早稲田ワインアカデミー

ワインに興味はあるけれど、ワインって何だかムズカシそう・・・
ワインを楽しむのに必ずしも知識は要りません。
でもワインの基本を知ると、ワインがもっと楽しくなります。
ブログ「早稲田ワインアカデミー」は、ワイン初心者の方にもワインをよく飲む方にも
気軽にお読みいただける、オンライン・ワイン教室です。

​バイザグラスの初拠点となる【神楽坂ワインハウス by the glass】
2018年11月にオープンしました!
神楽坂ワインハウス バイザグラス
https://www.bytheglass.jp/

「食欲の秋!イタリアワインと料理を堪能する会」を開催しました!~ お気楽ワインセミナー

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

9月27日の水曜日の夜、お気楽ワインセミナー「食欲の秋!イタリアワインと料理を堪能する会」を開催しました。

東京・日本橋にあるVASHON日本橋兜町で、ぼくたちバイザグラスが毎月開催しているお食事付きのワインセミナーです。

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今回はイタリアワインがテーマです。

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ワインは写真左から:
● トレント(ブラン・ド・ブラン)
● ソアーヴェ・クラシコ
● グレコ・ディ・トゥーフォ
● ヴァルポリチェッラ・リパッソ
● タウラージ

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トレントで乾杯しました。
イタリア東北部トレンティーノ・アルト・アディジェ州トレントで造られる、シャンパーニュと同じ
瓶内二次発酵方式の本格的スパークリングワインです。

想像していたよりもずっと果実味のコクがあり、シッカリしたスパークリングワインでした。

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前菜は、スモークした帆立のサラダ仕立て&カキのオーブン焼です。

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最高峰の生産者とも言われるピエロパンが造る、エレガントな味わいのソアーヴェ・クラシコと非常によく合いました。

ゲストの一人が提供してくださったグレコ・ディ・トゥ-フォはミネラル感のある骨太な白ワインで、これまた帆立・カキと絶妙に合いました。

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タイプの異なる2つの白ワインをテイスティングして、ゲストの皆さんと一緒に特徴を整理しました。

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第一の皿は、キノコのリゾット&カボチャのニョッキのセージバターソースです。
白ワインももちろん合いますが、「秋!」ということで、あえて赤ワインをぶつけてみました。

ヴェネト州のアレグリーニが造る、ヴァルポリチェッラ・リパッソです。

リパッソとは、ヴェネト州名物の陰干しブドウワイン「アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ」を造るときに出てくるブドウの搾りかすを、通常の
ヴァルポリチェッラのワインに加えて再発酵させる製法です。

ヴァルポリチェッラ自体はそれほど重くないミディアム・ボディのワインですが、
リパッソすることによって果実の旨みが出てきて、色やボディの割にはコクのある赤ワインになります。

リゾットのキノコやニョッキのカボチャ感と、どこか「秋味」っぽいリパッソの風味が、面白いハーモニーを醸し出していました(笑)

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料理もワインも美味しくて、皆さん会話が弾みます。

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そして第二の皿(メイン)は、子羊のローストです。

ワインは、南イタリア随一の高級赤ワインであるタウラージを合わせました。

新進気鋭のヴェゼーヴォという
造り手のタウラージで、この2009年ヴィンテージは審査員が全て日本人女性のサクラワインアワードでダブルゴールド賞を獲得しています。

長期熟成型のかなり力強いワインなので、早めに抜栓してデキャンタージュを行いました。

粒マスタードソースのスパイシーな力強さが、骨格のしっかりしたタウラージのタンニンや果実味と見事にマッチします。

それにしても、この子羊肉、美味すぎ ^^
肉厚さ、身の柔らかさが絶品です。

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楽しい夜はまだまだ続きます。


さらに、ゲストの一人がアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラを持込で提供してくださったので、この後それも抜栓して、みんなで楽しみました。

VASHON日本橋兜町でのお食事つき「お気楽ワインセミナー」は、毎月開催しています。

次回は10月25日(水)です。
元日本航空キャビンアテンダントのソムリエの方を講師にお迎えして、
「ビジネスシーンで役立つワインマナー」をテーマに開催する予定です。

ご興味のある方、ぜひご参加ください!

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いまやニュージーランドといえばソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワール ~ ニュージーランドのピノ・ノワールは産地によって味わいに違いがあるのも面白いところです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ニュージーランドがはじめて海外輸出したソーヴィニヨン・ブランは風味がクッキリ明瞭で、果実本来の特徴が前面に出ており、酸味のしっかりしたものが主体でした。

熟したグレープフルーツ、青い芝生、アスパラガスのような香りを伴うとてもハツラツとしたワイン。
これによって1980年代後半、ほとんど一夜にして
ニュージーランドは「典型的ソーヴィニヨン・ブランの産地」として世に知られるようになりました。
 
こうしたフレッシュなワインは今なおニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランの中心的存在で、世界中で人気があります。
ぼくは、このタイプのソーヴィニヨン・ブランが大好きです。

ニュージーランドではその後、もうひとつのスタイルのソーヴィニヨン・ブランも造られるようになりました。
フランス・ボルドー地方の白ワインのように、セミヨンをブレンドして木樽の香りをつけたタイプの白ワインです。

こちらは果実の熟度が高く、青草のようなフレッシュさや酸味がそれほど強調されておらず、落ち着いたタイプの白ワインです。
このタイプのソーヴィニヨン・ブランはラベルに Reserve と書かれていることが多いです。

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 ▲マールボロのピノ・ノワール「クラウディ・ベイ」

赤ワインについては、
今やニュージーランドといえばピノ・ノワールでしょう。

ピノ・ノワールはニュージーランドの代表的な黒ブドウで、世界のピノ・ノワールのなかでもニュージーランド産の位置づけはますます重要になってきています。

以前はカベルネ・ソーヴィニヨンがニュージーランドで栽培面積最大の黒ブドウでしたが、現在ではピノ・ノワールが一番となっています。

産地も北島のマーティンボロだけでなく、かつてはソーヴィニヨン・ブランが中心だった南島でも、今やマールボロやセントラル・オタゴをはじめ南島全土で栽培されています。
とくに南島の最南端にある産地セントラル・オタゴはごく近年になって、ピノ・ノワールの重要産地として頭角を現してきました。

【関連記事】ニュージーランドの重要産地 ~ マールボロのソーヴィニヨン・ブランは品質特性の国際的基準、マーティンボロやセントラル・オタゴのピノ・ノワールは世界的に高評価です

セントラル・オタゴは世界最南端のワイン産地で、ブドウは日照量が多く霜害のリスクの少ない丘の斜面に植えられています。
低収量で、ワインは非常に凝縮感のあるピノ・ノワールになります。

ニュージーランドのピノ・ノワールは産地によって味わいに違いがあります

たとえばマーティンボローのピノ・ノワールはミネラル感や味わいの複雑さがあり、
マールボロのピノ・ノワールはソフトでフルーティな飲みやすいタイプが多く、
セントラル・オタゴのピノ・ノワールはより重みや凝縮感のあるワインとなります。

