早稲田ワインアカデミー

ワインに興味はあるけれど、ワインって何だかムズカシそう・・・
ワインを楽しむのに必ずしも知識は要りません。
でもワインの基本を知ると、ワインがもっと楽しくなります。
ブログ「早稲田ワインアカデミー」は、ワイン初心者の方にもワインをよく飲む方にも
気軽にお読みいただける、オンライン・ワイン教室です。

​バイザグラスの初拠点となる【神楽坂ワインハウス by the glass】
2018年11月にオープンしました!
神楽坂ワインハウス バイザグラス
https://www.bytheglass.jp/

ファルツはドイツで2番目に大きな産地、最南端のバーデンは地球温暖化の恩恵を受け、ドイツで最重要なシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツの重要なワイン産地の続きです。

【関連記事】
ドイツには13の特定ブドウ栽培地域があります ~ ドイツ最古のワイン産地モーゼルとドイツ最高のリースリング産地ラインガウが、ドイツの2大名醸地です

baden_pn
 ▲バーデンのシュペートブルグンダー


●ファルツ Pfaltz

ファルツはラインヘッセンに匹敵する広さを持つ、ドイツで2番目に大きなワイン産地です。
ブドウ栽培面積も、ワイン生産量も、ドイツで第2位です。

ファルツは近年、品質改革が進み、新進生産者の台頭が目覚ましい産地でもあります。
フルボディで辛口の白ワインと高品質な赤ワインは、ワイン愛好家たちから非常に高く評価されています。

ファルツのワインが比較的フルボディになるのは、この地域の気候がドイツの中ではわりと温暖だからです


ファルツはリースリングの栽培量が圧倒的に多い産地ですが、その他の主要なブドウ品種としては、シルヴァーナー、ケルナー、ミュラー・トゥルガウといったドイツ独特のブドウが広く栽培されています。
数量的に言えば、黒ブドウのシュペートブルグンター(ピノ・ノワール)も非常に多く植えられている地域です。


●ナーエ Nahe

ワインの品質の点では、ドイツでもう一つ重要な産地はナーエです。
ラインヘッセンの西側に流れているナーエ河流域のワイン産地です。
ドイツ最古のブドウの木は、このナーエで発見されたと言われています。

ナーエでは、特にリースリングが重要なブドウです。
この地域のリースリングも比較的フルボディで凝縮感があります。
ナーエのワインは青いボトルに入っていることが多い、というのも特徴です。


●バーデン Baden

バーデンはドイツで3番目に大きなワイン産地で、現在のドイツでは最も重要なシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の産地です。

ドイツ最南端の産地で、年間平均気温がドイツで最も高い地域です。

近年の地球温暖化の恩恵を最も受けている産地は、このバーデンだと言ってよいでしょう。
バーデンにおける赤ワイン品質の著しい改善の背景には、この温暖化した気候こそが、間違いなく大きな役割を果たしています。

バーデン北部のいくらか冷涼な地域ではリースリングとともに、バイズブルグンダー(ピノ・ブラン)やルーレンダー(ピノ・グリ)のワインが造られてています。

バーデンでは伝統的に生産者組合が中心で、約8割のワインが組合で造られているワインですが、最近では独立系の生産者も優れたワインを産み出しています。

シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)から造られるドイツの赤ワインについては、バーデンはこれからも注目していきたいホットな産地です。

okiraku-koza_banner

ドイツには13の特定ブドウ栽培地域があります ~ ドイツ最古のワイン産地モーゼルとドイツ最高のリースリング産地ラインガウが、ドイツの2大名醸地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツには大きく13のワイン生産地域があります。
13のうち、11が旧西ドイツ側にあり、2つが旧東ドイツ側にあります。

これら13のワイン生産地域はベシュティムテ・アンバウゲビーテ Bestimmte Anbaugebiete特定栽培地域)と呼ばれており、QbA以上のワインに適用される地域です。

【関連記事】ドイツワインの95%以上は上級ワイン ~ プレディカーツヴァインとそれに次ぐクヴァリテーツヴァインは、EUワイン法に当てはめるとAOPワインレベルの上級ワインとなります

germany_map+
 ▲ドイツの13特定栽培地域

13の特定栽培地域のうち最も有名なのはモーゼル Mosel です。
この産地の中央を流れるモーゼル河から名づけられており、モーゼル河に沿ってブドウ畑が広がっています。

もう一つの有名な産地は、ライン河に沿ったラインガウ Rheingau です。
モーゼルとラインガウの2つがドイツを代表する2大名醸地といってよいでしょう。

ドイツにはライン河から名づけられたワイン産地が、ラインガウのほかにも3つあります。
ひとつはラインヘッセン Rheinhessen、もうひとつはファルツ Pfartz (かつてラインファルツ Rheinpfaltz と呼ばれたので)、それからミッテルライン Mittelrhein いう小さな産地です。

このほかナーエ Naheバーデン Baden も、近年よく知られている地域です。

●モーゼル Mosel

モーゼル地方はドイツ最古のワイン産地で、ラインガウと並ぶ名醸地です。
モーゼル地方は以前はモーゼル・ザール・ルーバー Mosel-Saar-Ruwer と言う名前で知られていました。
ワインの産地として有名であることはもちろん、非常に風光明媚な場所としても知られています。

モーゼル地方はドイツで4番目に大きなワイン産地です。
モーゼルワインのブドウ畑は、くねくねと曲がりくねったモーゼル河岸の急峻な斜面に広がっています。

モーゼルのワインはドイツの中でも特にライトボディーなワインです。
おおむね10%以下のアルコール度数のワインがほとんどです。

モーゼル地方は白ワイン比率が非常に高く、モーゼルワインの約9割%が白ワインです。
総じてデリケートで、フレッシュで、エレガントなリースリングがモーゼル地方のの6割近くを占めています。

モーゼル地方のワインは、すぐにそれと判別がつきます。
モーゼルワインは緑色のボトルに入っているからです(他のドイツでは茶色のボトルが普通です)。

●ラインガウ Rheingau

ラインガウはドイツの中でも小さなワイン産地のひとつです。
ライン河沿いの非常に急峻な斜面にあるブドウ畑が特徴で、最高品質のリースリングの産地として有名です。

しかしモーゼルと異なり、このライン河はスイスからフランス、ドイツを抜けてオランダを通りロッテルダム付近で北海に注ぐ全長1233kmの大河です。
そのうち約700kmがドイツ国内を流れています。

ラインガウではリースリングが生産量の約8割を占めています。
多くは南に面する斜面に植えられているため、限られた日照量を多く吸収し、ブドウの成熟度が高まります。

現在のラインガウのワインのスタイルには、2つの両極端な傾向が見られます。
ひとつは辛口ワイン、もうひとつは遅摘みの甘口ワインです。

ラインガウ地方の辛口リースリングはとても美味しいのでオススメです。

●ラインヘッセン Rheinhessen

ラインヘッセンはドイツ最大のワイン産地です。
ブドウ栽培面積がドイツ最大であるとともに、ワイン生産量もドイツ最大です。

ラインヘッセンは伝統的にシンプルな味わいの日常的ワインを大量に造っている産地です。
日本でマドンナの商標で知られるリープフラウミルヒのふるさとはラインヘッセン。
商業的な観点から言えば、今でもこの地域で最も重要なワインのひとつです。

上記のようにラインヘッセンは大衆的なワインの産地として知られていましたが、近年そのイメージもかなり改善してきました。
今では、とても面白い辛口リースリングが造られるようになっているのです。

エレガントで品のあるドイツ辛口のリースリング、これからますます注目したいワインです。

okiraku-koza_banner

腐っていても高貴なの?~ ドイツの高級ワインは、ブドウに付着する貴腐菌の働きのおかげで口当たりふくよかで魅惑的な甘味のある高貴なワインになります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

世界中のワインの目利きたちは、ドイツのデザートワインはこの世の甘口ワインの中でも最も優れた部類に入ると認識しています。

そんなドイツの素晴らしきデザートワインたちは、その甘みをボトリティス・シネリア Botrytis Cinerea という名の不思議な菌の働きに負っているところが大きいのです。
ボトリティス・シネリアは一般には貴腐菌と呼ばれています。

