早稲田ワインアカデミー

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2018年11月にオープンしました!
神楽坂ワインハウス バイザグラス
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ヴィンテージはブドウの収穫年 ~ 表示は義務ではないですが、同じ造り手・同じ銘柄のワインでもヴィンテージが違うと味わいも違ってくるので少し気になります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

この10日間ほど、ラベル表示について述べてきました。
重要なことはほぼ書いたつもりですが、ラベルについての話題にもう少しお付き合いください。

原産地名、瓶詰元、容量やアルコール度数などの「記載すべき」ラベル表示事項のほかにも、いろいろな文言がラベルに書かれていますね。

そうした文言は、何か特別な品質のワインだと消費者に思わせるためだけに書かれた意味のないフレーズである場合もありますし、逆にそのワインについて有益な情報を提供している場合もあります。

また同じ文言であっても、たとえば Reserve (Riserva, Reserva)のように、国によって、単に宣伝文句にすぎない場合とちゃんとした意味のある場合があります。

こうした二義性が生じてしまうのは、ある生産国では法で厳格に規制されている用語が、別の国ではまったく規制されていなかったりするからです。

今回は、ワインラベルのヴィンテージ表示についてのお話です。


◆ヴィンテージ

義務的記載事項以外の表記としては、ヴィンテージが最もよく目にするものかもしれません。

西暦と一緒に「Vintage 2015」と表示されていたり、単に西暦だけが書かれていたりします。

ボトルのラベル本体に表示されていることもあれば、ヴィンテージだけが書かれた小さなラベルが、メインのラベルの上のほうに貼られている場合もあります。

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 ▲「2006」とヴィンテージだけを示す小さなラベルが、メインラベルの上方に貼られている


ヴィンテージとは、そのワインの原料となったブドウの収穫年です。

たいていのワインにはヴィンテージが書かれていますが、書かれていないものもあります。
ヴィンテージの書かれていないワインは、原料ブドウの収穫年が単一年ではなく、複数年のブドウがブレンドされています。

意外ですが、フランスのAOCワインでもヴィンテージの記載は義務ではありません。

ですから極論すれば、フランスのAOCワインは別々の収穫年のブドウを混ぜても良いということです。
もっとも、ほとんどのAOCワインにはヴィンテージ記載がありますけどね。

ヴィンテージの記載のないワインの代表例はシャンパーニュです。

シャンパーニュはたいていNVすなわちノン・ヴィンテージです。
複数の収穫年のブドウをブレンドして、年によって味わいや生産量が大きくブレることなく、安定的に造れるようにしているのです。
もちろん、ブドウの作柄がとてもよい年にはヴィンテージ付きのシャンパーニュが造られます(通常のNVのシャンパーニュよりも高価)。

そのワインのヴィンテージが何年か、言い換えれば、そのブドウが天候に恵まれた年のものか、天候のあまりよくない年のものかを問題としているのです。

ところで、実際のワインライフでヴィンテージが問題となるのは、

(1) 高品質(高価格)のワインを買おうとするときか、
(2)
ヨーロッパの生産国のように年によってかなりの天候変化が見られる地域のワインを飲むとき 
でしょう。

ぼく自身もワインショップ&バーで仕事をしたときに初めて体感したのですが、
とくにヨーロッパのワインだと、同じ生産者の同じ銘柄のワインでも、ヴィンテージによって味わいに結構違いがあるものです。

ブルゴーニュの同じワインでも、ある年のものは果実味がしっかりしており翌年のものは青みと酸味が強く感じられる、といったことは普通にあることです。

やはりワインは農産物であり生き物なんですね!

【関連記事】
ワインには表の顔とウラの顔がある?~ ワインのラベルには記載すべき事項があり、ウラ側にもワインについて大切な情報が書かれています


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AOP,DOP,AOC,DOC,DOCG,DO,DOCa ・・・原産地呼称制度も国によって呼び名が違うなんて、ヨーロッパって大変ですね。。でも産地に対する各国の強い思いが込められています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回は、ヨーロッパの「地理的表示付きワイン」にはEUが新たに制定した

(1) AOP(原産地呼称保護) または
(2) IGP(地理的表示保護)

というラベル表示がされているはずだけど、
実際にはこれらの表示を使っているものはまだ少なく、
各国でもともと定めていた表示法がいまも続いている、というお話をしました。

では、EUの定める AOP、IGP という新たな表示法を使用する代わりに、
フランス、イタリア、スペインのワインラベルではどのような表示法がいまでも多く使われているのか、具体的にまとめてみました。

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 ▲フランスワインのラベル表示


◆フランス

(1) AOPに相当

AOC = Appellation d'Origine Côntrolée (原産地統制呼称)

Origine の部分に具体的な場所名が入ったり、
(例)
Appellation Musigny Côntrolée

場所名はラベルのほかの位置に書かれていて
Appellation Côntrolée
とだけ記されていることもあります。


(2) IGPに相当

Vin de Pays ヴァン・ド・ペィ(地ワインの意味)
この表記の後ろに
認定地域の名前が表示されます。

なお、フランスでは 2011年10月までに Vin de Pays からEUの定める
IGP への移行を完了しました。


◆イタリア

(1) AOPに相当

まず AOP のことをイタリア語では DOP と呼びます。
DOP = Denominazione di Origine Protetta
意味は AOP と同じく「
原産地呼称保護」です。

そして DOP が次の2段階に分かれています。

DOC = Denominazione di Origine Controllata
(原産地統制呼称)
DOCG = Denominazione di Origine Controllata e Garantita
保証付き原産地統制呼称)

これら2つはイタリアの伝統的な格付けで、
DOCG は DOC より高ランクとされています。

イタリアではDOP表示でもDOCG/DOC表示でも両方を表示してもよいことになっています。
たとえば Barolo はもともとDOCGワインですが、

DOP Barolo と書いても
DOCG Barolo と書いても
DOCG/DOP Barolo と書いてもよいということです。


(2) IGPに相当

IGT = Indicazione Geografica Tipica (地域特性表示ワイン)
この表記とともに認定地域の名前が表示されます。


◆スペイン

(1) AOPに相当

まず AOP のことをスペイン語では DOP と呼びます。
DOP = Denominación de Origen Protegida
意味は AOP と同じく「
原産地呼称保護」です。

スペインのもともとの格付け法は少々複雑ですが、
DOP は大まかに言って次の2段階に分かれます。

DO = Denominación de Origen
(原産地呼称)
DOCa = Denominación de Origen Calificada (
特選原産地呼称)

DOCa は DO よりも高ランクで、現在リオハ Rioja とプリオラート Priorat の2地域しかありません。

(2) IGPに相当

Vino de la Tierra
この表記の後ろに認定地域の名前が表示されます。


フランス、イタリア、スペインなどヨーロッパのワインのラベルを見て、
地域の名前の近くに上記のような文言があったら、
それは公的に保護されている産地だということです。

ヨーロッパ以外、たとえばアメリカ合衆国にも指定された産地であることを示す文言があります。
それは AVA (American Viticaltural Area)という文言です。

しかしヨーロッパの原産地統制呼称とは異なり、AVAは産地の境界線を定めるのみで、品質や栽培・醸造に関する規定がありません

また、AVAという文言がワインのラベルに書かれていることも、ほとんどありません。
オーストラリアにも GI (Geographical Indications)という地理的呼称制度がありますが、やはりラベルにも書かれていません。
それにヨーロッパの AOP と IGP のように2段階に分けることもしていません。

やはり
伝統や厳格さの面でも、ヨーロッパの原産地統制呼称制度には、ヨーロッパ人の思いや本気度が込められているような気がしますね。

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ヨーロッパの地理的表示付きのワインのラベル表示はAOPとIGPの2種類!のはずですが、加盟国がもともと使用していたDOCG等の表示がまだまだ健在なのは、EUの求心力のなさだったりして?

