バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。
フランスワインのラベルを見ると、
mis en bouteille au domaine
とか
mis en bouteille au château
などの文言を見かけることがあります。

▲mis en bouteille au domaine という表示
これは直訳すると、「ドメーヌにて瓶詰めされた」「シャトーにて瓶詰めされた」という意味です。
ドメーヌ domaine もシャトー château も、
自ら所有する畑でブドウ栽培からワイン醸造、瓶詰めまで一貫して行う生産者
のことです。
主にブルゴーニュ地方ではドメーヌ、ボルドー地方ではシャトーと呼ぶことが多いです。
(ドメーヌはもともと「領地」、シャトーはもともと「お城」の意味です。)
ですから、冒頭の文言の実質的な意味は、
「ブドウ畑の所有者自身によってブドウ栽培から醸造、瓶詰めまで一貫して行われたワイン」
ということになります。
書き方には
mis en bouteille à la propriété
というバリエーションもあり、これは「畑の所有者によって瓶詰めされた」という意味で、実質的に言っていることは冒頭の2つと同じです。
こうした「生産者(= ブドウ畑所有者)元詰めワイン」のことを英語では estate-bottled wine、通称「エステートワイン」と呼びます。
日本では、ワイン好きの間では俗に「ドメーヌもの」と呼んだりもします。
アメリカのワインにも 、ラベルに Estate Bottled という表記を目にすることがあります(Estate はワイン農園を指す上品な言い方です)。
Estate Bottled は上述のとおり「生産者(= ブドウ畑所有者)元詰めワイン」すなわち「ドメーヌもの」と同じ意味で、生産者がブドウを育て、ワインを造り、瓶詰めしたということを意味しています。

▲Estate Bottled という表示
「エステートワイン」とか「ドメーヌもの」という言葉があるからには、そうではないタイプのワインもあるわけです。
それは、「ネゴシアンワイン」とか「ネゴシアンもの」と呼ばれるタイプのワインです。
ネゴシアン négociantとは、他者からブドウを購入してワインを造ったり、ワイン自体も購入して瓶詰めしたりする業者のことです(フランス語の元々の意味は「卸売商」)。
ワイン造りのプロセスを
(A)ブドウ栽培 → (B)ワイン醸造 → (C)瓶詰め
に分けると、
(A)(B)(C)すべてを一貫して行うのがドメーヌやシャトーであり、
(B)(C)のみを行うのがネゴシアンです。
ブルゴーニュのドメーヌは小規模な生産者がほとんどですが、ネゴシアンには比較的大規模な会社が多いです。
歴史的に見れば、1930年くらいまではネゴシアンたちが資金力を背景に力を握っていて、
ドメーヌからブドウを購入してワインを造って瓶詰めして、ネゴシアンの名前で販売するのが主流でした。
つまりワインはネゴシアンものがほとんどだったのです。
ドメーヌは零細農家が多く、ブドウを栽培してもワインにする設備を持っていなかったり、持っていたとしてもワインを造って販売してようやく入金されるまでの間の資金繰りに困ったりしていました。
そのため、せっかく育てたブドウも売りに出さざるを得ず、ネゴシアンに安く買い叩かれてしまったり、優れた畑を持っていても、他の凡庸な畑のブドウととブレンドされてしまうなど、自分たちの思いやこだわりをワインに反映できない時代が長く続いていました。
ドメーヌはいわばネゴシアンの下請け状態だったのです。
1930年代に入ると、ブルゴーニュ地方ではネゴシアンの支配から独立しようとする零細農家の動きが見られ始めました。
優れた畑を持つ農家がネゴシアンにブドウやワインを販売することをやめ、自分のワイナリーを立ち上げるようになったのです。
アルマン・ルソー、マルキ・ダンジェルヴィル、ジョルジュ・ルーミエなどの優秀な農家たちが、自らワインを造り、瓶詰めして、独自のラベルを貼って販売するようになりました。
こうした一連の動きを「ドメーヌ元詰め運動」といいます。
このドメーヌ元詰め運動は成功し、いまでは村や畑の名前だけでなく、生産者の名前もワインを評価する際の重要な要素となりました。
「ブドウが良くなければ良いワインは造れない」という考え方に基づけば、エステートワインというのは大切なコンセプトです。
ワインを造る者の立場に立てば、良いワインを造るために、その原料となるブドウ作りからコントロールしたいと考えるのは当然ですからね。
たしかに「ドメーヌもの」の方が個性的なワインが多く、いわゆる最高級品のワインはほとんどがこのタイプです。
ただし、素晴らしいワインは必ず「ドメーヌもの」であるべきだ、とまでは言い切れません。
ドメーヌ生産者であっても技術や管理のレベルが低く、質のよくないワインを造るところはありますし、
ネゴシアンにも優秀な技術を持ち、契約生産者をしっかりと管理・指導して素晴らしいワインを造るところもあります。
たとえばブルゴーニュ地方でいえば、ルイ・ジャド Louis Jadot やオリヴィエ・ルフレーヴ Olivier Leflaive などは素晴らしいネゴシアンです。

▲オリヴィエ・ルフレーヴの「ピュリニー・モンラッシェ1級畑ピュセル」
結局ドメーヌものであれ、ネゴシアンものであれ、自分の好みに合った良い生産者のワインに出合うことが大事なのでしょうね。
まさにワインライフはライフワークだといえるでしょう。