貴腐菌は晩秋の時期、湿度と日照の一定のコンビネーションが存在する場合に、成熟したブドウの実に付着します。
この菌がブドウの実を脱水させ、その糖分と風味を凝縮させます。
こうして貴腐菌の付着したブドウを貴腐ブドウといいます。

noble_rot_grapes
 ▲貴腐菌の付着したブドウの実

貴腐ブドウからできたワインは甘くなり、驚くほどコクが出て、言葉で表現することができないほど複雑な風味になります。
高いものになると1本1万円は余裕で超えてしまうでしょう。

トロッケンベーレンアウスレーゼとベーレンアウスレーゼのワインは通常、貴腐ブドウだけから造られます。
これらは口当たりがふくよかで、非常に甘味があります。

アウスレーゼでも、部分的に貴腐ブドウが使用されることがあります。
そのような場合にはやはり、かなり甘くなる傾向がありますが、ベーレンアウスレーゼ以上のワインほどの甘さにはなりません。

【関連記事】
ドイツワインの95%以上は上級ワイン ~ プレディカーツヴァインとそれに次ぐクヴァリテーツヴァインは、EUワイン法に当てはめるとAOPワインレベルの上級ワインとなります
良いドイツワインには「肩書き」が付いている ~ ブドウの成熟度(糖度)が高いほど上級のランクを与える独特のシステムをドイツが持った理由とは

ドイツワインに魅力的な甘みを与えるもう一つのやり方として、初冬の時期に、木に成っているブドウを凍らせるという方法があります。

凍ったブドウを収穫して圧搾すると、果実中の水分のほとんどが氷として分離されます。
すると、残った果汁は非常に糖分が凝縮したものとなり、その果汁を発酵させてワインを造ると、魅惑的な甘味を伴うワインとなります。
これがアイスヴァイン Eiswein で、文字通り「氷結ワイン」の意味です。

同じ甘口でもアイスヴァインは、トロッケンベーレンアウスレーゼやアウスレーゼのような貴腐ワインとはタイプが異なります。
貴腐菌の働きによって生じるハチミツにも似たある種の風味は、アイスヴァインにはあまり感じられません。

とはいえ貴腐ワインもアイスヴァインも共に、レイトハーベストワインすなわち遅摘みワインと呼ばれます。
これはドイツだけでなく世界的にもそのように呼ばれています。

貴腐ワインやアイスヴァインが共通して持つ独特な性格は、通常の収穫時期よりも遅くまでブドウを収穫せず木に残しておいたときにだけ、生まれるものだからです。

すぐには収穫しないでおき、通常よりももっとブドウを熟させてから収穫するから、その分ブドウの糖度も高まっているわけですね。

okiraku-koza_banner

リープフラウミルヒ、トロッケン、ハルプトロッケン・・・昔は甘口が多かったドイツワインも今は辛口が主体ですが、見分けるにはラベルのアルコール度数を見ると良いでしょう

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツワインに対する一般的な認識は、
「きっと甘い味がするんだろうな」といった感じではないでしょうか。
たしかにひと昔前までは甘口が多かったのです。

いまはどうなのかといいますと、辛口ワインがずっと増えてきている傾向にあり、
現在では全ドイツワインの3分の2が辛口で、甘口は3分の1となっています。

madonna
 ▲昔からおなじみのドイツワイン「マドンナ」はリープフラウミルヒ

現代のドイツワインでは、どのような甘さのレベルのものも(逆に言えばどのような辛口レベルのものも)見つけることができます。

比較的安価なドイツワインは、ほとんどの場合、ライトボディでとてもフルーティーで、甘みを伴った白ワインです。
とても飲みやすいカジュアルなタイプのワインで、食べ物がなくても、それだけで飲むことができます
(・・・というより、甘いので料理には合わせにくいかも)。

たとえば、日本でも30年以上昔から売られている「マドンナ」というドイツワインが、このタイプのワインの典型例です。
このテのワインは、ドイツではリープフラウミルヒ Liebfraumilch と呼ばれるワインで、必ず甘口です。

ドイツで最も辛口のワインは、トロッケン Trocken と呼ばれます。
トロッケンは英語の dry に相当する言葉で、文字通り「辛口」を意味します。

トロッケンよりは甘いけれどもリープフラウミルヒよりは辛口であるワインは、ハルプトロッケン Halbtrocken と呼ばれます。
直訳すれば「中辛口」となります。

こうしたトロッケン、ハルプトロッケンという言葉は、ラベルに記載されていることが多いです。

ワインショップ等でドイツワインを見たときに、そのワインが甘いのか辛口なのかを判断するために、簡単な目安がひとつあります。

それはラベルに表示されているアルコール度数を見ることです。

もしもアルコール度数が9%くらいかそれ以下であれば、おそらくそのワインはアルコール発酵されずに残ったブドウの糖分がまだ含まれており、甘口だと考えられます。
アルコール度数が10%以上のものであれば、それはおそらくブドウが完全にアルコール発酵しており、辛口ワインに仕上がっていると思われます。

辛口の白ワインのほうが一般的には好まれると思いますが、ドイツワインの場合、多少の甘みも魅力のひとつであることに気づきます。
実際、ある程度の甘みこそがドイツワインの品質を高めている面があるのです。

それはなぜかといいますと、その甘みが、ワインが自然に持っている高い酸味を覆い隠して、そのワインのバランスを整えるからです。

逆に言えば、ドイツワインが持つ酸の高さが甘みを打ち消してくれるため、飲んでみると、そんなに思うほどは甘く感じられないものです。

ドイツのワイン生産者がワインの甘みを保持する伝統的な方法のひとつに
ズースレゼルヴェ Süssreserve を加えるというのがあります。

ズースレゼルヴェとは収穫したブドウの果汁の一部を未発酵のまま保存したもので、ワインの甘みの調整のために、最大25%までワインに加えることがドイツでは法的に許されています。
そのズースレゼルヴェすなわちブドウ果汁は、自然で果実味のある甘さをワインに与えてくれます。

ちなみにズースレゼルヴェをワインに加えることは、フランスやイタリアでは禁止されています。
ドイツでも高級ワインにはあまり行われなくなっており、現在の高級甘口ドイツワインの場合は、亜硫酸の添加などでアルコール発酵を途中で停止させ、それによって糖分を残す方法が一般的です。

okiraku-koza_banner


ドイツワインの95%以上は上級ワイン ~ プレディカーツヴァインとそれに次ぐクヴァリテーツヴァインは、EUワイン法に当てはめるとAOPワインレベルの上級ワインとなります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回、最上級のドイツワインにはプレディカート、すなわち「肩書き」があるということを述べました。

プレディカートを持っているワインは総称してプレディカーツヴァインと呼ばれ、
プレディカーツヴァインは、ブドウの成熟度が最も高いものから順に次の6段階に分かれます。
  1. トロッケン・ベーレン・アウスレーゼ Trockenbeerenauslese(粒選り貴腐ワイン) 
  2. アイスヴァイン Eiswein(氷結ワイン)
  3. ベーレン・アウスレーゼ Beerenauslese(粒選りワイン)
  4. アウスレーゼ Auslese(完熟房選りワイン)
  5. シュペトレーゼ Spätlese(遅摘みワイン)
  6. カビネット Kabinett(通常収穫ワイン)
german_wine_system

プレディカーツヴァインのうち、上位3つのプレディカートレベルのワインは、ブドウに含まれる糖分の量がとても高いので、ワインはどうしても甘口になります。

そのため多くの人は、プレディカートのレベルは「ワインの甘さ」を示すものだという間違った理解をしてしまっています。。

しかし本当は、プレディカートは収穫時点での「ブドウに含まれる糖分」の量を示すものなのであって、ワインの中に含まれる糖分量を示すものではありません。

下位3つのプレディカートのレベルの場合は、ブドウに含まれる糖分は完全にアルコール発酵することができるので、造ろうと思えば辛口ワインに仕立てることもできます。
ですから、こららのワインに関しては、プレディーカートのレベルとワインの甘さとの間に、直接的な相関関係はありません。

たとえば実際、カビネット Kabinett のワインは通常は甘みがありますが、
なかにはカビネット・トロッケン Kabinett Trocken と呼ばれる辛口ワインも存在します。

