くて平面的なワインです。
舌にあまり重さを感じません。

深みのあるワインというのは、舌が心地よく押されるようなコクやうまみがあって、口内で立体的に感じられる味わいを持つワインのことです。


●複雑さ

シンプルで直線的なワインも、時と場合によって楽しめる場面はたくさんあります。
暖かな昼下がりにアウトドアで飲む、キリッと冷えたフレッシュ&フルーティーな白ワインは格別ですよね。
そうしたワインはきっと、いつ飲んでも同じさわやかな味わいで、ぼくらを楽しませてくれることでしょう。

しかし、一口飲むたびにそれまでとは異なる風味・味わいの印象を与えてくれるワイン数分前・数秒前とは違った側面を見せてくれるワインもあります。

こうしたワインは複雑さのあるワインといいいます。

複雑さのあるワインは「良いワイン」です。

複雑さというコトバにも、絶対的な定義があるわけではありません。

香りや風味が単調(一面的)でなく様々な要素を持った(多面的)ワインのことを特に複雑なワインと言う専門家もいますし、
ワインが与える全体的な印象を総体的(しかし厳密ではない)・感覚的に複雑だという言い方をする人もいます。


●余韻

ワインを飲みこんだ後に口の奥のほうや喉に残る印象を余韻(または後味)といいます。
「良いワイン」は、飲み込んだ後も果実味やスパイシーさなどの風味が口内や喉で感じられます。

余韻は良いほうだけに働くとは限りません。

ワインによっては高いアルコール度数のせいで喉に熱さを感じる場合もあります。
強いタンニンのせいで喉の奥に苦味が残って感じられることもあります。
これらはどちらかというと、ネガティブな余韻です。
そもそも、飲み込んだ後は余韻も何も感じられないワインが多いのも事実です。。


●産地らしさティピシティ typicity)

産地らしさを判断するためには、その前提として、産地ごとの典型的な味わいを知っておく必要があります。

ですから、主なブドウ品種のワインの味わいの特徴、世界の伝統的産地で造られるワインの特徴などの教科書的な知識が不可欠となります。

たとえばピノ・ノワールというブドウの味わいの特徴、フランス・ブルゴーニュ地方のヴォルネイという産地で造られる赤ワインの典型的な性格などを知っていて、想像できるようになっているということです。

・・・こんなことを書いていたら、ぜんぜん「気楽にワインを学ぼう!」じゃなくなってしまいますね。。 (笑)

この辺りのことについては、いまは「ワインって奥が深いんだなぁ」といった参考程度に読んでください。
でもワインのこういった部分も、教科書的な学習とテイスティングの実践にある程度の時間をかければ、誰でもわかるようになります。

ティピシティ = テロワール + ヒト だといえます。
ティピシティは、気候・地勢・土壌など畑を取り巻く自然環境(テロワール)に加えて、その産地の生産者(ヒト)の作業も影響します。

ティピシティがしっかりと表現されているワインは「良いワイン」だと言ってよいでしょう。

【関連記事】
テロワールとは「地味」のこと ~ 「このワインにはテロワールがよく表現されている」というのは、土地の風土や土地の味がワインによく反映されているという意味です


これまでも述べてきたように、自分が美味しいと感じるワインこそが「良いワイン」です。

それでも
一般的な「良いワイン」の基準をあげるとするならば、
それはバランス持続性深み複雑さ余韻産地らしさ(ティピシティ)といった要素を満たすワインのことをいうのです。

okiraku-koza_banner

甘すぎず、渋すぎず、バランスがとれているのがいいヤツだ ~ ワインのバランスの良さは「良いワイン」であることを示す重要なポイントです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回述べたように、「良いワイン」とは、何よりも自分自身が飲んで美味しいと感じるワインのことです。
ワインの存在意義は、つまるところ飲む人に喜びを与えることなのですから。

そのうえでの話となりますが、
一般にワインがどの程度良いかというのは、経験を積んだワインの専門家たちの間である程度一致するような「良いワインの基準」を、どの程度満たしているかによると思います。

こうした「基準」はおおむね、ワインの持つバランス持続性深み複雑さ余韻産地らしさ(ワインコトバでは「ティピシティ」 typicity)などの要素から成り立っています。