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

EUには、域内の特定の地域で造られた農産物(ワイン、チーズ、オリーブ、ハムなど)を法的に認証し、これを保護する仕組みがあります。
他の場所の企業が同じ名称を使用した製品をつくって消費者を混乱させないようにするためです。

EUに加盟する伝統的ワイン生産国(フランス、イタリア、スペイン、ドイツなど)で造られたワインは、この仕組みによって保護されています。

ヨーロッパの認証保護地域から来たワイン、すなわち地理的表示付きのワインのラベルを見ると、その趣旨を示す文言を見つけることができます。

実際には、そうした文言は大きく2通り存在します。
ヨーロッパの「地理的表示付きのワイン」は2種類に大別できるからです。

(1) AOP(原産地呼称保護)

産地の範囲だけでなく、ブドウ品種やブドウ栽培方法、ワインの醸造技術や熟成方法まで厳しく規定された産地の名前がつけられたワイン。

(2) IGP(地理的表示保護)

上記(1)に比べると産地の認定範囲が広く、ブドウ品種や生産方式などの自由度が高い産地の名前がつけられたワイン。

(1) のAOPAppellation d'Origine Protégée というフランス語の略で、
直訳すると「保護された原産地の称号」という意味です。
英語ではProtected Designation of Origin(PDO)となります。
最も厳しく規定されたワインです。

(2) のIGPIndication Géographique Protégée というフランス語の略で、
直訳すると「保護された地理的な表示」という意味です。
英語ではProtected Geographic Indication(PGI)となります。

ヨーロッパ域内で消費される日常的安ワインを除けば、ぼくたちが目にするヨーロッパのワインは理論上、(1) AOP か (2) IGP のいずれかの文言がラベルに書かれているはずです。

しかし実際には、ことはそう簡単ではありません。少なくとも現在は・・・。

その理由は次のとおりです。

①ヨーロッパ各国はAOP/IGPという文言を自国語でラベル表示することが許されており、実際にどの国の生産者もそうしているから

②さらに、AOP/IGPという文言を統一して使うというEUの新ワイン法は2012年に完全施行されたばかりで、市場に流通しているワインの多くはまだ、それ以前に各国それぞれが定めていた原産地呼称のラベルが貼られているから

③しかも、各国政府は自国内のワイナリーに、EUの新ワイン法制定以前から使われている文言を使い続けてもよいと許可しているから

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 ▲イタリアのDOCG表示は今も健在


そういうわけで現在は、EUが新たに制定した"AOP" や "IGP" という表示を使っているワインを見つけるほうが難しい・・・という笑えない状況になっているのです。

英国のEU離脱騒動に見られるようにEUの求心力低下が近年、顕在化してきていますが、ワインの世界でも似たような状況なのかな・・・。
AOPではなくDOCGと書かれているイタリアワインのボトルを眺めながら、ふとそんなことを思ったのでした。

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ワインには表の顔とウラの顔がある?~ ワインのラベルには記載すべき事項があり、ウラ側にもワインについて大切な情報が書かれています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインのボトルにはたいてい2つのラベルが貼られています。
表側のラベルとウラ側のラベルです。

表側のラベルはワインの顔です。
ワインの名前が書いてあり、ワイン売り場を歩く人の目を真っ先につかむ部分ですね。

ウラ側のラベルには、そのワインについてもう少し詳しい情報が記載されています。

ワインの生産国ではそれぞれ、ラベルに記載すべき事項が法律で定められています。

たとえばフランスでは、同国ワイン法で定められたAOCワイン(原産地統制呼称ワイン)にはラベルへの記載義務事項が5つあります。

ブドウ原産地の名称
Appellation Contrôlée (「統制された呼称」の意味)という表記
 ※シャンパーニュのみ不要
瓶詰元の名称・住所
 ※ラベルでは誰が造ったかより誰が瓶詰めしたかが重要
容量
アルコール度数

また、書いても書かなくてもよい任意記載事項として、

収穫年(ヴィンテージ)
②商標
③ブドウ畑所有者の名称
④熟成と保存の方法
⑤消費者へのアドバイスなど
などがあります。

意外なのは生産年(ヴィンテージ)の記載が「任意」であることです。
必ずしも書かなくていいんですね。
たしかにシャンパーニュはNV(ノン・ヴィンテージ)が主流なので書いてありません。

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▲ワインボトルの裏側のラベル

ウラ側には、上記の左側のボトルのように、生産者がラベルを貼っている場合があります。
そこには、記載すべき事項のうち表ラベルに書ききれなかった事項が書かれます。

また生産者がそのワインに関するさらに詳しい情報を書いている場合があります。
どのような気候・畑で育てられたとか、どのような香りや味わいがするか、どんな料理に合うかなどです。

それとは別に、日本でワインを買うとき、ボトルの裏側に必ず貼られているラベルがあります。
ラベルというよりステッカーというほうが実態に合っているかもしれません。

それは日本の輸入業者が貼ったラベルです。
国内で販売するために、法で定められた事項を記載したものです。
輸入業者は次のような項目を明記しなければならないとされています。

①「果実酒」または「甘味果実酒」の表示
食品添加物の内容(酸化防止剤:亜硫酸塩など)
アルコール度数
④容器の内容量
原産国
輸入者名および住所
⑦引取先(輸入者と同じ場合が多い)
⑧合成樹脂コルクの場合はプラマーク(プラスチック製容器包装識別マーク)
⑨未成年者禁酒表示
⑩妊産婦の飲酒に対する注意(任意表示)

ワインを買うとき、ふつうの食品を買うときほどには裏ラベルを見ることは少ないかもしれません。
たいていは表ラベルを見て、ワイン名、ブドウ品種名、産地名、造り手だけを気にして買いますからね。

でも今度ワイン売り場に行ったときには、ぜひ裏側のラベルも意識して見てみてはいかがでしょうか。
ときには生産者や輸入業者がプラスアルファの情報を書いていることもあり、そのワインについて新たな発見があるかもしれませんよ。

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ヨーロッパのワインにもラベルにブドウ品種名が記載されていることがあります ~ それでもワインを造っている人たちにとって最も重要な部分は、やはり「場所の名前」です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ヨーロッパ以外のワインはラベルにブドウ品種を書きますが、
ヨーロッパではワインのラベルにブドウ品種ではなく場所の名前を書く、ということを述べてきました。

【関連記事】
ヨーロッパ以外のワインはたいていラベルにブドウ品種名が書かれています
ヨーロッパではワインのラベルにあまり品種名を書きません
テロワールこそが「ワインにはブドウ畑の場所の名前をつけるべき」というヨーロッパの根底にあるコンセプト
ヨーロッパ以外のワインのラベルにも場所の名前は書かれていますが、広すぎてあまり意味がないことも多い


しかしヨーロッパのワインの中にも、ラベルにブドウ品種が記載されているものはあります。

たとえばイタリアでは、法的に定められたワインの名前が
場所の名前+品種の名前」というパターンがけっこう見られます。

(例)

バルベーラ・ダルバ Barbera d'Alba
 ・・・アルバ(場所の名前)のバルベーラ(ブドウ品種の名前)

・ モスカート・ディ・サルディーニャ Moscato di Sardegna
 ・・・サルディーニャ(場所の名前)のモスカート(ブドウ品種の名前)


またフランスでは、産地名がすでにブドウ品種を物語っているにもかかわらず、あえてラベルにブドウ品種名を記載する生産者もいます。

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 ▲ルイ・ジャドのブルゴーニュ白ワイン ~ 「シャルドネ」と表記されている


たとえば、「ブルゴーニュ」という場所の名前に加えて、わざわざ「シャルドネ」とブドウ品種が書かれている場合があります。
これは、ブルゴーニュの白ワインと言えばシャルドネ100%であることをを知らない消費者のために、ブドウ品種を明記しているわけです。

ドイツやアルザスのワインも、場所名とともにブドウ品種を表記していることが多いです。

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▲アルザス地方のトリンバッハが造るリースリングワインも品種名を表記


とはいえ、ブドウ品種名をラベルに記載しているヨーロッパのワインがあったとしても、
ワインを造っている人たちにとって、ワイン名の中で最も重要な部分はやはり「場所」の名前であることには変わりありません。

それだけ、ヨーロッパのワイン造りにおいてはテロワールがもつ意味が大きいのですね。

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「赤ワイン飲み比べ」セミナーを開催しました!~ 和やかな雰囲気で赤ワイン5種類を比較テイスティングしながら、品種ごとの特徴を学びました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

本日(5月28日)は、お気楽ワインセミナー「赤ワイン飲み比べ」編を開催しました。

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今回の会場は、新宿区荒木町にある「ゆるり庵」というイベントスペース。
「和」の雰囲気あふれる、たたずまいです。

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もともとお寿司屋さんだったのでしょうか・・・
カウンター式の、とてもキレイなスペースです。

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本日は赤ワイン5種類をテイスティングしながら、品種や産地の特徴を体感して学ぶという内容でした。
こちらが今日のワイン。
品種特性がわかりやすいものを選びました。

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今日はスパークリングワインはないので(笑)、はじめにピノ・ノワールで乾杯!