これまで述べてきたように、ドイツのワイン等級システムは生産地区や畑の優良性ではなくブドウの成熟度(糖分量)の高さに応じてランク分けされているわけですが、

その最上級レベルであるプレディカーツヴァインはEUワイン法の枠組みの中ではAOPワイン、すなわち「原産地呼称保護ワイン」のカテゴリーに括られています(イタリアでいうDOCGレベルですね)。

ブドウの成熟度がプレディカーツヴァインほどではないが通常よりは上の場合も、
QbA = Qualitätswein クヴァリテーツヴァイン(直訳するとクオリティワイン = 品質の良いワイン)と呼ばれ、ドイツではプレディカーツヴァインに次ぐランクになります。

クヴァリテーツヴァインも、EUワイン法の枠組みではAOPワイン、すなわち「原産地呼称保護ワイン」のカテゴリーに入ります(イタリアでいうDOCレベルですね)。

ドイツには13の「特定栽培地域」があるのですが、プレディカーツヴァインもクヴァリテーツヴァインも、必ずこれらの13地域のワインです。

ちなみにドイツワインの95%以上は、プレディカーツヴァインかクヴァリテーツヴァインです。
つまり、ドイツワインのほとんどがEUワイン法でいうAOPワインレベルの上級ワインということになるわけです。
スゴイですよね!

okiraku-koza_banner

良いドイツワインには「肩書き」が付いている ~ ブドウの成熟度(糖度)が高いほど上級のランクを与える独特のシステムをドイツが持った理由とは

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツでも、他のヨーロッパ諸国のワインと同様に、ブドウが育てられた "場所" の名前がワイン名としてつけられています。

Piesporter Goldtropfchen Riesling Spatlese
 ▲
ピースポーター・ゴルトトレプヒェン・リースリング・シュペトレーゼ

上級のワインになると通常、村の名前と畑の名前がセットでワイン名となります。

(例)Piesporter Goldtröpfchen
 ピースポーター・ゴルトトレプヒェン
 ・・・ ピースポート(村名)er + ゴルトトレプヒェン(畑名)

ただし、ほとんどのヨーロッパワインと違う点として、ドイツワインではブドウ品種もたいていワインの名前の中の一部となっています。

(例)Piesporter Goldtröpfchen Riesling  
 ピースポーター・ゴルトトレプヒェン・リースリング

上級のドイツワインの場合、さらにもう一つ別の要素がワインの名前に加えられます。
それは Prädikat プレディカートと呼ばれる、
収穫時点でのブドウの成熟度(すなわち糖度)を示す用語です。

(例)Piesporter Goldtröpfchen Riesling Spätlese 
 ピースポーター・ゴルトトレプヒェン・リースリング・シュペトレーゼ

この場合、「シュペトレーゼ」がプレディカートです。
プレディカートとは、いわばワインにつけられる「肩書き」で、6段階あります。

上から順に:
  1. トロッケン・ベーレン・アウスレーゼ Trockenbeerenauslese(粒選り貴腐ワイン)
  2. アイスヴァイン Eiswein(氷結ワイン)
  3. ベーレン・アウスレーゼ Beerenauslese(粒選りワイン)
  4. アウスレーゼ Auslese(完熟房選りワイン)
  5. シュペトレーゼ Spätlese(遅摘みワイン)
  6. カビネット Kabinett(通常収穫ワイン)
肩書き付きのワインは
Prädikatswein プレディカーツヴァイン
と総称され、ドイツのワインシステムの中では最上級のランクに入ります。

このプレディカートように、ブドウの熟度の高いものに対して最上級のランクを与えるドイツのシステムは、他のヨーロッパ諸国のシステムの背景にあるコンセプトとは完全に異なったものです。
ヨーロッパ諸国のワイン格付方式は、素晴らしい生産地や畑に対して最高のステータスを与えるのが普通ですから。

こうしたドイツのシステムは、この国では伝統的にブドウ栽培の優先順位が「成熟度」に置かれてきたことを如実に物語っています。

冷涼かつ毎年変化の激しい気候条件のもとでは、ブドウの成熟は決して保障されるものではなかったため、これが最上の目標とされてきたのです。

ドイツの気候条件は、ワイン造りという点では決して恵まれていません。
ブドウの成熟度(糖度)の高いものに対して高い地位を与えるという発想は、そうした所与の条件を背景にして生まれてきたのですね。

okiraku-koza_banner


ドイツで最南端のバーデンとブドウ栽培面積2位のファルツ ~ この2地域はドイツの中では特に温暖な産地で、ドイツの高品質赤ワインの道を切り開きつつあります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツ人は今でもものすごい量のビールを飲みますが、白ワイン・赤ワインの消費もかなりのものです。

つい最近まで、ドイツで飲まれる赤ワインのほとんどは近隣諸国、特にイタリアとフランスから輸入されたものでした。

しかし現在のドイツ人たちは、消費する赤ワインのある程度までは、自国のブドウ畑をアテにすることができるようになっています。

近年の気候の温暖化によって、ドイツでは以前よりも良い赤ワインができるようになっているのです。

バーテン Badenファルツ Pfaltz の2地域はドイツの中では特に温暖で、ドイツの高品質赤ワインの道を切り開きつつあります。
(ドイツのワイン産地についてはまた回を改めて書きたいと思います。)

バーデンはドイツ最南端の産地で、年間平均気温がドイツで最も高い産地です。
現在ではバーテンで生産されるワインの4割以上が赤ワインです。
ブドウ品種はシュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)が主体です。

【関連記事】
ドイツでは昔も今もリースリングの白ワインが主役 ~ でも近年ではピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)の赤ワインの人気が上昇しています
ドイツはヨーロッパの伝統的ワイン生産国の中では異色の存在 ~ ずっと甘口の白ワインが主体でしたが、近年の地球温暖化の影響で高品質の赤ワインが増えています


バーデンのシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)の品質の素晴らしさには驚かされます。
かつてのドイツの赤ワインといえば、軽すぎて痩せた感じのものというイメージがありましたが、明らかにそういった面影はなくなりました。


 ▲ドイツ・バーデンのシュペートブルグンダー

【関連記事】
ドイツのバーデン地方の赤ワイン ~ シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)は想像以上に力強かった


もうひとつのファルツはワイン生産量、ブドウ栽培面積ともにドイツ第2位のワイン産地で、素晴らしいリースリングの白ワインと赤ワインの両方を作っています。

しかし、ファルツでも今では4割近くが赤ワインです。
ドルンフェルダーという土着品種がファルツでは最も栽培面積が大きく、ピノ・ノワールがこれに続いています。

ドイツの赤ワイン、これからますます注目していきたいですね!

okiraku-koza_banner


ドイツでは昔も今もリースリングの白ワインが主役 ~ でも近年ではピノ・ノワール(シュペートブルグンダー)の赤ワインの人気が上昇しています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツの冷涼な天候の中では、高貴なブドウ品種リースリングが真の実力を発揮します。
リースリングはドイツ
最大のブドウ品種で、全ブドウ栽培量の約23%を占めています。

ちなみにドイツのリースリング栽培面積は世界第1位で、全世界のリースリングの約60%(!)がドイツで栽培されています。

Schloss-Vollrads-Spatlese-Riesling-2009
 ▲ドイツのリースリングワイン

ドイツで2番目に栽培量が大きいのは、少々特徴の捉えにくい白ブドウ品種ミュラー・トゥルガウです。
これはリースリングとマドレーヌ・ロワイヤルというブドウから人工的に交配されてできた品種です。

ミュラー・トゥルガウはリースリングよりもボディが軽めで、リースリングほど風味が豊かではありません。
正直、偉大なワインになるポテンシャルも感じられません。

このブドウ品種は近年、徐々に存在感を失ってきています。
あまり人気がなくなってきたからです。

リースリング、ミュラー・トゥルガウの次にドイツで最も多く栽培されているブドウ品種は、信じられないかもしれませんが、ピノ・ノワールです。

ピノ・ノワールはドイツでは
シュペート・ブルグンダー Spätburgunder
と呼ばれています。

20年ちょっと前までは、ピノ・ノワールはドイツにおいてそれほど重要視されておらず、ブドウ栽培面積全体のわずか2~3%ほどしかありませんでした。

しかし、現在のドイツでピノ・ノワール11.5%を占めており、黒ブドウでは1番、ブドウ全体でも3番目に栽培面積の大きいブドウ品種となっています。

黒ブドウでピノ・ノワールの次に栽培面積が大きいのは、土着品種であるドルンフェルダーです。
ドイツのブドウ全体の中では4番目に栽培面積が大きく、全ブドウ栽培面積の約8%を占めています。

