バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

赤ワイン=白ワイン+渋味(タンニン)だと前回お話しました。

この「プラス渋味」という特徴は、白ワインと赤ワインの造りかたの違いのせいで生まれます。

その違いとは、
白ワインはブドウの果汁のみをアルコール発酵させるのに対して、
赤ワインはブドウの粒ごとまるまる一緒にアルコール発酵させることです。

まるまる一緒にというのは、果汁の中に果肉も果皮も種子もすべて漬け込むということです。

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 ▲ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ(ニコラ・ポテル)

それでは順を追って赤ワインの造り方を見ていきましょう。

1.除梗(じょこう)

ブドウを収穫したら、まず果梗から果粒を取り外します。

2.破砕

果肉からジュースを絞り出すことを容易にするために、果粒の皮を軽く破ります。

・・・上記の除梗・破砕は白ワインの造り方と同じです。

3.発酵&マセラシオン

赤ワイン醸造では、アルコール発酵によるアルコール生成と、果皮・種子からの成分抽出が同時進行します。

成分抽出のために、果汁の中に果肉、果皮、種子を一緒に漬け込むことを
マセラシオン
といいます。

マセラシオンによって、果汁の中で
  • 果肉もだんだん果汁になっていきます。
  • 果皮からは、色素が抽出されて赤ワインの色になっていきます。
  • 種子からは、渋味(タンニン)が抽出されていきます。
アルコール発酵そのものは数日から1週間程度ですが、
マセラシオンの期間は目指すワインのかたちによって数日から週十日の幅があります。

発酵&マセラシオンを行なう容器は、最も一般的なステンレスタンクのほか、木やセメントなどのものもあります。

4.圧搾

赤ワイン造りでは、白ワインのときとは逆に、発酵させた後にブドウ果実の圧搾を行ないます。
赤ワイン造りにおける圧搾は、ワイン(液体)とブドウ(固体)を分離させる作業です。

マセラシオン終了後、発酵容器の下部の栓を開けてワイン(液体)のみを引き抜きます(フリーランジュース)。
つぎに容器に残ったブドウの固体部分を圧搾機でプレスし、ワインを搾り出します(プレスジュース)。

フリーランジュースのほうがピュアな味わいのワインで、
プレスジュースのほうは、強く圧力をかけて搾り出したものであるほど雑味を含みます。

プレスワインには渋味成分も多く含まれているので、ワインにタンニンなど骨格を与えるために適度に交ぜられます。

フリーランジュース、プレスジュースについては、白ワインの造り方でも述べていますので参考にしてください。

5.マロラクティック発酵(MLF)

赤ワインは、あまりに酸っぱいものは好まれません。
そのため赤ワイン造りでは、酸味を穏やかにして口当たりをまろやかにするための発酵を行ないます。
これをマロラクティック発酵
、通称MLFといいます。

マロラクティック発酵は、乳酸菌の働きで、リンゴ酸(酸っぱい酸)をまろやかな酸(乳酸)に変える発酵です。

mlf_formula

マロラクティック発酵には

酸味がやわらかくなる
 ・・・ワインがまろやかになる

風味が複雑になる
 ・・・香りをもつ副生成物によるもの

という2つの効果があります。

なお白ワインの中にも、マロラクティック発酵をするものがあります。

①MLFする白ワイン
 ・・・シャルドネで、まろやかな白ワインにしたい場合。
   高級白ワインに多くみられます。

②MLFしない白ワイン
 ・・・リースリング、ソービニヨン・ブラン、ミュスカデなど。
   酸味を減らしたくない、スッキリ、キリッと造りたい白ワインです。

6.熟成
7.オリ引き(澱引き)
8.清澄
9.ろ過
10.瓶詰め


・・・上記6~10 の工程は、白ワインの造り方と同じです。
  全体的に赤ワインのほうが白ワインより熟成期間は長くなります。

いかがでしょうか。
赤ワインと白ワインの最大の違いである渋味(タンニン)は、
白ワインと赤ワインの造りかたの違い、マセラシオンによって生まれるのですね!

ぼくはワインを勉強して以来、紅茶を入れるたびに「今マセラシオンしてるっ」という気分になります(笑)

赤ワインの持つ複雑さは、こうしたプラスアルファの工程から生まれているんですね。

これを書いていたら赤ワインが飲みたくなってきました。
桜も満開になったし、今日はピノ・ノワールを楽しむことにします!

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