バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ブドウは最も土地の個性(テロワール)を反映する果物なので、
よいブドウを作らないとよいワインができません。

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 ▲5月のまだ未熟なブドウ(山梨・勝沼にて)

それでは、よいブドウとはどのようなブドウでしょうか。

これにはいろいろな観点がありますが、産地や品種を問わず、共通してあげることのできる大切なポイントが一つあります。それは、

よく熟れたブドウがよいブドウです。

よく熟れたブドウとは、よく成熟して果実がとても甘くなった(つまり糖分をたくさん含んだ)ブドウです。
時間をかけて、太陽の光をサンサンとたっぷり浴びたブドウです。

成育期間中に雨や曇りが少なく、ブドウの葉が太陽光をよく吸収して光合成を行うと、よいブドウになるのです。

より長い時間をかければトータルで吸収する日光量は多くなりますから、
木からブドウを摘む時期が遅ければ遅いほど、ブドウの糖分は上がります

たとえば9月1日に摘んだブドウよりも9月15日に摘んだブドウのほうがよく熟れています。
9月15日よりも9月30日に摘んだブドウのほうがよく熟れています。

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時間をかければかけるほどブドウの糖分が増し、酸味が減少していきます。
これが、冷涼な産地のブドウは酸味が高く、温暖な産地のブドウは糖分が高い理由です。

ブドウ栽培に適している土地は、次のような条件を満たす土地です。
  • 気温:10℃~20℃
  • 日照量:1300~1500時間(年間)
  • 降雨量:500~900mm(年間)
寒すぎず、暑すぎず、乾燥した気候がブドウの栽培に適しています。

そして、ブドウはやせた土地を好みます。
そのほうが枝や葉よりも果実のほうに養分が行くのです。
あまり肥沃な土地だと、果実よりも枝や葉のほうに養分が行ってしまいます。

ブドウは本当によく水分を吸収するので、たとえば日本のような高温多湿の土地に植えると、根っこだけでなく木全体が湿気を余計に吸ってしまって、水っぽいブドウになってしまう傾向があります。

ブドウはツル性植物で、他の木などに巻きつき、巻きつく相手と共存します。
同時に、ブドウ同士でライバルと養分を奪い合います。
そのため、ライバルとの競争の少ない地中、地下へと深く伸びていく習性があります。

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栄養分や水分が少ない土地のほうが、競争に勝ち抜こうとする体力のあるブドウになります。

栄養分や水分の豊富なぜいたくな土地で育つよりも、やせた土地で育つほうが、たくましい、よいブドウになるのです。

なんだか人間の成長とよく似ていますね。

ブドウの習性や性質を知ると、ますますブドウに愛着がわき、ますますワインに親しみがわいてきませんか?

そうやってがんばっているブドウたちのことを思い浮かべながらワインを味わうと、ワインの楽しみもひとしおです。

ワインほど楽しいお酒はない! ~ それが私たちバイザグラスの原点です。

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