ドルンフェルダーは土着品種と言いましたが、正確にはヘルフェンシュタイナー、ヘロルドレーベという2つの土着品種の交配で生まれた品種です。

これに続く5番目以下のブドウ品種5つのうち、4つは白ブドウとなります。

栽培面積の順に言いますと、白ブドウのルーレンダー(ピノ・グリ)、シルヴァーナー、ヴァイブルグンダー(ピノ・ブラン)、次に黒ブドウのポルトギーザー、そして白ブドウのケルナーとなります。

近年のドイツワインの傾向は明確です。

①リースリングが依然として主役ですが、辛口が主体となってきています
②かつてはポピュラーだったミュラー・トゥルガウは、今ではやや時代遅れとなっています
③赤ワイン、特にピノ・ノワールの人気が上昇しています

地球温暖化の影響もあり、ドイツワインのトレンドも甘口→辛口、白ワイン→赤ワインへとシフトしているようですね。

okiraku-koza_banner

ドイツはヨーロッパの伝統的ワイン生産国の中では異色の存在 ~ ずっと甘口の白ワインが主体でしたが、近年の地球温暖化の影響で高品質の赤ワインが増えています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ドイツのワインって、皆さん日頃飲みますか?
30~40年くらい前に日本でワインを飲み始めた人たちは当時、甘口のドイツ白ワインから入った人、結構多かったんですよ。

そんな歴史的背景もあって、ドイツワインというと、どうも初心者向けワインというイメージがいまなお払拭し切れていないように感じます。

でも、紀元前100年頃に古代ローマ人がこの地でワイン造りを始めたのがドイツワインの起源ですので、ドイツワインの歴史は非常に長く、醸造技術も常に先進的でスゴイんです。

assmannshausen
 ▲ラインガウ地域のアスマンハウゼン

ドイツのワインは、ヨーロッパのワインの中では少し違った道を辿っています。

ドイツのワインは伝統的に白ワインだけ・・・とまでは言いませんが、ほとんど白ワイン主体でやってきました
ドイツで栽培されているブドウの約3分の2が白ブドウです。

ドイツの白ワインはフルーティーなスタイルで、アルコール度数が低く、樽熟成はせず、多くは甘口もしくは少々甘味を含む中辛口です。

ラベル表記もヨーロッパの中では珍しく、ドイツワインはたいていラベルにブドウ品種が記されています

ドイツワインの生産地域は北緯47度から52度の間にあり、
ドイツはヨーロッパの主要ワイン生産国の中では最も北に位置しています

そのため気候は非常に冷涼です。

ドイツの中にも一部は温暖な地域もありますが、それは例外的で、一般的に言えばドイツでは黒ブドウはあまりよく熟しません。
少なくとも、1997年頃から影響が言われ始めた近年の地球温暖化の前まではそうでした。
最近は地球温暖化の影響で黒ブドウもよく成熟するようになり、ドイツの赤ワインは量も品質も増えています

またドイツの産地の気候は毎年変動が大きく、ブドウの出来の良い年とそうでない年が比較的ハッキリ現れます。

ドイツの素晴らしいブドウ畑の多くは、ライン河モーゼル河のような河川沿いの、日当たりの良い急峻な斜面にあります。
これも年ごとの気候変動による極端なブレを抑え、ブドウの成熟を促進させる必要性から、長い歴史のなかでそうなったものです。

今回から数回に分けて、ドイツのワインについて述べていきたいと思います。

okiraku-koza_banner

ポルトガルの辛口赤ワインの産地として有名なドウロ ~ ポルトガルを代表する土着品種トゥーリガ・ナシオナルを主体に凝縮感のある赤ワインが造られています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回はポルトガルの白ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデについて書きました。
今回はポルトガルの赤ワインについて少し触れるとともに、ポルトガルワインのラベル用語と品質分類について見ておきましょう。

●ドウロ Douro

ポルトガルの辛口赤ワインの産地として最も有名なのは、ポルトガル北部のドウロ Douro です。
このドウロはポルト(ポートワイン)の産地ですが、とても良質な辛口赤ワインの産地でもあります。

実は、ポルトガルの原産地呼称DOCドウロとDOCポルトは同じ地域です。
DOCドウロだと辛口赤ワイン、これを酒精強化した甘口ワインがDOCポルトというわけです。

ドウロの位置はこちら

ドウロでは、ポルトガルを代表する土着品種であるトゥーリガ・ナシオナル Touriga Nacional がよく使われています。
トゥーリガ・ナシオナルは典型的には濃い色調と凝縮した果実味を持つワインになる品種です。

duas_quintas_rouge
 ▲ラモス・ピントのデュアス・キンタス

ポルトの造り手であるラモス・ピント Ramos Pinto (現在は仏シャンパーニュのルイ・ロデレール社の傘下)は、手頃な価格で高品質な辛口赤ワインをドウロで造っています。

同社のデュアス・キンタス Duas Quintas というブランドの赤はトゥーリガ・ナシオナル主体で、熟した果実味、プラムのような風味、やわらかな口当たりのワインです。
1本2500円くらいで、コクがあるけどしなやかな、お買い得なワインだと思います。

さて、ポルトガルワインのラベル表示について簡単にまとめておきます。

● ラベルに記載の用語

・ Colheita = ヴィンテージ(収穫年)
・ Tinto = 赤ワイン
・ Quinta = ブドウ畑、ブドウ園
・ Reserva = あるヴィンテージのなかでも一定の基準を満たす優れた品質のもの

・ Garrafeira =
<赤ワインの場合>
・・・Reserva のうち、樽の中で最低2年、瓶内で1年寝かせたもの
<白ワインの場合>
・・・Reserva のうち、樽の中で6ヶ月、瓶内で6ヶ月寝かせたもの

● ポルトガルワインの品質分類

ポルトガルは世界で最初の原産地呼称管理法が制定された国です。
1756年に、ポルトに制定されています。

ポルトガルワインの品質分類はスペインのものに比べるとシンプルです。
ポルトガルの「地理的表示付きワイン」の品質分類は、EUと同じで下記の2段階です。

EU分類 → ポルトガルのカテゴリー

・ DOP → DOC (Denominação de Origem Controlada)
・ IGP → VR (Vinho Regional)

【関連記事】意外と細かいスペインワインの品質分類 ~ もともとあった DO,DOCa のほかに VP,VC などスペイン独自の分類が2003年に加わって、分類が多岐にわたっています

最近はカジュアルなワインバーなどでもポルトガルワインがメニューに載っているところが増えてきましたよね。
個人的にも、これからますますポルトガルワインに注目していきたいと思っています。

okiraku-koza_banner

ポルトガルのワインはポルトだけではありません ~ ヴィーニョ・ヴェルデは "緑のワイン"、スッキリ爽やかでシーフードにとてもよく合う白ワインです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ポルトガルのワインというと、とにかく有名なのはあの偉大なデザートワイン、ポルト(ポートワイン)ですよね。
同じく甘口のマデイラワインもよく知られています。

でも世界のワイン好きたちは徐々に、ポルトガルのワインの別の側面に注目するようになっていきています。
それは、この国の辛口ワインです。

Vinho_Verde
 ▲ヴィーニョ・ ヴェルデ

ポルトガルには土着のブドウ品種が何百種類もあります。
ポルトガルワインのほとんどは、こうした土着品種から作られています。

ポルトガルには、まだ世界に向けてマーケティングされていないワインがたくさんあります。
手頃な値段のポルトガルワインが、日本のワイン市場でも、今後もっと大きな役割を果たすことを期待してしまいますね。
これからが楽しみな生産国です。

● ヴィーニョ・ヴェルデ ~ ポルトガルの "緑のワイン
"

暑い夏の夕暮れ時に最もピッタリなワインは、とても爽やかな白ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデ
Vinho Verde かもしれません。
典型的なヴィーニョ・ヴェルデは、ごくわずかに炭酸を含む、ハツラツとした若飲みタイプの白ワインです。
ヴィーニョ・ヴェルデは酸味が豊かで、グリルした魚貝の料理にとてもよく合います。