これらの要素を完全に客観的に測定することは困難ですが、ワインの経験値を積んだ人たちがテイスティングすれば、ある程度は一致した印象を持つものです。

今回はワインの「バランス」について見てみましょう。

volnay_caillerets2003
 ▲数年前に飲んだプス・ドールの「ヴォルネイ1級畑カイユレ」2003年は秀逸なバランスの良さだった


甘味酸味タンニンの3つがワインの3大構成要素ですが、
4つ目の要素としてアルコール分が挙げられます。

ぼくたちがお店でグラスワインを飲みたいと思うのは、当然アルコールを期待しているからなのですが、
このアルコール分もワインの品質を語る上で重要な要素のひとつとなります。

ワインのバランスとは、
甘味、酸味、タンニン、アルコール分という4つの構成要素同士の釣り合い、調和の有無をいいます。


粗すぎるタンニン、強すぎる甘み、きつすぎる酸味などが感じられないとき・・・
つまりワインのどの要素も自分勝手に突出していないとき、そのワインは「バランスが取れている」といいます。

タンニンと酸味はワインを硬く角張った印象にさせる要素となります。
アルコールと甘味はワインを柔らかく丸い印象にさせる要素となります。

ワインのバランスとは、いわば硬さの面と柔らかさの面の相互関係であり、
バランスの良さは「良いワイン」であることを示す重要な指標だといえます。

販売されているワイン
の多くは、ほとんどの人にとって、ある程度はバランスがとれているものです。

しかし食べ物の味について特別な好き嫌いがある人、たとえば酸っぱいものはどれもダメだとか、甘いものは決して食べないなどのような人にとっては、ある種のワインはつねにバランスが悪いと感じてしまうかもしれません。

とはいえ誰もがバランスが悪いと感じるようなワインは売れなくて店頭から消えていくはずですから、普通に販売されているワインの多くは、まあまあある程度はバランスのあるものだといえるでしょう。

そうしたワインの中でも、
とくに良くバランスがとれているワインが、いわゆる「良いワイン」だといえるわけです。

ワインの味わいのバランスがどのように働くのかが手軽にわかる方法があるので紹介しておきましょう。

①ものすごく濃い紅茶を入れて、冷蔵庫で冷やします。

②それを口にすると、タンニン分が強くて渋味を感じるはずです
(バランスの悪い状態)

③そこにレモン汁を加えて口に含むと、口内の粘膜がキュッと締め付けられるはずです。レモンの酸味と紅茶のタンニンがお互いを際立たせてしまうからです
(バランスの悪い状態)

④次に砂糖をたくさん入れて口に含むと、それまでよりも口当たりが柔らかくなります。その糖分が「酸味+タンニン」の強さを相殺するからです(バランスの改善)。

ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

okiraku-koza_banner


ワインは品質評価よりも自分が美味しいかどうかが一番大切 ~ 自分の好みをワインコトバで伝えられるようになると、自分にとって本当に素晴らしいワインに出合えるようになります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

このブログを書き始めて6週間が過ぎました。
毎日1つずつ記事を書いているので、昨日で42記事目です。
とくにこの2週間は、ワインのテイスティングのことを集中的に書いてきました。

その中で「素晴らしいワイン」とか「良いワイン」といった言葉を、ぼくが一切使っていないことに気づきましたか?

ワインショップに入って
「さわやかな味わいのワイン」だとか
「土のような風味のワイン」だとか
「ミディアムボディのワイン」などといったワインコトバを使うよりも、

「今日の夕食用にとても良いワインください!」
とだけ言う方が、ぶっちゃけラクはラクですよね?

品質、もしくは価格に対する価値(いわゆるコスパ)は、多くの人にとってワインを選ぶ際の究極の関心事だと思います。

実際、よほど安い価格帯のガブ飲みワインでない限りは、ワインのマーケティングの大部分は「品質」という概念を中心に置いて展開されています。

ワインの生産者はいつだって、ワインコンクールでの受賞歴やロバート・パーカー氏のようなワイン批評家からの品質評価を自慢げにアピールしています。
そうした "高評価" は "高品質" を連想させるので、ワインの売上げアップにつながっていくからです。


20110528petit_bourgeois1
 ▲「プティ・ブルジョワ」ソービニヨン・ブランはネットで千円台で買えるお手頃ワインだが、ぼくにとっては素晴らしいワイン