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そして、赤ワインひとつひとつをじっくりとテイスティングしていきます。
今回が初めて参加の方もいたので、テイスティングの基本から入りました。

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外観を見ると、まずワインのおおまかな性格が想像できます。
淡いのか、濃いのか、赤みが強いのか、紫が強いのか、観察します。

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香りをとります。
外観と香りで、そのワインの特徴がだいぶわかってきます。
あとは、味わってみて確認していく流れになります。

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もちろん、味わってみるまで特徴が捉えにくいワインも多々あります。

外観 → 香り → 味わい → 総合評価
というテイスティングのステップを、しっかり踏んでいくことが大事ですね。
どう感じたか、どういうワインだと思うか、ほかの人と意見を交わしてみることもポイントです。

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今回はソムリエール犬飼雅恵が、ワイン用のブドウと生食用のブドウの違いや赤ワインに渋味(タンニン)が生まれる理由について、お話ししました。

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自作のイラストを示しながら、わかりやすく説明しています。

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ぼくたちのワインセミナーはアットホームな雰囲気ですので、
聞きたいことやわからないことがあれば、気軽に質問して頂けます。

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会話やコミュニケーションも活発で、なごやかな雰囲気で進んでいきました。

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ぼくたちバイザグラスでは、毎月1回開催の「ワイン入門」をはじめ、
「白ワイン飲み比べ」「赤ワイン飲み比べ」「イタリアワインの基本」「アメリカ西海岸料理と新世界ワイン」などテーマ別のワインセミナーを定期的に実施しています。

最新のスケジュールを随時ウェブサイトに掲載していますので、ご興味のある方はぜひ一度、いらしてみてください!

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ヨーロッパ以外のワインのラベルにも場所の名前は書かれていますが、広すぎてあまり意味がないことも多い・・・カリフォルニアの面積はイタリア全土より3割も大きいのです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

これまで述べてきたように、ヨーロッパのワインはブドウ品種の名前ではなく場所・土地の名前を名乗るわけですが、この考え方はヨーロッパの国々の専売特許というわけでもありません。

ヨーロッパ以外のワインのラベルにも、そのワインがどこから来たのか、場所の名前はたいてい書かれているものです。
しかし、ヨーロッパワインと非ヨーロッパワインでは、場所の名前の書き方に少し違いがあります。

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 ▲産地名 CALIFORNIA の面積はイタリア全土より3割も大きい


第一に、アメリカ、オーストラリア、チリ、南アフリカなど新世界諸国のワインの場合、ラベルの中に場所の名前を発見するのが難しいときがあります。
場所の名前がドカンと書かれている場合もありますが、目立たない場合もあるからです。

それが場所の名前なのか生産者の名前なのか、混乱するときもあります。
ヨーロッパのワインと違って、そもそもブドウの育った場所がワインの名前になっておらず、
やはりブドウ品種名のほうが前面に出ているのです。

第二に、こうした新世界諸国の場所名が示す意味は、ヨーロッパ諸国ほど内容のあるものではありません。

たとえば、あるワインのラベルにナパ・ヴァレー Napa Valley と書かれているとします。
あなたがナパ・ヴァレーに行ったことがあったとしたら、ナパ・ヴァレーという名前は、あなたにとっては何か意味のあるものでしょう。

しかし法律的にみれば、ナパ・ヴァレーという名前は「このワインの原料ブドウのうち少なくとも85パーセントはナパ・ヴァレーというエリアのものだ」という程度の意味合いしかありません。

つまりヨーロッパワインの場所名が意味するものとは異なり、ナパ・ヴァレーという名前は産地の範囲を定義するのみで、ワインのタイプやブドウ品種、栽培・醸造に関して何ら規定がないのです。

ヨーロッパ以外のワインのラベルに書かれる場所名は、ある意味、「テロワール」という考え方に見かけだけの敬意を払っているだけだと言ったら言いすぎでしょうか。。

事実、ヨーロッパ以外の国のワイン産地名というものは、ヨーロッパの法が定める産地名とは比較にならないほど、それこそ信じられないくらいに広かったりします。

ヨーロッパのワイン生産者が、産地名「カリフォルニア」と書かれたワインラベルを見たときどう感じるだろうか、と考えると、笑えない気持ちになります。。

これを愚直に読み取れば、「このワインはイタリア全土の面積よりも30%広い、限定エリアの中で造られたワインです」っていうことになりますから。
(カリフォルニア州の面積はイタリア全土の面積より3割大きい。ちなみにイタリア国内には300以上のワイン産地が細かく定められている。)

ですから場所名が「カリフォルニア」とだけ書かれていても、そのブドウがどの土地で育てられたのかについて何も語ってないに等しいでしょう。

カリフォルニアは広大なエリアです。
このワインのブドウはカリフォルニアから来ましたと言われても、「よくわからないけど、あのアメリカ西海岸のどこかから来たんだろーなー」くらいしかわかりません。

オーストラリアワインによくある South Eastern Australia (南東オーストラリア)というラベル表記も同じことです。この場所名を名乗る産地は、フランスとスペインの2ヶ国を合わせた面積に匹敵する広さですからね。

こうしてみると、ヨーロッパのワイン造りの伝統の厚さを実感します。
テロワールに対するヨーロッパの人々の思いは、並大抵のものではないのですね。

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テロワールとは、その畑だけが持つ唯一無二の自然的諸条件の組み合わせ ~ これこそが「ワインにはブドウ畑の場所の名前をつけるべき」というヨーロッパの根底にあるコンセプトです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

テロワール terroir はフランス語で、日本語や英語に直訳できる言葉はありません。
そのためワインに携わる人は、べつにカッコつけではなく、便宜的にこのフランス語をそのまま使っています。

テロワールという用語に厳密な定義はありません。
そのため、みんな自分とって都合の良い文脈で、広くも狭くも解釈する傾向があります。

ただし、やはりテロワールはひとつの確立されたコンセプトであり、
科学的に厳密な定義はないにしても、ある程度は "正しい" 解釈が存在します。

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 ▲イタリア・ピエモンテ州のブドウ畑


テロワールという語を単語としてみれば、フランス語の terre すなわち「土」という語に由来しています。
そのため、人によってはテロワールを単純に「土壌」という狭い意味で使っています。

しかしテロワールは、本当はたんなる「土壌」よりももっと複雑な意味合いを含んだ言葉です。

テロワールは、変えることのできない自然の要素・・・表土、底土、気候(気温、日照量、降水量、風など)、傾斜、標高など、それぞれのブドウ畑が宿命的に持っている諸条件の総合的な組み合わせを意味しているのです。

あるブドウ畑と、こうした自然的諸条件の組み合わせが完全に一致するブドウ畑は、世界中どこを探してもありません。

ですから、テロワールをあえてぼくなりに定義するとすれば、
「その畑だけが持つ、唯一無二の自然的諸条件の組み合わせ」
ということになります。

テロワールこそ、

「ワインにはそのブドウが育った場所の名前をつけるべき」

というヨーロッパの考え方の根底にあるコンセプトです。

「場所こそが、ブドウの持つ特質に決定的な影響を与える」

したがって、

「場所の名前は、そこで造られるワインのブドウ品種は何かを物語っている」

という考え方です。

(現実にヨーロッパのワイン生産国では、場所ごとに使用可能なブドウ品種が法律や規則で定められています。)

ですから、ワイン造りの歴史と伝統が長いヨーロッパでは、

「最も正確なワイン名のつけ方は、そのブドウが育った場所の名前をつけることだ。その場所の名前が、そこにしかないテロワールを示しているから」

ということになるのです。

【関連記事】
ブドウ品種にはそれぞれ性格や育ちに違いがあります ~ 世界には二つとして同じ境遇のブドウはなく、それこそがテロワールなのです
テロワールとは「地味」のこと ~ 「このワインにはテロワールがよく表現されている」というのは、土地の風土や土地の味がワインによく反映されているという意味です



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これが基本的なヨーロッパの「産地名&ブドウ品種」の組み合わせ!~これだけ知っていればワインショップに行くのが、きっと楽しくなりますよ!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回、ヨーロッパのワインはラベルにブドウ品種名を書く代わりに、そのブドウの育った場所(産地)を書かれている、と述べました。

それは、ブドウが育てられた場所の名前(つまりワインの名前)とブドウ品種の組み合わせが伝統的に決まっているからですが、
その組み合わせを知らないと、少々とっつきにくいシステムですよね。。

基本的な「産地名&ブドウ品種」の組み合わせだけでも覚えておけば、ワインが選びやすくなります。
そこで今回は、お店でよく目にする基本的なものを列挙します。

見方は、左から
・産地名(ワイン名)・・・主なブドウ品種 です。

<フランス>

ボルドー Bordeaux(赤)・・・カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン
ボルドー Bordeaux(白)・・・ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン

ブルゴーニュ Bourgogne(赤)・・・ピノ・ノワール
ブルゴーニュ Bourgogne(白)・・・シャルドネ

シャブリ Chablis ・・・シャルドネ
ジュヴレ・シャンベルタン Gevrey-Chambertin ・・・ピノ・ノワール
シャンボール・ミュジニー Chambolle-Musigny ・・・ピノ・ノワール
ヴォーヌ・ロマネ Vosne-Romanée ・・・ピノ・ノワール
ニュイ・サンジョルジュ Nuits-Saint-Georges ・・・ピノ・ノワール
ボーヌ Beaune ・・・ピノ・ノワール
ポマール Pommard ・・・ピノ・ノワール
ヴォルネイ Volnay ・・・ピノ・ノワール
ムルソー Meaursault ・・・シャルドネ
ピュリニー・モンラッシェ Puligny-Montrachet ・・・シャルドネ
シャサーニュ・モンラッシェ Chassagne-Montrachet ・・・シャルドネ
マコン Mâcon ・・・シャルドネ
ボージョレ Beaujolais ・・・ガメイ

コート・デュ・ローヌ Côtes du Rhone ・・・グルナッシュ、シラー
コート・ロティ Côte-Rôtie ・・・シラー
エルミタージュ Hermitage ・・・シラー
シャトーヌフ・デュ・パプ Châteauneuf-du-Pape ・・・グルナッシュ

プィイ・フュメ Pouilly-Fume ・・・ソーヴィニヨン・ブラン
サンセール Sancerre ・・・ソーヴィニヨン・ブラン

上記のうちボルドー、ブルゴーニュ、コート・デュ・ローヌは、いずれも広い地方全体の名前です。
その中に、さらに細分化された産地の名前や村の名前、畑の名前などがあります。
たとえばジュヴレ・シャンベルタンというのはブルゴーニュ地方にある村の名前です。
(ブルゴーニュの一部なのでブドウはピノ・ノワールです。)

<イタリア>

バローロ Barolo ・・・ネッビオーロ
バルバレスコ Barbaresco ・・・ネッビオーロ
キァンティ Chianti ・・・サンジョベーゼ
キァンティ・クラシコ Chianti Classico ・・・サンジョベーゼ
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ Brunello di Montalcino ・・・サンジョベーゼ・グロッソ
ソアヴェ・・・ガルガーネガ

<スペイン>

リオハ・・・テンプラニーリョ


これだけ知っていれば、かなり役に立つと思います。
ワインショップに行くのが、きっと楽しくなりますよ!

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ヨーロッパではワインのラベルにあまり品種名を書きません ~ ワイン造りの歴史が長いヨーロッパでは「場所」の名前を言えば「ブドウ品種」も決まっているからです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回述べたように、ヨーロッパ以外のワインはブドウ品種名表示ワイン(ヴァラエタル・ワイン)が中心で、たいていラベルにブドウ品種名が書かれています。

いっぽうヨーロッパのワインはラベルに産地名だけが書かれているものがほとんどです。

産地ごとに定められたブドウ品種でワインが造られているのですが、その品種名はラベルに書かれていません。
その代わりに「ブルゴーニュ」とか「サンセール」などのように、ブドウが育てられた場所の名前が書かれているのです。

それがワイン、とくにヨーロッパのワインというものを、わかりにくくとっつきにくいものにしている面があることは否めません。。

しかし、じつはヨーロッパのワインの名づけ方こそ、個々のワインについてより多くの情報を提供するためのシステムなのです。
単にブドウ品種名を示すような名づけ方よりも、ボトルの中に入っているワインについて、もっともっと多くのことを物語っている名づけ方です。

ただし、ラベルからそうした様々な情報を読み取るには、ヨーロッパのいろいろなワインの産地について少し勉強する必要があるのです。

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 ▲「ブルゴーニュ」 Bourgogne とだけ書かれ「ピノ・ノワール」とは書かれていない


さて、それではなぜワインに場所の名前をつけるのでしょうか?

ワインの原料であるブドウは、どこかの土地で育たなければなりません。
そうした土地が有する土壌の性質、日照量、降水量、その他諸々の特徴によって、ブドウは異なった性質のものになります。

ブドウの性質が異なれば当然ワインも異なる性質のものになります。
したがって、ひとつひとつのワインは、それぞれのブドウが育った場所柄を反映しているものなのです。

ヨーロッパでは、ブドウ農家とワイン生産者が何世紀にもわたって、どのブドウがどこで育つと一番かという知見を蓄積してきました。
そうした長い長い歴史の中で、彼らは多くの「ブドウ&場所」の最善の組み合わせを特定し、その知見を法律や規則に落とし込んできました。

そのためヨーロッパでは、ブドウが育てられた「場所」の名前を言えば、自動的にそのワインの「ブドウ品種」を言っていることになるのです。

だから、ワインボトルのラベルにわざわざブドウ品種を示す必要がないというわけです。

これって、ヨーロッパ以外のワイン飲みにとっては少々とっつきにくいシステムですよね。。

でも場所の名前(つまりワインの名前)とブドウ品種の組み合わせはシッカリ決まっているので、
基本的な「産地名&ブドウ品種」の組み合わせだけでも、ぜひ覚えていただきたいです。

いったん覚えてしまえば、ワインが本当に楽しくなってきますよ!

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ヨーロッパ以外のワインはたいていラベルにブドウ品種名が書かれています!~ ブドウ品種名表示ワイン(ヴァラエタル・ワイン)のほうが消費者には選びやすく親しみやすいですね

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ヨーロッパのワインはラベルに産地名だけが書かれているものが多いです。

いっぽうアメリカ、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどの非ヨーロッパ産地、いわゆる「新世界」のワインはラベルにブドウ品種名が書かれていることがほとんどです。

ブドウの品種のことを英語でヴァラエティ variety といいます。
そして一般に、ラベルにブドウ品種名表示のあるワインのことを
ヴァラエタル・ワイン varietal wine と呼びます。

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 ▲ヴァラエタル・ワインはラベルにブドウ品種名が書かれている


ヴァラエタル・ワインは、
単一品種のワインならそのブドウ品種名が、
複数品種のブレンドワインなら、それに含まれる主要なブドウ品種名が、ラベルに明記されています。

ヴァラエタル・ワインの場合、ラベルに表記したブドウ品種を何パーセント以上使用しなければならないかについて定めている規則が、どの生産国にもあります。
もちろん広告、販売の際にも適用されます。

たとえば、アメリカ合衆国の場合は最低でも「75%以上」と法律で定められています。
これは逆に言えば、「シャルドネ」とラベル表記されているワインには25%までならシャルドネ以外のブドウ品種も使ってよいということです。

ちなみにカナダやチリでも「75%以上」ですが、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカでは「85%以上」と定められています。
アメリカでもオレゴン州は独自に「90%以上」と定めています。

各国でこのように、ラベルに書いたブドウを最低何パーセント以上使いなさいよ、という法律があります。

もちろん単一品種のみで造られているヴァラエタル・ワインはたくさんあります。
しかし多くの場合、ヴァラエタル・ワインのラベルに他のどんなブドウ品種が何パーセント含まれているかなどは書かれていませんし、
そもそもワインに他のブドウ品種が含まれているのかどうかさえも書かれていません。

ですから、ラベルを見てわかることは
ラベルに書かれているブドウ品種が、少なくとも法で定められた割合だけは含まれている
ということだけです。

面白いことに、アメリカやオーストラリアのワインの中には、ラベルに複数のブドウ品種名が書かれているものが結構あります。
たとえば、「セミヨン - シャルドネ」とか「カベルネ・ソーヴィニヨン - シラーズ」みたいな書き方です。
このほうが消費者から見れば「正直」に見えますけどね(笑)

冒頭で述べたように、アメリカ、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのワインのほとんどはヴァラエタル・ワイン、すなわちブドウ品種の名前がワインの名前となっています。

なぜヨーロッパみたいに土地の名前ではなく、ブドウ品種の名前をワイン名にしたのでしょうか。

ワイン造りの伝統がものすごく長く、その歴史ある土地名やブランド力でワインを売ることのできるヨーロッパ諸国とは異なり、

それほどの伝統も歴史も持たず、世界のワイン市場では「新参者」である新世界のワイン生産国は、
ある意味ヨーロッパワインに対抗するためのマーケティング戦略として、
消費者にとってわかりやすい「ブドウ品種名ワイン」にした側面が大きいと思います。

しかしヨーロッパの伝統的なワイン生産国、たとえばフランスやイタリアなどでも、最近は一部のワインにブドウ品種名をラベル記載するようになってきました。
とくにアメリカやアジアなどに輸出販売したいワインは、そうなってきています。