各地の生産者たちは、その土地の風土や気候を生かしたワイン造りの技術を年々高めており、こうした産地による特徴の違いは近年、より際立つようになってきています。

ワインショップでニュージーランドのピノ・ノワールを探すときは、ぜひ産地名にも注目してみてください。

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ニュージーランドの重要産地 ~ マールボロのソーヴィニヨン・ブランは品質特性の国際的基準、マーティンボロやセントラル・オタゴのピノ・ノワールは世界的に高評価です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

今回はニュージーランドのワイン産地を紹介します。
とくに重要な産地名には下線を示しました。

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 ▲ニュージーランド

◆北島

●ノースランド Northland

ニュージーランドにおけるブドウ栽培発祥の地です。
1819年にサムエル・マースデンという人物がノースランドのケリケリという地にブドウの樹を植えたのが始まりとされています。
メルロー、シラー、シャルドネなどが栽培されています。

●オークランド Auckland

ニュージーランド最大の都市オークランド近郊の産地です。
ボルドータイプの赤ワインが有名です。
メルロー、シラー、シャルドネなどが栽培されています。

●ワイカト / ベイ・オブ・プレンティ Waikato / Bay of Plenty

温暖な気候で、ピノ・ノワール、シャルドネなどわずかな栽培面積を有する産地です。

ギズボーン Gisborne

日付変更線に近接する、世界最東端の産地です。
メルロー、シャルドネなどが栽培されています。
ギンブレット・グラベルズ地区 Gimblett Gravels District という小地区は高品質のボルドー系品種の有力畑とされています。

ホークス・ベイ Hawkes Bay

栽培面積においてニュージーランド第2のワイン産地です。
ニュージーランドで商業目的のワイン生産が最初に始まった産地でもあります。
メルロー、シャルドネが多く植えられています。

●ワイララパ Wairarapa

ニュージーランドの首都ウェリントンの北東に位置する小さな産地です。
サブリージョンであるマーティンボロ Martinborough良質のピノ・ノワールの産地として有名です。

◆南島                
                
●ネルソン Nelson

南島の北西端に位置する産地で、降雨量が多く湿潤な気候なのが特徴です。
渓谷や丘陵などで、ピノ・ノワールとソーヴィニヨン・ブランから少量生産の特色あるワインが造られています。

マールボロ Marlborough

栽培面積においてニュージーランド最大のワイン産地です。
ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールの世界的に有名な産地であり、
とくにソーヴィニヨン・ブランは国際的にも品種特性の基準と言われています。
                
●カンタベリー/ワイパラ Canterbury/Waipara

クライストチャーチを中心に東海岸沿いに広がる産地です。
ピノ・ノワールとシャルドネが多く植えられています。

セントラル・オタゴ Central Otago

ニュージーランドで最も標高が高く世界で最も南にあるワイン産地です。
栽培面積ではニュージーランド第3のワイン産地です。
昼夜の温度差が大きくニュージーランドでは例外的な大陸性気候で、
冷涼な気候を生かし、世界的に高評価を受けるピノ・ノワールの有名な産地となっています。

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ニュージーランドは高品質ワインの生産に理想的な気候に恵まれた産地 ~ 新世界では少数派の冷涼な気候を生かしたソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールが主力です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

今回から3回に分けて、南半球にあるオーストラリアの隣国、ニュージーランドのワインについて述べていきます。

ニュージーランドの本格的なワイン造りの歴史は、この国のアルコールに対する保守的姿勢が影響したこともあり、オーストラリアと比べると比較的短いです。

ニュージーランドは海洋性気候で、高品質のワインを生産するのに理想的な気候に恵まれています。
季節による激しい寒暖差はありませんが、昼夜の温度差が大きく、「1日の中に四季がある」といわれる土地柄です。

商業生産という意味では、ニュージーランドは1980年代になってようやく、ブドウ栽培やワイン生産に対して本腰を入れて投資をするようになりました。

ニュージーランドは現在、お隣のオーストラリアの約6分の1の量のワインを生産しており、ワイン生産量は年々増加しています。

ただし、日常的なワインでコスパの良さを売りにしてるオーストラリアとは異なり、ニュージーランドのワインは上質なイメージを維持することに成功しています。
そのためニュージーランドの生産者は低価格競争に陥ることなく、適切な価格設定を続けることができています。

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 ▲ニュージーランド南島マールボロのソーヴィニヨン・ブラン

オーストラリアよりもさらに南に位置しているため、ニュージーランドの気候は総じて冷涼です。
その冷涼な気候を生かして、ニュージーランドで栽培面積が第1位の白ブドウはソーヴィニヨン・ブラン、黒ブドウはピノ・ノワールです。

とくにソーヴィニヨン・ブランはニュージーランドの全ブドウ収穫量のうち約2/3を占める品種です。
ニュージーランドで生産されるワインのうち約7割が輸出向けですが、
その全輸出量のうちソーヴィニヨン・ブランが占める割合は8割以上となっています。

ニュージーランドは北島と南島に分かれており、
北島はより温暖で赤ワイン用のブドウがオークランド周辺や北部のホークスベイ周辺で栽培されています。
もちろん白ブドウのシャルドネやソーヴィニヨン・ブランも北島の主要なブドウ品種です。

南島ではマールボロ Marlborough がニュージーランドの最大のワイン生産地です。
ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールで有名な産地です。

ニュージーランドの産地については、次回もうすこし詳しく述べてみたいと思います。

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ニューサウスウェールズ州はワイン産業発祥の州、西オーストラリア州は上質ワインの産地でマーガレット・リヴァーが有名、タスマニア州はピノ・ノワールでがんばっています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストラリアの重要ワイン産地5州のうち、南オーストラリア州ヴィクトリア州の主要産地について述べてきました。
今回はニューサウスウェールズ州、西オーストラリア州、タスマニア州です。

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 ▲タスマニア州のピノ・ノワール


◆ニューサウスウェールズ州 New South Wales

シドニーを州都とするニューサウスウェールズ州はオーストラリアで最も人口の多い州であり、
オーストラリアワイン産業発祥の州でもあります。

現在はオーストラリアの全ワインの約3割を産出しています。

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 ▲ニューサウスウェールス州とタスマニア州の産地

●ハンター・ヴァレー Hunter Valley    

1825年に、最初のブドウが植えられた歴史の古い産地です。
セミヨンから造られる長熟型の辛口ワインが有名です。

樹齢60~100年の古木のシラーズも豊富で、ワインはオーストラリアの他産地のような大柄さは無く、引き締まった印象の味わいです。

●マジー Mudgee

原住民アボリジニの言葉で「丘のある巣」という意味の産地です。
グレート・ディヴァイディング・レンジ(大分水嶺)の西斜面に位置し、標高が450~600mと高い産地です。

降水量が少なく、昼夜の寒暖差が大きいブドウ栽培に適した気候です。
シャルドネ、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど幅広く栽培されています。

●オレンジ Orange


標高が600~900mと、マジーよりもさらに高いところにある山地です。
リースリングやピノ・ノワールなどの冷涼系品種のほか、シラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンも植えられています。