しかし「品質の良いワイン」というものは、赤ワインにも白ワインにもありますし、甘口ワインにも辛口ワインにもありますし、どんな風味のワインの中にも存在します。

そのワインが高品質と言われているからといって、あなた自身がそれを美味しく感じるとは限りません。

高い評価のついているレストランに行っても、少しがっかりしてお店を出てきた経験はないでしょうか。

それと同じで、せっかく高評価がつけられているワインを買ってきても、飲んでみたらあまり美味しいと感じられず、残念に思うことは結構あるものです。

ぼく自身にあてはめてみても、ロバート・パーカー氏が高得点をつけたワインは一般に味が強すぎて、エレガント系の味わいが好きなぼくにとっては好みでないことが多々あります。

ですから、たんなる品質ということよりも、個人的な味わいの好みのほうが、ワイン選びではずっと重要なことなのです。

ワインには「品質のレベル」というものが確かに存在します。
しかし、ワインの品質評価というものは絶対的な指標ではありません。
そのワインがどれだけ素晴らしいかは、誰がそれを評価するかによるのです。

ワインの品質を測る道具は人間の鼻・口・脳です。
それは人によって異なるわけですから、そのワインが良いかどうかは、みなそれぞれ違った意見を持つのです。

もちろん一般の人々の意見と、日頃からテイスティングをしていてワインに対する嗅覚・味覚が訓練されている経験者たちの意見とを比べてみれば、後者のほうが品質のレベル(このワインがどの程度のワインか)については正しく評価できるでしょう。

しかし、自分が飲んでみて美味しいと思うかどうかが一番大切で、
それを決めることのできる最高決定権者は自分自身なのです。

だからこそ、たんに「良いワイン」という画一的な表現をするのではなく、
自分の好みをワインコトバで伝えられるようになればなるほど、自分にとって本当に素晴らしいワインに出合えるようになっていくのです。

okiraku-koza_banner

ワインショップに行って「チョコレート味のワインくださいっ」とは言わないように(笑) ~ ワインには様々な「風味」があります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインには「風味」があります。

風味を言葉で定義するのはちょっと難しいのですが、
「口の中で味とともに感じる香り」といったニュアンスでしょうか。
英語では flavor という単語が使われます。

sancerre_henri-bourgeois
 ▲フランス・ロワール地方のサンセールはグレープフルーツや青草のような風味を伴う白ワイン


しかし、ワインショップやレストランで、ワインが風味によって分類されているわけではありません。

もしもあなたが、チョコレートを思わせるような風味を伴うワインが好みだったとしても、
ワインショップに行って

「チョコレート味のワインをください!」

とは言いませんよね(笑)

そうではなく、ワインが持つ「風味のタイプ」を伝える必要があります。
たとえば

フルーティーなワイン
・・・様々なタイプの果物を連想させるような風味を持つワイン

ハーブのような風味を伴うワイン
・・・ミント、青草、芝生、ローズマリーなどを連想させる風味を持つワイン

スパイシーなワイン
・・・黒コショウ、丁子、シナモン、コリアンダーなどスパイスを連想させる風味を持つワイン

のような風味を伴うワイン
・・・
庭の土を掘り返したときのような香り、森の湿った足元の土や枯葉などを連想させる風味を持つワイン

ミネラル感のあるワイン
・・・石灰、石、塩などを連想させる風味を持つワイン

などなど・・・。

上記はほんの一例で、ワインには数え切れないほど様々な種類の風味が存在します。

それでも、上記の例示だけでもどんな風味がワインにはあるのか、なんとなくイメージがわくのではないでしょうか。

ちなみに「チョコレートのような風味」は「コーヒーのような風味」と同類の風味で、
アメリカのカベルネ・ソービニヨンやオーストラリアのシラーズなどフルボディのワインに比較的多くみられる風味です。
フランス・ボルドー地方のワインに現れることもあります。

あるワインが好きだとして、それに似たタイプの別のワインを試してみたいときは、
自分がワインの中にあるどんな風味が好きなのかを決めて、それをワインショップやレストランの店員さんに伝えるのもひとつの方法でしょう。

風味と言えば、もうひとつ考慮したい重要なポイントがあります。
それは風味の強さです。

どんなタイプの風味であれ、どのくらいのボリュームの風味をワインが持っているかです。
風味のボリュームが強いワインもあれば、それほど風味の強くないワインもあります。

