バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインに骨格や風格、ボディを与えるタンニンは、赤ワインにとって不可欠なものです。
しかし、タンニンが強靭すぎると口内でギシギシ感じて飲みづらく、
またワインの種類やスタイルによってはタンニンが穏やかであるほうが、むしろ好ましいものもあります。

ワインによっては「タンニンが柔和」「タンニンがよく溶け込んでいる」というのは、ほめ言葉になります。

生産者はブドウが十分に完熟してから収穫を行ったり、発酵時間や発酵温度をよく管理することで、タンニンをソフトにする工夫をしていますが、そのほかにも専門的な技術がいくつかあります。

今日はそのようなタンニンの度合いをコントロールする技術をご紹介します。


ミクロ・ビュラージュ Micro Virage

人為的にワインに酸素を供給することで、
ミクロ・オキシジェナシオン Micro-oxygénation とも言います。
英語ではマイクロ・オキシジェネーション、直訳すれば「微小酸素供給」です。

ミクロ・オキシジェナシオンは、発酵中または熟成中の赤ワインにごく微量の酸素を吹き込むことによって、ポリフェノールの酸化等を促進する技術です。

もともと、フランス南西地方のマディラン Madiran でタナ種 tannat というブドウから造られる、強烈なタンニンを持った赤ワインの渋味を柔らかくするために開発された技術です。
現在ではボルドー地方などでも用いられています。

madiran
 ▲フランス南西地方のタンニン豊富なワイン「マディラン」


樽熟成の赤ワインは、木樽の中で長期間にわたり、やさしく安定的な酸素の供給を受けることでタンニンが柔らかくなるわけですが、
こうした樽熟成と同じ効果を人為的・短期的に狙うものだといえます。

ミクロ・オキシジェナシオンの効果は次の3つです。

タンニンの口当たりが柔らかくなる
②木樽を使わなくてもワインの色が安定する
③不快臭の低減や発生防止

ミクロ・オキシジェナシオンはタンニンをソフトにするため、ワインの飲み頃を早めてくれるというメリットがありますが、
逆に言えば、長期熟成を目的とするワインに使用するのは不適切な技術だといえます。

ワインをどんどん早く飲んでもらいたい生産者によっては大変便利なテクニックですが、
一方では、あまりにも人工的だという批判の声もあります。


◆マセラシオン・カルボニック Macération Carbonique

マセラシオン・カルボニックとは、収穫して未破砕の黒ブドウを房ごと密閉タンクに投入し、炭酸ガスの気流中に数日間置く方法です。

その後ブドウを圧搾して果汁を得て、白ワイン同様に果汁だけを発酵させる、赤ワイン用の技術です。

ブドウの細胞内で発酵が生じることによって、短期間で色素が抽出でき、色のよく出ているわりには渋みの少ないワインになります。

ボージョレー・ヌーボーなどフレッシュ感を味わう赤ワインに用いられています。


こうした用語を知らなくてもワインを楽しむことはできます。
でも、ワイントークのなかでしばしば耳にするコトバですので、知っているとワインがより楽しくなると思いますよ!


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