考えてみれば、ワインの原料はブドウなのですから、そのブドウ品種名をワイン名にするほうが合理的といえば合理的です。
だって、ブドウ品種名をワイン名にしたほうが消費者にとって選びやすいですよね。

消費者の立場からすれば、そのワインが何のブドウから造られているかを知りたい気持ちは、食品を買うときにどんな原材料が含まれているかを知りたいのと同じ部分がありますからね。

今後ワインが日本をはじめアジア諸国で普及すればするほど、ヴァラエタル・ワインもますます増えてくるのではないでしょうか。
ワインがもっと選びやすくなれば、ワインを楽しむ人ももっと増えるかもしれませんね。

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ワインの名前は暗号解読ゲーム?~ ラベルの解読法を知るとワインショップに行ったりワインリストを眺めたりするのが楽しくなります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインショップに行くと、ワインが陳列されている棚を眺めますよね。
今夜飲むワインを買うためだけでなく、いまどんなワインが棚に並んでいるのかをチェックするためでもあります。

それにしてもワインのラベルって、気が遠くなるほどいろんな種類というか、様々なスタイルのものが蔓延していますよね。。

これらの中から自分が本当に好きなワインを選ぶのは至難のワザですし、せっかく品揃えのよいお店に行っても、かえって混乱してしまいそうです。

まぁ、そういうお客様を補助するために、ぼくらのようなソムリエがいるんですけね・・・(笑)

多種多様なワインラベルで埋め尽くされたワイン棚を眺めるのが楽しくなるために、確実な方法がひとつあるとすれば、
それはラベルに書かれている様々な情報の解読の仕方を知ることです。

ワインラベルを読み解くことは、実はそんなに難しくありません。

なぜなら、ワイン生産国には必ずワインのラベル表記に規制や規則があり、

何を記載しなければならないか、
何を記載できるか、何を書いてはいけないか、

などが明確にされているからです。

いまでは日本でも、ぼくがワインを飲み始めた25年くらい前には考えられなかったほどたくさんの種類のワインが手に入るようになっています。
ラベルの読み方の基本さえ覚えてしまえば、これだけ豊富になったワインの選択肢の恩恵に浴するできるのです!

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 ▲アンティノリがキァンティ・クラシコで造る「ティニャネロ」という商標のワイン


ワインのラベルには、いろんな「名前」が記載されています。
たいてい次のようなものです。

●ブドウ品種の名前

 ・・・そのワインの原料となった主なブドウの品種名です。

●生産者の名前
 ・・・伝統的には、たいていワイナリー会社名かワインを造った人物の名前です。

●場所や土地の名前
 ・・・そのブドウが育てられた産地、地域、畑などの名前です。

●商標の名前
 ・・・生産者名や土地の名前のほかに、特にブランド名がつけられているワインもあります。
   (例)アンティノリという生産者がキァンティ・クラシコという地域で造る「ティニャネロ」

上記のほか、

●収穫年(ヴィンテージ)

・・・そのワインの原料となったブドウの収穫年です。ワインを特定するための重要な要素のひとつです。

●"Reserve"/"Riserva"/"Reserva"等の表記
・・・生産国によって法的な意味がある場合もあれば、とくに意味のない場合もあります。

ワインショップの棚もレストランのワインリストの記載も、たいてい次のいずれかの分類で並べらています。

①産地ごと
②ブドウ品種ごと

生産者名プラス、産地名またはブドウ品種名」が、ぼくらがワインの話をするときに使ういちばん簡便な方法です。

たとえば
「フォントディ・キァンティ・クラシコ」は、フォントディというワイナリーが、キァンティ・クラシコという地域で造ったワインという意味です。

「ロバート・モンダヴィ・カベルネ・ソーヴィニヨン」は、ロバート・モンダヴィというワイナリーが、カベルネ・ソーヴィニヨンというブドウ品種から造ったワインということになります。

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 ▲フォントディのキァンティ・クラシコ


お気づきかもしれませんが、ラベルに産地名だけ書かれたワインブドウ品種名が書かれたワインがありますね。
おおむね、ヨーロッパのワインはラベルに産地名だけが書かれヨーロッパ以外のワインにはラベルにブドウ品種名が書かれていることが多いです。

これについては次回以降、もう少し詳しく書いてみたいと思います。

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アリアニコ、バルベーラ、カベルネ・フラン、カルメネーレ、ガメイ、グルナッシュ・・・赤ワインのブドウもいろいろ!~ ワインを楽しんでいれば、きっとどこかで出合うはず

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

この1週間強にわたって、赤ワインの主要なブドウ品種について書いてきました。

● 国際的ブドウ品種(4つ)
 ・ カベルネ・ソーヴィニヨン
 ・ メルロー
 ・ ピノ・ノワール
 ・ シラー(シラーズ)

ローカルヒーロー(5つ)
 ・ ネッビオーロ
 ・ サンジョベーゼ&テンプラニーリョ
 ・ ジンファンデル&マルベック

今回はその締めくくりとして、上記以外の黒ブドウをまとめて紹介します。
これらはワインライフを送っていれば、きっと出合うことのあるブドウ品種です。


◆アリアニコ◆

アリアニコは南イタリアを原産とする、タンニン豊富でフルボディで長期熟成も可能な力強いブドウ品種です。
ナポリを州都とするイタリア・カンパーニャ州タウラージ Taurasi というワインが代表的です。

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 ▲タウラージはとても力強い、南イタリア随一の高級ワイン


◆バルベーラ◆

バルベーラはイタリア北西部ピエモンテ州を主要産地とするブドウです。
酸味が豊富で、外観はしっかりとした紫色ですが、イタリアの黒ブドウとしては珍しくタンニンが少ない品種です。
よく熟したブドウから造られたワインは、とても果実味が豊富で爽やかな味わいです。


◆カベルネ・フラン◆

カベルネ・フランは、遺伝子的にカベルネ・ソーヴィニヨンの「親」にあたる品種です。
ボルドーワインでは多くの場合、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローとブレンドされる補助品種となりますが、
フランスのロワール地方では赤ワインの主要品種で、シノン Chinon やブルグイユ Bourgeuil というワインが有名です。
 
早熟型で、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローよりもベリー系の果実味がわかりやすく現れ、タンニンは強くありません。
すこしピーマンや緑黄色野菜っぽい香りがするのも特徴です。
ぼくは八百屋さんや青果市場の匂いに近いと思っています。


◆カルメネーレ◆

カルメネーレはボルドー地方が原産地ですが、現在ではほぼ南米チリのみで主要品種となっています。
色が濃く、ブラック・ベリーやスパイスの香り、タンニンは中程度で果実味の強いワインになります。
ぼくは、ゴムを焼いたような、道路舗装の工事現場のようなにおいを感じるときがあります。


◆ガメイ◆

ガメイはフランス・ブルゴーニュ地方最南部、ボージョレ地区の主要品種です。
ボージョレー・ヌーボー」というワインは、おそらく誰でも知っているでしょう。
ヌーボーは「新酒」の意味ですが、ボージョレー地区では新酒でなくてもほぼすべての赤ワインに使われる品種です。

イチゴドロップのような香りやバナナのような香りを伴う、タンニン分も少ない非常にジューシーなワインが多く、冷やしても飲めるような赤ワインです。

しかしガメイ自体はタンニン豊富なワインとなる能力のあるブドウで、
ボージョレー地区の中でも限られた10村では比較的ボディのしっかりしたワインが造られており、
それらは「クリュ・デュ・ボージョレー」と呼ばれています。


◆グルナッシュ◆

原産地はスペインで当地ではガルナッチャと呼ばれますが、多くのワイン好きはグルナッシュを、フランスのローヌ地方南部のブドウとして認識しています。

ローヌ地方ではシラーと混醸されることが多いですが、スパイシーな風味を伴うこと以外は、酸味もタンニンもあり骨格の引き締まっているシラーとは、真逆の特徴を持っています。

すなわち、グルナッシュは酸味が穏やかでタンニンもまろやかです。
スペイン原産なので暑さに強く、アルコール感が豊富で豊満なゆるい感じの味わいを持っています。
ローヌ地方南部のシャトーヌフ・デュ・パプ
Châteauneuf-du-Pape が長熟型の高級ワインとして有名です。

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 ▲シャトーヌフ・デュ・パプはよく熟成させたほうが真価を発揮する


これで全部で15種類の赤ワイン用ブドウを紹介しました。
これでも世界中に1000以上あるブドウ品種のなかでは極々一部ということになります。

ぼくらが普通にワインライフを楽しむうえでは、まずはこれら15種類を知っていれば、9割方カバーしているといって差し支えないでしょう。

さぁ、次はどのブドウ品種の赤ワインを飲んでみましょう?