風味の強さは、ワインを食べ物に合わせるときに非常に大切な要素となります。

料理の重さとワインの重さを合わせるのは鉄則ですが、
それと同時に、ワインが持つ味や香りの要素や強さを料理に合わせることも重要です。

料理とワインのどちらか一方が他方を圧倒しないように、バランスを考えることが大事なのですね。

okiraku-koza_banner


大きな可能性を持ったワインも若いうちは硬くてぎこちなく、年を重ねると柔らかくなって味わいが出てきます ~ ワインってなんだか人間みたいで面白いですね

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回、タンニンの強さや性質によってワインが「硬い」か「柔らかい」か判別しましょうと述べましたが、この部分について少し補足しておこうと思います。

ワインが「硬い」「柔らかい」というのはワインの口当たりの印象です。
人間の口は、液体の温度を感じるのと同様に、口当たりの感触も認識します。

「柔らかいワイン」というのは、文字通り口当たりが柔らかく、
口から喉へ「スゥー」っとスムーズに通っていく感じ
がするワインです。

一般に、タンニンや酸味が穏やかであればワインは柔らかく感じられます。

しかしそれもワインによりけりで、ワインによっては柔らかすぎて(骨格がなさすぎて)、味わいに深みがないものとなります。
スーパー等で安価に販売されているワインだと、そのようなものに出合うケースも多いかもしれません。

ワインの残糖分やアルコール分も、程度によっては口当たりを柔らかく感じさせます。

逆に「硬いワイン」というのは、口当たりが険しくタンニンが荒々しい印象のワインです。

赤ワインか硬く感じられるときは、ほとんどの場合タンニンの強さが原因です。
白ワインでも高級ワインだと、まだ若く酸味が強すぎる場合に、ワインが硬く感じられることがあります。

フランス・ブルゴーニュ地方の赤ワインのように、ピノ・ノワール種から造られた赤ワインはタンニンが穏やかなので、口当たりが柔らかく感じられることが多いと思います。

また、ワインは熟成すると口当たりが柔らかくなります。
若いうちは硬かったワインも、適度に熟成すると柔らかくなっていきます。

margaux2001
 ▲ボルドーの高級ワイン「シャトー・マルゴー」も15年以上経てば口当たりが柔らかくなってくる


長期熟成のポテンシャルを持った高級ワインほど、若いうちは口当たりが硬く感じられることが多いです。

ですから、若いうちはタンニンが強靭で硬いことが多いフランス・ボルドーの高級ワインやイタリア・ピエモンテ州のバローロなども、
時を経て飲み頃を迎えると、タンニンが溶け込んで口当たりが柔らかくシルキーで上品な口当たりになります。

将来の可能性を持ったワインも若いうちは硬くてぎこちなく、年を重ねるごとに柔らかくなって味わいが出てくるなんて、まるで人間みたいで面白いですね。

okiraku-koza_banner


自分の舌を小さな「はかり」だと思ってワインの重さを量ってください ~ ワインをテイスティングするときは「重さ」も感じ取るようにしましょう

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインをテイスティングするときは、

甘味 ⇒ 酸味 ⇒ 渋味(タンニン) ⇒ 重さ(ボディ)

の順で考えていくとよいでしょう。
人間の舌は通常、この順番で味を認識していくからです。

昨日は、このうち始めにくる 1.甘味と 2.酸味について説明しました。
今日は、3.渋味(タンニン)と 4.重さ(ボディ)についてお話します。

opus_one2012
 ▲まだ若い「オーパスワン」はタンニンの収斂性が強く、超重いワイン


3.渋味(タンニン)

タンニンはブドウの果皮や種や茎に自然に存在する物質です。 

白ワインよりも赤ワインのほうがタンニンが圧倒的に豊富です。

赤ワインはブドウの果皮も種もまるごと一緒に発酵させますし、
赤ワインの原料となる黒ブドウは
一般に、白ブドウよりも豊富にタンニン分を含んでいるからです。

ワインを樽で熟成させると、その木樽もワインにタンニンを与える要因となります。

濃い赤ワインを飲んだとき、もしくは濃いお茶を飲んだとき、
口の中の唾液が紙で吸い取られてしまったような、
口の中の粘膜が乾いてきゅっと縮むような感覚になった経験はありませんか?