●タンバランバ Tumbaraumba

スノーイー山脈の中にあり、オーストラリアでは最も遠隔地に位置する産地のひとつです。
ピノ・ノワールとシャルドネが全体の75%を占めています。


◆西オーストラリア州 Western Australia

すでに述べたワイン生産3州に比べると生産量は少ないですが、オーストラリアの上質ワインの産地で品質はトップクラスです。

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 ▲西オーストラリア州の産地

●スワン・ディストリクト Swan District

1829年にブドウが植えられた、西オーストラリア州のワイン造りの歴史的な中心地です。
南オーストラリア州やヴィクトリア州より早くブドウ栽培が始まっています。

地中海性気候で気温の高い産地ですが、フリーマントル・ドクターという海風により暑さが和らぎます。
シュナン・ブランやセミヨンによる白ワイン造りの伝統があります。

●マーガレット・リヴァー Margaret River

インド洋に面しており、オーストラリアで最も海の影響を受けている産地です。
地中海性気候で、少雨で年間を通じて温暖です。

1960年代にこの土地の気候がボルドーと似ていることが指摘され、いまでは西オーストラリア州で最も重要な産地となっています。

ボルドーのようなソーヴィニヨン・ブランとセミヨンによる白ワイン、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど、いずれも上質なワインを生み出す産地です。

●グレート・サザン Great Southern

マーガレット・リヴァーより幾らか冷涼ですが、ボルドーと似た気候をもつ広大な産地です。
広大ゆえに造られるワインも多様です。

さわやかで熟成能力もあるリースリングがよく知られています。
また凝縮感と香りのしっかりしたカベルネ・ソーヴィニヨンや、シラーズ、シャルドネも造られています。
南側の沿岸部は冷涼な地域で、ピノ・ノワールは成功を収めています。


◆タスマニア州 Tasmania

ヴィクトリア州の南の海上に浮かぶタスマニア島で、商業的な規模のブドウ畑が開かれたのは1970年代中頃です。

冷涼な気候を生かして繊細な味わいのピノ・ノワール(面積最大)、シャルドネ、スパークリングワインが造られています。
ワインの生産量は少ないですが、ワインの品質は世界でも高い評価を受けています。

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ヴィクトリア州は中小規模のワイナリーが中心の個性的なワイン産地 ~ オーストラリアで最高級のピノ・ノワールを造るヤラ・ヴァレーが特に有名な産地です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回はオーストラリアの重要ワイン産地5州のうち、南オーストラリア州の主要産地をご紹介しました。
今回は2つめのヴィクトリア州の主要産地について述べます。

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◆ヴィクトリア州 Victoria
            
1860年代、この州の英国向け輸出量は国内最大であったため、「英国民のブドウ畑」として知られていました。
中小規模のワイナリーが中心のワイン産地で、ワイン造りも個性的で多様であり、
大規模な生産者が中心の南オーストラリア州とは性格を異にする産地です。        

●ラザグレン Rutherglen

比較的温暖な地域で、もともとはミュスカ(マスカット)やトカイなどの品種から造られる甘口の酒精強化ワインで有名な産地でした。

壮大なレンガ造りの建物とワイナリーで歴史的に知られています。
現在は気候を反映した力強いフルボディのシラーズが中心です。

●ゴールバーン・ヴァレー Goulburn Valley

1860年に設立のワイナリーであるタビルク Tahbilk はオーストラリアで非常に長い歴史を持つワイナリーのひとつです。タビルクの木造セラーは歴史的建築物として保存されています。

1860年代にに植樹されたブドウから今でもワインが造られています。
砂状の土壌がフィロキセラの侵入を食い止め、古いシラーズの樹を守っています。
こうした樹から造られるフルボディのシラーズがよく知られています。

●ヤラ・ヴァレー Yarra Valley

メルボルン市街の近郊にあるヤラ・ヴァレーは、オーストラリアで最も急な斜面にブドウ畑が広がっています。
その標高差の大きさから、非常に多様性に富んだ気候を持つ産地です。

おおむね冷涼な気候で、オーストラリアで最高級のピノ・ノワールを生産する産地です。
高品質のシャルドネやスパークリングワインも造られています。

●モーニングトン・ペニンシュラ Mornington Peninsula

ヤラ・ヴァレーと同様にピノ・ノワールとシャルドネの重要産地です。
海洋性の気候で、海を通った北風、西風、南風など、常にどこかから風が吹いているため気温は冷涼です。

●ジロング Geelong

冷涼で日照時間が長く乾燥しており、シャルドネとピノ・ノワールの成熟に最適な産地です。
ボルドー地方とブルゴーニュ地方の中間的な気候だと評価されています。

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南オーストラリア州は豪州最大のワイン生産州 ~ バロッサ・ヴァレー、クレア・ヴァレー、 マクラーレン・ヴェイル、クナワラなど、とても有名な産地があります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストラリアには主要なワイン産地が大きく5つあります。

重要なものから順にあげると、南オーストラリア州ヴィクトリア州ニューサウスウェールズ州西オーストラリア州タスマニア州です。

今回は南オーストラリア州に含まれる主要産地をご紹介します。

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 ▲南オーストラリア州主要部地図(日本ソムリエ協会教本より)

◆南オーストラリア州 South Australia

南オーストラリア州は全国のワインの5割弱を生産する、オーストラリアワイン最多のワイン生産州です。
ブドウの病気を引き起こすフィロキセラという害虫から完全に守られた産地でもあります。

●バロッサ・ヴァレー Barossa Valley


南オーストラリア州の州都アデレード市街の北部に位置する、比較的温暖で乾燥している地域です。
オーストラリアのワイン産業の首都と呼ばれる大産地です。
ペンフォールズ社 Penfolds など同国の大手ワインメーカーはここに本拠地を置いています。

ワイン造りの歴史は1840年代まで遡り、オーストラリアの高品質ワインの産地としては最も古い部類に入ります。
世界で最古のシラーズのブドウの樹が植えられている産地です。

力強いシラーズが有名で、そのほかカベルネ・ソーヴィニヨンやグルナッシュ、コクのあるセミヨン、リースリングなどが植えられています。

●イーデン・ヴァレー Eden Valley

バロッサ・レンジという谷を挟んでバロッサ・ヴァレーの東隣にあり、イーデン・ヴァレーのほうが200mほど標高が高い位置にあります。
標高が高く冷涼なので白ワインの生産に向く産地です。
リースリングが有名です。

●クレア・ヴァレー Clare Valley

バロッサ・ヴァレーの北に位置する地域で、湿度が低く、夏に雨が降らない恵まれた気候です。
オーストラリアで最高のリースリングが生まれる産地として有名です。

●マクラーレン・ヴェイル McLaren Vale

アデレードの南側の海岸沿いに位置する、気温の高い産地です。
濃厚でアルコール度数の高いシラーズの赤ワインと、力強いシャルドネの白ワインで知られています。

こちらも古い産地で、1838年にジョン・レイネルという人物がレイネラという地にブドウを植えたのが産地の始まりとされています。

●アデレード・ヒルズ Adelaide Hills

バロッサ・ヴァレーの南、一部がアデレード市内にかかる産地です。
冷涼な地域で、とても良質なソーヴィニヨン・ブランが有名です。
そのほかシャルドネ、ピノ・ノワールといったブルゴーニュ品種や高級スパークリングワインもあります。