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カリフォルニアの謎ジンファンデルもアルゼンチンの英雄マルベックもヨーロッパがルーツですが、遠く離れた新大陸アメリカの大地でたくましく活躍しています!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

赤ワインの原料となる黒ブドウ品種のうち、国際的な品種とまではいえないけれど特定の地域で個性を発揮するローカルヒーロー。
前回まで
ネッビオーロサンジョベーゼテンプラニーリョについて書きました。

今回は、原産地はヨーロッパながら現在はアメリカ大陸で主役となっているブドウ品種を2つ、取りあげます。
ジンファンデルマルベックです。


◆ジンファンデル◆

ジンファンデルはカリフォルニアで最も古くから栽培されているブドウ品種のひとつです。
アメリカを象徴するブドウ品種として愛されています。

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 ▲ディレクターズカット・ジンファンデルは、映画ゴッドファーザーのコッポラ監督が手がけるワイン


ジンファンデルは、そのミステリアスな歴史からも注目されていました。

元来は19世紀前半にヨーロッパから輸入・移植されたブドウだったのですが、
数世代にわたる繁殖・栽培の過程の中で、もともとどこの国のなんというブドウ品種だったのか、わからなくなってしまったのです。
そして
専門家の間でも、何十年もの長い間そのルーツが「謎」とされていたのです。

それが明らかになったのは、なんと21世紀に入ってからです。
DNA鑑定の技術が確立されたおかげで、ジンファンデルのルーツは、東欧クロアチアのツールイェナック・カシュテランスキという舌を噛みそうな名前のブドウであることが証明されました。

ちなみにこのツールイェナック・カシュテランスキというブドウは、イタリア南部プーリア州にも移植され、いまでもプリミティーヴォという名前で栽培されています。

ですからジンファンデルとプリミティーヴォは遺伝子的に同じブドウ品種だということです。

ジンファンデルは色が濃く味わいにもコクのある赤ワインです。
アルコール感が豊富で、タンニンは中程度です。

ブラックベリーやラズベリーを思わせる香りとともに、ややスパイシーな香りと風味を伴います。
このスパイシーさはコショウというより、ぼくにはドクターペッパー(コカコーラの自販機で売られている薬品っぽい風味のする炭酸飲料)のように感じられます。
口当たりや味わいに若干ジャムのようなニュアンスも感じます。

濃厚な赤ワインが中心ですが、なかにはカジュアルな若飲みタイプで比較的ライトボディのものもあります。
逆に長期熟成を意図して造られた、タンニン豊富で骨格のしっかりした高級ワインもあります。

ジンファンデルには、ホワイト・ジンファンデルと呼ばれる中甘口のロゼワインもあります。


◆マルベック◆

マルベックはフランスのボルドー地方が原産地ですが、いまではフランス南西地方カオール Cahors という産地で重要なブドウです。

しかし現在、マルベックはアルゼンチンの代表的なブドウ品種としてのほうが有名です。

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 ▲カオールはフランス南西地方のワイン


マルベックは非常に色の濃い、強靭なタンニンを伴うワインになります。
スパイシーかつダークチェリーのような香りと風味を伴います。

標高が高くて日照量が豊富なアルゼンチンのメンドーサ地方で造られるワインは、フランスのものに比べるとタンニンは若干穏やかで(それでもタンニン豊富ですが)、むしろ果実風味の濃厚さが前面に出たスタイルになる傾向があります。

ヨーロッパをルーツとするこれらのブドウは、何世代も前に遠いアメリカ大陸にたどり着き、かたやカリフォルニア、かたやアルゼンチンの大地で、たくましく活躍しているのですね。
なんだかロマンを感じませんか?

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トスカーナとスペインにも赤ワイン用ブドウのヒーローがいる!~ キアンティのサンジョベーゼもリオハのテンプラニーリョも「人あたりの良いワイン」ですね

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

赤ワインの原料となる黒ブドウ品種について集中的に書いています。

国際的な栽培にはそれほど適さないけれども、その土地ならではの素晴らしい個性を表現できる「ローカルヒーロー」的な赤ワイン用ブドウ品種として、イタリア北西部ピエモンテ州のネッビオーロをひとつめに取りあげました。

今回は同じイタリアのローカルヒーローであるサンジョベーゼと、スペインのローカルヒーローであるテンプラニーリョを取りあげます。


◆サンジョベーゼ◆

サンジョベーゼはイタリアのトスカーナ州を原産地かつ本拠地とする黒ブドウです。

トスカーナ州のなかでもとくにキアンティ Chianti およびブルネッロ・ディ・モンタルチーノ Brunello di Montalcino という地域で造られるワインに使われるブドウとして有名です。

サンジョベーゼのワインは、チェリーやブルーベリー、スミレのような香りと、味わいにもチェリーやトマトのような酸味があります。

酸味が中程度~比較的豊かで、タンニンも中程度~シッカリといったところです。
オリーブのようなニュアンスの風味を感じるときもあります。

この適度な酸味のおかげで料理全般に合わせやすく、
果実味と渋味が中庸的なところも、ある意味オールマイティで「人あたりの良いワイン
といえるかもしません。

サンジョベーゼのワインは、トスカーナ州のなかでもどの地域でブドウが育てられたか、どのようにワインが造られたかなどによって、ライトボディで比較的安価なワインにもフルボディな高級ワインにもなります。

キアンティにも安物から比較的高級なものがあります。

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 ▲ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(チェルバイオーナ) ~ ブドウはサンジョベーゼ・グロッソ


特筆すべきはブルネッロ・ディ・モンタルチーノです。
サンジョベーゼのなかでもとくに優れたサンジョベーゼ・グロッソと呼ばれるブドウから造られます。

華やかな芳香、辛口でも少々甘味を感じるほどの果実味が心地よい酸味と共存し、非常にバランスの良いワインが多いです。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはぼくの大好きなワインのひとつです。


◆テンプラニーリョ◆

テンプラニーリョはスペインを代表する黒ブドウです。
スペイン原産だと考えられています。
スペインの高級ワインのほとんどがテンプラニーリョから造られるといっても過言ではありません。

リオハ Rioja という地域が伝統的に有名です。
近年ではリベラ・デル・デュエロ Ribera del Duero という地域の、果実味を前面に押し出したモダンな造りのワインも増えています。

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 ▲リオハ(カスティーリョ・イガイ) ~ ブドウはテンプラニーリョ


若いうちは深い紫色をしています。
カベルネ・ソーヴィニヨン的な濃い外観のワリには、意外にイチゴやラズベリーのような赤系果実のチャーミングな香りがするワインもありますし、
カシス、ブラックベリー、ブラックチェリーなどの黒系果実の濃厚な香りをを伴うワインもあります。

熟成すると、干しイチジクなどドライフルーツの香りやタバコ、スパイス、なめし革などのニュアンスが顕著に現れます。
最近はアメリカンオークのバニラの香りを伴うものが多いです。

果実味は豊かで、タンニンは比較的柔らかく、それほど強くありません。
酸味もアルコールも中庸で、よくいえば「人あたりのよい」味わいのワインです。


イタリアやスペインなど南ヨーロッパには、土着の素晴らしいブドウがいろいろあるのですね。
ぼくはそういったワインが大好きです。
ワインって本当に奥が深いですね!

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アメリカンな料理と新世界ワインとの相性を探りながら体感する、お気楽ワインセミナー「アメリカ西海岸料理とワイン@VASHON日本橋兜町」を開催しました!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

きのう5月17日(水)の夜、東京・日本橋のVASHON日本橋兜町にて
お気楽ワインセミナー「アメリカ西海岸料理とワイン」を開催しました。

ぼくたちバイザグラスのワインセミナーとしては初めての、飲食店での開催でした。

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平日夜ということで、参加者は皆お仕事帰りの方々でした。
場所柄、日本橋や八丁堀の界隈にお勤めの人もいました。

まずは、ぼくたちの自己紹介からスタート。

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いつもと会場の雰囲気が違うせいか、すこし緊張ぎみ?

