バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回述べたシャルマ方式は、スパークリングワインの造り方としては比較的新しい方法で100年ほどの歴史しかありません。

もっと古くからある伝統的な製法は、二次発酵を1本1本の瓶の中で行うものです。
シャンパーニュは300年以上にわたり、ずっとこの方法で作られてきました。
フランスの規則で、現在もシャンパーニュはこの方法以外で造ることはできません。

シャンパーニュ地方以外で造られるフランスのスパークリングワインの多くも、これと同じ製法を用いてクレマン Crémant と言う呼称を使うことを許されています。
イタリア、スペイン、カリフォルニアなどその他の地方で造られる高品質なスパークリングワインも、たいていこのシャンパーニュと同じく瓶内で二次発酵を行う製法で造られています。

瓶内で二次発酵を行ってスパークリングワインを造る技術は「伝統方式」と呼ばれます。
この瓶内二次発酵は、個々のボトルがそれぞれ独立した発酵容器となるため非常に手間のかかる工程です。

この工程はシャンパーニュの場合、発売前のワイナリーでの熟成期間を含め最低でも15ヶ月、たいていは3年以上の期間を費やします。
シャンパーニュ以外でも、瓶内二次発酵方式で造られる高品質なスパークリングワインは相当な時間をかけているのが普通です。

そのため、一般に伝統方式で製造されたスパークリングワインはシャルマ方式のスパークリングワインよりも高価にならざるを得ません。

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 ▲瓶内二次発酵中のボトルを動かす「ルミュアージュ」の作業


瓶内二次発酵は次のように行われます。

①ボトル1本1本にベースワインを瓶詰めして、蔗糖と酵母の溶液を添加し、王冠を打栓してしっかりと閉じ
ティラージュ Tirage という)、冷暗なセラー室の中で横に寝かせて(瓶口をやや下向きにして)安置します。

②各ボトルの中で二次発酵がゆっくりと生じ、炭酸ガスとオリを発生させていきます。

③セラー室内でボトルが寝かせらている間、オリとワインの継続的な接触により、ワインの口当たりや風味がだんだんと変化していきます。

④二次発酵を開始してから12ヶ月~数年の間、定期的に各ボトルを揺らしたり回したりして傾け、瓶内の側面にたまるオリを瓶口に集めていく作業を行います(動瓶; ルミュアージュ Remage)。

⑤瓶口を超低温で瞬間冷凍し、たまったオリの部分を凍らせてカタマリにし、それを栓を外して飛び出させて除去します(瓶内にはオリのないスパークリングワインだけが残ります)。

⑥各ボトルにリキュール(ワイン+糖分)を添加して、上記⑤による目減り分を補うとともに甘味を調整します(ドサージュ Dosage)。そして各ボトルにコルクを打栓し、販売用にラベルを貼付します。

上記が瓶内二次発酵の流れですが、とても手間のかかる作業であることがわかりますね。
今度シャンパーニュや伝統方式のスパークリングワインを飲む際は、こうした工程を思い浮かべながら楽しむと、より一層おいしく感じられるかもしれませんね!

(バイザグラス株式会社 代表取締役・ソムリエ 松沢裕之)

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