ぼくは以前ポルトガルを一人旅したとき、町なかの食堂でタラを食べながらヴィーニョ・ヴェルデを飲んだことがあります。
美味しくて、すぐに1本空いてしまいました ^^

ヴィーニョ・ヴェルデ Vinho Verde は直訳すると「緑のワイン」で、これ自体が産地の名前にもなっています。

ヴィーニョ・ヴェルデがあるミーニョ地方 Minho はポルトガルの北西の端、スペインのリアス・バイシャスのすぐ南に隣接しています。
白ワインのブドウ品種も、リアス・バイシャスのアルバリーニョと同じで、ポルトガル語でいうアルヴァリーニョ Alvarinho が主体です。

【関連記事】
リアス・バイシャスはシーフードによく合うアルバリーニョ種の白ワインが人気の大西洋沿岸の産地です

portugal_map1

大西洋からの雨のおかげで、この地方はほぼ一年中、豊富な緑に恵まれた地域です。
これが、このワイン(産地)の名前の由来のひとつにもなっています。

なお、ヴィーニョ・ヴェルデでは白ワインだけでなく、赤やロゼも造られています。
実は、かつてはヴィーニョ・ヴェルデのワインの多くは赤ワインでした。
しかし白ワインの成功により、現在は赤ワインは全体の3分の1程度まで減りました。

まだまだ暑さの残る季節・・・ヴィーニョ・ヴェルデでスッキリしてみてはいかがでしょうか。
冷やして飲むと、とても美味しいですよ!

okiraku-koza_banner

意外と細かいスペインワインの品質分類 ~ もともとあった DO,DOCa のほかに VP,VC などスペイン独自の分類が2003年に加わって、分類が多岐にわたっています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

この1週間ほどスペインのワインについて述べてきました。
締めくくりとして、スペインワインのラベルに書かれている用語と、スペインワイン法における品質分類についてまとめておきましょう。

● ラベルに記載の用語

・ Blanco = 白ワイン
・ Tinto
= 赤ワイン
・ Bodega
= ワイナリー
・ Cosecha または Vendimia
= ヴィンテージ(収穫年)

・ Crianza
=  
<赤ワインの場合>
・・・合計24ヶ月の熟成を経ている(そのうち6ヶ月以上は樽熟成)
<白・ロゼの場合>
・・・合計18ヶ月の熟成を経ている(そのうち6ヶ月以上は樽熟成)

・ Reserva
=
<赤ワインの場合>
・・・合計36ヶ月の熟成を経ている(そのうち12ヶ月以上は樽熟成)
<白・ロゼの場合>
・・・合計24ヶ月の熟成を経ている(そのうち6ヶ月以上は樽熟成)

・ Gran Reserva
=
<赤ワインの場合>
合計60ヶ月の熟成を経ている(そのうち18ヶ月以上は樽熟成)
<白・ロゼの場合>
合計48ヶ月の熟成を経ている(そのうち6ヶ月以上は樽熟成)

【関連記事】

リオハのワインは伝統的に、発売前に長い熟成期間を経るものが多いです ~ 熟成期間に応じてクリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバという呼称があります



● スペインワインの品質分類

スペインのワイン法における品質分類は、もともとあったDOCa、DOなどの分類に加えて、2003年にVP、VCなど新しい独自の分類が加わっているため、他のヨーロッパ諸国よりも分類が多岐にわたり若干わかりにくくなっています。

2009年に発効した新EUワイン法の分類に照らしながら整理してみましょう。


 スペインのワイン品質分類

spanish_wine_grades


EUワイン法はEU加盟国を拘束するので、各国のワイン法もその枠組みに沿ったものである必要があります。

EUワイン法では、ワインをまず「地理的表示付きのワイン」と「地理的表示のない」ワインに分けています。
「地理的表示付きのワイン」はさらに、AOP(原産地呼称保護)と IGP(地理的表示保護)に分類されます。

AOP のことをスペイン語では DOP と呼びます。
DOP = Denominación de Origen Protegida
意味は AOP と同じく「原産地呼称保護」です。

(1) DOPワイン

スペインでは、DOPワインにはもともと次の2段階があります。

DO = Denominación de Origen (原産地呼称)
DOCa = Denominación de Origen Calificada (特選原産地呼称)

DOCa は DO よりも高ランクで、現在リオハ Rioja とプリオラート Priorat の2地域のみがDOCa認定されています。

2003年にスペインは、DOCaの上にVPというランクを設けました。
VPVino de Pago ビノ・デ・パゴ で「単一ブドウ畑限定ワイン」です。

これは個性的なテロワールの畑から作られる高品質ワインを銘柄単位で認定するもので、品質規定はDOCaに準じます。

その畑は既存のDOやDOCaに認定されていない地域のものでもよい、とされています。
そして、もしそれがDOCaの認定地域と重なる場合は、 VPC(Vino de Pago Calificado; 上質単一ブドウ畑限定ワイン)と表示してもよいことになっています。

VPは2016年8月現在で14銘柄が認定されていますが、VPCに認定されているワインはまだ存在しません。

2003年にもうひとつ、DOの下に設けられたのがVC(Vino de Calidad con Indicacion Geografica; 地域名付き高級ワイン)です。

VCは特定の地域で収穫されたブドウを原料とし、その地域性を表現したワインで、VCに認定されるとその5年後にDOに昇格申請が可能となります。

(2) IGPワイン

EUワイン法のIGPワインに相当するのは、スペインでは Vino de la Tierra で、いわゆる地酒、地ワインです。
この表記の後ろに認定地域の名前が表示されます。

【関連記事】
AOP,DOP,AOC,DOC,DOCG,DO,DOCa ・・・原産地呼称制度も国によって呼び名が違うなんて、ヨーロッパって大変ですね。。でも産地に対する各国の強い思いが込められています
ヨーロッパの地理的表示付きのワインのラベル表示はAOPとIGPの2種類!のはずですが、加盟国がもともと使用していたDOCG等の表示がまだまだ健在なのは、EUの求心力のなさだったりして?

スペインのワイン品質分類は他の欧州諸国に比べてやや細かいのですね。
ただ、実際ぼくらが日頃スペインワインを楽しむ上では、とりあえずDOとDOCaだけ知っていれば十分だと思いますよ。

okiraku-koza_banner


ナバーラ、ビエルソ、トロ、ルエダ・・・スペインには近年動きのある産地がまだまだあります ~ ルエダのベルデホ種の白ワイン、ビエルソのメンシア種の赤ワインはとくに注目です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スペインのワイン産地の続きです。
スペインには近年動きのある産地がまだまだあります。

スペインの各産地の位置はこちら

rueda
 ▲ベルデホ種から造られるルエダの白ワイン


●ナバーラ Navarra

ナバーラはリオハの北東に位置する産地です。
昔はナバーラという言葉は、安くて飲みやすい辛口ロゼワインの代名詞でした。

しかし今日では、ナバーラは赤ワインのほうがよく知られています。
生産量も現在では赤が6割、ロゼは3割程度です。

リオハの中級ワインとスタイルがよく似ており、価格はリオハよりも安めです。
ナバーラのワインの多くはテンプラニーリョを主体とし、ガルナッチャも使用しますが、
先進的な生産者はカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローも使用して新しいタイプのワインを造っています。

●ビエルソ Bierzo

この小さな産地はスペインの北西部、リアス・バイシャスの東部にあります。
山の多い産地で、急峻な斜面にある葡萄畑のではメンシア Mencia という土着品種を栽培しています。
スパイシーな風味を伴う赤ワインで、はつらつとした酸味と赤系果実のアロマ、風味があります。

●トロ Toro

トロはリベラ・デル・デュエロの北西部に位置する、中世からワインを造っていた産地です。
スペインのなかでは当時はとても有名な産地でした。

しかしその後、この土壌の痩せた暑く乾いた産地でのワイン造りは何世紀にもわたって事実上放棄されていました。

近年のスペインワインブームの中で、トロという産地は再発見されました。
現代のワイン生産者たちは、この気候と土壌が実はパワフルでタンニン豊富な赤ワイン造りに理想的な環境であると気づいたのです。

テンプラニーリョ(この地域ではティント・デル・トロと呼ばれます)からリッチで芳醇、パワフルな赤ワインが造られています。
トロのワインはリベラ・デル・デュエロの廉価版としてポピュラーになっています。

