バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ワインのテイスティングではワインの香りを嗅ぎ取りますが、
「臭い(におい)を嗅ぐ」という言い方はあまりしません。

ワインでは「臭い」という言葉よりも「香り」とか「アロマ」という言葉を使います。
「におい」という語を使うのであれば「匂い」という漢字を当てます。

英語でも、ワインの世界では smell よりは nose とか aroma という語のほうが好まれるようです。

臭い(におい)や smell は快・不快のどちらのニュアンスも含み、一般に悪いほうの意味で使われることも多いからです。

ワイン香りを取るときは、喜ばしい香りを当然に期待しますし、
心地よい香りがワインの楽しみの重要な要素だからですね。

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 ▲ワインの「土」の香りの感覚をつかむトレーニング

さて、今回はそんなステキでデリケートなワインの香りを、より的確に嗅ぎとるためのヒントをお話しましょう。

次の5つのテクニックを試してみれば、これまで以上にいろいろな香りを、ひとつのワインから嗅ぎ取れるようになると思います。

1.大胆にやる

香りを嗅ぎ取る「儀式」を恥ずかしがってはいけません。
人前でも堂々とやってください。
グラスをまわして、ワイングラスに鼻をグンっ!と突っ込みましょう

2.強いコロンや香水をつけない

ワインの香りを捉えにくくなるので、これはご法度です。
ワインスクールでも授業の日はつけてこないよう注意されることがあります。

3.強い食べ物の匂いがする場所ではしない

あなたがワインから感じたスパイシーな香りは、台所で作っているカレーのにおいかも知れませんよ。。(笑)

4.香りを嗅ぐことを習慣化する

料理をするなら、使用する食材や調味料すべての香りを嗅いでください。
スーパーで買ってきた果物や野菜はもちろん、何かを食べるときは、つねに香りを嗅いでみましょう。
ちなみにぼくは、ウチでも外でも、パンを食べるときは必ず香りを嗅ぐ習慣があります。

食べ物だけでなく、皮革、土、草、花、動物、人形、ダンボール、薬箱、鉛筆、インク、石ころ、金属、靴磨き材、舗装したての道路・・・あらゆる身の回りのものの香りを嗅いでみましょう。

自分の中に香りのデータベースを蓄積していけば、必要なときに記憶から引き出せるようになります。

5.香りの嗅ぎ方を何通りか試してみる

グラスに鼻を入れた最初の一瞬だけで感じる香りをとる、という人もいます。
反対に、ワインのかすかな匂いまでも逃すまいと精一杯、時間をかけて深く吸い込む人もいます。
どちらも試してみましょう。

デリケートな香りを認識するには、鼻から吸い込むとき口をすこしだけ開けておくとよい、と教えてくれた人もいました。

片方の鼻の穴をふさいでもう片方だけで嗅ぐ方法もあるそうです。
(外でやったら周囲からヘンな人だと思われそうですが。。)


ワインの香りを嗅ぎ取るということに関しては、多くの人が

「そんなにたくさんの香りを嗅ぎ取ることができない」
「自分は鼻が鈍いのではないか」

と心配になるようです。

ぼく自身も、そんなに鼻が鋭いほうではありません。。

どちらかというと、ある香りを「嗅ぎ取った」というよりは、
ワインの経験値を重ねていくうちにいくつかの香りのパターンに気づき、

後になって「あぁ、あのワインにもあったこの香りかぁ」みたいにして
その香りを「認識できるようになった」というほうが実態に近いですね。

ですから、ワインの香りを嗅ぎ取るには、才能やセンスよりも練習と経験を重ねることが上達につながると思います。
日常生活の中で身の回りの香りに対する関心を高め、これまで以上に香りを意識しながらワインに親しんでいきましょう!

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