フランスワインのラベルを見ると、
mis en bouteille au domaine
とか
mis en bouteille au château
などの文言を見かけることがあります。

▲mis en bouteille au domaine という表示
これは直訳すると、「ドメーヌにて瓶詰めされた」「シャトーにて瓶詰めされた」という意味です。
ドメーヌ domaine もシャトー château も、
自ら所有する畑でブドウ栽培からワイン醸造、瓶詰めまで一貫して行う生産者
のことです。
主にブルゴーニュ地方ではドメーヌ、ボルドー地方ではシャトーと呼ぶことが多いです。
(ドメーヌはもともと「領地」、シャトーはもともと「お城」の意味です。)
ですから、冒頭の文言の実質的な意味は、
「ブドウ畑の所有者自身によってブドウ栽培から醸造、瓶詰めまで一貫して行われたワイン」
ということになります。
書き方には
mis en bouteille à la propriété
というバリエーションもあり、これは「畑の所有者によって瓶詰めされた」という意味で、実質的に言っていることは冒頭の2つと同じです。
こうした「生産者(= ブドウ畑所有者)元詰めワイン」のことを英語では estate-bottled wine、通称「エステートワイン」と呼びます。
日本では、ワイン好きの間では俗に「ドメーヌもの」と呼んだりもします。
アメリカのワインにも 、ラベルに Estate Bottled という表記を目にすることがあります(Estate はワイン農園を指す上品な言い方です)。
Estate Bottled は上述のとおり「生産者(= ブドウ畑所有者)元詰めワイン」すなわち「ドメーヌもの」と同じ意味で、生産者がブドウを育て、ワインを造り、瓶詰めしたということを意味しています。

▲Estate Bottled という表示
「エステートワイン」とか「ドメーヌもの」という言葉があるからには、そうではないタイプのワインもあるわけです。
それは、「ネゴシアンワイン」とか「ネゴシアンもの」と呼ばれるタイプのワインです。
ネゴシアン négociantとは、他者からブドウを購入してワインを造ったり、ワイン自体も購入して瓶詰めしたりする業者のことです(フランス語の元々の意味は「卸売商」)。
ワイン造りのプロセスを
(A)ブドウ栽培 → (B)ワイン醸造 → (C)瓶詰め
に分けると、
(A)(B)(C)すべてを一貫して行うのがドメーヌやシャトーであり、
(B)(C)のみを行うのがネゴシアンです。
ブルゴーニュのドメーヌは小規模な生産者がほとんどですが、ネゴシアンには比較的大規模な会社が多いです。
歴史的に見れば、1930年くらいまではネゴシアンたちが資金力を背景に力を握っていて、
ドメーヌからブドウを購入してワインを造って瓶詰めして、ネゴシアンの名前で販売するのが主流でした。
つまりワインはネゴシアンものがほとんどだったのです。
ドメーヌは零細農家が多く、ブドウを栽培してもワインにする設備を持っていなかったり、持っていたとしてもワインを造って販売してようやく入金されるまでの間の資金繰りに困ったりしていました。
そのため、せっかく育てたブドウも売りに出さざるを得ず、ネゴシアンに安く買い叩かれてしまったり、優れた畑を持っていても、他の凡庸な畑のブドウととブレンドされてしまうなど、自分たちの思いやこだわりをワインに反映できない時代が長く続いていました。
ドメーヌはいわばネゴシアンの下請け状態だったのです。
1930年代に入ると、ブルゴーニュ地方ではネゴシアンの支配から独立しようとする零細農家の動きが見られ始めました。
優れた畑を持つ農家がネゴシアンにブドウやワインを販売することをやめ、自分のワイナリーを立ち上げるようになったのです。
アルマン・ルソー、マルキ・ダンジェルヴィル、ジョルジュ・ルーミエなどの優秀な農家たちが、自らワインを造り、瓶詰めして、独自のラベルを貼って販売するようになりました。
こうした一連の動きを「ドメーヌ元詰め運動」といいます。
このドメーヌ元詰め運動は成功し、いまでは村や畑の名前だけでなく、生産者の名前もワインを評価する際の重要な要素となりました。
「ブドウが良くなければ良いワインは造れない」という考え方に基づけば、エステートワインというのは大切なコンセプトです。
ワインを造る者の立場に立てば、良いワインを造るために、その原料となるブドウ作りからコントロールしたいと考えるのは当然ですからね。
たしかに「ドメーヌもの」の方が個性的なワインが多く、いわゆる最高級品のワインはほとんどがこのタイプです。
ただし、素晴らしいワインは必ず「ドメーヌもの」であるべきだ、とまでは言い切れません。
ドメーヌ生産者であっても技術や管理のレベルが低く、質のよくないワインを造るところはありますし、
ネゴシアンにも優秀な技術を持ち、契約生産者をしっかりと管理・指導して素晴らしいワインを造るところもあります。
たとえばブルゴーニュ地方でいえば、ルイ・ジャド Louis Jadot やオリヴィエ・ルフレーヴ Olivier Leflaive などは素晴らしいネゴシアンです。

▲オリヴィエ・ルフレーヴの「ピュリニー・モンラッシェ1級畑ピュセル」
結局ドメーヌものであれ、ネゴシアンものであれ、自分の好みに合った良い生産者のワインに出合うことが大事なのでしょうね。
まさにワインライフはライフワークだといえるでしょう。