●クナワラ Coonawarra

南オーストラリアの南海岸沿いに広がるライムストーン・コーストという地域は、土壌に適度に含まれる石灰岩のおかげで、赤も白も良質なワインが生まれる重要な産地です。

クナワラはその中の小地区(サブゾーン)で、オーストラリアで最上級のカべルネ・ソーヴィニヨンで有名な産地です。
土壌はテラ・ロッサ Terra Rossa と呼ばれる赤い表土で覆われた、石灰岩土壌です。

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オーストラリアの原産地呼称は GI といいます ~ よく見かける GI South Eastern Australia は非常に広域の原産地呼称で、廉価な親しみやすいワインが多いです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストラリアのワインは、次の2つのカテゴリーに
大きく分けることができます。

●廉価なワイン

外国に輸出されているオーストラリアワインの大半は廉価な品種別ワインで、
1本1000円くらいか、ものによってはそれ以下の価格で販売されています。

こうしたワインはたいていラベルに South Eastern Australia と書かれています。

これは南オーストラリア州の一部、ヴィクトリア州とニューサウスウェールズ州の全部、クイーンズランド州の一部のうちのどこかで造られたワインならすべてに使える、非常に広域の原産地呼称です。

こうしたワインは価格は安めですが、ブドウの果実味が中心で飲みやすいタイプのワインです。

●価格の高めなワイン


価格が高めのワインは、South Australia や Victoria みたいに、より限定された産地名を名乗っています。
Barossa Valley, Coonawarra、Yarra Valley などのように、さらにもっと狭く限定された産地名を名乗るワインもあります。

こうしたワインはヴィンテージ後まだ若いうちに飲んでももちろん楽しめますが、多くは熟成させることも可能な本格的ワインです。

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 ▲産地が South Eastern Australia のシラーズ+カベルネ・ソーヴィニヨンのワイン


もうひとつ、オーストラリアワインは2つ以上のブドウ品種をブレンドしたワインが多いことも特徴です。

世界中のワイン生産者もブドウ品種のブレンドを行なっていますが、たとえばカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローやカベルネ・フラン、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランなどのように、フランスの古典的な組み合わせでブレンドするのが普通です。

しかしオーストラリアは他国ではあまり目にしない、一見奇異で完全独自の組み合わせを生み出しました。
(例)シラーズとカベルネ・ソーヴィニヨン
(例)セミヨンとシャルドネ

2つ以上のブドウ品種を使用している場合は、使用比率の大きいものから順に(左から右へ)ワインラベルに表示されます。


さて、オーストラリアでも1990年代以降、原産地呼称の策定が進められてきました。
オーストラリアの原産地呼称のことを GI (Geographic Indications)と呼びます。

ヨーロッパの制度とは異なり、GI は品種規定や栽培・醸造規定を持たず、地理的範囲だけを定めた制度です(アメリカと同様の制度)。

GI にはもっとも大きな州(State)から、地域(Zone)、地区(Region)、小地区(Sub-Zone)まで各レベルのものがあり、
2016年現在で合計114ヶ所が定められています。

近年、GI がラベルに明記されているオーストラリアワインがますます増えています。
次回以降は、オーストラリアの有名なワイン産地を見ていきましょう。

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オーストラリアを代表するブドウ品種はシラーズです ~ オーストラリアではワイン造りの教育研究機関も充実しており「安定的にワインを造る技術」が重視される傾向があります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストラリアのワイン産地は主に国土の南部にあります。
ヴィクトリア州、南オーストラリア州の南部、西オーストラリア州の南部、ニューサウスウェールズ州の南部、それから冷涼なタスマニア島に散らばっています。
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オーストラリアワインの成功は、温暖で湿度の低い理想的な気候に負うところが大きいといえるでしょう。
近年は干ばつが深刻な問題になることもありますが、概して言えば、こうした恵まれた気候がワイン生産者に素晴らしい原料ブドウを提供してくれるのです。

もうひとつ、オーストラリアのブドウ栽培とワイン生産の技術を高水準にしているのは、この国の充実した教育研究機関です。

オーストラリアの醸造家の多くは、アデレード大学などの高等教育機関でしっかりとした教育を受けています。
オーストラリアワイン研究所(AWRI)やオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)など国際的に評価の高い研究機関も、先進的な技術研究や調査分析を行っており、この国の生産者たちが常にワイン造りの最前線でいられることに貢献しています。

こうした背景から、オーストラリアではどちらかというと「安定的に一定品質のワインを造る技術」が優先される傾向があります。

オーストラリアを代表するブドウ品種はシラーです。
この国ではシラーズ Shiraz と呼ばれます。
シラーズの栽培面積はオーストラリアでダントツのナンバーワンです。

これに続くのはカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロー、ピノ・ノワール、セミヨンです。
ちなみにセミヨンはオーストラリアでは「セムロン」と呼ばれます。

オーストラリアのワインはたいてい、ブドウ品種がラベルに書かれています。
そのワインは、そのブドウ品種を85%以上使用している必要があります。

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 ▲マクラーレン・ヴェイルのシラーズ


オーストラリアでは、シラーズはとても面白いワインです。
非常に安価でジューシーで熟した果実味たっぷりのものから、非常に本格的で特定の産地の特徴を表現したようなものまで、生産者や産地によってとても異なったスタイルのワインになるからです。

前者のようなフルーティで辛口ワインなのにかすかな甘みを感じるシラーズは、バロッサ・ヴァレーやマクラーレン・ヴェイルなどの温暖な産地で造られています。

後者のような本格ワインタイプのシラーズは、黒胡椒などのスパイスの風味もよく出ていて、アデレード・ヒルズやヤラ・ヴァレーなど、どちらかと言えばオーストラリアの中では冷涼な気候の産地で造られます。

オーストラリアの産地については別途、整理して述べるつもりです。

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オーストラリアは全ワインの8割を大手が造る寡占市場で、イエローテイルだけで全ワイン生産量の約1割を占めますが、現在は個性的なワインへのシフトも進んでいます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストラリアは有力なワイン生産国のひとつで、世界中で大きな成功を収めています。

どちらかというとワイン大量生産の国ですが、技術レベルは高いです。
オーストラリアのワイン産業は技術的には世界で最も先進的な部類に入り、かつ進取の精神に富んでいます。

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 ▲「イエローテイル」ブランドだけでオーストラリアの全ワイン生産量の1割近くを占める


オーストラリアには土着のブドウ品種はありません
ワイン用のブドウの木は、1788年にヨーロッパ人によって持ち込まれました。

歴史的には、昔のオーストラリアのワインは濃い甘口で、アルコールで酒精強化されたものがほとんどでした。
しかし今日では、オーストラリアワインはフレッシュで果実味に富み、風味の豊かな赤ワイン、白ワインで有名です。

オーストラリアのワイン生産量は世界で7番目ワインの輸出量は世界で4番目です。
オーストラリア大陸はアメリカ合衆国とだいたい同じ大きさですが、生産量はアメリカの半分よりちょっと多い程度です。