●ルエダ Rueda

ルエダはリベラ・デル・デュエロの西に位置する産地です。
リオハの有力生産者であるマルケス・デ・リスカルが1970年代にこの地に進出してから、知られるようになった産地です。

ベルデホ Verdejo という土着品種から、スペインの中でも最高レベルの白ワインを産出する産地のひとつです。
ライトボディでフレッシュな風味と心地よい果実味をもつ、手頃な価格の白ワインです。


スペインには近年知られるようになった産地がたくさんあって、ヨーロッパの中では現在、非常にダイナミックなワイン生産国です。
いろいろ試してみたいですね!

okiraku-koza_banner


ペネデスはトーレスやフレシネなど大手生産者の本拠地、リアス・バイシャスはシーフードによく合うアルバリーニョ種の白ワインが人気の大西洋沿岸の産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スペインのワインの話はリオハリベラ・デル・デュエロプリオラートの3産地だけでは終わりません。
とくにコストパフォーマンスを重視する場合は、スペインには知っておきたい産地がほかにもいくつかあります。

rias_baixas
 ▲リアス・バイシャスのアルバリーニョは魚貝のパエリアにもよく合う


●ペネデス Penedés

ペネデスはカタルーニャ地方、バルセロナの南西にある産地です。
ここはスペインの代表的なスパークリングワインであるカバ Cava の中心的産地でもあります。
(カバについては今後、いつか他のスパークリングワインとともに整理して書くつもりです。)

ペネデスについて語るには、やはりトーレス Torres のことを述べるべきでしょう。
トーレスは世界最大級の家族経営ワイナリーの1つです。

当主のミゲル・トーレスは1970年頃、テンプラニーリョやガルナッチャなどの土着品種とともに、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどのフランス品種を使ってスペインワイン造りを行う先駆者となりました。

トーレスのワインはどれもクリーンで品質が良く、価格も全体的にリーズナブルです。
ガルナッチャとカリニャンを主体に造られるカジュアルスタイルの定番ブランド、サングレ・デ・トロ Sangre de Toro は1本千円少々で、ワインショップやスーパーなど比較的どこでも購入できます。

トーレスでやや価格帯の上級ワインとしては、黒いラベルのマス・ラ・プラナ Mas La Plana があります。
パワフルながらもエレガントさを兼ね備えたカベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインで、1本8千円くらいです。

なお、ペネデスにはフレシネ Freixenet というカバの大手生産者もあります。
黒い瓶に入ったコルドン・ネグロという廉価なカバが、コンビニでもよくハーフボトルで売られていますので、飲んだことがある方も多いのではないでしょうか。


●リアス・バイシャス Rías Baixas

リアス・バイシャスはガリシア地方の白ワインです。

【関連記事】
夏のスッキリ白ワインセミナーを開催しました!~ 今回はあえて基本品種以外のワインを中心にセレクト、夏らしい爽快な白ワイン5種類を楽しみました

リアス・バイシャスの位置はこちら

ガリシア地方はスペインの北西部、大西洋沿岸にあり、南はポルトガルに接するエリアです。
もともとワイン産地としてはそれほど知られていませんでしたが、ガリシア地方の西部から南へと広がるリアス・バイシャスと呼ばれる小さなエリアから、新しいタイプの白ワインが現れて一躍有名になりました。

リアス・バイシャスはアルバリーニョ Albariño というブドウ品種を使います。
アルバリーニョはこの産地の栽培面積の95%以上を占めています。

リアス・バイシャスは世界でも最もホットな白ワイン産地のひとつです。
ここでホットと言ったのは気候のことではなく、人気が急上昇しているという意味です。

ちなみにリアス・バイシャスの気候は、どちらかと言うと冷涼で比較的雨の多い産地です。
アルバリーニョは樹勢が強く、多湿な環境なので、日本のように棚式栽培が行われています。

この海沿いの産地には今や200近いワイナリーがあります。
ほんの20年ほど前には60くらいしかなかったことを考えると、ものすごい発展ぶりですよね。

白ワイン向きの冷涼な気候、近代的なワイン造り、そして低収量栽培という要素が折り重なって、アルバリーニョのワインはこれまで大きな成功を収めています。

アルバリーニョははとても生き生き、はつらつ、爽やかなワインになります。
花のようなアロマティックな香り、アプリコット・白桃・洋梨・りんごのような風味と、かすかに塩味のようなニュアンスも感じられます。

魚貝類、シーフード料理に完全によく合う、まさに "海のワイン" です。
パエリアに合わせても最高ですね。

なお、このアルバリーニョ Albariño というブドウは南側に隣接するポルトガルにおいても Alvarinho と呼ばれ、同様に酸味が豊富で非常にフレッシュな白ワインが造られています。
ポルトガルのそれはヴィーニョ・ヴェルデ Vinho Verde (直訳すると緑のワイン)というワインです。

【関連記事】
ポルトガルのワインはポルトだけではありません ~ ヴィーニョ・ヴェルデは "緑のワイン"、スッキリ爽やかでシーフードにとてもよく合う白ワインです

まぁ国境なんて人間が勝手に線を引いただけですから、ブドウ君たちにしてみれば、たまたまスペインとポルトガルにまたがるこのエリアに住んでいるのは同じアルバリーニョ族なのであって、どちらの国の側でもスッキリさわやかな白ワインになっている、ということなんですけどね。

リアス・バイシャス、おすすめです!
スペイン料理レストランやスペインバルに行った際は、ぜひ注文してみてください。

okiraku-koza_banner


プリオラートは12世紀に修道士が拓いた秘境の産地 ~ ずっと忘れ去られていましたが1980年代末に再発見され、力強く凝縮感のある赤ワインで有名になりました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

12世紀のこと、修道士たちがとても険しいモンサント山脈の岩山の中に修道院を築きました。
そして、その急峻な山の斜面にブドウ畑を拓きました。

その土地で生活することは非常に困難だったので、時が過ぎると修道院は閉鎖され、そのブドウ畑は放置されていました。
そのエリアはやがて、プリオラート Priorato という名で知られるようになりました。

salmos2010
 ▲トーレスのプリオラート赤サルモス

20世紀になって・・・というよりつい30年ほど前の話ですが1980年代末に、いくつかのワイン生産者がこの土地に入植しました。

彼らはこの土地が力強い赤ワインをを造るのに理想的な条件を備えていること、とくに20世紀初期に地元の人によって植えられた古木から、とても凝縮感のあるワインが造れることを "再発見" したのです。

こうして、それまで無名だったプリオラートが突然、 脚光を浴びるワイン産地となりました。

とはいえプリオラートが観光地になったことはありません。
カタルーニャ地方の中心都市バルセロナから南西方向に150~160kmほどのところに位置していますが、急峻なモンサント山脈の岩山の中にあるため、辿り着くのが容易ではないからです。

※プリオラートの位置はこちらの記事を参照

主に粘板岩と片岩からなるこの産地の火山性の土壌は肥沃ではなく、ブドウ以外の作物は育ちません。
気候は険しい大陸性気候で、夏は非常に暑く、冬は非常に寒くなります。

急な斜面は階段状のブドウ畑になっており、多くは耕作が困難です。
作業は人間の手によるほかなく、ブドウの収量も非常に低いです。

こうした険しい土地で、ガルナッチャカリニャンというスペインの土着品種を主要品種として、ものすごく凝縮感があり力強い赤ワインが造られているのです。

プリオラートのワインはたいてい、この土地のようにゴツく、力強いタンニンと高いアルコール度数をもったスタイルになります。
中にはアルコール度がものすごく高いため、辛口でもほとんどポルトのような甘味を感じるものもあります。

スペインワイン法の品質分類でDOCa(特選原産地呼称ワイン)にランクされているのは、伝統的名醸地リオハとプリオラートの2つだけです。

プリオラートでのワイン造りは低収量のわりにコストがかり、市場流通量も少ないため、価格も必然的に高くなります。

最も高評価とされるクロス・エラスムス Clos Erasmus は生産量が極度に少なく、日本では入手困難なワインです。

プリオラートの有名生産者であるアルバロ・パラシオス Alvaro Palacios (1980年代後半に最初にこの産地を再開発した造り手のひとつ)が造るレルミータ L'Ermita というワインは日本でも購入できますが、ヴィンテージによって1本7万円から15万円くらいします。