お店の一角でぼくらがこんな格好をしていたので、
他の一般のお客様から、このお店のソムリエだと間違えられるハプニングもありました(笑)

今回は、アメリカ西海岸料理と新世界ワインの相性を探る!がテーマ。

いつものワイン入門編セミナーではまずシャンパーニュで乾杯しますが、
今回はアメリカ西海岸のスパークリングワインをセレクト。

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このスパークリングワインは、フランスのシャンパーニュ生産者ルイ・ロデレール社が、アメリカ西海岸でシャンパーニュと同じ製法で造ったものです。

カリフォルニア州のアンダーソン・ヴァレーという比較的冷涼な地域で造られ、シャンパーニュの規定(15ヶ月)よりも長い26ヶ月もの熟成を経た本格的スパークリングワインです。

ソムリエール犬飼による、恒例のスパークリングワイン抜栓です。

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かがやくゴールド色、味わいにもコクがあり、シャンパーニュに負けず劣らず、楽しい夜を盛り上げてくれます。

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みんなで乾杯!のあと、料理を楽しみながらワインとの相性を探していきます。

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前菜盛り合わせは、
①ボイル蛸、胡瓜、フルーツトマト、大葉のマリネ
②モッツァレラチーズと生ハム
③自家製スモークチキンとアスパラガスのロール

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前菜盛り合わせには上記のスパークリングワインと、
ニュージーランドのピノ・グリを合わせてみました。
すこし冷涼感を持ちながらも、味わいにコクを感じるワインという方向性で選びました。

次は、とってもアメリカーンな感じのする料理です。

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天然アラスカ産の白身魚を使った、フライド・フィッシュ・バーガーっ!
ポテトもたっくさん付いてます。

濃厚なタルタルソースで味付けされているので、
それに負けないボディと強い樽香を持つカリフォルニアのシャルドネを合わせました。


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黄桃のコンポートやパパイヤ・マンゴーなどトロピカルフルーツのような濃厚な果実味を伴う、フルボディの白ワイン・・・これは見事に料理と合いましたね ^^

それにしても、樽の香りが強烈な白ワインです。。

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メインは、サーロイン・ステーキをレアに近いミディアムレアで。
サラダを添えて。

噛み応えのある「肉」そのものの食感、表面のグリル感と内側の少々「血」のようなニュアンスを念頭に、
オーストラリアのシラーズを合わせてみました。

黒コショウのようなスパイシーさ、カシスリキュールやビターチョコレートのような果実味に血肉を連想させるドップリ感・・・アルコール度数も14.5度で、まさにフルボディの赤ワイン。

これまた料理とうまく引き立て合ったのではないかと自画自賛しています(笑)

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今回は4種類のワインを味わいました。
ぼくたちのいつものワインセミナーでは、テイスティング用グラスで5種類のワインを試飲しますが、
このVASHONでのセミナーは通常サイズのワイングラスで楽しみました。

セミナー自体は2時間の予定だったのですが、
セミナー終了後も参加者の皆さんと盛り上がってしまい、結局そのまま1時間近くお店に残ってしまいました。。
(お店の人には少しご迷惑だったかな・・・。)

このVASHONセミナーは今後、毎月1回ずつ開催していきたいと思っています。
ご興味のある方は、次回以降の会にぜひご参加ください。

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イタリアワインの王様バローロを造りだすネッビオーロはピエモンテのヒーロー!~ 見た目は淡くエレガントなのに味わいはパワフル、香りも複雑で偉大なブドウですね

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

赤ワイン用のブドウ品種として、
カベルネ・ソーヴィニヨンメルローピノ・ノワールシラーという4つの国際品種を紹介してきましたが、国際的な栽培にはそれほど適さないブドウ品種もあります。

そのようなブドウにとっては、本拠地以外の地域では生育条件が理想的ではないからですが、
本拠地では最高のパフォーマンスを発揮し、ものすごく面白いワインになるブドウもあります。

「国際的赤ワイン」のある意味 ”標準的” な味わいとは異なり、その土地ならではの素晴らしい個性を表現できる「ローカルヒーロー」とでも呼ぶべきブドウです。

今回から、そうした黒ブドウをいくつか紹介していきましょう。


◆ネッビオーロ◆

ネッビオーロは、ぼくにとってピノ・ノワールと同じくらい大好きなブドウ品種です。
色調は淡くエレガントな外観なのに、味わいはとてもパワフルなワインになります。

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 ▲バローロ(プルノット社Bussia)~ オレンジがかった色調が美しく味わいは力強い


イタリア北西部ピエモンテ州がネッビオーロの本拠地です。

ネッビオーロはたんに優秀なワインを造れるだけでなく、
バローロ」と「バルバレスコ
という卓越した品質の2大ワインがあります。

この2つのワインが、正しい生育環境のもとでは、ネッビオーロがいかに物凄いワインを造り出すことができるのかを証明しています。

バローロは「イタリアワインの王様」とも呼ばれる偉大なワインです。
バルバレスコはバローロの弟分といわれますが、
品質がピンキリの傾向があるバローロより安定していて、口当たりも若干エレガントなものが多いです。

ネッビオーロはタンニン、酸味とも豊富で、ワインは骨格がしっかりしています。
同時にアルコール度数も高くなりやすく、それがワインの口当たりを和らげます。

ネッビオーロはワインが非常に若いうちは濃い紫色をしていますが、
2~3年もするとオレンジがかった色調が現れてきます。

香りが非常に複雑で、様々な香りの要素を持っています。

ブラックベリー、ブラックチェリーのような黒系果実の香りとともに、
干しプラム、乾燥イチジクといったドライフルーツを思わせる香りがするのがネッビオーロの特徴です。

また土のようなニュアンス、鉄のようなニュアンス、タール、トリュフ、バラといった香りも感じられます。
さらに熟成すると腐葉土、紅茶、なめし革といった香りも出てきます。

バローロやバルバレスコばかりでなく、若飲みタイプのお手頃ネッビオーロもあります。
ネッビオーロ・ダルバ Nebbioro d'Alba とかランゲ Langhe といった地名がラベルに書かれているものです。

バローロやバルバレスコはあまり若く飲むよりも、すこし熟成せさせたほうが良いでしょう。
できれば8年、最低でも5年くらいは寝かしたもののほうが、その真価を味わうことができると思います。

見た目も香りも味わいも楽しめるワイン・・・いいネッビオーロのワインに出合ったら、きっと好きになると思いますよ!

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シラーはドッシリ重めでパワフルで、黒コショウのような香り漂うスパイシーなブドウ品種 ~ もちろんコショウは入っていません!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

赤ワインの原料となる黒ブドウのうち、国際的なブドウ品種を紹介しています。
前回まで3回にわたり、
カベルネ・ソーヴィニヨンメルローピノ・ノワールについて書きました。

国際的な黒ブドウの4つめはシラー(シラーズ)です!


◆シラー(シラーズ)◆

フランスのローヌ地方北部が伝統的にシラー syrah から素晴らしいワインができる本拠地です。

ただし近年ではオーストラリアがこのブドウ品種の第二の本拠地といってもいいでしょう。
オーストラリアではシラーズ shiraz と呼ばれ、この国で最も多く栽培されているブドウ品種です。

シラーはカリフォルニア、イタリア、スペイン、チリ、アルゼンチンなどでも栽培されています。


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 ▲エルミタージュは熟成していてもなお力強いワインだった

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 ▲グラスに注がれたエルミタージュ ~ 香りのボリュームが強い


シラーは色が濃く、タンニンが豊かで、フルボディのワインになります。

シラーのワインには黒コショウを思わせる香りがあります。
このスパイシーな香りがシラーの最大の特徴です。

このほか、カシス、ブラックベリー、肉の燻製、血液、タール、焼いたゴムのような香りも出てきます。

実際、ローヌ北部の有名なワイン「コート・ロティ」にはタールのような焦げたニュアンスの風味が感じられますし、「エルミタージュ」には肉や血液のようなドップリとした重みがあります。

シラーは、このようにドッシリ重くパワフルなワインになりやすい品種です。


オーストラリアでは、シラーズは様々なスタイルのワインになります。

オーストラリアのシラーズは、基本的にはローヌ地方と同様に、場合によってはそれ以上にフルボディなワインになります。
黒コショウのようなスパイシーな風味に加え、チョコレートのような風味を伴うこともあります。

アルコール感が強く、辛口ワインでもカシスリキュールや黒系果実のコンポートのような濃厚な甘味すら感じられるほど、果実味がドッシリしています。
いっぽう、ものによってはフルーティでそれほど重くなく、チャーミングなタイプのワインもあります。

シラー(シラーズ)はそれ自体とても風味の強いブドウ品種ですので、他の品種の補助を必要としません。

ですからシラー(シラーズ)単体で造られるワインは多いのですが、
ローヌ北部ではシラーの力強さを柔らげるためにヴィオニエ、ルーサンヌ、マルサンヌといった白ブドウと混醸される場合があります。

ローヌ南部ではグルナッシュという黒ブドウが主体で、それにシラーが混ぜられることが多いです。

またオーストラリアではシラーとカベルネ・ソーヴィニヨンーがブレンドされたワインもあります。
ドッシリ系のシラーズと渋系のカベルネ・ソーヴィニヨンを混ぜちゃうなんて、スゴイですね。。

このようにドッシリとした力強さがシラーの特徴なのですが、
ローヌ地方で最も北部にありブルゴーニュ地方からも遠くない「コート・ロティ」のワインの中には、
熟成させると色合いも口当たりもエレガントで酸味もほどよくあり、ピノ・ノワールの熟成ワインと間違えてしまうような逸品もあります。
そのようなコート・ロティを、ぼくも飲んだことがあります。

ブドウ品種や産地ごとの原理原則はありながらも、それぞれが多様な性格を見せてくれるところがワインの面白いところですね!