オーストラリアには約2千のワイナリーが存在します。
これらのワイナリーの多くは小さな家族経営の会社です。

しかしオーストラリアのワイン産業は、全生産量の8割が大手ワイナリー20社によって生産されているという寡占市場になっていることが特徴です。

Foster's、Hardy's、Jacob's Creek、Yellow Tail などの大量生産ワインのブランドは世界中どこにいっても、スーパーやディスカウントショップなどでも売られているポピュラーなブランドです。

とくに Casella Wines社のブランドである Yellow Tail イエローテイルだけでオーストラリアの全ワイン生産量の約10%全輸出量の約15%を占めています。

こうしたお手頃価格のワインの売上は、2000年代中頃に至るまで約20年にわたって成長し、オーストラリアワインに対する世界的な認知度を劇的に高めてきました。

しかしこうした "成功" はやがて、過剰生産や低利益な経営体質を招きました。
経営悪化でブランドを手放したり、会社のワイン部門を他社に売却したりする動きも見られるようになりました。

オーストラリアのワイン産業は今、大量生産に頼るだけでなく、生産量は少なくても個性のあるワインや、ユニークな産地に目を向けるようになっています。

そのような流れを経て現在は、オーストラリアが提供できる多様なワインを探求するには、非常に面白い時代になっています。

そんなエキサイティングなオーストラリアのワインについて、何回かに分けて見ていきましょう。

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ここでもう一度、整理しておきましょう ~ 新世界ワインと旧世界(ヨーロッパ)ワインは何が違うのか

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

前回より新世界ワインのお話しに入ったわけですが、はじめに新世界と旧世界(ヨーロッパ)のワインの違いについて整理しておきたいと思います。

ワイン用語としては、「新世界」というのは地理的なことだけを指しているのではなく、ワイン造りに対する姿勢も指しています。

ヨーロッパのワイン生産者の中には、自由な新世界的な方法でワイン造りに取り組んでいるところもありますし、
カリフォルニアのワイン生産者の中には、旧世界の伝統的なやり方に専念しているところもあります。

そのことを念頭においた上で、以下の新世界と旧世界の対比を見ていただきたいと思います。

ここで述べるのは一般論であって、常に例外があるということは念頭においてください。


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 ▲カリフォルニアの「オーパス・ワン」は新世界ワインの最高峰のひとつ

<新世界>
 ・革新的
<旧世界>
 ・伝統的

<新世界>
 ・ワイン名はブドウの名前
<旧世界>
 ・ワイン名は産地の名前

<新世界>
 ・果実の表現がワイン造りの第一の目標
<旧世界>
 ・テロワールの表現がワイン造りの第一の目標

<新世界>
 ・テクノロジーが高く評価される
<旧世界>
 ・伝統的製法が評価される

<新世界>
 ・ワインは果実味が力強い
<旧世界>
 ・ワインは微妙で果実味は強調されない

<新世界>
 ・ブドウ栽培地は幅広く柔軟
<旧世界>
 ・ブドウ栽培地は比較的狭い範囲に固定されている

<新世界>
 ・ワイン造りは科学に似ている
<旧世界>
 ・ワイン造りは芸術に似ている

<新世界>
 ・ワイン造りは工程管理されている
<旧世界>
 ・ワイン造りに人為的・作為的な介入はできる限り避けられる

<新世界>
 ・ワイン生産者がワインに対する信用を得る
<旧世界>
 ・ワイン生産者だけでなく産地・村・畑がワインに対する信用を得る

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ヨーロッパのワインに対して非ヨーロッパのワインのことを 「新世界ワイン」といいます ~ 伝統に縛られない「自由」こそが新世界のワインの共通項です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

1492年に新大陸を目指して航海に発ったコロンブスのように、生産者が自分の好きなブドウを育て、思うようにワイン造りができる "希望の地" へ、ぼくたちも旅立ってみましょう!

というわけで、今回からしばらくの間、世界のワイン市場において大きな役割を占める非ヨーロッパの国々、すなわちオーストラリアニュージーランド南アフリカチリアルゼンチンアメリカ合衆国について書いていこうと思います。

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 ▲コロンブス(1451年頃 - 1506年)


南北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのワインの共通点は何でしょうか。

ひとつだけ挙げるとすれば、これらの国々はいずれもヨーロッパではないということです。
これらのワインはヨーロッパで造られたワインではありませんので、「非ヨーロッパのワイン」と呼ぶことができるでしょう。

こうした非ヨーロッパのワインをひとくくりに指す言葉として最もよく使われているのは
「新世界」「ニューワールド」
という言葉です。

この言葉は、かつてのヨーロッパの植民地主義とつながっていることはいうまでもありません。
もとはといえば、新世界のワインは、その地に入植したヨーロッパ人によって造られはじめたのです。

ヨーロッパは伝統的なワイン産地で、世界のワイン生産量の6割以上を占める産地です。
ヨーロッパ以外のワインは全て「新世界のワイン」と括ることができます
(日本などアジアのワインは除きます)

初めて「新世界のワイン」という表現を聞いたとき、ぼくは正直バカバカしいと思いました。
なぜならカリフォルニアとオーストラリアとチリみたいに、あんなに距離の離れた産地をひと括りにして言うなんて、どうしてできるんだろうと思ったからです。

しかし、そのことについて考えているうちに、なんとなく見えてきたものがありました。

伝統的ワイン産地であるヨーロッパでは、千年単位の非常に長い間わたって、ブドウ栽培とワイン造りの方法が慣習化、規則化され、細かな規制や法律という形に落とし込まれてきました。

どの丘のどの斜面にブドウを植えるか、そこではどのブドウ品種を育てなくてはいけないか、辛口か甘口か、甘口ならどのくらいの残糖分が必要か、等々・・・。

これらの決定は、現在の生産者のおじいさんのおじいさんのそのまたおじいさんの・・・とにかく長い長い昔になされて継承されてきたものです。

しかし新世界では、ブドウ栽培やワイン造りのやりかたに関して伝統の縛りがありません
ワイナリーのオーナーは、どこにブドウを植えるか、何のブドウ品種を育てるか、どのようなワインを造るか、自分でそれを決めることができたのです。

そのように考えていくと、新世界のワインみな、「自由」というものを共通項として持っているのです。
この自由さこそが新世界ワインに共通して見られる類似性なのです。

ですから、一応このように結論づけることができるでしょう。
新世界ワインは、ワイン造りの精神面においても、現実の法律面においても、ワインのスタイルにおいても、ヨーロッパ世界のワインとは異質な、ひとつの大きなカテゴリーであると。

新世界ワインは伝統に縛られた取り決めや決まり事はほとんどなく、ワインを選ぶのも、ラベルを読み解くのも、ヨーロッパのワインに比べると非常にシンプルです。

次回からオーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、アメリカ合衆国のワインについて書いていきます。
すべて書くのに、たぶん1ヶ月以上かかると思いますが、どうぞお付き合いください。

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ソムリエ・ワインエキスパート2次試験まであと1週間ですね ~ 2次試験対策テイスティング会を行いました!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

今日9月18日の東京は、台風が去っていった影響もあって気温33℃、
真夏のような暑さでした。

今年のソムリエ・ワインエキスパート2次試験は9月25日。
ちょうど、あと1週間後ですね!