もちろん、もうすこし手頃なプリオラートもあります。
スペインの大手ワインメーカーであるトーレス Torres も2007年からサルモス Salmos と言う名前の赤ワインを出しています。価格は1本4千円ほどです。

このサルモスも、非常に果実の凝縮感があって力強く、プリオラートらしいワインです。
ぼく自身、以前にいたワインバーで取り扱っていた関係で、何回か試飲しています。
プリオラートに興味のある方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。

okiraku-koza_banner

リベラ・デル・デュエロではテンプラニーリョはティント・フィノ ~ ウニコやペスケラなど素晴らしい赤ワインの産地で、いまやリオハに負けないスペインの名醸地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

リベラ・デル・デュエロ Ribera del Duero は、スペインの首都マドリッドから車で2時間ほど北上したところにある産地です。

スペインのなかでは最もダイナミックな動きのある産地群のひとつです。

リベラ・デル・デュエロではリオハ同様テンプラニーリョが主要品種です。
この産地でテンプラニーリョはティント・フィノ Tinto Fino と呼ばれ、深い色味としっかりしたボディに繊細さも併せ持つ赤ワインが生まれます。

歴史の長いリオハ以外で、テンプラニーリョというブドウ品種がこれほどまでの高みに達した産地は、おそらく世界中を探してもリベラ・デル・デュエロだけでしょう。

unico1999
 ▲ベガ・シチリアのウニコ

リベラ・デル・デュエロでは、レジェンドと呼ばれるベガ・シチリア Vega Sicilia という生産者が何年にもわたり、この産地のワインの評判を独占していました。

実際、(産地としてではなく)個別のワインとして一番有名なスペインのワインは、
ずっとベガ・シチリアが造るウニコ Unico というワインでした。

ウニコはおおむねテンプラニーリョ8割、カベルネ・ソーヴィニヨン2割のブレンドで造られるワインで、凝縮感があり、骨格のあるタンニンを伴い、非常に長期の熟成能力を持つスケールの大きな赤ワインです。

ウニコは発売される前に木樽で10年熟成させ、場合によってはさらに瓶内でも数年間熟成させてから販売されるワインです。

スペイン国内の高級レストランではたいていワインリストに載っているはずです。
日本で購入すると最低でも1本4万5千円はするでしょう。

しかし現在は、ベガ・シチリアだけがリベラ・デル・デュエロの名声を独占しているわけではありません。

アレハンドロ・フェルナンデス Alejandro Fernández が造るペスケラ Pesquera はテンプラニーリョ100%で造られる赤ワインで、すでに20年以上にわたって高い評価を得ています。

pesquera
 ▲アレハンドロ・フェルナンデスのペスケラ・クリアンサ

ペスケラはコクがあり、樽香とタンニンが力強く、凝縮した果実味のある赤ワインです。
ペスケラ・レゼルバは1本5千円くらいです。

これより熟成期間が短く若いペスケラ・クリアンサは1本3千円くらいで購入できるので、ぼくはたまに個人的に楽しんでいます。

リオハだけではないテンプラニーリョの面白さ・・・リベラ・デル・デュエロの赤ワインもぜび試してみてはいかがでしょうか。

okiraku-koza_banner

お食事しながらワインを学べる、お気楽ワインセミナー「美味しい料理とワインを気軽に楽しむ会」をVASHON日本橋兜町店で開催しました!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

おととい8月23日(水)の夜は、お気楽ワインセミナー「美味しい料理とワインを気軽に楽しむ会」を開催しました。

東京・日本橋のVASHON日本橋兜町で毎月開催している、お食事をしながらみんなでワインをワイワイ学べるワインセミナーです。

【関連記事】7/12ワインセミナー「美味しい料理とワインを気軽に楽しむ会」を開催しました!


IMG_3614a

19時を過ぎても蒸し暑さの残る東京都心の夏の夜。
まずはスッキリしましょう。スパークリングワインで乾杯~!

IMG_3616a

今回のスパークリングワインは、チリのモンテス・スパークリング・エンジェル。
シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵の伝統的製法で造られる本格的スパークリングです。
色が濃い目で比較的コクのある味わいです。

IMG_3628a

前菜はいろいろトマトと生ハム、ローストビーフのサラダ仕立て。

ローストビーフに載せてある緑色のもトマト、手前の丸いフライの中身もトマトです。
甘味のあるトマトからかなり酸味のあるトマトまで、本当にいろいろ。

フランス・ロワール地方のソーヴィニヨン・ブランを合わせました。
この白ワインが持つグレープフルーツのような果実味とハツラツとした酸味が、よく合いました。

IMG_3630a

このVASHONでのセミナーでは、ゲストの皆さまと一緒に講師もお料理をいただきます。
簡単な自己紹介など歓談タイム・・・それでも皆さんワインのテイスティングに真剣です。

IMG_3654a

2皿目はスズキのムニエル焦がしバターソース。

肉厚なスズキとソースのふくよかな風味には、樽香を伴うふくよかなテイストのシャルドネを合わせたいところ。

IMG_3641a

予定していたアルゼンチンのシャルドネの前に、
当初の予定には無かったのですが今回は特別にエキストラで、
フランス・ブルゴーニュ地方のシャルドネ(ルイ・ジャドのブルゴーニュ・シャルドネ2014年)もテイスティングしてみました。

同じシャルドネでもフランスのものとアルゼンチン(新世界)のものではワインのスタイルや味わいが違うことを体感していただこうとの趣旨です。

どちらも樽香を伴いますが、フランスの方はほのかな樽香で落ち着いた風味、アルゼンチンのほうはパワフルな樽香でトロピカルフルーツのような濃厚な風味です。

IMG_3639a

ソムリエール犬飼雅恵がワインの説明をしています。

ブルゴーニュ地方のシャルドネとアルゼンチンのシャルドネ、
どちらがこの料理に合うと思うか、どちらが好きか。
皆さんに尋ねてみたところ、今回はブルゴーニュのシャルドネのほうが若干、人気がありました。

もちろん好みは人それぞれ、飲む状況にもよりますね・・・唯一の正解というものはありません。

IMG_3649a

このセミナーは、単に食べて飲んで美味しかった、という会ではありません。
しっかりとワインの基本も学びます。
皆さん、真剣にワインと向き合っています。

IMG_3664a

3皿めのメインは国産地鶏とグリュイエールチーズのインボルティーニ黒トリュフソース。

とてもジューシィな食感の地鶏をグリュイエールチーズ等で包み、風味がしっかりとしてコクのある黒トリュフソースで味付けをしています。

料理のボリューム感に負けず、かつ黒トリュフのデリカシーと歩調を合わせられるワインがほしいですね。
2010年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノを選んでみました。

IMG_3662a

ヴィンテージから7年経っていることにより熟成感がすこし出ており、若干レンガ色のニュアンスが入った色合いの赤ワインとなっています。
若いうちは強靭だったと思われるタンニン(渋味)も、熟成により程よく丸みを帯びています。

すこしシェリーやマデイラを思わせる酸化熟成の風味が出ているのは、このワインが大樽熟成など伝統的な造り方を一部採り入れているからでしょう。

それでもボディも味わいもシッカリとした骨格を保ち、かすかにドライフルーツのような甘味が感じられる辛口赤ワインです。

IMG_3665a

会の後半には参加者の皆さん同士も打ち解け、活発に質問や意見交換が行われました。

毎度のことながら、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
21時にいったん閉会し、残れる方とはさらに30分ほどワイン談義を楽しみました。

ぼくたちバイザグラスがVASHON日本橋兜町で行う、このお食事つきの「お気楽ワインセミナー」は、毎月1回のペースで開催しています。

次回は 9月27日(水) 19時~21時に開催します。

楽しそうだなと思った方、ワインに興味がある方、職場が近くにある方・・・
ぜひご参加ください。

バイザグラスの松沢裕之と犬飼雅恵が、あなたとの出会いを楽しみにしております。

okiraku-koza_banner


リオハのワインは伝統的に、発売前に長い熟成期間を経るものが多いです ~ 熟成期間に応じてクリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバという呼称があります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スペイン随一の名醸地リオハ Rioja の続きです。