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ピノ・ノワールはちょっぴり気難しいけど華やかでエレガントでキュンとくるワイン ~ ブルゴーニュって「ステキだけどカネのかかる彼女」みたいですね(笑)

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

カベルネ・ソーヴィニヨンメルローに続いて国際的な黒ブドウ品種の3番目は、ぼくの大好きなブドウ品種、ピノ・ノワールです!


◆ピノ・ノワール◆

カベルネ・ソーヴィニヨンで名を馳せたカリフォルニアのある有名なワイン生産者がこう言ったそうです。

「もしも一からやり直すことができるなら、カベルネ・ソーヴィニヨンなんかよりピノ・ノワールをつくりたい」

こういう思いを持つ生産者は彼一人ではないと思います。

カベルネ・ソーヴィニヨンはとても実用的なブドウです。
生育が安定していて信頼できて、生産者に困ったトラブルを与えず、力強くて素晴らしい品質のワインを造ることができます。

それに比べると、ピノ・ノワールは気難しくて、扱いに細心の注意が必要で、ときに不可解で、生産者にとっては骨の折れるブドウです。

でも優れたピノ・ノワールは、他のどんなブドウもまったくかなわないほど最高のワインになります
1本何百万円もする、あの有名なロマネ・コンティもピノ・ノワールのワインです。

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 ▲ブルゴーニュ地方コート・シャロネーズ地区の「リュリ1級」


ピノ・ノワールの典型は、フランス・ブルゴーニュ地方の赤ワインです。
細かく区分されたいくつものブドウ畑で、「ワインの宝」とでもいうべき赤ワインが、ピノ・ノワール100%で造られています。

ニュージーランド、オーストラリア、チリ、アメリカのオレゴン州やカリフォルニア州などでも良いピノ・ノワールはできます。
しかしピノ・ノワールは気候や土壌をかなり選び、育てるのが難しい品種なので、他の国際品種に比べると生産量が比較的限られています。

ピノ・ノワールのワインは他のブドウ品種のものに比べて色調が淡いのが特です。
たいてい淡いルビー色
ぼくは、とても美しい色だと思います。

タンニン分は穏やかで、赤ワインとしては比較的酸味が豊富です。
渋味が弱く口当たりが柔らかいことと、チェリーをかじったときのような心地よい酸味が食事に合わせやすいポイントとなり、とくに日本の食卓に出るおかずにはよく合うと思います。

高級ワインは樽熟成して木樽の要素をつけますが、それでもタンニンや口当たりの険しさは抑制的です。
アルコール感も、他のブドウ品種のものに比べて落ち着いています。

香りや風味はたいへん果実味があります。
チェリーベリー系(クランベリー、ラズベリー、ストロベリーなど)の香りや風味があり、
カジュアルなワインはフレッシュでチャーミングな香りに、
高級なものは華やかでエレガントな香りになります。

熟成型の超高級なものは、木樽から来るスモーキーさやタンニンなど ボディの厚みも感じられます。

アメリカやオーストラリア、ニュージーランド、チリのものは、ブルゴーニュ地方のものに比べると色がやや濃く紫がかり、イチゴジャムやブルーベリージャムのような味わいのニュアンスが出る傾向があります。

ピノ・ノワールを他のブドウと混ぜることは、まずありません。
ほぼ唯一の例外はシャンパーニュでしょう(ピノ・ノワールとシャルドネ等をブレンドする)。

ピノ・ノワールのワインは全般に「女性的」だといわれます。
スタイルがエレガントで味が濃くないので、ワイン初心者のうちは「わかりにくい」ところがあります。

しかし、良いピノ・ノワールのワインが持つ
華やかで艶やかな香りや、キュンとくるようなほのかな甘酸っぱさ、かすかなダシ感を伴う旨みが好きになると、たいていピノ・ノワールにハマります。

ブルゴーニュ地方の美味しいピノ・ノワールは安くないので、ブルゴーニュに凝り始めるとサイフがつらくなります。。
「ステキなんだけどカネがかかる彼女」みたいな感じでしょうか(笑)

ピノ・ノワールが大好きなぼくも、そんな "彼女" と上手に付き合っていきたいと思います。

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メルローはタンニンまろやか、性格がソフトで丸みがあってファンも多い ~ ボルドーでは天候リスク分散のため他の品種とブレンドされます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回から赤ワインを造る黒ブドウについて書いています。
世界中で栽培されている、国際的な黒ブドウ品種の2つめはメルローです。


◆メルロー◆

メルローから造られるワインは色が濃くフルボディで、アルコール度数が高めで、タンニンがまろやかという特徴があります。

カベルネ・ソーヴィニヨン同様、カシス、ブラックベリー、ブラックチェリーといった果皮が黒系の果実やプラムのような香りと風味があります。
ときにチョコレートのような風味を伴うものがあり、熟成させると紅茶の葉のようなニュアンスも出てきます。

メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンに比べて口当たりがふっくらと柔らかく、果実味中心の、丸みを帯びた印象のワインとなります。

メルローはカベルネ・ソーヴィニヨンに比べてタンニンが柔和なので、カベルネ・ソーヴィニヨンよりもメルローのほうが飲みやすくて好きだという人も結構います。

メルローは、日常的な価格帯のシンプルなワインにもなりますし、しっかりとした条件のもとで栽培、醸造されれば、ものすごい高級ワインにもなります。

メルローはフランスのボルドー地方が本拠地ですが、イタリア北部、カリフォルニア、チリなどでも重要な品種です。

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 ▲ボルドー右岸サンテミリヨン地区の「シャトー・カノン・ラ・ガフリエール」1988年はメルロー主体で柔らかく複雑な味わい


メルローは、フランスボルドー地方では最も多く植えられているブドウです。

ボルドー地方の生産者は、メルロー単体でワインを造るよりも、カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランなどとブレンドすることが多いです。

ボルドー地方を大西洋に向って流れるジロンド河の左岸のことを、一般に「ボルドー左岸」または単に「左岸」と呼びます。
同様にジロンド河~ドルドーニュ河の右岸のことを一般に「ボルドー右岸」とか単に「右岸」と呼びます。

左岸にはメドック地区やぺサックレオニャン地区などがあり、
右岸にはポムロール地区やサンテミリヨン地区などがあります。

左岸は土壌が砂利地質で、海から近いので温暖な気候となります。
砂利質というのは水はけがよく、また温暖な気候であることから、左岸はカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適しています。

右岸は土壌が粘土地質の比率が高く、海から遠く標高も高いので、左岸よりも冷涼な気候となります。
粘土地質は保水性がよく、メルローに向いているとされています。

したがって、ボルドー左岸ではカベルネ・ソーヴィニヨンが主体なのに対し、ボルドー右岸ではメルローが主体となります。

ところで、ボルドーでカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをブレンドするのはなぜでしょうか。

その理由を一言でいうと、「天候リスクの分散」です。

その年の雨や気温などの天候状況によって、ブドウ品種によって出来が良かったり悪かったりします。
たとえばブルゴーニュ地方は単一品種でワインを造るので、天候の良くない年のワインの出来はいわば全滅となります。

いっぽうボルドーでは、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローにリスクが分散できます。
具体的には、仮にある年のカベルネ・ソーヴィニヨンの出来が良くなかったら、メルロー比率を高めてワインを造るのです。

どちらかというと晩熟型のカベルネ・ソーヴィニヨンと早熟型のメルローは収穫時期も異なるので、リスクの分散がしやすいのです。

ちなみにボルドーでは、ブドウを混ぜてワインを造るのではなく、それぞれのブドウで造ったワインを混ぜてブレンドします。

ボルドー地方はワイン生産量も多いですから、毎年安定して生産するのも大変です。
単一品種ではなく複数のブドウ品種をブレンドするのは、「リスク分散」というボルドー生産者の知恵だったのですね。

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