バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ブドウ品種ごとの違いを生み出す要因にはいろいろなものがありますが、
大きく2つに分けることができます。

1.ブドウそのものの性格的な傾向と、2.生育上の特徴です。

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 ▲ピノ・ノワールは粒が比較的大きいのでタンニンの穏やかなワインになる


1.性格的な傾向

ブドウの性格的な傾向とは、ブドウの果実それ自体が持っている特徴です。
たとえば果皮の色や風味などです。

● 果皮の色

果皮の色は、ブドウ品種を区別する最も根本的な要素だといえます。
すべてのブドウ品種は、ブドウの果皮の色から白ブドウか黒ブドウのどちらかに分けることができます。

甲州やゲヴュルツトラミネールのように、白ブドウでも果皮に赤みがあるものは「グリ」(= グレー)ブドウと呼ばれることもありますが、大きく分ければ白ブドウの範囲に含まれます。

● 香りの性格

ミュスカ(マスカット)やゲヴュルツトラミネールのように、ワインになると花のような香りと風味をもつブドウ品種もあれば、ソーヴィニヨン・ブランのように青草やグレープフルーツのような香りの特徴をもつブドウ品種もあります。
シャルドネのように香りも風味も特徴がそれほどなく、ニュートラルなワインができるブドウ品種もあります。

● 酸味の性格

自然と高いレベルの酸味を持つ傾向のあるブドウ品種があります。
こうしたブドウは爽やかでスリムなワインになりやすいです。

● 果皮の厚さや果粒のサイズ

果皮に厚みのある黒ブドウは、果皮の薄いものに比べて自然とタンニン豊富なワインになりやすいです。

また、果粒の小さいブドウのほうがタンニンが豊富なワインになります
それは単位容積あたりの「果皮+果汁」に占める果皮の比率が大きくなるからです。

逆に、ピノ・ノワールのように比較的果粒の大きいブドウはタンニンが穏やかなワインになります。

ブドウ品種が持つ性格的な傾向は、ワインになっても明確に現れます。
たとえばカベルネ・ソービニヨンのワインは、メルローのワインに比べるとタンニンはより強く、アルコール分はやや低めになる傾向があります。
これは、カベルネ・ソービニヨンとメルローががそれぞれ持っている性格の違いによるものです。


2.生育上の特徴

生育上の特徴とは、たとえばブドウの木がどのように生育するか、どのように実がなるか、どのくらいの期間で成熟するかなどです。

ブドウ畑でブドウがどのように生育するかは、ブドウ農家にとって非常に重要な問題です。
なぜならブドウの木の生育傾向は、その土地で栽培するのがどれだけ容易か、あるいは困難かを決定付けるからです。

その場所でどんなブドウを栽培するかを決めるに当たっては、次のような要因が考慮されます。

● 果実が成熟するまでにどのくらいの期間がかかるブドウか

冷涼な気候でブドウが栽培できる温暖な期間が短い地域では、早熟型のブドウが適しています。

● ブドウの房に果粒がどれだけ密集するブドウか


高温多湿な気候の地域では、房に果粒の密度が高いブドウは白色カビによる病気の問題が発生しやすくなります。
フランスでは1870年代に「ベト病」というブドウの木の病気が流行し、白色カビによって落葉、落花、落果などの被害が相次ぎました。

● 葉や枝をどのくらい生やすブドウか

肥沃な土壌では、たくさんの葉っぱや枝を伸ばす習性のあるブドウは枝葉が果実を覆ってしまい、成熟に必要な日光を果実が十分に得られなくなってしまいます。


ある種のブドウが特定の場所で非常によく成育し、結果として素晴らしいワインになる理由は、ものすごく複雑です。

暖かい空気と涼しい空気のバランス、風や雨の量、日光の照射角度など諸々の要因が、良いワインをつくるブドウを育てる理由となっていますが、そうした諸要因の組み合わせをシンプルににモデル化して説明することは困難です。

世界には、これらの要因の組み合わせが完全に一致するブドウ畑は二つとしてありません。
これがまさにテロワールなのであり、単純にこうだと説明することは難しいのです。

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