今日は東京・四谷で2次試験対策のテイスティング会を行いました。

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ソムリエ・ワインエキスパート試験の2次試験は、テイスティングの試験です。

テイスティングというと、なんだか特別な才能が要りそうに聞こえますが、
あくまで「試験」であることを忘れてはいけません。

なにも芸術的なセンスが求められているわけではなく、
「受かること」、つまり「落ちないこと」が大事なのです。

ソムリエ・ワインエキスパートの2次試験は、受験者の半数以上が受かる試験です。
受かる人が多数派、落ちる人が少数派です。

他人が答えられないようなブドウ品種を当てたり気の利いたコメントをしたりすることが必要なのではなく、
多くの受験者が答えられるような基本的なブドウ品種や定型的なコメントを、
みんなと同じように答えられることが大切なのです。

多くの人ができないものができなくても、みんなドングリの背比べですから差はつきません。
でも、多くの人が答えられるものを落としたら致命的です。

ですから奇をてらわず、あれこれ手を出さず、
基本的なブドウ品種のワインを、確実に答えられるようにしておいたほうが、試験には落ちません。
試験に「落ちない」ということは、すなわち「受かる」ということです。

そういうわけで、今日の2次対策テイスティング会では品種特性がわかりやすく、かつ今年の試験に出そうな品種のワイン10種類を厳選しました!

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今回は少人数となったので、じっくり、ゆっくり、テイスティングしていただきました。
ホントは10人の予定だったんですけどね ^^;

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参加者の一人ひとりと向き合って、いろいろ意見交換ができました。
とても有意義な会になったと思います。

本日はご参加ありがとうございました。
来週9月25日の2次試験、皆さまの合格を心から祈っています。

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マケドニア地方のナウサ、ペロポネソス半島のネメアは特に覚えておきたい重要産地 ~ ギリシャの原産地呼称にはPDOとPGIがあり、たいていラベルに英語表記があります

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

今回はギリシャの主要なワイン産地についてです。
ギリシャワインのラベルで目にする可能性の高いワイン産地は次のとおりです。

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● マケドニア地方 Macedonia

マケドニア地方はギリシャの最北部にある産地です。
山地の多い地形で、冷涼な気候の地域です。

クシノマヴロ種で造られるナウサ Naoussa のワインはここからやってきます。

【関連記事】ギリシャの主要土着ブドウ品種はアシルティコ、モスコフィレロ、アギオルギティコ、クシノマヴロ ~ 特にクシノマヴロは秀逸で、人には内緒にしておきたいワインです


● ペロポネソス半島 Peloponnese

南西ギリシャの
半島です。
山地が主体で、多様な気候と土壌を含む大きな産地です。

アギオルギティコ種で造られるネメア Nemea のワインは「ヘラクレスの血」と呼ばれる赤ワインです。
マンティニア Mantiniaモスコフィレロ種の白ワイン、パトラス Patrasロディティス種 Roditis の白ワインもよく知られています。

このほか甘口ワインも有名で、マヴロダフネ・ド・パトラス Mavrodaphne de Patras という甘口赤ワインや、ミュスカ・ド・パトラス Muscat de Patras という甘口白ワインもあります。


● クレタ島 Crete

ギリシャ最大の島で、白と赤の両方を産出します。
ワインのラベルにはクレタ島内の産地名とともに、ブドウ品種名が記載されています。


● その他の島々

クレタ島以外でワイン産地として重要な島としては、サントリーニ島 Santoriniロードス島 Rhodos などがあります。
サントリーニ島ではアシルティコ種を主体に、辛口と甘口の白ワインが造られています。
ロードス島では黒ブドウのマンデラリア種から赤ワインと、白ブドウのアシリ種を主体とした白ワインが生産されています。


ギリシャの原産地呼称制度についても簡単に触れておきましょう。

ギリシャはもともと辛口ワインと甘口ワインとで別々の独自の制度を持っていましたが、
徐々にEUのワイン法に則った制度へと移行してきました。

2009年のEUワイン法改正の際に、ギリシャはほぼ完全にEUのシステムに適応させ、現在はシンプルな制度になっています。

① PDO (Protected Designation of Origin; 原産地名称保護)

現在30以上のPDOが認定されています。
PDOワインはたいてい、ラベルに Protected Designation of Origin と英語で表記されています。

② PGI (Protected Geographic Indication; 地理的表示保護)

PDOの下に位置づけられるワインで、現在約120のPGIが認定されています。
PDOと同様に、たいていラベルに Protected Geographic Indication と英語で表記されています。

まだまだ馴染みの少ないギリシャワインですが、最近はワインバーなどのメニューで、たまに見かけるようになってきました。
今後はもっと目にする機会が増えてくるかもしれませんね!
見かけたらぜひ試してみてはいかがでしょうか。

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ギリシャの主要土着ブドウ品種はアシルティコ、モスコフィレロ、アギオルギティコ、クシノマヴロ ~ 特にクシノマヴロは秀逸で、人には内緒にしておきたいワインです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ギリシャワインの続き・・・今回はギリシャの主要な土着ブドウ品種について書いてみます。


●アシルティコ Assyrtiko

白ブドウ品種です。
デリケートで爽やかな辛口で、長期熟成も可能な品種です。
柑橘系のミネラル感ある香りや風味を伴います。

ギリシャの様々な地方で生育しますが、いちばん良いアシルティコは火山島のサントリーニ島でできます。
サントリーニ Santorini と呼ばれるワインはどれも、アシルティコ
9割以上で造られます。


●モスコフィレロ Moschofilero

果皮がピンク色をした、とてもアロマティックな白ブドウ品種です。
辛口白ワインにも淡い色のロゼワインもにもなります。

ギリシャ中央部
ペロポンネソス地方の山地であるマンティニアという産地が有名です。
マンティニア Mantinia と名づけられたワインは、最低85%がモスコフィレロで造られます。

モスコフィレロのワインは酸味が豊富でアルコール度数が穏やか、アプリコットや白桃の風味を伴います。
とても飲み易いタイプの白ワインで、ギリシャワインの入門編として最適なワインです。


●サバティアーノ Savatiano

ギリシャで最も広く植えられている白ブドウ品種で、ギリシャの伝統的な松やにワインであるレツィーナ Retsina はサバティアーノ主体で造られています。

レツィーナは発酵中のブドウ果汁に松やにを添加して造られる、松やにの香りのついたワインです。
古代ギリシャでワインの劣化を防ぐため、アンフォラという容器の口とフタの間に松の樹脂を塗って密封したことからワインに松やにの香りが付き、これをレツィーナと呼んだ、という歴史があります。


●アギオルギティコ Agiorgitiko

黒ブドウ品種です。
このややこしい名前は、英語にすると St.George(セント・ジョージ,聖ジョージ)にあたります。
英語圏への輸出用ラベルに、わざわざそう記載している生産者もいます。

