バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインテイスティングについて、口でワインの味わいをみるステップの続きです。

口の中でワインをかき回すことで、じつは時間稼ぎもしています。
人間の脳は、舌が感じている味覚がどんなものかを判断するのに、数秒間の時間が必要だからです。

ワインが持つ味覚要素の中では、甘味が最初に脳で知覚されます。

それは昨日の記事で述べたように、甘味を感じ取る触感部位の多くは舌の前方にあり、ワインが真っ先に接触するからです。

甘味のあとに、酸味(いわゆる酸っぱい感覚)、苦味が知覚されていきます。
またワインを口の中でかき回すと歯茎や口の内壁(頬の裏側)に触れ、タンニンも感じ取ります。

【関連記事】
テイスティングの儀式では、 ワインを目で見て、鼻で香りを嗅いだら、ようやく口で味わうことが許されます


脳は、甘味・酸味・苦味・渋味の相対的なバランスを測りつつ、
口の中にあるワインは重いのか、軽いのか、口当たりはまろやかなのか、ざらついているのか等々も同時に考えているのです。

そして、結論としてそのワインはどのような風味や味わいを持つのか・・・
ラズベリーなのか、プラムなのか、はたまたチョコレートなのか・・・
という思考につながっていくわけです。

ところで、実はワインの風味は口の中で気化した香気によるものです。

一般に食品の香りには、

・食品を直接、鼻で嗅いだときに感じられる香り
・飲食中にのどから鼻を抜けて感じられる香り

の2つがあり、
ワインの風味は後者、つまり口の奥から鼻に抜ける香気の刺激によって感じられるものなのです。

ワインを含んだ口に空気を吸い込むことで、グラスの中でワインを回したときと同様にワインの香気が気化し、その空気が口の後ろ側にある後鼻孔を通ります。
その刺激を脳が知覚するわけですね。

Olfactory nerve

ですから、正確に言うならば、
ワインの風味を脳で言葉に置き換えていく作業は、舌での味覚の刺激から行なうというよりも、口中から鼻の奥へ抜ける香り(香気)から得られる部分が大きいのです。


さて、こうした一連のワケのわからぬ(笑)作業を経て、ようやく結論に達する時間となります。

「このワインは好きか?」

ここでの答えは、たいてい「イエス」か「ノー」ということになるでしょうが、

「うーん・・・まだ判断できない。もう一度テイスティングさせて!」

と言って、わざわざこの面倒な儀式を繰り返そうとするようなら、
あなたは相当なワインマニアの素質を持っているといえるでしょう。

okiraku-koza_banner