バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スペイン随一の名醸地リオハ Rioja の続きです。

【前回の記事】リオハは昔も今もスペイン随一の名醸地 ~ スペインの最も代表的なブドウ品種テンプラニーリョを主体とした赤ワインで世界的に有名な産地です

リオハの赤ワインは伝統的に、発売される前にアメリカ産オークの木樽の中で何年も熟成されます。
この伝統的製法のワインは、果実味は控えめで枯葉のように落ち着いた(シェリーのような少々 "ひねた")口当たりのワインになります。

近年のトレンドとしては、木樽での熟成期間は短めにして、その代わりに瓶に詰めてから瓶内熟成をさせる傾向にあります。
そのように造られたワインは、よりフレッシュな果実味を持ったものになります。

もうひとつのトレンドとして、ワイン生産者の中には、アメリカン・オークの木樽だけではなく、フレンチ・オークの木樽で熟成させるスタイルのワインも造られています。
伝統的なアメリカン・オーク樽熟成の場合、樽由来のバニラのような香りをかなり強く伴う傾向がありますが、フレンチ・オークを使用すると、その香りが穏やかに上品に感じられるようになるのです。

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 ▲マルケス・デ・ムリエタのリオハ(カスティーリョ・イガイ)グラン・レセルバ


上記のような、ワインのスタイルとは別に、リオハのワインは発売前の熟成期間の長さによっても、かなり違った顔を見せます。
この熟成期間の長さに応じてホーベンクリアンサレセルバグラン・レセルバという呼称が法的に認められています。
  • ホーベン Joven
    熟成を行わずに醸造されたら若い段階ですぐに発売されるもの
    果実味もフレッシュで若々しい風味のワインです
  • クリアンサ Crianza
    発売前に2年以上の熟成(リオハではうち樽熟成1年以上)を経たもの
    この段階ではまだ果実味もフレッシュでフルーティなワインです
  • レセルバ Reserva
    発売前に3年以上の熟成(うち樽熟成1年以上)を経たもの
    果実味がやや落ち着いてきて、ワインにはかすかに熟成のニュアンスが出てきます
  • グラン・レセルバ Gran Reserva
    発売前に5年以上の熟成(リオハではうち樽熟成2年以上)を経たもの
    かなり熟成が感じられ、果実味のフレッシュさよりもドライフルーツや枯葉や紹興酒のようなニュアンスが感じられます
これらの呼称はラベルに必ず記載されます。

なお、リオハには白ワインもあります。
最近のリオハの白は果実味がフレッシュなスッキリ系のものが増えてきましたが、生産者のなかには伝統的なスタイルの白ワインを造っているところもあります。

たとえばリオハを代表する造り手であるマルケス・デ・ムリエタなどは、あえて伝統的なスタイルのリオハ白を造っています。

ビウラ Viura という土着品種を主体にブレンドして樽熟成を施した、濃い黄金色をした白ワインです。

飲んでみるとなかなか面白いワインで、シェリーのような酸化熟成香や漬物のタクアンのような香りがあり、非常に強烈な風味の "官能的" なワインです。
間違いなく、人によって好き嫌いがあるタイプのワインですが、ともかく個性はあります。

マルケス・デ・ムリエタが造るカペッラニア・ブランコ・レゼルヴァ Capellania Blanco Reserva などはまさにその典型的なワインです。

ご興味ある方は、いちど怖いもの見たさで(笑) 試してみてはいかがでしょうか。

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