ギリシャで最も栽培面積が大きく、その点においては、おそらく最も重要な土着品種です

ギリシャではどこでも育ちますが ヘラクレス生誕の地であるペロポネソス半島のネメアで主に栽培されています。

ネメア
Nemea と名の付くワインは全て、アギオルギティコから造られる赤ワインです。

アギオルギティコのワインは色調が深めで、プラムや赤系果実の凝縮した風味を伴います。
やや濃い目のカベルネ・フランといった印象があります。


●クシノマヴロ Xinomavro

北部ギリシャのマケドニア地方で最も重要な黒ブドウ品種です。

マケドニアはあのアレキサンダー大王が生まれた国で、彼が
紀元前4世紀に東方遠征に発った拠点となった地です。
この東方遠征以降の300年間はヘレニズム時代と呼ばれます。

古代マケドニアは現在ではマケドニア共和国のほか、ギリシャ、ブルガリア、セルビア各国の一地方となっています。
ギリシャのマケドニア地方は、アレキサンダー大王の出生地を含む、古代マケドニア王国の領域の大部分を占めています。

そんなマケドニアの土着品種クシノマヴロは、酸味が豊富でタンニンもしっかり、イタリア・ピエモンテ州のネッビオーロと似ているとよく言われます(ただし遺伝学的には別の品種です)。

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 ▲
クシノマヴロのワイン、キリ・ヤーニのラムニスタ

クシノマヴロは色も香りも華やかです。

明るいルビーの色合いが美しく、ややスパイシーで複雑な香りを持ち、ドライトマト、オリーヴ、赤系果実のニュアンスの風味を伴います。

ネッビオーロ同様に骨格もしっかりしており、長期熟成も可能です。

クシノマヴロの本拠地はマケドニアのナウサで、ナウサ
Naoussa と名の付くワインは全て、クシノマヴロから造られる赤ワインです。

ぼくは個人的には、このクシノマヴロにものすごく
将来性を感じます。
本当に美味しい。
素晴らしいワイン。

まだそれほど知られていませんが、いまに人気が出て価格が上昇してしまうのではないかと心配です。。

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ギリシャはヨーロッパにおけるワイン文明発祥の地ですが、現在は新興の生産国 ~ 近年の進歩は目覚しく、いまやギリシャワインは知るに値するワインです

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

ギリシャは世界最古のワイン産地のひとつで、ヨーロッパにおけるブドウ栽培技術や醸造技術の発祥の地です。

そんな "ワイン文明" の発祥の地はクレタ島だと言われています。
紀元前18世紀頃、クノッソス宮殿が建てられた頃からワイン造りが行われ、宮殿近くのヴァシペトロには世界最古の足踏み式ブドウ破砕器が残っています。

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 ▲ギリシャのクレタ島の風景

そのような歴史あるワイン文明国が、今日では新興のワイン生産国として扱われていると聞いても、なんだか理解しにくいものがありますよね。

しかし実際にそうなのです。

ギリシャは今日まで3千年以上にわたり、ワイン造りをやめたことはありませんでした。
しかし長い歴史のなかで、オスマントルコの支配による抑制、政治的混乱などの事情が重なり、ギリシャのワイン産業は非常に歩みの遅れたものとなりました。

ギリシャのワイン造りの近代化は1960年代になってようやく始まりました。
その後は少しずつ前進し、とくに最近10年ほどは目覚しい進歩を成し遂げています。

いまや、ギリシャワインは知るに値するワインだと思います。

ギリシャは南ヨーロッパにある国で、まぶしい日光のイメージがありますが、ブドウ栽培という点で見れば、その気候は極めて変化に富んでいます。

ブドウ畑の多くは標高の高い気候の冷涼なエリアに位置しています。
実際ギリシャのほとんどは山地です。

ギリシャのワインの偉大な資産は(それは同時にハンディキャップでもあるのですが)、土着のブドウ品種が豊富にあることです。300種類以上あります。

ギリシャよりたくさんの土着ブドウ品種があるのはイタリアだけです。

こうした土着品種の存在が、好奇心旺盛なワイン飲みたちにとって、ギリシャワインを特に面白いものにしています。

反面、難解であまり馴染みのないギリシャの土着品種名が、ギリシャワインの輸出販売を少々難しくしている面もあります。

ギリシャでもシャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなど国際品種のワインは生産されており、品質も良くなっています。
しかし最近ギリシャのワイン生産者たちは、自分たちの土着ブドウ品種でワインを造ることに、これまで以上に注力しているように見受けられます。

アギオルギティコ、クシノマヴロ・・・これまで馴染みのなかったギリシャのブドウ品種名を店頭で数多く見かける日も遠くないかもしれませんね。

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オーストリアのワイン法はドイツをモデルにしていますが、並行してDACという原産地呼称制度もあり、 ニーダーエストライヒ州のヴァインフィアテルはとくに有名です

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストリアの産地の中には、例えばドナウ川沿いの名醸地ヴァッハウ Wachau のように、ワインがドイツと同じ仕組みで名づけられる地区があります。

オーストリアのその他の産地では、ワインの名前は概ねブドウ品種で呼ばれ、その後に生産地の名前がつく仕組みになっています。

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オーストリアワインの品質分類の法律は、基本的にドイツをモデルにして作られています
EU基準にけるAOPワインは、オーストリアではドイツと同様、プレディカーツヴァインクヴァリテーツヴァインとなります。

【関連記事】ドイツワインの95%以上は上級ワイン ~ プレディカーツヴァインとそれに次ぐクヴァリテーツヴァインは、EUワイン法に当てはめるとAOPワインレベルの上級ワインとなります


ドイツと異なるのは、ドイツではプレディカーツヴァインに含まれるカビネットが、オーストリアではプレディカーツヴァインに含まれないという点です。

オーストリアには、上記の、ブドウの熟度を基準としたドイツとほぼ似た品質分類システムと並行して、もう一つ、テロワールに基づいた新しい品質分類の仕組みが存在します。
ヨーロッパの一般的な仕組みと同じ、土地(産地)の特徴を基準としたシステムです。

それは、オーストリア政府が2003年に導入したDAC(Districtus Austriae Controllatus)という原産地呼称制度です(フランスのAOCに相当します)。

主要なDACは次のとおりです。

・ヴァインフィアテル Weinviertel DAC
・クレムスタール Kremstal DAC
・カンプタール Kamptal DAC


上記はいずれも、オーストリアワイン生産量の6割を占める最大の産地であるニーダーエストライヒ州 Niederösterreich にあります。
ヴァッハウも同州にあります。

なかでもヴァインフィアテルDACではグリューナー・フェルトリナー種の使用が義務付けられています
日本でグリューナー・フェルトリナーのワインを買うと、多くはヴァインフィアテルDACのものだと思いますよ。

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オーストリアのワインは進化しています ~ 甘口ワインが有名でしたが、現在はグリューナー・フェルトリナー種の辛口白ワインを国を挙げて世界中に売り出しています