【前回の記事】リオハは昔も今もスペイン随一の名醸地 ~ スペインの最も代表的なブドウ品種テンプラニーリョを主体とした赤ワインで世界的に有名な産地です

リオハの赤ワインは伝統的に、発売される前にアメリカ産オークの木樽の中で何年も熟成されます。
この伝統的製法のワインは、果実味は控えめで枯葉のように落ち着いた(シェリーのような少々 "ひねた")口当たりのワインになります。

近年のトレンドとしては、木樽での熟成期間は短めにして、その代わりに瓶に詰めてから瓶内熟成をさせる傾向にあります。
そのように造られたワインは、よりフレッシュな果実味を持ったものになります。

もうひとつのトレンドとして、ワイン生産者の中には、アメリカン・オークの木樽だけではなく、フレンチ・オークの木樽で熟成させるスタイルのワインも造られています。
伝統的なアメリカン・オーク樽熟成の場合、樽由来のバニラのような香りをかなり強く伴う傾向がありますが、フレンチ・オークを使用すると、その香りが穏やかに上品に感じられるようになるのです。

rioja_ygay
 ▲マルケス・デ・ムリエタのリオハ(カスティーリョ・イガイ)グラン・レセルバ


上記のような、ワインのスタイルとは別に、リオハのワインは発売前の熟成期間の長さによっても、かなり違った顔を見せます。
この熟成期間の長さに応じてホーベンクリアンサレセルバグラン・レセルバという呼称が法的に認められています。
  • ホーベン Joven
    熟成を行わずに醸造されたら若い段階ですぐに発売されるもの
    果実味もフレッシュで若々しい風味のワインです
  • クリアンサ Crianza
    発売前に2年以上の熟成(リオハではうち樽熟成1年以上)を経たもの
    この段階ではまだ果実味もフレッシュでフルーティなワインです
  • レセルバ Reserva
    発売前に3年以上の熟成(うち樽熟成1年以上)を経たもの
    果実味がやや落ち着いてきて、ワインにはかすかに熟成のニュアンスが出てきます
  • グラン・レセルバ Gran Reserva
    発売前に5年以上の熟成(リオハではうち樽熟成2年以上)を経たもの
    かなり熟成が感じられ、果実味のフレッシュさよりもドライフルーツや枯葉や紹興酒のようなニュアンスが感じられます
これらの呼称はラベルに必ず記載されます。

なお、リオハには白ワインもあります。
最近のリオハの白は果実味がフレッシュなスッキリ系のものが増えてきましたが、生産者のなかには伝統的なスタイルの白ワインを造っているところもあります。

たとえばリオハを代表する造り手であるマルケス・デ・ムリエタなどは、あえて伝統的なスタイルのリオハ白を造っています。

ビウラ Viura という土着品種を主体にブレンドして樽熟成を施した、濃い黄金色をした白ワインです。

飲んでみるとなかなか面白いワインで、シェリーのような酸化熟成香や漬物のタクアンのような香りがあり、非常に強烈な風味の "官能的" なワインです。
間違いなく、人によって好き嫌いがあるタイプのワインですが、ともかく個性はあります。

マルケス・デ・ムリエタが造るカペッラニア・ブランコ・レゼルヴァ Capellania Blanco Reserva などはまさにその典型的なワインです。

ご興味ある方は、いちど怖いもの見たさで(笑) 試してみてはいかがでしょうか。

okiraku-koza_banner


リオハは昔も今もスペイン随一の名醸地 ~ スペインの最も代表的なブドウ品種テンプラニーリョを主体とした赤ワインで世界的に有名な産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スペイン北部を流れるエブロ河流域にあるリオハ Rioja は歴史的にスペインの主要な赤ワイン産地でした。
リベラ・デル・デュエロやプリオラートが最近では急速に追い上げていますが、それでもリオハのネームバリューは大きいです。

リオハは赤ワインの生産が中心の産地で、全体の8割が赤ワインです。
残りの1割ずつがロゼワインと白ワインです。

リオハの主要ブドウ品種はテンプラニーリョ Tempranillo で、スペインで最も高貴なブドウ品種です。

スペインのワイン法では、リオハ赤にガルナッチャ(フランスではグルナッシュ)、
マスエロ(同カリニャン)、グラシアーノなどをブレンドすることが許されています。

典型的なリオハの赤ワインは、テンプラニーリョとこれらの補助品種が2~3種類ブレンドされているのが普通です。

生産者のなかにはカベルネ・ソーヴィニヨンを使用したリオハ赤を造っているところもあります。
マルケス・デ・リスカル Marqués de Riscal、マルケス・デ・ムリエタ
Marqués de Murrieta など少数の有力生産者は、リオハ赤にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドすることが法的に許されています。
リオハを規制する法律ができるよりも以前から、彼らはずっと自分たちのブドウ畑でカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培していたからです。

リオハ地域は3つの地区に分けることができます。

リオハ・アルタ Rioja Alta (エブロ河の上流)
・・・栽培面積最大 (約50%)で、熟成向きの最上質ワインの産地

リオハ・アラベサ Rioja Alavesa (エブロ河の中流)
・・・エブロ川北岸にある若飲みみタイプから熟成向きまで、上質ワインの産地

リオハ・バハ Rioja Baja(エブロ河の下流)
・・・日常用ワインの産地。地中海の影響を受け上記2地区に比べ高温多湿、アルコール度の高い赤・ロゼワインになる

rioja_map
 ▲リオハ地域

リオハ・アルタとリオハ・アラベサは大西洋の影響を受けた比較的冷涼な産地で、
リオハ・バハはそれより温暖な産地です。

リオハの上級ワインはリオハ・アルタかリオハ・アラベサ産のブドウを使っていますが、中には3地区のブドウをブレンドしているものもあります。

同じリオハでも、地区によって気候や品質が異なるのですね。
次回もリオハについてもう少し見ていきます。

okiraku-koza_banner

スペインは長い間シェリーとリオハしか知られていませんでしたが、近年はリベラ・デル・デュエロ、プリオラート、リアス・バイシャスなど面白いワインが増えました

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

スペインは温暖で乾燥した山地の多い国です。
ブドウ栽培面積が世界最大の国でもあります。
ワイン生産量でもフランスとイタリアに次ぐ世界第3位です。

スペインのワインは技術的にも商業的にもパッとしない時期が長く続いていましたが、
いまやヨーロッパのみならず、世界の産地の中でも非常に変化の見られる地域となっています。

スペインは、歴史的にはシェリーなど酒精強化ワインの産地として知られてきました。
ワインについては、何十年にもわたり、リオハ Rioja くらいしか国際的には知られていませんでした。

しかし近年はリオハ以外にも良いワイン、面白いワインを造る産地が増えてきました。

spain_rough_map
 ▲スペインの産地の大まかな位置

現在のスペインの主なワイン産地は次のとおりです。

●リオハ Rioja
スペイン随一の赤ワイン名醸地で、スペインの代表品種であるテンプラニーリョ Tempranillo が主要品種です。19世紀末にフランス・ボルドー地方からやってきたワイン生産者の先進的な技術導入により高品質のワインが造られるようになりました。

●リベラ・デル・デュエロ Ribera del Duero
いまや高品質の赤ワインで知られるようになりました。スペインワインに対する世界の関心に火をつけた産地です。

●プリオラート Priorato
岩山の険しい斜面にある産地ですが、世界のワイン愛好家の間ではいまいちばん注目されている ”ホット” な赤ワイン産地のひとつです。

●ペネデス Penedés
赤も白も造る比較的大きな産地で、スパークリングワインのカバ Cava の主産地としても有名です。

●リアス・バイシャス Rías Baixas
スペイン北西部ガリシア地方にある大西洋岸の産地で、アルバリーニョ Albariño から造るハツラツとした白ワインが人気を得ています。

●ナバーラ Navarra
もともと辛口ロゼワインで知られていた産地ですが、現在は力強い赤ワインが伸びています。

●ビエルソ Bierzo
スペイン北西部の少し離れたところにある産地で、土着品種のメンシア Mencia から造る赤ワインが
注目されており、プリオラートに続くスター産地になりつつあります。

●ルエダ Rueda
ベルデホ種 Verdejo による軽い白ワインがよく知られている産地です。

次回以降リオハ、リベラ・デル・デュエロ、プリオラートなどについて個別に述べていきます。

okiraku-koza_banner

記事検索
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