それがタンニンです。

大まかに言えば、白ワインにとっての酸味と同じで、
赤ワインにとってタンニンは味わいの背骨となるもの
です。

【関連記事】
赤ワイン=白ワイン+渋味(タンニン)!~ 赤ワインと白ワインの最大の違いは渋味にあります

タンニンはそれ単体では渋いものですが、
ワインの中の他の要素、たとえば甘味や果実味が強ければ、それがタンニンを覆い隠して渋味がそれほど感じられなくなります

これがワイン全体の「バランス」というものにつながっていきます。
バランスについては、いずれ改めて書いてみたいと思います。

タンニンは、渋さ、苦さ、硬さ、口当たりのリッチさなどとして、舌の奥のほうや歯茎で感じられます。
タンニンが特に強ければ、歯茎や口内の頬の裏側あたりがキュッと絞られたり、ザラザラするような感覚があります。

このような強靭なタンニンを伴う場合は、
収斂性(しゅうれんせい)がある
と表現します。

タンニンの強さや性質によって、テイスティングしているワインが「収斂性がある」ワインか、口当たりの「硬い」ワインか、「柔らかい」ワインかを判別しましょう。

4.重み(ボディ)

ワインのボディは、舌で感じる基本的な味覚ではなく、ワイン全体として感じられる印象です。

口に含んだワインの「重さ」の印象で判断します。

"印象" と言いましたが、それはテイスティングで口に含むワインの量やその重さは "物理的" にはどれも同じくらいのはずなのに、
口の中が「重く」感じるワインもあれば「軽く」感じるワインもあるからです。

アルコール感の高さやタンニン分の豊富さ、果実味の凝縮感などが、ワインの「重さ」の印象に影響を与えます。
  • アルコール感や果実味の凝縮感が強いワインは重く感じます。
  • タンニンが強いワインは重く感じます。
  • 逆に、酸味が豊富な赤ワインは軽く感じます。
ワインをテイスティングするときは、甘味、酸味、渋味といった味わいの要素だけでなく、ワインの「重さ」も感じ取るようにしてください。
自分の舌を小さな「はかり」だと思って、そのワインが「重さ」でどのくらい舌を押し下げるか・・・みたいなイメージで(笑)
  • 重いワインは「フルボディ」
  • 中位のワインは「ミディアムボディ」
  • 軽いワインは「ライトボディ」
テイスティングしているワインのボディがどのくらいかを判断しましょう。

【関連記事】
人生いろいろ、赤ワインもいろいろ ~ 軽い赤ワインにも重い赤ワインにも個性があります

okiraku-koza_banner




ワインの味は舌が感じ取った順に認識されます ~ ワインをテイスティングするときは、甘味⇒酸味⇒渋味(タンニン)⇒ 重さ(ボディ)の順に考えていきましょう

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

以前にも述べたように、ワインを口に含んでから舌が感じ取る味覚には順序があります。

ワインが持っている味は、舌が触知した順に脳に情報が送られ、認識されます。

テイスティングしているワインをコトバに置き換えようとするときは、次に示す順番で考えていくと自然でよいでしょう。

甘味 ⇒ 酸味 ⇒ 渋味(タンニン) ⇒ 重さ(ボディ)

今回はこのうち、甘味と酸味についてお話します。

1.甘味

ワインを口に含むとすぐに、甘味があるか、ないかを、感じるはずです。

ワインコトバでは、「甘口」の反対語は「辛口」です。
テイスティングしているワインが「辛口」か「中辛口」(ほんのり甘味がある)か「甘口」かを判断しましょう。

2.酸味

赤ワインでも白ワインでも、ワインはみな酸味を持っています。
酸味の正体は、主に、ブドウに含まれている酒石酸です。

しかし、とても酸味が感じられるワインもあれば、そうでないワインもあります。

pomelo_sb
 ▲カリフォルニアのソービニヨン・ブラン・・・酸味はラベルの絵から想像するほどシャープではなかった

酸味は、赤ワインよりも白ワインにおいて大切な味覚の要素になります。
白ワインにとって、酸味はワインの味全体を支える背骨のようなものです。
酸味は白ワインの味わいを引き締めます。