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

オーストリアは、ぼくたちをとても楽しませてくれるワイン生産国のひとつです。

オーストリアのワインを面白くしているのは、造り手やワインの「進化」が顕著であることです。

オーストリアのワイン生産者たちは、この国のブドウや土地つまりテロワールを、ワインを通じてどのように表現すれば最高のものになるのか、徐々に見つけ出しつつあるように思います。

オーストリアが造るワインの量は、全世界のワインの1%以下に過ぎません。
ワインは全て、オーストリアの東部で造られています。

アルプス山脈の裾野の丘に産地が広がっています。
ほとんどが小規模なワイナリーです。

オーストリアの上級な甘口ワインは以前からよく知られていましたが、
この30年ほどの間に、辛口の白ワインと赤ワインが、手頃な価格帯のものも含めて海外で注目されるようになってきました。

とはいえ赤ワインは依然としてマイナーで、この国のワイン生産量の3割程度にすぎません。
オーストリアは、黒ぶどうの育成にはやや冷涼すぎるのです。

赤ワインは主に、ハンガリーとの国境にあるブルゲンラント州 Burgenland で造られています。
オーストリアの中では温暖な地方で、赤ワインの国内生産の50%はこのブルゲンラント州で行われています。

多くはブラウフレンキッシュ Blaufränkish という土着品種の黒ブドウです。
ツヴァイゲルト Zweigelt という黒ブドウも栽培されています。


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 ▲グリューナー・フェルトリーナーはオーストリアを代表する白ブドウ



辛口白ワインについて、この国で最も重要なブドウ品種を1つあげるとすれば、
何といってもグリューナー・フェルトリナー Grüner Veltliner です。

グリューナー・フェルトリナーはオーストリアで最も多く栽培されているブドウ品種で、全ブドウの約3割を占めています。
オーストリアが国を挙げて世界に売り出そうとしている品種です。

グリューナー・フェルトリナーは爽やかな味わいのワインですが、なかなかボディーもあり、ハーブ、アロエ、ときにスパイシーな風味を伴うワインです。

グリューナー・フェルトリナーは食べ物に非常によく合います。
とくに和食にはとてもよく合う白ワインだと思いますよ!


【関連記事】
和食にも合うし日本人好みのワインですね ~ オーストリアを代表する白ワイン「グリューナー・フェルトリーナー」はとてもクールでファッショナブル!



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お気楽ワインセミナー「ワイン入門」、今月も開催しました!~ 美味しいワインをテイスティングしながら気軽にワインの基本が学べます

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

9月10日(日)の午後、お気楽ワインセミナー「ワイン入門」を東京・四谷で開催しました。
美味しいワインをテイスティングしながら、気軽にワインが学べるアットホームなワイン講座です。

この日の都内は久々に気温30℃をマーク、外を歩くと少し汗ばむ昼下がりでした。
いつものようにシャンパーニュで乾杯!

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きれいなゴールド色、柔らかくてキメ細かな泡が上品に立ち上がります。
とても美味しいシャンパーニュです。

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外観、香り、味わい・・・ワインのテイスティングの基本動作をみんなで一緒にやっていきます。

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ワインの香りのなかでも特徴的な要素については、より時間を掛けて解説します。

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ワイン入門編セミナーでは恒例の「ソムリエナイフで抜栓にチャレンジ」コーナー。
ソムリエール犬飼雅恵が丁寧にコーチします。

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ワインをもっと美味しく楽しむための、ちょっとしたコツを、
ソムリエール犬飼雅恵がこっそりとお話します。

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今回のテーマは「グラスの選び方」のコツ。
グラスの形状、大きさ、材質にはどのようなものがあるのか、ゲストの皆さまに実物を見ていただきながら、お話ししています。

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同じワインでも、ワインに合ったグラスで飲むと、美味しさがより引き立ちます。
いわゆる "安ワイン" だって、良いグラスで飲めば、なんだか美味しく感じます。

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一方的にお話しする講義ではなく、ゲストの方と気楽に対話しながら進めていくのが、ぼくたちの「お気楽ワインセミナー」のスタイルです。

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ほかのワインスクールでは他の受講者の手前、ちょっぴり聞きづらいような初歩的な質問も、
「お気楽ワインセミナー」なら気軽に質問していただけます。
カッコつけずに、ワインをお気楽に楽しむのがバイザグラス流!

ワイン初心者向け、お気楽ワインセミナー「ワイン入門」編は、ほぼ毎月開催しています。
ワインに興味のある方、気軽にワインを学んでみたい方、ぜひ一度参加してみてくださいね!

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ドイツのVDP(ファウ・デー・ペー)ワインには独特の黒鷲とブドウのマークがついています ~ ワインは基本的に辛口で、ほぼ例外なく美味しいワインですよ!

バイザグラスのソムリエ松沢裕之です。

以前書いたように、ドイツの法的なワイン格付システムは、ブドウの熟度の高いものに対して上級のランクを与えるという独特の仕組みを持っています。

この仕組みのもとでは、上級のワインであればあるほど、必然的に甘口となります。

【関連記事】良いドイツワインには「肩書き」が付いている ~ ブドウの成熟度(糖度)が高いほど上級のランクを与える独特のシステムをドイツが持った理由とは

そのような公的な流れとは別に、ドイツ高級ワイン生産者連盟という民間の同業者団体が独自にワインの格付システムを作っており、そこでは事実上、辛口ワインの格付が行われています。

ドイツ高級ワイン生産者連盟は、
VDP(ファウ・デー・ペー)
と呼ばれています。

このVDP(ファウ・デー・ペー)は民間とは言っても1910年設立で、すでに100年以上の歴史を持つ、十分に確立された信頼を得ている機関です。

ブドウの収量、ワインの製法、品質管理について厳しい規定があり、それを満たすことのできるワイナリーだけがVDP(ファウ・デー・ペー)に加入できます。

VDP(ファウ・デー・ペー)の生産者のワインには、独特の黒鷲とブドウのマークがついています。
もしかしたら見たことのある人も多いのではないでしょうか。

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 ▲
VDP(ファウ・デー・ペー)のマーク
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 ▲たまたま持っていたドイツ辛口リースリングのキャップにもVDPマークが


VDP(ファウ・デー・ペー)のワインは基本的に辛口で、ほぼ例外なく美味しいワインです。

VDP(ファウ・デー・ペー)は4段階の品質基準を定めています。
上から順に:

①グローセ・ラーゲ Grosse Lage (最高級クラス)
 ・・・ブルゴーニュの特級畑(グランクリュ)に該当

②エアステ・ラーゲ Erste Lage
 ・・・ブルゴーニュの1級畑(プルミエクリュ)に該当

③オルツヴァイン Ortswein
 ・・・ブルゴーニュの村名ワインに該当

④グーツヴァイン Gutswein
 ・・・醸造所名入りワイン

特に、①のグローセ・ラーゲから造られる辛口ワインは
グローセス・ゲヴェックス Grosses Gewächs
と呼ばれ、
GGという略称がボトルに刻印され、畑名も記載されます。

いま日本に入ってきているドイツワインのなかにも、VDPのマークがついているものが結構あります。
今度ワインショップに行ったときには、ぜひドイツワインのコーナーで注意深く見てみてください。
きっと美味しいドイツワインだと思いますよ!

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