【関連記事】
春の訪れは、白ワインが美味しい季節の訪れですね ~ 白ワインは酸味が大事なんです


酸味の豊かなワインは飲むと爽やかに感じられます。
逆に、十分な酸味のないワインは、ゆるく締まりのない味わいに感じられます。

人間は通常、口の中ほどで酸味を感じます。
そして、「とても酸っぱいワインだな」とか「まろやかで芳醇なワインだな」というように、
酸味はワイン全体としてのスタイルや印象に影響を与えるのです。

テイスティングしているワインが「爽やか」なワインか、「まろやか」なワインか、あるいは単に「締まりのない」ワインなのかを判断しましょう。


ぼくたちバイザグラスのお気楽ワイン講座「ワイン入門」編では、
ゲストの皆さんと初めてテイスティングをするときは必ず、
「このワインは酸っぱいと思いますか?」
と尋ねます。

いままさに口にした酸味のレベルを体感して、それはワインとして酸味の強いほうなのか、そうでないのかを、舌と脳にインプットして頂きたいからです。

ワインのテイスティングも基礎から学べます。
ワインを学んでみたい方、ぜひ参加してみてくださいね。

okiraku-koza_banner

「白ワイン飲み比べ」セミナーを開催しました!~ 5種類の白ワインを比較テイスティングして品種ごとの特徴を体感しました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

昨日4月23日(日)は、ぼくたちの「お気楽ワイン講座」のひとつである「白ワイン飲み比べ」セミナーを開催しました。

IMG_2799a

白、白、白・・・
白ワインだけですよ、今日は。

IMG_2775a

甲州、ソービニヨン・ブラン、リースリング、フランスのシャルドネ、アメリカのシャルドネを比較しながらテイスティング。
いずれも品種特性がよく現れていました。

写真のグラス、左から順に :

●シャトー・メルシャン山梨甲州
レモンやすだちのような爽やかな柑橘系の香りと、キレのよい口当たり。
甲州としては、けっこう色も味わいもシッカリしているほうだと思います。

アンリ・ブルジョワの「プチ・ブルジョワ」
ソービニヨン・ブランはグレープフルーツのような香りとフレッシュで若々しい果実味がハッキリ。
10世代、300年以上続くサンセールの造り手アンリ・ブルジョワの「プチ・ブルジョワ」は素晴らしいワインです。

●トリンバック・リースリング
フランス・アルザス地方のトリンバックが造るリースリングは、青リンゴの香りと味わい。

青リンゴの果実味を感じますが、すぐに強靭な酸味が追いかけてくるような印象です。

ルイ・ジャドのブルゴーニュ・シャルドネ
木樽の香りが上品についていおり、
2012年だが、わりと熟成も感じさせる風味。
口当たり柔らかで、まろやかな味わいでした。

●ケンダル・ジャクソンのヴィントナーズ・リザーヴ・シャルドネ
同じシャルドネでも上記のブルゴーニュのものとはまったく異なるキャラクター。
ザッツUSAって感じですね・・・完熟した黄桃やトロピカルフルーツを思わせる香りと味わい。

IMG_2809a

真剣な表情でワインの香りをとっています。

白ワイン飲み比べの開催は、ぼくたちバイザグラスにとって初めてでした。
練習を重ねてきたものの、やはり不安な気持ちで当日の本番を迎えました。
松沢と犬飼の呼吸を合わせて全力で臨みました。

IMG_2806aa

とくに
今回は、ソムリエール犬飼雅恵が大活躍でした!

IMG_2779a

白ワインの楽しみ方や、白ワインに多く使われているスクリューキャップについてコルクとの違いも含めて、じっくりと解説。

IMG_2783a

彼女がいろいろな角度から、たくさんお話をしてくれました。

IMG_2772a

楽しそうにお話していますね。
彼女の才能を新たに発見した気持ちです(笑)
今後のワイン講座では、犬飼雅恵がお話する時間を、もっともっと増やしていきたいです。

5月の「お気楽ワイン講座」の予定です。
・5月13日(土) ワイン入門
・5月17日(水) アメリカ西海岸料理とワイン(日本橋兜町VASHONにて)
・5月28日(日) 赤ワイン飲み比べ

各回とも定員10名様です。
ご参加のお申込みをお待ちしております!

okiraku-koza_banner

記事検索
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